解雇・退職110番

解雇・退職トラブルの知識!知っていて良かった~!
by 竹林社会保険労務士事務所

解雇-解雇予告(労基法20条)-

2004-11-25 22:15:53 | 解雇の知識

【解雇予告】
 いよいよ解雇予告、労基法第20条です。労基法の中で一番有名な条文ではないかと思いますが、書いているのは簡単なことです。

(解雇の予告)
第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

①解雇が有効であるとした前提の上で、解雇をするときは少なくとも30日以上前に予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければならない。
②天災などやむを得ないときや懲戒解雇に該当するようなときは即時解雇ができるが、このときは労働基準監督署長の認定が必要。
③なお、解雇予告手当を払ったときは払った日数分予告期間を短縮することができる。
ということです。

 ここで重要なのは、②のときです。法律には労働者の責に帰すべき事由とありますが、私は②に懲戒解雇と書きました。しかしこれはわかりやすくと思ってそう表わしただけで、懲戒解雇だから即時解雇ができるというものではありません。あくまでも労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けてはじめて即時解雇が可能になるのです。
なお、解雇予告除外認定は「労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況などを考慮の上、総合的に判断すべきであり・・・(後略)」(昭和23年2月2日・基発1637号、昭和31年3月1日・基発111号)とされていて、懲戒解雇し、監督署に届けたら認定されるというものではありません。
この認定を受けるためには「解雇予告をすることと解雇事由とを比較したとき、予告期間を設けることが軽すぎる」ということを証明しなければなりません(これが大変な作業です)。

 ですから就業規則に懲戒事由があって、それに該当しても認定が受けられないときは即時解雇できないのです。
例えば、懲戒事由に「14日以上引き続き無断欠勤をしたとき」との規定があったとします。しかし、解雇予告除外認定を受けるためにはこれに「出勤の督促に応じず」というものが必要になります。ですから、出勤するよう督促していなければ解雇予告除外認定は受けられません。

 なお即時解雇をして、後になって解雇予告除外認定の確認をしたときは「解雇の効力は使用者が即時解雇の意思を表示した日に発生する。」(昭和63年3月14日・基発150号)のですが、認定が受けられないときは30日分の平均賃金について休業手当を支払うことになります。


【まとめ】
(1)解雇をするときは少なくとも30日以上前に予告するか、30日分の平均賃金を支払わなければなりません。
(2)解雇予告手当を払ったときは払った日数分予告期間を短縮することができます。
(3)天災などやむを得ないときや懲戒解雇に該当するようなときであって労働基準監督署長の認定を受けたときは即時解雇ができます。
(4)懲戒解雇だから即時解雇できるというわけではありません。会社の懲戒事由に該当していても認定を受けなければ(得られなければ)解雇予告手当の支払いが必要になります。


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解雇-解雇制限(労基法19条)-

2004-11-23 18:30:37 | 解雇の知識

【解雇制限】
 今回は解雇制限について進めます。文中に「解雇できる」といった表現が出てきますが、第18条の2の解雇要件をクリアしていることを前提として話を進めます。

(解雇制限)
第19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。
 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

労基法第19条1項では、以下に該当するときは解雇してはいけないと、一定の制限をかけています。
①労災事故によって負傷したり疾病にかかったため休業する間と、復職して30日未満の者
②産前産後休暇中および復職して30日未満の者
また同条2項では
③療養開始から3年後に打切補償(労災法の規定により療養開始から3年後に傷病補償年金を受けているか3年経過以後に傷病補償年金を受けることになったときを含む)をしたとき
④火災、震災など天災に準ずる程度の不可抗力に基づき事業の継続が不可能になったとき(労働基準監督署長の認定が必要)は、同条1項の規定に関わらず、解雇してもよいとしているのです。

