出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

物流

2007年10月09日 | 出版の雑談
いつだったか「取次はどうやって本を地方に運んでいるのか」という記事を書いたが、どうにも気になってしょうがない。あれ以来、搬入口などに停まっている大型トラックの社名に、なんとなく目が行ってしまう。ところがそんなことでも役に立つもので、今回の地方行きで、取次で見かけたトラックを高速で発見した。愛知陸運。

実を言うと、「横に『本の何とか』と書いてないか」気にしながら走ったんだが、それはなかった。運送会社というのは思ったよりいろんな荷物を運んでいる(いろんな荷主がいる)のか、そもそも「何を運んでいるか」書いてあるトラックのほうが少ない。常識ですか、そうですか。

となると、愛知陸運以外にも本を運んでいるトラックはいっぱいいるはずで(当たり前)、東京-名古屋間で追い抜いた数え切れないトラックのうちの何台かは、本を運んでいるに違いない。本当にどうでもいいことなんだが、仲間意識が生まれて幸せな気分になるので、なんとかして「本を運んでいるトラック」を見つけたかったのである。

そんな感じで走りながら考えた。

取次は自社で流通をまかなっているわけじゃないらしい。→ トーハンが超大口荷主というような運送会社なら、都内のトラックのように横にトーハンとか書かされるであろう。→ トラック1台分に載せられる本の冊数は限られている。→ 多くの運送会社が「往きはトーハンの本、帰りは愛知の梨」というように荷物をアレンジしながら営業しているのであろう。→ 逆に言えば、取次は数多い運送会社の「どれをどの日にどの本のために使う」などと、コーディネートをしているであろう。

で、気付いたのは、これってすごい手間というか大変な業務ではなかろうかということ。ある程度の定期便は手配してあるだろうけど、この出版不況と言われるご時勢、より効率的な物流配分(っていうのか?)をしているだろう。

ところが、私もこれでも出版を始めて6年経ったが、そういう話はあまり耳にしない。取次が努力をしてないという意味ではなくて、出版社の集まりなどで話題にならないという意味。

本の価格の10%前後らしい「取次の取り分」が話題に上がるとき、今までは表面的に「物流と代金回収でしょ」なんて思ってたが、物流って実はすごいことじゃないかと思う。でもって、物流というとすぐ「桶川作ったのにどうのこうの…」という話になる。

もっと言うと、業界のことをいろんなメディアで学んでいるが、版元サイドとなると配本がどうのこうの(パターン配本のデメリットとか?)とかいう話が多いし、書店サイドとなっても配本どうのこうの(欲しい本が来ないのに云々とか?)という話ばっかりだ。

でも、運んでるだけですごいような気がする。すごいかどうかは置いとくにしろ、出版で物流について語るとき、バーコード管理だのソート機能がどうだの、デポの話しか聞こえてこない気がする。

ヤマトや佐川が長距離輸送も自社でやってることを考えると、ある程度の量があるなら、物流でアウトソースは得にならないと考えられる。もちろん、そのへんのコスト比較は抜かりないはずだ。出版って意外と小規模産業とどこかで読んだが、そんなに少ない量なのか。

でもって話は戻って「物流コーディネート」は大変なんじゃないかと思うんだが、旅の道連れが「そんなこと考える暇あったら、本の企画でも考えたら」とのたまった。おっしゃるとおり。。。

で、自分にも関係あることを考えると、結局こうなる。

往きの運賃はともかく(それが取次の仕事だから)、返品は割に合わないだろう。→ ありがたかったら返品を減らせ。 

4 コメント

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ヤマトも業者使ってますよ (通りすがり)
2007-10-09 17:48:26
以前ヤマトの物流基地ではたらいていたことがあるのですが、大きな基地間の移動には小さな運送屋のトラックをたくさん使ってたようですよ。ただ、繁忙期でしたが。
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返品は・・・ (ぱんた)
2007-10-11 02:23:53
こんばんは。
いつも楽しく読んでます本屋の店員です。

地方への運送は地元の業者を使うことが多いです。
でも利益が薄いのでやりたがらない業者も多いと
聞いたことがあります。

返品運賃は書店持ちのところが多いです。
大抵1箱500円とか。
だから注文にはものすごく神経を使いますし、
各社とも買切のつもりで仕入れています。
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通りすがりさん (タミオ)
2007-10-23 18:50:59
ようするに社内でまかなうかアウトソースするか、頭を絞ってるってことですね。物流業者も大変ですね。
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ぱんたさん (タミオ)
2007-10-23 18:54:35
えへへ、私も本屋でバイトを始めて、「注文にはものすごく神経を使う」とか、だんだんわかってきました。もちろん理屈ではわかってたんですけど、実感を伴ってきました(笑)

返品って、つくづく誰も得しませんよね。これまで以上に、そのことを肝に銘じていきます。これからもどうぞよろしく。
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