木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

防衛という空論

2011年12月25日 | Weblog

金正日死去。
週明け月曜日の昼、このニュースが伝えられた。
あの健康状態と年令から行くと、そう遠くない時期にそれは来るだろうと思われたが、やはり唐突で、少し早かったかなという感想。
列車で地方に視察に行く途中で亡くなったと報じられたが、おそらくそれは指導者としての「金正日神話」を意図しての作り話だろうと言われている。
そうかもしれないが、ここ1、2年、病み上がりの身体で中国やロシアを訪問したりして、かなり無理がかかっていただろうとは思う。
そして後継者としては三男の金正恩が就く予定になっている。
まだ20代なのに、中年のような恰幅だ。
北朝鮮では慢性的な食料不足だと言われていて、太った人は見かけないのに、この親子だけが、長男の正男も含めて肥満体で、その放埓な生活ぶりが想像できる。
世襲でトップをつないでいく体制はさながら時代劇の世界だ。
そして今の北朝鮮の状況は、太平洋戦争敗戦時の日本の状態とよく似てる気がする。
支配者の軍部や政府は「国体護持=天皇制維持」ばかりにしがみつき、戦いの犠牲になった人々や疲弊した国民のことはまるで考えない。
おそらく北朝鮮でも政権内部は、正恩を全面に立て、何とか周囲の国に認知してもらおうと考えているのだろう。
軍の暴走を危惧する声もあるが、おそらく軍の幹部は既得権側であるからそんな危険はあえて犯さない。
日本でも終戦の最後の局面で、将校クラスの一部が「徹底抗戦」を叫んで行動しようとしたが、結局不発に終わった。
占領軍の役割を果たすのは中国?
正恩に中国の政府幹部と渡り合う経験と能力はあるはずもないから、中国の言うとおりにするしかない。
北朝鮮国内の混乱は中国も韓国も望まないから、正恩とその側近を温存する形を取って、経済の改革解放を要求し、そのようになっていくだろう。
それはやがて南北の統一に不可避的に進んでいくしかない。北朝鮮国民にとって、今や分断されていなければならない理由は全くない。
日本の一部が妄想する「北朝鮮の脅威」はなくなった、というか元々そんなものはないのだが。
こう見てくると、国の防衛のために戦闘機を調達するなどということは、何の意味もない無駄使いであるのに、机上の戦争ゲームが好きな男達は防衛論議に熱中する。実に馬鹿馬鹿しい。
戦争好きなアメリカ国も「今や国と国との戦いではなく、テロとの戦い」と言っている。
テロとの戦いに戦闘機で攻撃したら、市民にも大勢犠牲が出る。
事実、イラクでもアフガンでもテロリストでもないのに巻き添えを食って子供も女性も老人も殺されてきた。
軍事費をなくして民政にという考えは非現実的ではなく、もっとも現実的な答えだ。
戦闘機を買って、そのお金が必要だから増税はあまりにひどい。

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誰もメディアを信じていないが・・・

2011年12月18日 | Weblog

野田首相が「福島原発事故終息宣言」
誰もが多分「ウソだろう」と思ったのではないだろうか。
今、あの3月11日以来、政府・専門家・大手メディアの言うことをそのまま信用する人はいなくなったのではと感じる。
しかし、だからと言ってそれらに対抗する真実を国民の側が手にしているわけではないので、疑わしい目は向けるものの反論することがなかなかできないだけだ。
私たちは今でもさまざまな社会・政治・経済、その他の情報をテレビ、新聞、そして最近ではインターネットで得ているが、特にテレビは手軽で、映像、音声でダイレクトに伝わってくるので、その情報がまるで自分が考えたかのように頭の中に刷り込まれてしまう。
「いや、待てよ」と対抗する思考をするにはこちら側にそれだけの材料がなくてはならない。
テレビや一般新聞以外のものに目を通すためには時間的に余裕がなくてはならないし、意志も必要だ。
生活に追われ、仕事に追われている人々にはハードルが高い。
権力を持ち、支配する側はだからメディアを自分達の都合のいいように使う。

マードックの恐るべき影響力。
少し前、携帯電話を盗聴して、記事を作ってきた英国のマードック社のタブロイド紙の手法が暴かれた。
歴代イギリス首相が頭が上がらないというマードックの影響力。
スキャンダル報道のタブロイド紙をはじめ4紙を持ち、24時間ニュース、BスカイBというスポーツ・映画・ドラマの衛星放送局も支配下に置くマードックの得意技はもっぱら盗聴でスキャンダルを暴き、おどすというもの。
政治家もマードックを敵に回しては活動ができない。
イギリスのブレア首相が国民の猛烈な反対を押し切って、アメリカのイラク侵略に追随したのもマードックが「イラク戦争支持」だったからだという。
これで謎が解けた。私はあの時、ブレアが何でこんな大義のない戦争を、しかも国民が猛反対する中、支持に踏み切ったのかわからなかった。
マードックに弱味を握られていたのだ。もしくは特に弱味がなければあらたにスキャンダルを捏造されるのだろう。
日本にも購読者数一千万部という読売新聞の最高経営責任者とやらの渡辺恒雄がプロ野球界も政界もかき回し、周囲はいいように翻弄されている。