 第19条1項と2項は原則と例外の関係ですが、判断には原則と例外が多くて非常にわかりにくくなっています。
例えば一定の期間または一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を結んでいる人が、労災事故に遭って療養休職したとします。その休職期間中に契約期限が到来したときは、期間満了による契約解除ですから解雇ではなく、そのため第19条の規定に関係なく雇用関係を終了させることができます。
しかしまた例外があって、この人との労働契約が何度か反復更新されてきたようなときは、労働者が継続雇用を期待するため解雇として扱われることになり、第19条の規定によって制限期間中は解雇することができなくなるのです。

 また、同条2項では天災事変により事業継続が不可能になったときと言っていますが、経営難による事業廃止のときも実務上は認定され、解雇できることになります。そしてまた例外ですが、事業の経営主体が変わっても事業が包括的に承継されるときは労働関係が継続しているとみなされ、解雇制限を受けることになります。

 ・・・難しいでしょう?解雇制限を受けるかどうか判断に悩むときは、監督署に相談してからにしてください。なお、労基法上の解雇制限以外にも男女雇用機会均等法や労働組合法等でも解雇できないときが定められていますので、ご注意ください。


【まとめ】
(1)労災により休職中の者や産前産後休暇中の者、及び復職して30日以内の者は解雇できません。
(2)上記であっても、打切補償をしたときや天災などによって事業の継続が不可能になったときは解雇することができます。
(3)例外が多数存在するので、判断に悩むときは労働基準監督署に相談してください。
(4)解雇制限は労基法以外の労働法にも定めがあります。


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解雇-解雇(労基法18条の2)-

2004-11-23 11:44:27 | 解雇の知識

【解雇】
 いよいよ労働基準法の条文に入ります。労基法には第18条の2「解雇」、第19条「解雇制限」、第20条「解雇予告」、第21条「解雇予告の適用除外」、第22条2項「解雇理由証明書」が定められています。今回から一つづつ各条文をみてゆきたいと思います。

(解雇)
第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 2004年1月から労基法に加わった条文です。立法の趣旨について通達では以下のように述べています。
「解雇が労働者に与える影響の重大性や、解雇に関する紛争が増大している現状にかんがみ、解雇に関するルールをあらかじめ明確にすることにより、解雇に際して発生するトラブルを防止し、その解決を図ることを目的として、最高裁判所判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を法律に明記することとした。」(平成15年10月22日 基発1022001号)

 難しい言葉が並びますが、結局、今までは解雇に関するルールが労基法上になく、30日前までに予告すればいつでも解雇できるといった間違った解釈を与え、そのためにトラブルが増えてきたので裁判所の解雇に関する考え方を法律に加えたということでしょう。
この条文ができたことによって解雇しづらくなったと言われる方がおられますが、実務上は何ら変わりありませんし罰則も定められてはいません(解雇しづらいのは元々です)。この条文は注意信号くらいに考えておけば良いと思います。
※解雇権濫用法理についてはこちらをご参照ください。

 なお、先の通達では「本法における解雇ルールの策定については(中略)使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではない。」としていますし、「同条の規定に基づき解雇の効力を争う事案については、法104条第1項に定める申告の対象とはならない。」と、労基法違反としての申告対象にはならないと明確に述べています。
労働問題=労働基準監督署と考えてしまいがちですが、解雇の効力を争う事案は監督署では取り締まれませんのでご注意ください。


【まとめ】
(1)労基法に第18条の2が追加されましたが、実務上は従来と変化はありません。
(2)解雇の効力を争うときは使用者側に不当解雇でないことを立証する義務があります。
(3)解雇の効力を争う事案は労基法違反の申告対象外であり民事上の争いとなります。解決は、裁判や裁判外紛争処理機関で図ることになります。


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辞職-就業規則と民法の関係-

2004-11-23 01:21:08 | 辞職の知識

【就業規則と民法はどちらが優先する?】
 就業規則に「自己都合退職のときは退職予定日の1ヶ月以上前に退職願を提出すること」といった定めをしているケースは多いと思いますが、これは有効なのでしょうか?

