ジェームズ・トニーは、自分が大好きなボクサーだ。
ミドル、スーパーミドル、クルーザー級を制したが、全盛期は
ミドルとスーパーミドル級の時だったと思う。
ミドル級タイトルは、当時安定感抜群のマイケル・ナンを倒して取った。
マイケル・ナンは、長身のサウスポーの技巧派ボクサータイプだがパンチは軽くない。
打ち下し気味に打つパンチは重そうで、左一発で相手を倒したこともある。
ナンはタイトルを取った試合も含めて苦戦らしい苦戦をしなかったと思う。
試合は序盤からハイレベルな攻防が始まる。
トニーはパンチをよけるのが上手く、ナンはなかなか当てられない。
そしてトニーのシャープな右ストレートをナンはたまに食らっていた。
パンチを当てるのに苦労するナンもパンチをもらうナンも初めて見た。
それでも試合が進むにつれナンのパンチもトニーをとらえ始める。
この少し前からナンのセコンドに名将アンジェロ・ダンディがつき「バランスが良くなり
連打ができるようになった」とナン本人も言っていた。
トニーはボディバランスが良く、天才的にボディワークが上手いがかわしきれない。
中盤以降どちらかと言うとトニーの方が疲労の色が濃かったと思う。
おそらくポイントも大差こそないがナンが上回っていたと思う。
このままアウトボックスすればナンが勝つだろうという感じだった。
運命の11ラウンド。
このラウンドが始まる前、ナンはセコンドのダンディに「3発打って離れろ」みたいな
ことを言われていた。
しかしナンは捨て身でくるトニーと打ち合ってしまう。
そしてトニーの大ぶりの左フックをまともに顎に食らう。
なんとか立ち上がったがダメージは大きくすでに勝負は決していた。
難攻不落と言われていたナンはこうしてタイトルを失う。
替わりにトニーが絶対王者として暫く君臨することになった。