日本アカデミー賞よりも権威はないが、同じくらいに歴史はあるわが映画賞tak's Movie Awards。そもそもは中学3年のときに、 友達と「ロードショー」や「スクリーン」の真似して始めたもの。習慣とは恐ろしいもので何と31年目になりました。 「歌は世につれ」とよく言うが、この記録は少なくとも僕の自分史。その頃に考えていたこと、その年に仲良くしていた人々、映画を語り合っていた人々、そんな思い出がそれぞれの年にある。
それでも毎年選んでて、いつまでやってるんだろう・・・とつくづくバカだと思う。しかしこれも映画への愛情表現。 映画賞なんて、批評家の年中行事と皮肉る人もいますけど、映画を観ることで感じるさまざまな愛に対する感謝祭だと思っております。鑑賞本数は減少の一途ですがその分自分の選球眼が試されているような気も する。さて、2011年に僕が鑑賞した映画から、今年のお気に入りを発表しまする。
★対象は2011年に観賞したすべての映画(映画館・VTR・DVD・BS・地上波全て含む)。新作・旧作を問わない。
★劇場公開することを前提に製作された映画を対象とする。いわゆるVシネ・OVAなどビデオリリース目的の作品は含まない。
■作品賞=「英国王のスピーチ」(2010年・イギリス=オーストラリア)
この地味なイギリス映画が今年のオスカーを獲得した。この映画には人が忘れてはいけないことが数多く刻み込まれている。 主人公の英国王は、映画史上初めて一人の懸命に生きている人間として描かれる。 決して威厳を示したり、家来の首をはねたり、国家を力強く率いたりしない。コンプレックスと戦う一人の男だ。また、吃音矯正の専門家ライオネルは、資格や権威を持たぬが 、揺るぎない信念を持つ者として描かれる。 ジョージ6世から感じる「あきらめないこと」の大切さは、今年様々な事件やスポーツを通じて僕らは目にしてきた。そして、これからも続く震災復興支援。ライオネルのように、勇気づけながら長く支え続ける心。僕らはそれを持てるようにならねば。
ベスト10
「あぜ道のダンディ」(2010年・日本)
「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」(2011年・アメリカ)
「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
「スーパーエイト」(2011年・アメリカ)
「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
「ソーシャルネットワーク」(2010年・アメリカ)
「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008年・スウェーデン)
「マネーボール」(2011年・アメリカ)
■特別賞(オリジナル&リメイク)=
「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008年・スウェーデン)
「モールス」(2010年・アメリカ)
2011年最初に映画館で観たのは「ぼくのエリ 200歳の少女」。ホラーでありファンタジーであり、主人公二人が抱える孤独感、北欧の冷たい空気感が伝わってくるような映像に心揺さぶられた。何とも言えない余韻を残すラストシーン。 単なるエンターテイメントとは違う、それぞれの登場人物の寂しさが突き刺さるような映画。新年早々すごいの観ちゃった・・・と思い、周囲の人々に勧めていた。まぁ本編の内容からすると 邦題に問題はあるけれど、それはこの際置いておこう。
そのハリウッドリメイクが「モールス」。「トワイライト」の後だったし、きっとお気楽なバンパイヤ映画にあるかと思っていた。ところが、このリメイクはオリジナルの精神を大切にした”わかってる”人の手によるリメイク。 マット・リーヴス監督はオリジナルのよき理解者だった。原題にあるように、まさに"正しき者"だったわけだろう。 どちらもよくできた映画でそれぞれの良さや表現の工夫がある。いずれにせよ、オリジナルがいろんな意味で魅力的な作品だったということだ。
■監督賞=フアン・ホセ・カンパネラ「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
昨年から世間の評判を聞き、「観たいー!」と思い続けて数ヶ月。北九州ではやっと5月にありつけた。冒頭の駅のホームを見つめる瞳のアップからぐいぐい引き込まれた。あっという間の上映時間。なんという完成度!。ミステリーの要素、サイコサスペンスの要素、そして何よりも愛の映画。様々な色の糸が紡ぎ合う上質な織物の様な映画。気の利いた台詞や小道具、脚本の巧さ。それを紡いだのはこの監督の力量なんだろう。暴力描写や事件の結末は確かに後味が悪いが、それを補って余りある見事なラストシーン。
今年の10人
J・J・エイブラムス 「スーパーエイト」(2011年・アメリカ)
ダーレン・アノロフスキー 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ダンカン・ジョーンズ 「月に囚われた男」(2010年・イギリス)
デビッド・フィンチャー 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
トーマス・アルフレッドソン 「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008年・スウェーデン)
トム・フーパー 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
根岸吉太郎 「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年・日本)
フランソワ・オゾン 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