 「民法の規定は任意法規と解されているため、労働契約や就業規則で民法と異なる定めをした場合にはその定めが優先するが、それが極端に長いときは退職の自由を制限するため、民法90条違反(公序良俗違反)として無効となる」という説がありますが、高野メリヤス事件では「就業規則の規定は、予告期間の点につき、民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効だと解すべく、その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。」と、民法627条は強行法規だと解釈しています。
ここでは後者の強行法規ということを前提に考えてゆきたいと思います。

 前回に見たとおり、時間給制社員や日給制社員の場合は、民法第627条1項により申し入れから2週間後に自動的に雇用契約を終了させることができますし、退職願も不要です。(但し、後々言った言わないのトラブルを避けるためにも退職願は提出するべきでしょう。)

 それでは月給制社員の場合はどうなるのでしょうか?
賃金計算期間の前半に申し入れたときはその期の末日、後半に申し入れたときは翌期の末日というのは今まで見たとおりです。しかし、前半のときは申し入れから最短15日程度で退職することになりますし、後半のときは最長45日程度になります。
このようなときは先の判例にあるように「民法第627条に抵触しない範囲でのみ有効」なのですから、前半に申し入れたときは民法が優先し、後半に申し入れたときは就業規則が優先することになります。

 もっともこれらは辞職、つまり労働者が一方的に契約を解除するときのことであって、合意退職(合意解約)の場合は「1ヶ月前に退職願を提出すること」と定めることに特に問題はないと思われます。
但しその期間が世間一般常識から言って長すぎるときは「退職3ヶ月前までに退職届の提出を義務づける規定は、退職の自由に反し無効」としたプラスエンジニアリング事件がありますので、合意退職であっても1ヶ月くらいが相場と思われます。


【まとめ】
(1)就業規則の条項とと民法627条が異なるときは、民法627条に抵触しない範囲において就業規則は有効になる。
(2)合意退職の場合は予告期間を1ヶ月程度に定めるのが相当。

【参考判例】
ID=00425(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ高野メリヤス事件(東京地裁・昭和51年10月29日・判決)

ID=07803(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へプラスエンジニアリング事件(東京地裁・平成13年9月10日・判決)


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辞職-民法との関係-

2004-11-22 22:14:03 | 辞職の知識

【合意退職と辞職】
 まず知っておいていただきたいのは「辞職」と「合意退職」は違うということです。
「合意退職(合意解約)」は労働者が契約の解除を会社に申し入れ、会社がそれに応じることによって雇用契約が終了することを言います。
「辞職」は労働者が一方的に契約を解除することで、会社の承認や合意を待たずに民法の定めにより雇用契約が終了することを言います。

【辞職と民法の関係】
 さて、「解雇-民法との関係-」のまとめで(1)解雇の手続は民法でなく労働基準法の定めに従います。(2)労基法に定めがないこと(損害賠償など)は民法に戻って判断します。と書きましたが、辞職の場合はどうでしょう。

 まず、労働基準法上に辞職について記載がないか調べてみると、同法第15条2項に「明示された労働条件と事実が相違するときは、労働者は即時労働契約を解除することができる」と書いてあります。
※労働契約は雇用契約の中に含まれますので、ここでは雇用契約として話を進めてゆきます。

 雇用契約を結ぶときに労働条件を会社は提示することになりますが、その労働条件と実際の労働条件が異なるときは、労働者はいつでも辞職可能ということです。なお、ここで言っているのは、雇用契約を結ぶときに提示された労働条件との相違であって、求人広告などに載っている労働条件との相違を言うのではありませんので、ご注意ください。

