京都が好き 写真が大好き by たにんこ

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聞こえないものまで 
聞こえてくるんだな

光と影~東寺で生きていた猫たち 6月22日の家族

2022年09月14日 12時33分08秒 | Weblog





6月22日の明け方に目が覚めた。
急に目が覚めた。
分かっていた。
遠雷が鳴っている。
おれは雷が鳴る数秒前に 体が反応する。
雷は段々と近づいて来た。
ヘッドホンを付け 頭から布団を被って二度寝した。
昼過ぎに階下へ降りたら おんちゃんがお茶を飲んでいた。
相変わらず雷鳴が酷い。
体が勝手に身支度を始めた。
おんちゃんが「何処に行くんだよ…雷が酷いんだぞ!」と。
目的は東寺だ。
使命感?
義務感?
違うんだ 体が勝手に…
コンデジをポッケに仕舞い込み 出かけた。
後ろでおんちゃんが「バカ!行くなって!止めろって!」叫んでる。
小走りで 急いで行く。
東寺には誰も居ない。
爆発でもしてるかのように 雷が頭上で叫んでる。
胸騒ぎが急激にやって来た。
八島殿に駆け込んだ。
何故か勝手に…正面の…昨日白い子猫が落ちた場所に。
心臓が昂って どうしようもない。
一枚目の写真…有刺鉄線の真ん中辺りを見てくれ。
ぼやけているが 白い何かが。
葉っぱを退けて見たら…
白い子猫が 手の平大の水溜まりで横たわっていた。
お前が呼んでたのか?
辛くて 苦しくて おれを呼んだのか?
おれは「ちゃんと御墓を造ってやるから」と 語りかけ
なり振り構わず 有刺鉄線の中に手を突っ込んだ。
皮膚が裂ける感覚が来た。
夢中だったんだ。
水溜まりから出して 着ているシャツで体を拭いていると…
子猫は微かに痙攣してる。
驚いた!
生きろ!向こうに行くな! 叫びながら体を擦った。
にゅ~~~にゅ~~~と鳴き 息を吹き返した。
石段を見ると 何時の間にか母親と息子が びしょ濡れでおれを見ている。
おれは安堵して へたり込んでしまった。
母親と息子の所へ おれは子猫を戻した。 
傘をあげた。
おれはへたり込んだまま 雨に濡れながらそこに居た。
子猫達二人は 夢中でお乳を飲み始めた。
おれは一体 何を考えてるんだ?
数分?数十分?胡坐をかいたまま じっと見つめてたんだ。
雨で目がかすみ 拭うと母親は居なく 子猫が二人蹲って泣いてる。
おれを見つめながら泣いてるんだ。
おれは立ち上がり 小走りで家に帰った。
帰る途中 懐を見ると 子猫二人が居るんだ。
自問自答してた。
何故だ…何故二人を おれは懐に入れたんだ?
家に戻り 自分の座る場所に座った。
おんちゃんが何か叫んでる。
顔をくしゃくしゃにして 笑顔で叫んでる。
子猫二人を タオルで拭いてやった。
二人はすやすやと おれの懐で寝てしまった。
これで良いんだよ。
これで良いんだよな。

番外編
おれは猫について 偉そうな事を言うつもりはサラサラ無い。
タレントやアイドル達や 一般人も含め 間違って動画やらを配信してるのには
疑問を感じるし 何言ってるんだ! と 思う事が多すぎる。
「この子と一緒に…」「このニャンコと家族に…」と 言う。
「ニャンコに餌をやらないと…」と。
逆に聞くが 人間の家族に「餌食ったの?」とか言うか?
そして「出かけるから待ってて」と言い 出かける。
人間の…ハイハイしてる幼児に「待っててね」とか言って 置き去りか?
それもこれも 人の勝手か…

おれが生まれる前から ニャンコが居たと言う。
田舎町の それはそれは小さい 吹けば飛ぶような旅館の息子に生まれた。
何十年もニャンコと一緒に 生活をしていた。
幼少の時から親父は「猫は家族だ 分かったな!」と言われ 育った。
おれはニャンコの御飯係だった。
「あっ!猫に餌をやるの忘れた!」と言った時 目の前が真っ暗になった。
親父にぶん殴られたからだった。
おれが気が付いて起きた時に「貴様!今度餌と言ったら この家から出て行け!」
そんな事を言われ 育ってきた。
そしてニャンコの御飯は これでもか!って言うくらい バカな量を出していた。
当然残す。
朝昼晩とバカな量を出し 残ったご飯は 次に出す御飯の寸前に捨てちゃう。
小さいながらも おれは「何で?一杯残すのに 何でこんな量を…」
それは 小学3年の時に分かった。
初代み~が 家出した。
何週間も何カ月も 帰って来なかった。
その間 親父や御袋や従業員達までもが「御飯は?ニャンコの御飯は?あげたの?」
そう言われた。
バカバカしいと思いながらも 御飯と水を朝昼晩と 目一杯お茶碗に入れてあげてた。
ある日の夕方 皆で夕ご飯を食べてる時に おれは体全身が震えてしまった。
外は雷鳴が轟き どしゃ降りだった。
「み~が帰って来た!」と 叫んだんだ。
直ぐ後ろの調理場に 親父や御袋が「馬鹿な事言うな!座って御飯を…」と 怒鳴るのを無視して
み~のお茶碗の前に 座り込んじゃった。
すると「ひゃ~~~ひゃ~~~…」と 微かな鳴き声が 目の前の裏戸から聞こえる。
急いで裏戸を開けると 骨と皮だけになって 瘦せ細ったみ~が 雨に濡れながら
きちんとお座りし 今にも倒れそうにフラフラしながら座ってる。
「み~だ!お父ちゃん み~が帰って来た!」泣きながら怒鳴っていた。
後ろで「何で???…」と聞こえる。
その時 生まれて初めて 後にも先にも親父の涙を見た。
おれは抱きかかえて 水と御飯が入ったお茶碗の前に み~をそっと置いた。
親父とお袋は「御飯を一杯上げるとな ニャンコはそれを忘れないんだ。
御飯を一杯食べられるから 忘れないで帰って来れるんだよ」
親父はみ~を撫でながら そうおれに教えてくれた。
み~は茶トラだった。
そしてもう一人のニャンコは 真っ白な玉と言うニャンコだった。
おれが東寺から連れ帰った二人は…偶然なんだろうか…


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