フアン・ホセ・カンパネラ 「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
マルタン・プロヴォドス 「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
■主演男優賞=ブラッド・ピット「マネーボール」(2011年・アメリカ)
成功する自信があるわけじゃない。自分自身も失敗してきた人間。だが信じていることを貫くことは、人生において大切なこと。それを理解してくれる人は少ないかもしれないが、きっといる。孤軍奮闘が伝説を生み出す物語を、自らプロデュースし、その役柄を演じきって僕らに示してくれたブラッド・ピット。ますます師匠ロバート・レッドフォードに似てきた気がする。
今年の10人
小出恵介 「風が強く吹いている」(2009年・日本)
高良健吾 「おにいちゃんのハナビ」(2010年・日本)
コリン・ファース 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
サム・ロックウェル 「月に囚われた男」(2010年・イギリス)
ジェシー・アイゼンバーグ 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
ジェフ・ブリッジス 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
ハンフリー・ボガート 「脱出」(1944年・アメリカ)
光石研 「あぜ道のダンディ」(2010年・日本)
ブラッド・ピット 「マネーボール」(2011年・アメリカ)
リカルド・ダリン 「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
■主演女優賞=ヨランド・モロー「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
家政婦として働くセラフィーヌ・ルイは、神のお告げを受けて絵を描き始める。偶然の出会いが彼女の運命を変えていく。ジャン・ピエール・ジュネ作品など、バイプレイヤーとして印象的な存在であるヨランド・モロー。台詞だけでなく全身でセラフィーヌの精神そのものを演ずる。この映画の感動をシェアして誰かに鑑賞してもらうことは、美術館で画家の偉業を知ってもらうことに等しい。
今年の10人
エレン・ペイジ 「ローラーガールズ・ダイアリー」(2009年・アメリカ)
カトリーヌ・ドヌーブ 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
クリスティン・スコット・トーマス 「ずっとあなたを愛してる」(2008年・フランス)
クロエ・グレース・モレッツ 「モールス」(2010年・アメリカ)
ジェーン・シーモア 「ある日どこかで」(1980年・アメリカ)
ジェーン・フォンダ 「獲物の分け前」(1966年・フランス)
ジャンヌ・モロー 「死刑台のエレベーター」(1957年・フランス)
ナタリー・ポートマン 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
松たか子 「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年・日本)
ヨランド・モロー 「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
■助演男優賞=ジェフリー・ラッシュ「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
人に自信をつけさせることって難しい。しかし、ジェフリー・ラッシュ演ずるライオネルは相手を勇気づけることを知っている。それは専門的な知識・技術というよりも人間として小さな自信を積み重ねさせていけるかなのだ。国王のスピーチを黙ってうなづきながら聴くライオネル。人を導くとはどういうことか、それを僕らに示してくれる。ほんとうにこの映画は役者のいい仕事に支えられている。
今年の10人
ヴァンサン・カッセル 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ジェフリー・ラッシュ 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
ジョナ・ヒル 「マネーボール」(2011年・アメリカ)
ジョン・リスゴウ 「猿の惑星 創世記」(2011年・アメリカ)
チュ・ジフン 「キッチン~3人のレシピ」(2009年・韓国)
ティモシー・スポール 「デザート・フラワー」(2009年・ドイツ=オーストリア=フランス)
テレンス・スタンプ 「アジャストメント」(2011年・アメリカ)
トム・ウィルキンソン 「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年・アメリカ)
ハリソン・フォード 「カウボーイ&エイリアン」(2011年・アメリカ)
マット・デイモン 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
■助演女優賞=ローレン・バコール 「脱出」(1944年・アメリカ)
この映画に出演した当時、ローレン・バコールは20歳。共演したハンフリー・ボガード(当時45歳!)に夢中になり結婚し、ボギーが死ぬまで一緒だった・・・というのは映画史上有名なお話。実際に「脱出」のバコールは、妙な落ち着きがあって、それでいて妖しげだし、世話女房だし、それでいて歌わせたら上手いし。「私に用があったら口笛を吹いてね」の台詞もかっこいい。 実生活では、夫ボギーの葬儀のとき彼に口笛を吹いたというエピソードもあるとか。どこまでかっこいいんだ!
