ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

キャノンボール・アダレイ/ソフィスティケイテッド・スウィング

2024-05-16 20:53:29 | ジャズ(ハードバップ)

キャノンボールとナットのアダレイ兄弟によるクインテットと言えば、誰もがリヴァーサイド作品を真っ先に思い浮かべると思います。「イン・サンフランシスコ」「ゼム・ダーティ・ブルース」の2作品はファンキー・ジャズの聖典と呼んでいいほどの名盤ですよね。ただ、それ以前のエマーシー時代にも同じようなクインテットを結成していたことはあまり知られていません。メンバーはキャノンボールとナットの兄弟に加え、ベースのサム・ジョーンズもリヴァーサイド時代と同じですが、ピアノにはジュニア・マンス、ドラムにはジミー・コブが起用されています。1957年2月録音の本作を皮切りに、翌年3月録音の「シャープシューターズ」、さらにそれらの中から未発表録音をまとめた「キャノンボール・アンルート」の3作品を発表しています。

内容は基本的にはリヴァーサイド時代と同じくファンキーな曲が中心です。ただ、ピアノがジュニア・マンスなのでボビー・ティモンズのようなゴスペルっぽさはありません。全9曲、うちスタンダードが2曲、オリジナル7曲という構成です。中でもおススメはサム・ジョーンズが作曲した歯切れの良い痛快ハードバップ”Spectacular”。絶好調で高速アドリブを繰り出すキャノンボールに、耳をつんざくばかりのハイトーンを吹き鳴らすナットとアダレイ兄弟の持ち味が全開です。デューク・ピアソン作の”Tribute To Brownie"にも注目。亡きクリフォード・ブラウンに捧げた魅力的な楽曲で、実は本作録音の2日前にキャノンボールがサイドマンで参加した「ヒア・カムズ・ルイ・スミス」でも演奏されています。それ以外だとベーシストのジーン・ライトの曲が3曲含まれているのも見逃せません。演奏自体には参加していませんが、キャノンボールの個人的な友達だったらしいです。この人、黒人でありながらデイヴ・ブルーベックやバディ・デフランコなど白人ジャズマンとの共演が多いので、あまり黒っぽいイメージはありませんが、本作に収録された”Miss Jackie’s Delight""Edie McLin""Cobbweb"と全てソウルフルな曲ばかりなのが面白いです。スタンダード2曲はどちらもバラードで”Spring Is Here"はナットの抜けたキャノンボールのワンホーン、”Stella By Starlight”はキャノンボールもナットもおらず、ジュニア・マンスのピアノトリオです。どちらも出来はまあまあと言ったところ。あくまでアダレイ兄弟のファンキーな演奏を楽しむための作品ですね。

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