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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

2013年の劇場鑑賞映画MYベストテン

2014-01-04 22:13:33 | 私の映画年間ベスト
ベストテンを挙げることができるほど映画を観ていないのですが…私の恒例行事でありますし、無理矢理でもなんでもMyベストテンとして発表したいと思います。
ただし「ゼログラビティ」と「かぐや姫の物語」をこれから観るつもりなので、後で加筆して順位が変わるかもしれません。あしからず。


2013年の劇場鑑賞映画マイベスト10

1位『風立ちぬ』 宮崎駿
2位『リンカーン』 スティーブン・スピルバーグ
3位『ばしゃ馬さんとビッグマウス』 吉田恵輔
4位『戦争と一人の女』 井上淳一
5位『砂漠でサーモンフィッシング』 ラッセ・ハルストレム
6位『愛、アムール』 ミヒャエル・ハネケ
7位『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』 アン・リー
8位『パシフィック・リム』 ギジェルモ・デル・トロ
9位『そして父になる』 是枝裕和
10位『アルゴ』 ベン・アフレック

別格『秋のソナタ』 イングマール・ベルイマン



解説
10位『アルゴ』(ベン・アフレック)

正直…アカデミー作品賞にしてはうすーい映画だなぁというか、1時間くらいの短編にまとめたらもっと面白くなる気がした。
クライマックスは編集で強引に盛り上げたけどやってることは大したこと無い。
それでも、ハリウッドでニセ映画をでっちあげる前半部分はすごく面白い。

9位『そして父になる』(是枝裕和)

さすが是枝監督。はずさない面白さ…しかしゼロ年代の作品群と比べちゃうと何か薄味になったような気がした。
「もうミッションなんて終りだ」

8位『パシフィック・リム』(ギジェルモ・デル・トロ)

俺たちのオタク監督ギジェルモ・デル・トロのぶっとび怪獣映画。中盤の香港市街地での怪獣フルボッコバトルは最高。音楽もいい。
けど怪獣好きとしては色々文句もありますよ。
怪獣のデザインをしっかり見せんかい
クライマックスのなーんにもない海底で延々繰り広げられるバトルは苦痛なくらい退屈
エンドロール後の「怪獣マイスター レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」はすごくグッと来たし本多リスペクトはもちろん嬉しいんだけど、でもやっぱりハリーハウゼンと並べるなら本多じゃなくて円谷英二だと思う

7位『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(アン・リー)

すっげー面白かった…のだけど、やっぱ俺の好きなアン・リーではないと思ったので「グリーン・デスティニー」と同様にすごく面白いけど熱く支持はしないアン・リー映画とする。CGだらけの映画はちょい冷めるというか、肉欲情欲のアン・リーの方が好きだなぁ
しかし主人公のパイ君を演じたスラージ・シャルマ君の名演はもっと評価されていいと思う。
ちょい役すぎるジェラール・ドパルデュー…おかげであのコックのこと忘れないで最後のオチの効果が強まったかもしれないけど、いちおフランスを代表する名優ですよね

6位『愛、アムール』(ミヒャエル・ハネケ)

近年めずらしい難解芸術作家のハネケ先生が描く老夫婦の愛の形。なぜ?なぜ?と問いたくなる夫の行動だが、妻を演じたエマニュエル・リヴァのアップショットの美しさに魅せられ物語的な不可解さが気にならない。夫婦の姿だけで映画になっている。

5位『砂漠でサーモンフィッシング』(ラッセ・ハルストレム)

5位!ってほどすごい映画ではないのだけど、何か映画のお手本のように思えて、自分の映画の構成を考える際の参考にさせてもらったというかなんというか…
オープニングのつかみ方、話の進め方、伏線の張り方…素晴らしいと思う。
大スターのはずなのにまだ近所の気さくな兄ちゃん感の漂うユアン・マクレガーって役者はすごいと思う。でもフライ・フィッシングで殺し屋を撃退するシーンのときだけジェダイの騎士の目をしていた!
戦死したと思っていたヒロインの彼氏に死んでりゃよかったのにという本音すぎる本音をはいて失笑を買う姿も似合うユアンさんに敬意を表して5位に