今年の10人
エルゼ・ジルベルスタイン 「ずっとあなたを愛してる」(2008年・フランス)
ケイト・ブランシェット 「ハンナ」(2011年・アメリカ)
ジュリエット・ルイス 「ローラーガールズ・ダイアリー」(2009年・アメリカ)
ジョアン・チェン 「小さな村の小さなダンサー」(2009年・オーストラリア)
バーバラ・ハーシー 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
広末涼子 「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年・日本)
ヘイリー・スタインフェルド 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
ヘレナ・ボナム・カーター 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
ミラ・クニス 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ローレン・バコール 「脱出」(1944年・アメリカ)
■音楽賞=ジョン・バリー「ある日どこかで」(1980年・アメリカ)
3年連続旧作に音楽賞・・・それだけ今の劇伴は、映画音楽として心に残るようなものが少ないということなのかな。先頃他界したジョン・バリーによるこの映画のメロディーは本当に心に残る。本編で使われているラフマニノフも印象的。エンドクレジットが終わる頃には、ジョン・バリーのメインタイトルはラフマニノフに劣らない記憶を残してくれる。これこそ映画音楽だろう。
今年の10人
カーター・バーウェル 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
川井憲次 「ワイルド7」(2011年・日本)
クリント・マンセル 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ケミカル・ブラザース 「ハンナ」(2011年・アメリカ)
ジョン・バリー 「ある日どこかで」(1980年・アメリカ)
武部聡志 「コクリコ坂から」(2011年・日本)
フィリップ・ロンビ 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
マイケル・ジアッキノ 「モールス」(2010年・アメリカ)
マイケル・ジアッキノ 「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年・アメリカ)
マイルス・デイビス 「死刑台のエレベーター」(1957年・フランス)
■主題歌賞=♪Singing(放課後ティータイム)「けいおん!」(2011年・日本)
今に始まったことではないが、アニメーションが大好きだ。ここ2、3年は京都アニメーションやマッドハウスの作品群に夢中になってた。特に「けいおん!」は社会現象とも言える大人気作。ついに劇場版まで製作されてしまった。バンド経験者だからこそグッとくる部分もあり、高校時代を思い返してしまう部分もあり、それに適度な”萌え”が実にバランスよし。ここまで一緒にバカやったり、一緒に物事に打ち込んでくれた友達っていただろうか・・・。何でもない日常を共にする人がいることが、とっても幸せなことなんだ。そんな気持ちがこの劇場版EDテーマには込められている 。
今年の10曲(挿入歌含む)
Baby You're A Richman (The Beatles) 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
Chase (L'Arc~En~Ciel) 「ワイルド7」(2011年・日本)
My Sharona (The Knack) 「スーパーエイト」(2011年・アメリカ)
Singing (放課後ティータイム) 「けいおん!」(2011年・日本)
Time (Culture Club) 「モールス」(2010年・アメリカ)
Twist And Shout (The Beatles) 「フェリスはある朝突然に」(1986年・アメリカ)
Unmei♪wa♪Endless (放課後ティータイム) 「けいおん!」(2011年・日本)
Viens Faire Un Tour Sous La Pluie (Il Etait Une Fois) 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
愛を止めないで (倖田來未) 「セカンドバージン」(2011年・日本)
さよならの夏~コクリコ坂から (手嶌葵) 「コクリコ坂から」(2011年・日本)
▲ベスト活劇=「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年・アメリカ)
