出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

事故

2006年07月18日 | 出版の雑談
日販からくるおみくじ封筒(注文短冊が送られてくる封筒)は、こちらで住所を書いて切手も貼って日販に持っていく。別に送ってもいいんだが、搬入に行くついでに持っていく。

ネット受品口の横の階段を上って、ベルトコンベアの前で作業をしている人たちの間をぬって、食堂みたいなところの横を通って、目的地にたどり着く。

今までは気づかなかった(迷わないようにするために余裕がなかった)んだが、いろんな張り紙がしてある。よく見ると、「事故を減らそう」みたいな張り紙だった。

行き(封筒を届ける前)は、ベルトコンベアは危ないからなと思ってたんだが、今思えば、そういうことではないらしい。

以前読んだ本だったかに書いてあった、「書店への配送間違い」のようだ。月間何冊以下を目標とするみたいな数字が、その張り紙に書いてあった。私は数字に弱くはないんだが、見たときに何の数字か理解してなかったので、よく覚えてない。(32冊だったような気もするけど、もっと少なかったら日販さん、ごめんなさい)

ベルトコンベアの人たちは、(おそらく書店に送られる)箱に本を詰めているんだが、詰め間違えちゃうってことだろうか。

最近、書店の人が書いた本を何度も読んだりしたんだが、「注文どおり来ない」ことは、小さい書店ではよくあるらしい。前にも、角川書店のニュースで「注文どおり納品する」ってな話が出て、結構あることなんだとわかった。

けれど、そういうのは版元や取次のインテンショナルな減数で、日販の張り紙の言う「事故」は、これとは違うような気がする。

じゃないと、32冊(うろ覚えだが)という数字が合わない。あんな広いスペースで毎日全国の書店向けに箱詰めをしている人たちが、減らそうと思って減らしてる数が32冊(うろ覚えだが)ってことはないと思う。もっと多いと思う。

となると、32冊という数字は、あんな人海戦術をしているにしては少ないんではなかろうか。(いや、32冊じゃなくて320冊だったら意味のない話なんだが)

もちろん、日本人は几帳面で、品質管理体制がきっちりしていると凄い結果を出すことは知っている。でも、毎日300冊の新刊と山のような既刊が、全国の書店に配られることを考えれば、すごい優秀な数字のような気もする。

ちょっと調べてみたら、トーハンの新しい返本センターじゃなくて配送センターは、事故率10万分の3以下を実現しているらしい。やっぱり、すごい数字に思われる。

そりゃ、ないに越したことはないけど。というか、うち(版元)としてはあまり実感の伴わない被害なので、そう思うのかもしれないが。

出版業界全体で売上が2兆円だかなんだかだったような気がするが、返品率が40%として、3兆円に迫る分の本が流れていくってことだ。仮に日販のシェアが4割として1冊千円として、月に9千万冊である。9千万冊あたり32冊。あれ、この計算、合ってるんだろうか? トーハンと一桁違うな。

そんなことはいいとして言いたかったのは、事故率は非常に低いのに、ありがたがってもらえないのは、やっぱり「減数」のせいじゃないかと思うのだ。減数に限らず、「いらない百科事典はいっぱい送りつけてくる」とか、とにかく書店の注文どおりに配本されないという事実。

これが、実は「意外と低い事故率」を霞んで見せているんじゃないか。

今、あることがきっかけで取次のありがたみを再認識している。が、いろんなことを「決まりどおりに」やってくれたら、もっと評価が上がるのに…となんとなく思ってしまう。

減数に関しては、大きなお世話かもしれないが・・・。