4位『戦争と一人の女』(井上淳一)

今回1位にした「風立ちぬ」を大嫌いな人たちが作った映画であって、こんなランキングでいいのか?と思うところもあるけれど、どっちも面白かったんだからいいじゃないか。
戦争をする国ってのは絶対どっか狂っていると思う。自虐史観だなんだと言うライト寄りの方々はこの映画嫌いなんだろうけど、今も昔も戦時中のあの頃も日本と日本人はずっと美しいかったなんて私には思えない。この映画は、あの頃の日本は腐っていてその腐った時代の遺伝子が今の我々に受け継がれているって強烈なメッセージを放つ。政治的外交的にそれでいいかどうかはおいといて、少なくとも映画としては成功している。怨念のようなものをフィルムに刻み付けて強い力を持たせている。
村上淳さんは今年の私的主演男優賞です。最後の台詞は今年もっとも心に響いた台詞です。「天皇陛下万歳!!」

3位『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(吉田恵輔)

今年唯一の涙がこぼれた映画。うそのようにボロボロ泣いた。
泣ける=名作、という考え方は嫌いなので、あまり人には勧めない映画。
それにこれを観る前日に2次面接までいった会社から不採用の通知をもらって気持ちが相当落ちていたことも、泣いた理由に大きく関係していると思う。
けれども、脚本家を目指して頑張り続けているうちにいい歳になってしまい「あきらめるタイミングがわからなかった」というヒロインの姿は、あまりにたやすく自分の姿を重ねあわせることができた。才能は無いが夢はある者たち、負け組たちの姿は愛おしい。しかし涙は夢をあきらめない惨めさに流したのではなく、あきらめていれば手にしたかもしれない普通の幸せな自分に流した。映画を作り続ける決意を込めた涙だった。
結局夢をあきらめたヒロイン。でも絶対に彼女のラストの台詞「なんかふっきれたんだよね」は嘘だと思う。そう信じたい。彼女は実家に帰ってからも脚本を書くと思う。書いて欲しい。書け。

2位『リンカーン』(スティーブン・スピルバーグ)
1位『風立ちぬ』(宮崎駿)


それで映画通を気取っておきながら1位宮崎駿、2位スピルバーグってちょっと恥ずかしい気もするけど、でもやはりこれしかない。
映画界のリビングレジェンドのお二人の久々の力作・傑作に心から酔いしれた。
スピルバーグは「ターミナル」「宇宙戦争」は大好きだけど、その後は特にどうということもない映画を作っていたし、宮崎駿も「千と千尋~」はすごい好きだけど、その後の2作はただただ退屈だったわけで、そんな2人が持てる力をこれでもかと注ぎ込んだ復活の傑作を同じ年に発表する奇跡。
特に宮崎駿監督はとんでもない境地に達したように思えた。晩年の黒澤映画のような美を感じた。最高傑作ではないかもしれないけど、個人的にはジブリ映画で一番感動した。

スピルバーグのだましのテクニック。好きな戦闘シーンを封印して議会だけで話を運ぶ危険な賭けともいえる内容ながら、饒舌なリンカーンのキャラクターが愛らしすぎてどんどん物語に引き込まれていく。ヤヌス・カミンスキーの撮影もジョン・ウィリアムズの音楽も完璧にきまっている。ラストシーン、歴史的な役割を全て果たした男の安らかな死に顔。それをするために生まれてきたかのような死に際。暗殺シーンをあえて外した理由がわかる。あの余韻を作るためだ。
どうでもいいけどリンカーンの命日と私の誕生日が一緒だった。

ラストの余韻といえば「風立ちぬ」も素晴らしい。「一機も帰ってきませんでした」あの台詞。ずしりと重い。彼の場合はリンカーンと違って歴史的な偉業を成し遂げたわけではなく、純粋に技術者として自分の仕事を突き詰めていき、そしてやり切った充実感。だが生まれた時代の不幸。彼の作った零戦で散っていった多くの命の重みを持たせるあのラスト。写っていないものが見える瞬間、スクリーンが大きく膨らんでくるような錯覚を覚える。そんな映画で最も魅力的な瞬間をスピルバーグと宮崎の両巨匠は確かに描いていた。


