Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

親切なクムジャさん

2013-01-01 | 映画(さ行)

■「親切なクムジャさん/Sympathy For Lady Vengeance」(2005年・韓国)

監督=パク・チャヌク
主演=イ・ヨンエ チェ・ミンシク クォン・イェヨン

ここ数年僕は復讐するヒロインに魅了されっぱなしだ。それは言うまでもなく一昨年の「キル・ビル」から始まっている。そしてタランティーノが審査員長を務めたカンヌ映画祭でパルムドールを獲得した復讐ものの極み「オールド・ボーイ」。荒々しくも美しい映像美と復讐に燃える主人公の一途さに感動した。そのパク・チャムク監督の新作がこれだ。新たなる復讐ヒロインはイ・ヨンエ。僕はTVドラマ「チャングムの誓い」はお気に入りで(というかイ・ヨンエに惚れました)、彼女が血まみれの復讐ヒロインを演ずることに魅力を感じて劇場へ足を運んだのは言うまでもない。「チャングム」だって広義の復讐ものと呼べるしね。

 復讐を遂げたとき、人はどんな表情を見せるのだろう。チェ・ミンシクを被害者家族と寄ってたかって死に至らしめる場面。被害者家族の誰もが、犯人への怒り、被害者の子供を思う悲しみ、どんな形であれ人を手にかけてしまう怖さをありありと表現していた。だが、イ・ヨンエ演ずるクムジャはいたって冷静。だが死体を始末する場面で彼女の感情は再び高まりを見せ、物言わぬ死体に銃弾を撃ち込む。僕はこの後の何とも表現しがたい彼女の表情が目に焼き付いて離れない。それは「キル・ビルvol.2」のラストシーンでユマ・サーマンが見せた泣き笑いを思い出させる。劇中クムジャは「私が天使だとしたら、あの残酷なことをしたときに天使はどこにいたのでしょう」と言うが、あの短いカットの表情に、僕は悪魔が天使に戻ろうとする瞬間を見た気がしたのだ。普通の美人女優なら絶対にしないようなイ・ヨンエの熱演が、クムジャというヒロイン像を激しく増幅させているのだ。

 前作以上に過剰になった映像の遊びもこの映画の魅力でもある。後光が差しているイ・ヨンエには吹き出しそうになったし、痛ましく思える場面にも随所にユーモアが散りばめられている。オープニングの白い粉と赤いソースが血にみたてられるようなデザインは「アメリカン・サイコ」に似ている・・・とも思ったけど。刑務所での数々のエピソードや個性的な受刑者たち。「オールド・ボーイ」を見ているとおおぉ・・・と思える仕掛けもあるからそこも見逃せない。劇場を出た僕は緊張から解放された後の脱力感を感じていたが、何故か不思議な達成感のような気持ちがあった。




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4 コメント

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こんばんは (あん)
2005-12-06 23:11:05
韓流はちょっと・・とおもっていたのですが消しゴムといい、クムジャさんといい韓国映画の底力をかんじますね。Tb失礼します。
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Unknown (tak)
2005-12-08 01:02:21
いわゆる”韓流”ファンは韓国ドラマを見ている人が起こしたブームだと思うのです。それ以前から韓国映画は熱烈なファンがおりました。でも韓国映画好き=韓国TVドラマ好きとは限りませんね。だからあの熱狂ぶりにひいてしまう人いるのです。イ・ヨンエの熱演はとにかく素晴らしかった。
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TB、ありがとうございました (mina)
2006-04-11 22:50:44
後光が射すシーンは、笑っちゃいました。

ケーキに顔を突っ込むシーンも。
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minaさんへ (tak)
2006-04-15 21:22:46
コメントありがとうございます。



刑務所の場面、けっこうコミカルな演出なんですよね。

囚人達が個性あってすごかったですね。
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