光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

「美男におわす」展を観て 埼玉県立近代美術館(2021.10.5)

2021年12月14日 | アート 各分野

「美男におわす」展(埼玉県立近代美術館)を2021年10月5日に鑑賞、もう終了したのですが

レヴューをアップします。(手が遅くてスミマセン)

なお、巡回展が、島根県立石見美術館(会期:2021年11月27日(土)~2022年1月24日(月))

で開催中です。島根県益田市の島根県芸術文化センター グラントワという洒落た建築の中に

美術館があります。(知らなかったのですが、萩・石見空港から近いので、東京から1時間半で

行けるようです)

 

チラシの表紙絵Ⅰ

 

 

表紙絵Ⅱ

 

チラシ裏

5章だて構成の概略です。

第一章 伝説の美少年
 幼き日の聖徳太子、源平の貴公子たち、曾我兄弟に天草四郎など、歴史的に美少年と謳われた人々の肖像。

第二章 愛しい男
 公家や中世寺院の僧侶に仕えた稚児、武将付きの小姓など、若衆を愛でる衆道の文化。若衆の姿は近世の
 絵画でさかんに描かれる。

 近代になり、青少年の健康的な肉体表現、一方、大正デカダンスの世界では、陰のある退廃的な男性像。
 第二次大戦後は、幻想や異形の美、ナルシシズムを備え、時に残酷で官能的な青少年のイメージは、現代
 の耽美的な男性像へ。

三章 魅せる男
 若衆の舞踊図、役者絵など、その才能や心意気で「魅せる」、スター性を帯びた男性像。
 
第四章 戦う男
 『戦う男』は、「強さ」が、分かりやすく表現できるテーマ。 「戦う男」たちが総じて「美男」に描か
 れるのは、江戸の昔から。

 

第五章 わたしの「美男」、あなたの「美男」
 現代のアーティストが表現する多様な男性美。
 女性作家には長らく「美男」を描く機会がなかった。戦後、少女漫画の世界から魅力的な男性像が登場し
 1970年代には少年との愛の物語の漫画作品が誕生。漫画、アニメ、ゲームなどを文化的な土壌として育っ
 た作家たちは、90年代後半から「アート」の領域にサブカルチャーを持ち込む。 2000年代になると美少
 年、美青年のイメージを主題にした作品も登場。その一方で、男性作家による、自らの内面や周囲の日常
 あるいは男性の身体そのものを見つめた作品も生まれている。

 

撮影可能だったのは、現代作家の作品(一部不可あり)で、一章~四章ではほとんど撮影不可のため、気に

入った作品はWebから拝借して紹介します。

 

第一章 伝説の美少年

菊池契月《敦盛》は後期展示で実物は見てはいないのですが、この章を代表するのに

ふさわしい作品と思いWebから拝借。 高貴な女性のような風貌


菊池契月《敦盛》1927(昭和2)年 絹本着色 京都市美術館蔵

 

第一章では数少ない現代作家の、入江明日香の作品

 

 

 

会場で実際に見たときは、撮影してすぐ移動し、作品の細部までは見なかったのです。

実は、ベルばら的な美青年にはウンザリなのです。(ひがんでいるわけではないけんど

いま、写真で見ると、動物や武者など細かく描いていて、朽ちている表現など、い

いろ描きこまれているのには驚きました。

 

 

第二章 愛しい男では、村山槐多のこの作品   Webから拝借。

村山槐多は、1912年(明治45年・大正元年)、1級下のY少年にプラトニックな恋をしており

この作品にも、槐多の熱い心が感じられるのですが、そんなことより、強い絵の印象に、唸っ

しまいます

村山槐多 《二人の少年》 1914(大正3) 水彩、紙 個人蔵(世田谷文学館寄託)

 

三章 魅せる男ではこの作品、山村耕花 《梨園の華 初世中村鴈治郎の茜半七》 Webから拝借

茜半七は、人形浄瑠璃の主人公で、元禄 8 年の心中事件がモデル。

うーん、この絵、女性が魅せられるのは、わかりますね。

山村耕花 《梨園の華 初世中村鴈治郎の茜半七》 1920  島根県立美術館 後期展示)

 

 

第五章では、撮影OKの作品が多い。

最初に唐仁原希さん。 この方の作品は、FACE展(2016年)で見て面白いと思い

「絵画の行方 2019FACE受賞作家展」内覧会では、作品の横で、作家さんと少し

お話も出来ました。

作品の少年には、私は無機的で孤独な小悪魔を感じ、ヒリヒリしたのですが、女性

目線でみると、母性本能をくすぐるものがあるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

吉田芙希子《風が聞こえる》

解説に ”…男性の身体性を抑制しながら、フェティッシュな要望には応じてくれる
吉田の作品は、まさにファンタジーとしての「美男」を形にしたものといえるでしょう”

女性の学芸員の方の解説だと思うのですが、ため息が聞こえてきそうな解説です。

 

 

 

市川 真也 《Lucky star》

健康的ですね。 男性作家が描くとベルばらが消えるので、私はすーっと見ることができます。

 

 

木村 了子 《夢のハワイ Aloha ’Oe Ukulele》

伝統の美人画の主役を、男性に置き換えた作品といえば、それまでですが、

日本画に、新しい展開を・・・という気持ちは伝わってきます。

 

 

 

                            部分拡大

 

《月下美人図》木村了子 2020 絹本墨彩、黒銀箔/軸 作家蔵

 