トム・クルーズ嫌いを宣言しているのにまた映画館で観てしまった・・・。正直なところ、トム一人がええかっこしいだった前作よりも、チーム各員の活躍が観られて僕は好き。高所恐怖症の僕には心臓に悪い映画でした・・・はい。理屈抜きに楽しむべし。
▲ベスト恋愛映画=「キッチン~3人のレシピ」(2009年・韓国)
昨年の「四月の雪」に続き2年連続韓国映画。ドロドロしそうな三角関係を題材にしながらも、洗練された演出ですっきりとみせているのがナイス。 人を好きになることって、やっぱり抑えられない感情。それにしてもチュ・ジフン!男性観客も彼には勝てねぇ、と思うこと必至のかっこよさ。
▲ベストコメディ映画=「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
作風が変幻自在のフランソワ・オゾン監督。 置物のように扱われてきた社長夫人が、夫不在となった会社に関わったことから運命の扉が大きく開かれていく。家族それぞれが自分の価値観を主張する人間模様。そのすったもんだが面白い。笑わせてくれながらも、美しき人生について考えさせる秀作。
▲ベストミステリー/サスペンス=「瞳の奥の秘密」(2009年・ スペイン=アルゼンチン)
僕らが目にするのは事件の真相、司法の現場、出来事の裏に隠された現実、そして年月を越えて心に秘められた思い。すべてが明らかになるラストシーンまで、気が抜けない完成度の高い傑作。いつも開け放たれていた扉が閉まるラストで大感激。
▲ベスト人間ドラマ=「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
ネット上のコミュニケーションの場であるSNSという最先端の素材を取り上げながら、実は現実世界のソーシャル・ネットワークを描いた意欲作。人間関係が崩壊していく様は「市民ケーン」のように古典的にみえる。エンドクレジットで使われたビートルズの選曲は絶妙なセンス。
それでも毎年選んでて、いつまでやってるんだろう・・・とつくづくバカだと思う。しかしこれも映画への愛情表現。 映画賞なんて、批評家の年中行事と皮肉る人もいますけど、映画を観ることで感じるさまざまな愛に対する感謝祭だと思っております。鑑賞本数は減少の一途ですがその分自分の選球眼が試されているような気も する。さて、2011年に僕が鑑賞した映画から、今年のお気に入りを発表しまする。
★対象は2011年に観賞したすべての映画(映画館・VTR・DVD・BS・地上波全て含む)。新作・旧作を問わない。
★劇場公開することを前提に製作された映画を対象とする。いわゆるVシネ・OVAなどビデオリリース目的の作品は含まない。
■作品賞=「英国王のスピーチ」(2010年・イギリス=オーストラリア)
この地味なイギリス映画が今年のオスカーを獲得した。この映画には人が忘れてはいけないことが数多く刻み込まれている。 主人公の英国王は、映画史上初めて一人の懸命に生きている人間として描かれる。 決して威厳を示したり、家来の首をはねたり、国家を力強く率いたりしない。コンプレックスと戦う一人の男だ。また、吃音矯正の専門家ライオネルは、資格や権威を持たぬが 、揺るぎない信念を持つ者として描かれる。 ジョージ6世から感じる「あきらめないこと」の大切さは、今年様々な事件やスポーツを通じて僕らは目にしてきた。そして、これからも続く震災復興支援。ライオネルのように、勇気づけながら長く支え続ける心。僕らはそれを持てるようにならねば。
ベスト10
「あぜ道のダンディ」(2010年・日本)
「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」(2011年・アメリカ)
「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
「スーパーエイト」(2011年・アメリカ)
「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
「ソーシャルネットワーク」(2010年・アメリカ)
「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008年・スウェーデン)
「マネーボール」(2011年・アメリカ)
■特別賞(オリジナル&リメイク)=
「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008年・スウェーデン)
「モールス」(2010年・アメリカ)
2011年最初に映画館で観たのは「ぼくのエリ 200歳の少女」。ホラーでありファンタジーであり、主人公二人が抱える孤独感、北欧の冷たい空気感が伝わってくるような映像に心揺さぶられた。何とも言えない余韻を残すラストシーン。 単なるエンターテイメントとは違う、それぞれの登場人物の寂しさが突き刺さるような映画。新年早々すごいの観ちゃった・・・と思い、周囲の人々に勧めていた。まぁ本編の内容からすると 邦題に問題はあるけれど、それはこの際置いておこう。