 その他には労働者からの辞職に関する定めはありませんから、ここで民法に戻ることになります。民法では第627条と628条が雇用契約の解約に関する条文です。
(1)第627条1項では解約の申し入れをして2週間すれば自動的に雇用契約は終了するとなっています。
(2)同2項では、月給制社員の場合、賃金計算期間の前半と後半で扱いが違ってきます。
(3)同3項は年棒制など半年以上の期間で賃金を決めたときですが、ここでは割愛します。
(4)そして、第628条では有期雇用契約の場合は(627条を満たした上で)いつでも雇用契約を解約できるけれども、どちらかに債務不履行の過失があったときは損害賠償の責任を負うことになっています。
辞職では、時間給や日給の場合は(1)、月給の場合は(2)、有期雇用契約のときは(3)が適用されます。

 ここで注意が必要なのは(2)です。当期の前半に申し入れをしたときは翌期の初日に雇用関係がなくなりますので、その前日、つまり当期の末日が退職日になります。
次に、当期の後半に申し入れをしたときですが、このときは翌々期の初日に雇用関係がなくなりますので、その前日である翌期の末日が退職日になります。
11月15日に申し入れをしたときは11月30日が退職日で、11月16日に申し入れをしたときは12月31日が退職日ということです。

 この他に就業規則との関係がありますが、これについては次回触れたいと思います。ここで初めて合意退職が出てきますので、次回をお楽しみに!

 なお、民法第628条によって有期雇用契約の労働者が辞職したとき、労働者に損害賠償責任が発生するかという問題がありますが、多くの場合、会社がどれだけの損害を被るかを証明することは難しいと思われますし、証明できたとしても訴訟費用など割があわないため、実際に労働者が損害賠償責任を追及されることは殆どないと思います。また、パートタイマーに適用される就業規則に自己都合退職が定められていれば、その手続を守っていれば損害賠償の責任を負うことはありません。


【まとめ】
(1)辞職と合意退職は別物です。区別して考えましょう。
(2)辞職が労働基準法に定められているのは労働条件が違ったときの即時解約だけ。その他のときは民法に戻って判断します。
(3)月給制の場合、民法第627条2項が適用されます。

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解雇-民法との関係-

2004-11-22 18:55:32 | 解雇の知識

【解雇と民法の関係】
 前回、解雇は「使用者が雇用の契約を一方的に解約して使用人をやめさせること。」と書きましたが、ここに雇用契約という言葉が出てきます。これは民法第623条から第631条に記載されていて、中でも解雇について注意が必要なのは第627条と第628条です。

 民法第627条「当事者が雇用の期間を定めていないときは、各当事者は何時でも解約の申し入れをすることができ、この場合雇用は解約申し入れの後、2週間を経過することによって終了する。」これが、雇用の解約が申し入れから2週間で自動的に成立すると言われる所以です。

 しかし、同2項では月給制のときは、賃金計算期間の前半に退職を申し入れた場合は、その賃金計算期間の末日に雇用契約が終了することになり、賃金計算期間の後半に申し入れた場合は、次の賃金計算期間の末日に雇用契約が終了することになるとしています。
※詳しくは辞職と民法との関係で再度触れます。

 また同法第628条では有期雇用契約の解約について定めていて、労使どちらかにやむを得ない事由があるときは、いつでも解約できるとしています。但しこのとき、債務不履行による損害を相手方に与えたときはその賠償責任を負うことになります。この損害賠償は同法第415条に定めがあります。

 ここまで書いてきたことは労使どちらにも言えることです。
しかし、労働者保護の観点から労働基準法が定められていますので、労働基準法に定めがあるものは民法より労働基準法が優先することになります。これは民法を一般法として特別法である労働基準法が成り立っているためで、法律は一般法と特別法があるとき、特別法が優先されることになっているからです。そして解雇は労働基準法に明確な定めがありますので、使用者側からの一方的な雇用契約の解約は労働基準法に従うことになります。なお、特別法に定めがないものは、一般法に戻って判断することになります。