 

 

 

もう一つ、木村了子作品については、国上寺の「イケメン官能絵巻」について触れておきたい。

越後の名刹、新潟県燕市の国上寺が2019年春、本堂に「イケメン官能絵巻」を設置、公開した。

ゆかりのある上杉謙信、源義経、弁慶、良寛、酒呑童子が露天風呂につかった姿などが描かれて

いる(下の写真)。”官能”が問題となり、SNSが炎上、文化財保護で行政指導を受けたり、とかく

問題があったようですが、写真を見ると、古刹としっくり調和して見えます。

「美男におわす展」にも出品してほしかったところ。

 

 

金巻芳俊の《空刻メメント・モリ》

眼がわかりませんが、美男。 私は、西洋のメメント・モリの作品にはイマイチ

なじめないので、この作品も骸骨は無い方がいいと思う、ついでに下着も脱いだ

方が・・・思ったりしますが、これはまた別の問題を引き起こすので。

 

 

メインヴィジュアルとなった作品。(作品上部の反射が避けられず、見ずらいのはご容赦を)

長くなりましたので、以下は、作品とキャプションのみで、観ていただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか? 本展を企画された方は、多分、女性の学芸員の方だと思います。

今年の春にあった「あやしい絵展」(東京国立近代美術館)も女性学芸員がキュレータでした。

男と女の艶めかしい世界を、アートから紡ぎだすのは女性学芸員が得意なのかなと思いました。

今後も期待したいですね。 ちなみに、入場者も女性が7、8割を占めていました。


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6 コメント

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美男子 (遅生)
2021-12-15 12:47:28
またまた、興味深い展覧会ですね。
美男も、時代と共に変わりますが、変わらない部分もあるようですね。
学芸員さんたちの意気込みが伝わりますね。
国上寺の「イケメン官能絵巻」には驚きました。この古刹には、現代美術に造詣の深い住職がいるのでしょうか。
遅生さんへ (te-reo)
2021-12-15 15:30:52
遅生さん、いつもありがとうございます。
国上寺の「イケメン官能絵巻」は、今回、Webで
調べ中に見つけたものです。
お尋ねの”現代美術に造詣の深い住職がいるのでしょうか。”
については、現代美術の造詣というよりは、寺の
若者離れ対する取組の一つのようですね。
国上寺住職山田光哲氏のコメントが載っているサ
イトを貼っておきます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000038145.html

■住職のコメント
 寺院と若者の距離がどんどん広がっていく中で、越後最古の名刹と言って頂いている寺院だからこそ、先頭に立って新しいことに取り組まないとい
けないと思っています。その第一弾となったSNS炎上供養では、お陰様で多くの反響を頂き、実際お寺を訪れられる若い方も多くなりました。
しかし、これで課題が解決したわけではありません。取り組みは続けていかなければ課題解決に繋がならないと思います。今回は、女性のお寺に対するイメージも変えたいという思いで、「イケメン仏」を描かれている木村了子さんにお願いさせて頂きました。過激な部分もあるかもしれませんし、反対の声も上がるかもしれません。でも、停滞するこの現状を打破するために、これくらい振り切ってみるとどうなるかを知ることも学びとなるかと思います。若者を中心に人気のある木村さんに描いて頂くことで、お寺について考えたり、寺院へ興味を持ってくれる若者が増えることを願っています。
Unknown (toki-tsubone)
2021-12-16 00:49:01
こんな面白そうな美術展があったとは!
見逃したのがつくづく残念です
ワタクシの推しメンは「山村耕花 《梨園の華 初世中村鴈治郎の茜半七》」ですね
色っぽいわ~
toki-tsuboneさんへ (te-reo)
2021-12-16 14:32:19
巨匠の有名作品もないし、都内から外れているし
で、ちょっと目立たなかった展覧会でしたね。

「山村耕花 《梨園の華 初世中村鴈治郎の茜半七》」は、tsuboneさんにも、ど真ん中でしたか (^з^)-☆
初世中村鴈治郎は、和事になるとその眼遣いが凄
かったようです。大坂新町の妓楼扇屋に生まれ、
父は芝居役者の四代目嵐珏蔵(後の三代目中村翫雀)、母は扇屋の一人娘妙 ・・・生まれからして
色っぽい。美男というよりも、”いい男”を感じさせます。
面白いですね♪ (越後美人)
2021-12-18 15:57:16
美男子は女性の憧れです。
特に戦場を駆ける美男子にはぞくっとします。
強さに裏打ちされた美男子。
この世のものとは思えないですね。
屏風の中から飛び出して来そうで迫力満点です。
実物を見てみたいです。
それにしても変わった企画ですね(^_-)-☆
越後美人さんへ (te-reo)
2021-12-18 18:55:45
越後美人さん 今晩は

戦場を駆ける美男子にぞくっ・・・凛々しいのが
好みのようですね。(^_^;
展示の第四章が戦う男でしたが、歌川国芳や月岡
芳年の作品が多く、紹介するには、いまいちでした。
入江明日香の屏風図は、通常の日本画とは異なる制
作手法が取られており、ん?この迫力は・・・でした。
展覧会の企画は、以前は巨匠や回顧展が多かったのですが、最近は、目線を柔軟にした面白い企画が増えてきました。 今回は、その中でも、女性学芸員
の思いがかなった企画・・・パチパチパチです。

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