そのハリウッドリメイクが「モールス」。「トワイライト」の後だったし、きっとお気楽なバンパイヤ映画にあるかと思っていた。ところが、このリメイクはオリジナルの精神を大切にした”わかってる”人の手によるリメイク。 マット・リーヴス監督はオリジナルのよき理解者だった。原題にあるように、まさに"正しき者"だったわけだろう。 どちらもよくできた映画でそれぞれの良さや表現の工夫がある。いずれにせよ、オリジナルがいろんな意味で魅力的な作品だったということだ。
■監督賞=フアン・ホセ・カンパネラ「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
昨年から世間の評判を聞き、「観たいー!」と思い続けて数ヶ月。北九州ではやっと5月にありつけた。冒頭の駅のホームを見つめる瞳のアップからぐいぐい引き込まれた。あっという間の上映時間。なんという完成度!。ミステリーの要素、サイコサスペンスの要素、そして何よりも愛の映画。様々な色の糸が紡ぎ合う上質な織物の様な映画。気の利いた台詞や小道具、脚本の巧さ。それを紡いだのはこの監督の力量なんだろう。暴力描写や事件の結末は確かに後味が悪いが、それを補って余りある見事なラストシーン。
今年の10人
J・J・エイブラムス 「スーパーエイト」(2011年・アメリカ)
ダーレン・アノロフスキー 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ダンカン・ジョーンズ 「月に囚われた男」(2010年・イギリス)
デビッド・フィンチャー 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
トーマス・アルフレッドソン 「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008年・スウェーデン)
トム・フーパー 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
根岸吉太郎 「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年・日本)
フランソワ・オゾン 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
フアン・ホセ・カンパネラ 「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
マルタン・プロヴォドス 「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
■主演男優賞=ブラッド・ピット「マネーボール」(2011年・アメリカ)
成功する自信があるわけじゃない。自分自身も失敗してきた人間。だが信じていることを貫くことは、人生において大切なこと。それを理解してくれる人は少ないかもしれないが、きっといる。孤軍奮闘が伝説を生み出す物語を、自らプロデュースし、その役柄を演じきって僕らに示してくれたブラッド・ピット。ますます師匠ロバート・レッドフォードに似てきた気がする。
今年の10人
小出恵介 「風が強く吹いている」(2009年・日本)
高良健吾 「おにいちゃんのハナビ」(2010年・日本)
コリン・ファース 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
サム・ロックウェル 「月に囚われた男」(2010年・イギリス)
ジェシー・アイゼンバーグ 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
ジェフ・ブリッジス 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
ハンフリー・ボガート 「脱出」(1944年・アメリカ)
光石研 「あぜ道のダンディ」(2010年・日本)
ブラッド・ピット 「マネーボール」(2011年・アメリカ)
リカルド・ダリン 「瞳の奥の秘密」(2009年・スペイン=アルゼンチン)
■主演女優賞=ヨランド・モロー「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
家政婦として働くセラフィーヌ・ルイは、神のお告げを受けて絵を描き始める。偶然の出会いが彼女の運命を変えていく。ジャン・ピエール・ジュネ作品など、バイプレイヤーとして印象的な存在であるヨランド・モロー。台詞だけでなく全身でセラフィーヌの精神そのものを演ずる。この映画の感動をシェアして誰かに鑑賞してもらうことは、美術館で画家の偉業を知ってもらうことに等しい。
今年の10人
エレン・ペイジ 「ローラーガールズ・ダイアリー」(2009年・アメリカ)
