チケットだけ買っといて危うく見逃すところだった並河靖之展。
超絶技巧明治工芸展やトーハク常設展、清水三年坂や並河靖之記念館でだいたい見ていたものとは言え、なんど見ても良いものは良い。ヴィクトリアアルバート美術館やキョーハクから来てるもので初見のものもいくつかあったし見逃さなくてよかった。
あと、初期のまだ技術が洗練されてない頃のものを多く見ることができてよかった。江戸時代に久邇宮朝彦親王に仕え、維新が起きて食えなくなったので海外への輸出品として七宝を始めたが、最初は技術的にまだ未熟で品質も高くなかったため取引仲介のストロン商会から契約を破棄されたりもしていた。あの完成品を見るとそういう段階があったことが信じられないのだが、そこから工房をリストラし、少人数で研鑽を重ねてあの域に到達した(できた)というのが更に信じられない。あれはある種の生まれ持った才能やセンスがないと出来ないものだと言われる方が納得がいく。努力であそこに到達できた事が凄い。
「文様だけでは面白みに欠ける」と海外からの評価が下り次第に七宝の輸出が低下したそうで、晩年には金閣寺や平等院など風景画のような作品が作られたが、いま時間的距離を置いて見てみると、やはり中期の小さな棗や小瓶に細密な技巧を施した作品が一番すごい。色・形・線どれも今見ても新鮮さを失わない。
行った日は桜が満開だが小降りの雨。雨の日の桜ってのも乙だし雨に並河の釉薬の色味がよく似合う。
並河靖之記念館を訪れたのはだいぶ前だが、その日もこんな雨の日で、雨が美しい庭を余計際立たせていた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます