ちくしの日記

懲りない女のドタバタ日記。他、いろいろ感じたことをたらたらと。

野蒜(のびる)の思い出/荒尾記史朗さん逝く

2009-05-21 17:09:29 | 雑感
以前撮った個展風景。力強い「生命」と言う文字が今は意味が深い。

    
荒尾記史朗さんの訃報を知らせるメールが友人から届きました。
それも4月に亡くなってあったとのこと、驚くと言うよりも未だに信じられない
でいます。

書家で陶芸家、自称もの作り人の荒尾記史朗さんとは25年以上の付き合い
になります。

彼が書から陶芸の道へと踏み込み始めた頃で、出会いはある茶会だったと
思います。(記憶が曖昧になってきた)
若い男性でお茶をする人なんて珍しく、それも着物を着てひときわ異彩を
放っていました。
とても人懐っこく話しかける人で直ぐに打ち解けて会話をした記憶があります。
その日をキッカケに私たちの長い付き合い(というほど濃くはないけど)が
始まりました。
私たちは福岡市内にある彼のアトリエへお邪魔することを約束しました。

すでに結婚はしてあったけど(子どもが生まれたばかりだったかも)、原団地
近くにあるアトリエ兼住まいは庭付きの民家で借家でした。
しかし、年期が入った借家にも拘らず簾や和紙などを使って工夫を凝らし、
そのセンスの良さがとても印象に残っています。

訪ねていった私たちを待っていたのは、テーブルに用意された彼の手描きの
絵が入った和紙のランチョンマット、その上には桜の花(ボケだったかな?)
の一枝を箸置きにした箸と取り皿がありました。
今ではこういう事は当り前のようですが、その時の私にはとても新鮮でした。

そして彼の器に盛られてでてきたのが近所の野で採ってきた野蒜(のびる)
と本人が調理したしめ鯖、それを肴に少しのお酒を飲みました。
高価なものは何もありませんでしたが、人をもてなすと言うこと、楽しませる
と言うことはこういうことかと、目からうろこが落ちる気分でした。
この時の感激は、今でも強く強く残っています。


その日の帰り際に買った彼の焼いたコーヒー碗です。
取っ手が一度欠けましたが接ぎました。
この頃の作品は歪みがあったり、まだこなれてない感じでしたが勢いがあり
私は好きでした。

その後の記史朗さんは、能古島にアトリエ兼住まいを構え、塀を博多塀にしたり、
民家を自分流に改装してなかなか味があるアトリエでした。


今はない(?)能古島のアトリエの玄関の暖簾。(2006年撮影)
        
       
       
        能古島アトリエ入り口。はこれが博多塀。


魯山人に憧れてた記史朗さん、もの作り人としていろんな活動をしているうち、
能古島では飽き足らず(?)バリ島へ。
数年は能古島とバリ島の半々の生活をされてたようですが、わけあって完全に
バリに移り住むことになり(時々は能古島に帰ってきたそうでしたけど)、
2006年11月の最後の個展にも行きました。
この日は、最後ということもあってかいつになくやさしく気を配ってくれました。
その個展の別れ際に、バリにも遊びに行きますねと言ったけど約束は果たせぬ
まま、バリよりももっと遠い国へ逝ってしまいました。

やりたいことはまだまだ沢山あったでしょう。

でも、門外漢として原の借家から、能古島、バリ島へと、常に前向きで
自分のやりたいことの為に突き進んでいった荒尾さんにきっと悔いはないと
思います。

もうあの笑顔には会えないけど、書や器、いくつもの作品が手元に残りました。
記史朗さん、大事にしますね。

心よりご冥福をお祈りいたします。
                                   
                                     合掌



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3 コメント

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素敵な日記をありがとうございます。 (若林忠宏)
2010-08-22 22:22:00
今、「何故東京から福岡に来たのか?」を本にしないか?
と言われて原稿に書いています。
拝読し、改めて感動した、記史朗さんの「散鯰堂」の写真、「個展」の写真を拝借したいのです。

ご連絡を頂けたら幸いです。
宜しくお願いします。
はじめまして。 (waki)
2010-08-23 01:07:21
ありがとうございます。
若林様、この写真で良ければどうぞご利用ください。

Unknown (ASAMI)
2023-02-20 23:04:02
突然に、コメントすみません。
荒尾記史朗さんのことを探してましたら、
この日記にたどりつきました。
だいぶ前のブログですが、今でも繋がってますでしょうか?
荒尾さんのことをお聞きいたしたいのですが、
連絡いただけましたら有難いです。
どうか、宜しくお願い致します。

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