カトリーヌ・ドヌーブ 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
クリスティン・スコット・トーマス 「ずっとあなたを愛してる」(2008年・フランス)
クロエ・グレース・モレッツ 「モールス」(2010年・アメリカ)
ジェーン・シーモア 「ある日どこかで」(1980年・アメリカ)
ジェーン・フォンダ 「獲物の分け前」(1966年・フランス)
ジャンヌ・モロー 「死刑台のエレベーター」(1957年・フランス)
ナタリー・ポートマン 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
松たか子 「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年・日本)
ヨランド・モロー 「セラフィーヌの庭」(2008年・フランス=ベルギー=ドイツ)
■助演男優賞=ジェフリー・ラッシュ「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
人に自信をつけさせることって難しい。しかし、ジェフリー・ラッシュ演ずるライオネルは相手を勇気づけることを知っている。それは専門的な知識・技術というよりも人間として小さな自信を積み重ねさせていけるかなのだ。国王のスピーチを黙ってうなづきながら聴くライオネル。人を導くとはどういうことか、それを僕らに示してくれる。ほんとうにこの映画は役者のいい仕事に支えられている。
今年の10人
ヴァンサン・カッセル 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ジェフリー・ラッシュ 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
ジョナ・ヒル 「マネーボール」(2011年・アメリカ)
ジョン・リスゴウ 「猿の惑星 創世記」(2011年・アメリカ)
チュ・ジフン 「キッチン~3人のレシピ」(2009年・韓国)
ティモシー・スポール 「デザート・フラワー」(2009年・ドイツ=オーストリア=フランス)
テレンス・スタンプ 「アジャストメント」(2011年・アメリカ)
トム・ウィルキンソン 「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年・アメリカ)
ハリソン・フォード 「カウボーイ&エイリアン」(2011年・アメリカ)
マット・デイモン 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
■助演女優賞=ローレン・バコール 「脱出」(1944年・アメリカ)
この映画に出演した当時、ローレン・バコールは20歳。共演したハンフリー・ボガード(当時45歳!)に夢中になり結婚し、ボギーが死ぬまで一緒だった・・・というのは映画史上有名なお話。実際に「脱出」のバコールは、妙な落ち着きがあって、それでいて妖しげだし、世話女房だし、それでいて歌わせたら上手いし。「私に用があったら口笛を吹いてね」の台詞もかっこいい。 実生活では、夫ボギーの葬儀のとき彼に口笛を吹いたというエピソードもあるとか。どこまでかっこいいんだ!
今年の10人
エルゼ・ジルベルスタイン 「ずっとあなたを愛してる」(2008年・フランス)
ケイト・ブランシェット 「ハンナ」(2011年・アメリカ)
ジュリエット・ルイス 「ローラーガールズ・ダイアリー」(2009年・アメリカ)
ジョアン・チェン 「小さな村の小さなダンサー」(2009年・オーストラリア)
バーバラ・ハーシー 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
広末涼子 「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」(2009年・日本)
ヘイリー・スタインフェルド 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
ヘレナ・ボナム・カーター 「英国王のスピーチ」(2011年・イギリス=オーストラリア)
ミラ・クニス 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ローレン・バコール 「脱出」(1944年・アメリカ)
■音楽賞=ジョン・バリー「ある日どこかで」(1980年・アメリカ)
3年連続旧作に音楽賞・・・それだけ今の劇伴は、映画音楽として心に残るようなものが少ないということなのかな。先頃他界したジョン・バリーによるこの映画のメロディーは本当に心に残る。本編で使われているラフマニノフも印象的。エンドクレジットが終わる頃には、ジョン・バリーのメインタイトルはラフマニノフに劣らない記憶を残してくれる。これこそ映画音楽だろう。
