暑い! 蒸し暑い!
俺は女房に、道の駅でソフトクリームを食べてこようと誘った。
しかし、女房はソフトクリームはカロリーが高いから嫌だと言う。
かき氷なら栄養がないから、食べても良いと言うのだ
女房はダイエットをしているようだが、一向に効果が上がっていない様子だ。
俺はかき氷を扱っている店を知らない。
女房は、K 珈琲店には、かき氷があると言う。
かき氷なら、食べても太らないから良いと言うのだ。
俺は昔、かき氷を食べたことを思いだした。
器はガラスのお皿に、一本足のスタンドがついているような形をしていた。
これに、手回しのかき氷機で四角い透明な氷を削る。
そして、イチゴやメロンのシロップをかけるのだ。
なつかしいなあ。
俺は女房とクルマで K 珈琲店へ出かけた。
そして、かき氷のメニューを見た。
俺がイメージしていたかき氷はない。
かき氷に小倉アンやソフトクリームなどが、どっさりと盛り付けてあるのだ。
しかも、量が多すぎる。
これではダイエットにならない。
俺は余計なものをトッピングしていない、ただのイチゴのかき氷を選んだ。
女房は抹茶のかき氷で、上に何ものせていないものが良いと言う。
しかも、普通サイズでなく、ミニが良いと言う。
だいぶ、ダイエットに気を使っているようだ。
女房はウエイトレスを呼んで、メニューカードを指さしながら注文していた。
かき氷が運ばれてきたのを見て、肝を冷やした。
直径が手の指をいっぱいに広げて、親指の先から小指の先までもある深鉢に、かき氷が山盛りになっているのだ。
そればかりではない、女房は確か、抹茶のミニと言っていたのに、注文したときに普通サイズに変更していた。
しかも、小倉アンをトッピングし、栄養価の高いミルクをかけているのだ。
俺は、女房に小言を言った。
これではダイエットにならないだろう、と。
すると女房は近くの席のカップルを指さした。
その女性のかき氷には、さらに、ソフトクリームがどっさりトッピングされている。
女房はすまして言う。 私はソフトクリームのトッピングを遠慮したのです、と。
また、体重が増えるだろうなあ。
体重計に乗ってから、嘆き悲しむことだろう。
食べてみた。
昔のかき氷の触感とは違う。
シャリシャリとした感じではない。
氷が柔らかいのだ。 特殊な加工をしているのか。
それに、甘ったるい。 超、甘すぎる。
俺は昔ながらのかき氷がいいなあ。
ついたてでへだてた隣の席から、うるさいおしゃべりが聞こえる。
ちょっとのぞいてみたら、8人席に9人のおばさんたちが、声だかに話しているのだ。
各自が同時に声を上げているようなので、何を話しているか分からない。
おしゃべりというより騒音だ。
氷を食べたのに、騒音で余計暑苦しくなった。
しかし、女房は平然としている。
女房がよくやる女子会も、隣のおばさんたちと同じような騒音を、巻き散らかしてくることなのだろう。
近くのカップルを、ちらっと横目で見たら二人とも静かにしている。
喫茶店で何も話さず、見つめあうこともなく、下を向いている。
二人とも、下を向いてスマホを指でなでている。
おばさんたちの騒音には、ちっとも苦にならないようだ。
スマホに夢中になって、騒音は聞こえないらしい。
延々と、声だかのおしゃべり騒音が続く。
俺はかき氷を食べたのに、余計、暑苦しくなった。
さて、早く家に帰って、冷やした麦茶を飲むことにしようか。