 これを一つの例で見てみましょう。〔1年契約のパートタイマーで時間給制社員を解雇するとき〕

 この人を解雇するとき、まず民法上は第627条1項と第628条の縛りを受けますが、第627条1項より労働基準法第20条が優先しますので、解雇予告は30日以上前にしなくてはなりません。
次に債務不履行による過失責任は、労基法上には定めがないため民法第628条が適用され、過失により相手方に損害を与えたときは賠償責任を負うことになります。この損害賠償額は期間満了までの賃金相当といわれていますので、仮に3ヶ月で解雇したときは残り9ヶ月分の賃金相当額の賠償を求められることがあるのです。


【まとめ】
(1)解雇の手続は民法でなく労働基準法の定めに従います。
(2)労基法に定めがないこと(損害賠償など)は民法に戻って判断します。


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解雇-権利の濫用法理-

2004-11-22 18:22:57 | 解雇の知識

【解雇と権利の濫用法理】

 解雇を大辞林で調べてみると「使用者が雇用の契約を一方的に解約して使用人をやめさせること。」と書かれています。
そして雇用契約は民法第623条から第631条に定めがあるのですが、これは次回に説明します。

 「解雇は30日前に言うか30日分の解雇予告手当を払えばいつでもできる」と考えられている方、特に経営者の中でそう考えられている方がいるのですが、必ずしもそうではありません。労働基準法第20条では抜き打ち解雇を制限しているだけであって、それが満たされれば解雇しても良いということではないのです。

 会社には人事権や懲戒権、そして解雇権などのいくつかの権利があります。解雇はこの権利を行使することなのですが、民法第1条3項で「権利は濫用してはいけない」と定められています。つまり、権利の行使であってもそれを濫りに使用して他の人に迷惑をかけてはいけないということです。そのため、合理的な理由のない解雇は解雇権を濫用したものとして過去の裁判で無効とされてきました。
そして2004年1月からは労働基準法にも「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(18条の2)が加えられることになりました。

 なお、どのようなときが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」のかは、今後ケーススタディの中で触れてゆきます。


【まとめ】
(1)解雇はそれが権利の濫用となるときは無効になる。

【解雇権濫用の基本判例】
●解雇権濫用法理を最高裁で明確に承認した判例
ID=00669(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日第二小法廷判決)

最高裁判例検索へ日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日第二小法廷判決)

●就業規則上の普通解雇事由に該当しても常に解雇し得るものではないとした判例
ID=00799(このIDをリンク先の枠内に入力し、全情報ボタンを押してください)
全基連判例検索へ高知放送事件(最高裁昭和52年1月31日第二小法廷判決)


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はじめに&免責事項

2004-11-22 15:49:57 | お読みください

 はじめまして、広島で社会保険労務士として開業しています、竹林と申します。

 このBlogは、最近増えている解雇・退職トラブルを少しでも未然に防止するために、一般的な解雇や退職に関する知識のデータベースとしてご活用いただきたいと願い、立ち上げました。
もっともこのBlogだけで解雇・退職問題がすべて解決するわけではありませんが、労使が解雇・退職に関する最低限の知識を持っていれば起きることのなかった事件も多く存在します。
解雇や退職で困っておられる経営者の方、そして労働者の方にとってこのBlogが少しでもお役に立てれば幸いです。
なるべくわかりやすい解説をしてゆきたいと思いますが、法令用語など難しい言葉が出てきます。私たちが何気なく使っている言葉でもわかりづらいことがあるかと思いますので、そのときはご遠慮なく質問してください。

【免責事項】
 このBlogに記載されている情報・内容を引用又は利用されることによって生じたいかなる不都合や損害に対して、当事務所は一切責任を持ちません。
また、解雇や退職に関するトラブルは、同じような事例であっても必ず同じ判断がされるわけではありません。個々の要因によって全く逆の判断がされることもありますので、実際に起きたトラブルに対しては、労働法に強い社会保険労務士、弁護士、また労働者であれば労働組合などにご相談ください。