今年の10人
カーター・バーウェル 「トゥルー・グリット」(2010年・アメリカ)
川井憲次 「ワイルド7」(2011年・日本)
クリント・マンセル 「ブラック・スワン」(2010年・アメリカ)
ケミカル・ブラザース 「ハンナ」(2011年・アメリカ)
ジョン・バリー 「ある日どこかで」(1980年・アメリカ)
武部聡志 「コクリコ坂から」(2011年・日本)
フィリップ・ロンビ 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
マイケル・ジアッキノ 「モールス」(2010年・アメリカ)
マイケル・ジアッキノ 「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年・アメリカ)
マイルス・デイビス 「死刑台のエレベーター」(1957年・フランス)
■主題歌賞=♪Singing(放課後ティータイム)「けいおん!」(2011年・日本)
今に始まったことではないが、アニメーションが大好きだ。ここ2、3年は京都アニメーションやマッドハウスの作品群に夢中になってた。特に「けいおん!」は社会現象とも言える大人気作。ついに劇場版まで製作されてしまった。バンド経験者だからこそグッとくる部分もあり、高校時代を思い返してしまう部分もあり、それに適度な”萌え”が実にバランスよし。ここまで一緒にバカやったり、一緒に物事に打ち込んでくれた友達っていただろうか・・・。何でもない日常を共にする人がいることが、とっても幸せなことなんだ。そんな気持ちがこの劇場版EDテーマには込められている 。
今年の10曲(挿入歌含む)
Baby You're A Richman (The Beatles) 「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
Chase (L'Arc~En~Ciel) 「ワイルド7」(2011年・日本)
My Sharona (The Knack) 「スーパーエイト」(2011年・アメリカ)
Singing (放課後ティータイム) 「けいおん!」(2011年・日本)
Time (Culture Club) 「モールス」(2010年・アメリカ)
Twist And Shout (The Beatles) 「フェリスはある朝突然に」(1986年・アメリカ)
Unmei♪wa♪Endless (放課後ティータイム) 「けいおん!」(2011年・日本)
Viens Faire Un Tour Sous La Pluie (Il Etait Une Fois) 「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
愛を止めないで (倖田來未) 「セカンドバージン」(2011年・日本)
さよならの夏~コクリコ坂から (手嶌葵) 「コクリコ坂から」(2011年・日本)
▲ベスト活劇=「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011年・アメリカ)
トム・クルーズ嫌いを宣言しているのにまた映画館で観てしまった・・・。正直なところ、トム一人がええかっこしいだった前作よりも、チーム各員の活躍が観られて僕は好き。高所恐怖症の僕には心臓に悪い映画でした・・・はい。理屈抜きに楽しむべし。
▲ベスト恋愛映画=「キッチン~3人のレシピ」(2009年・韓国)
昨年の「四月の雪」に続き2年連続韓国映画。ドロドロしそうな三角関係を題材にしながらも、洗練された演出ですっきりとみせているのがナイス。 人を好きになることって、やっぱり抑えられない感情。それにしてもチュ・ジフン!男性観客も彼には勝てねぇ、と思うこと必至のかっこよさ。
▲ベストコメディ映画=「しあわせの雨傘」(2010年・フランス)
作風が変幻自在のフランソワ・オゾン監督。 置物のように扱われてきた社長夫人が、夫不在となった会社に関わったことから運命の扉が大きく開かれていく。家族それぞれが自分の価値観を主張する人間模様。そのすったもんだが面白い。笑わせてくれながらも、美しき人生について考えさせる秀作。
▲ベストミステリー/サスペンス=「瞳の奥の秘密」(2009年・ スペイン=アルゼンチン)
僕らが目にするのは事件の真相、司法の現場、出来事の裏に隠された現実、そして年月を越えて心に秘められた思い。すべてが明らかになるラストシーンまで、気が抜けない完成度の高い傑作。いつも開け放たれていた扉が閉まるラストで大感激。
▲ベスト人間ドラマ=「ソーシャル・ネットワーク」(2010年・アメリカ)
ネット上のコミュニケーションの場であるSNSという最先端の素材を取り上げながら、実は現実世界のソーシャル・ネットワークを描いた意欲作。人間関係が崩壊していく様は「市民ケーン」のように古典的にみえる。エンドクレジットで使われたビートルズの選曲は絶妙なセンス。