ワンダフルなにか ビューティフルだれか

並べてみると 輪郭がつかめるかもしれない

日本国宝展 東京国立博物館 

2014-11-07 00:06:59 | 美術



安倍文殊院の善財童子が国宝かどうかって事と渡辺謙がハリウッドで評価されているかどうかって事は同じだ。どっちでもいい。どっちにしろ良い。ずっと前から良い。


まず地獄草紙コーナーの大混雑ぶりに恐れおののく。「国宝の地獄」って響きはインパクトがあって魅力的だが、あまりの人でさすがに断念してしまった。が、すぐ近くにあった「一字蓮台法華経」という、法華経のすべての文字に蓮の台座が描かれている巻物が綺麗すぎて(しかも混んでない)じっと見惚れる。そのまた近くにあった「金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図(中尊寺大長寿院)」という、金の文字(経文)の羅列で塔などの絵を描いた掛け軸の、照明演出により金文字が光り輝く様子をずっと見てしまう。正倉院宝物は「緑地彩絵箱」の花柄とヒョウ柄(?)の組み合わせに、近くのオバチャンたちが「まぁ!」と歓声をあげていたのが印象的。確かにこれは声を上げたくなる。「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶」の螺鈿も歓声が上がっていた。


土偶も良かったのだが、2体展示されていた神像が記憶に残る。特に薬師寺の「神功皇后坐像(八幡三神像のうち)」の立て膝のポーズといいつり目といい、女神像の怖さがよく出ていた。少し前にやっていた大神社展に出ていた教王護国寺の国宝「女神坐像」の前に立った時のあの恐怖感が一瞬蘇った。「信貴山縁起絵巻」はじっくり見た。尼公巻の東大寺から姉弟の再会までのシーンの実物を見られただけで来て良かったと心底思う。


三千院の「勢至・観音菩薩坐像」に十数年ぶりに再会する。これ見たさに三千院まで行った事、お寺前で4~5歳の少女に信号無視をかなり強めに注意されて本気で謝るハメになった事などを思い出す。大倉集古館にあった「普賢菩薩騎象像」も久しぶりに見たがやっぱり良い。「薬師如来坐像(奈良国立博物館)」ははじめて見たが、サイズ・表情ともにとても良い。欠けていた指はどんなだっただろう?


【アウラとアーカイブ:実物と高精細ディスプレイ】
先日トーハクでやった洛中洛外図展で高精細大画面ディスプレイに細部をでかでかと映していたのを見て、その未来感にワクワクしたのを憶えている。決して大きくはない屏風に執拗に描きこまれた又兵衛の洛中洛外図の細部をじっくり見ることは一般人にはほぼ不可能だ(大混雑すぎて)。それをディスプレイで実物より大きく見られるという事は、ある意味で実物以上に魅力ある展示になる可能性がある(洛中洛外図展のあれはそうなっていた)。ドミューン大学展で宇川直宏が「アウラとアーカイブ」という言葉を使っていたが、美術品の保存と展示を両立させるため、実物の価値を理解するのに実物を見る以上に有効な展示を実現させるために高精細ディスプレイがもっともっと普及してくれないかと、地獄草紙の大混雑を遠くに見ながら思っていた。




【国宝じゃなくても良い常設展】
またいろいろ展示が変わった今回の常設展も良いものが沢山あった。不意に出会う並河靖之七宝の美しさといったらないし、安土桃山時代カトリックの螺鈿書見台もすごい。南北朝時代の千手観音の光背の透かし彫りは影まで惚れ惚れする。















日本国宝展
東京国立博物館
会 期 2014年10月15日(水)~12月7日(日)
時 間 午前9時30分~午後5時



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