別格1位『秋のソナタ』(イングマール・ベルイマン)

しかし今年本当に一番感動したのは断トツでベルイマンの1978年の作品「秋のソナタ」だった。
この映画ビデオも持っていてすでに何度も観たのだけど、スクリーンでは初めて。そうしたら初見のような感動と興奮を味わった。
だからといってこれを1位なんてしちゃうと今後小津や黒澤やヒッチコックのリバイバル観るたびにそれを1位にしなきゃならなくなるので、別格扱いとした。
この映画何がすごいって、イングリッド・バーグマンとリブ・ウルマンの2人の演技が凄すぎること。いってみれば娘が母親に過去の恨みつらみをぶちまけるというそれだけの映画なんだけど、それだけにも関わらずそこには女2人の、母と娘の様々な情念のオーラが漂いまくり、たった2時間で2人の人生の全てを観てしまったような気にさせる強烈なエネルギー。
クローズアップばかりのショットだけどカット入れずに撮りきるから、緊張感も半端ない。張りつめた雰囲気をカメラや美術やあらゆるもので演出している。映画の底知れない力を見せつけられた。

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勝手に個人賞
監督賞 宮崎駿(風立ちぬ) / スティーブン・スピルバーグ(リンカーン)
女優賞 麻生久美子(ばしゃ馬さんとビッグマウス) / エマニュエル・リヴァ(愛、アムール)
男優賞 村上淳(戦争と一人の女) / スラージ・シャルマ(ライフ・オブ・パイ)


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さらに短編映画というか自主映画では
小野寺たまこの初恋(杉目七瀬)
隕石とインポテンツ(佐々木想)
やわ(佐藤絢美)
Wild Nights Next 放たれた八極拳 (佐藤広一)

などが素晴らしかったです。

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ついでにワースト
ワーストと言えるほど酷い映画には当たりませんでした…と言えれば一番いいのだけど
タランティーノの「ジャンゴ繋がれざる者」はひどかった。
珍しくタランティーノ映画に変に期待して観に行ったのに、ディカプリオが登場してから死ぬまでの長い長い面白いことが何一つ起こらないあの展開に、ついつい眠気をおぼえてしまった。
やっぱりタランティーノのくっちゃべり映画はダメだ。どうしてものれない。
あんなんでアカデミー脚本賞かい?おいおい、ハリウッドのレベル疑っちゃうよ
ちなみにタランティーノで一番好きなの「デス・プルーフ」、まあまあ面白かったの「イングロリアス・バスターズ」と「フォールームス」の第四話。あと全部嫌い、つまんない。
相性の悪い監督ってどうしてもいるんだよね~

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そんなこんなで2013年も沢山の素晴らしい映画と出会うことができました。
今年も素晴らしい映画と出会うことでしょう。
また映画で会いましょう。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
自主映画撮ってます。ALIQOUI FILMのHP
ALIQOUI FILM第一回作品「チクタクレス」
日本芸術センター映像グランプリノミネート


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3 コメント

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Unknown (デイヴィッド・ギルモア)
2014-01-05 18:40:42
明けましておめでとうございます。

「秋のソナタ」は昔、見た記憶があり、かなり難解だった印象があります。でも今度ビデオで見直してみたいと思います。

ベルイマン作品で好きなのは「第七の封印」や、「処女の泉」「夏の遊び」「ファニーとアレクサンドル」などです。
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コメントありがとうございます (しん)
2014-01-08 07:51:52
デイビッド・ギルモア様
明けましておめでとうございます。
『秋のソナタ』は『第七の封印』に比べたら相当わかりやすい映画だと思いますよ。
『ファニーと~』いいですね! 5時間って冗談みたいな長さですけど、楽しめました。
私の好きなベルイマンは「鏡の中にある如く」「野いちご」「叫びとささやき」です。
返信する
でけたで~ (aq99)
2014-01-10 20:19:19
いつものやつでけました。
駿とスピの1、2位。いいじゃん!好きなものは好きなんだしね~。私もその姿勢で続けています。
かぐや姫、未見なんですね。修正ベスト10になったらポイント反映させたろかと思います(嘘やけど)。
今年もよろしく~。
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