視聴率が全て。映画『ネットワーク』
76年のアメリカ映画。
視聴率・命のテレビ局の女性編成局長(フェイ・ダナウェイ)。
視聴率にかげりが見えてきたキャスター・ハワード(ピーター・フィンチを「怒れる予言者」に仕立て上げ、まるで大阪市長の橋下のように扇情的なアジテーションをさせる。
ところがそれもしだいに行き詰まりを見せ始め、編成局長はハワードを降板させようとするが、テレビ会社の会長がそれに反対し、逆に彼独自の「会社宇宙論」をハワードに語らせる。視聴率は益々下降。
遂に編成局長は公開番組上でハワードを暗殺させる。
これは70年代の映画だが、テレビとは「情報操作の道具」である。

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助成金・交付金で生まれる悲劇

2011年12月11日 | Weblog

『それでも日本人は戦争を選んだ』を読む。
09年に発行された、東京大学教授加藤陽子の著書。買ったままにしておいたのだが、ようやく完読した。
「真珠湾攻撃」から70年。近頃は12月8日のその日になって、ニュースなどで取り上げられて「ああ、そうだったけ」と思うぐらいで、歴史は遠ざかっていく。
加藤先生は栄光学園高校の歴史クラブの生徒を相手に明治以降の近・現代史を共に考える授業を展開し、それを記録した本である。
資料を読み込み、加藤先生自身の頭と感性で語っているのが新鮮だ。
特に最終章の中の「満州の記憶」が心に残った。
長野県は全国で最も多く中国東北部=満州に開拓団を送ったところだ。
なぜそういうことになったか。知られている理由としては、昭和恐慌の影響で、長野県農村の主要産物であった養蚕が生糸値の暴落で大打撃をこうむったことだ。
特に長野県南部は平地が少なく、養蚕に頼る比率が北部より多く、より多くの人々が満州にわたり、あの敗戦の混乱時の悲劇をむかえることになるのだ。
しかしその前に、これら長野県南部の村々では、分村という形で村ぐるみ満州に移民すれば村に道路整備や産業振興のための助成金をだしますよという政策が国や県によって推し進められ、財政の苦しい村々がこれに応募していく流れになっていったという経過がある。
加藤先生は敗戦時のソ連軍の侵攻や、関東軍が満州移民を置き去りにしたことばかりに目がいくけれど、その前に行政が何をしてきたかということを見なくてはと言う。
この悲惨な体験を記録にして残したのが飯田市歴史研究所編『満州移民』だ。
飯田市周辺の村で最も多く移民を送り出したところでは5人に1人が満州に渡ったことになるという。
県の担当者が助成金を背景に熱心に進めた結果、村々は争って助成金獲得のための満州移民に狂奔していくことになる。
このような体質は今現在にも続いている。
「合併特例債」というエサで争うように行われた「平成の大合併」がそれだ。
原発立地に対する交付金も同じ構図だろう。

しかしこのような流れに組しない見識のある指導者もいた。
大下条村の佐々木忠綱村長は「村民の運命を金と交換するような分村」には反対した。
また開拓団の中でも、賢明な団長に率いられたところは、日頃から現地の中国人と良好な関係を築くように心を砕き、敗戦時にはすぐ現地の中国農民の代表と話をつけ「農場や建物はあげるから、引き揚げのために安全なところまでの道案内と警護を頼む」と依頼し、最も少ない死亡率で帰ってきた千代村の例が記されている。
真のリーダーとは日常の生活や行動の中にある。敵を作ってたたく橋下流をリーダーの資質だと間違えてはならない。

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原爆を落とし、枯葉剤を撒いた非道の国アメリカ

2011年12月04日 | Weblog

『沈黙の春を生きて』を見る。
ベトナム戦争の際、ジャングルに潜んでゲリラ活動をする南ベトナム解放戦線の戦士達をあぶりだそうと、米軍が空から撒いた「枯葉剤」。
深いベトナムのジャングルを枯らした枯葉剤には猛毒のダイオキシンが含まれていて、それは枯葉剤を浴びたベトナムの人達、米軍の兵士の身体を蝕み、子々孫々に被害を与えている。
ベトナム帰還兵だったアメリカ人の夫を肝臓ガンで亡くしたことをきっかけに「枯葉剤」に向き合い、ドキュメンタリー映画『花はどこへ行った』を作った坂田雅子さんのこれは2作目の作品。
福島原発事故以前に公開された前作『花はどこへ行った』を見た時には「枯葉剤」の問題としてだけ見ていたが、今回の作品を見ている間、放射能汚染の影響を考えないわけには行かなかった。
日本に原爆を落とし、ベトナムには枯葉剤を撒き散らしたアメリカと言う国。非道の国。
枯葉剤を浴びた親から生まれた子供達に現れた障害。
四肢欠損、皮膚障害、知的障害、視覚障害等々。
枯葉剤を製造したダウケミカル社やモンサント社といった化学メーカーは「人体に影響はない」と宣伝していた。
前作では障害を持って生まれたわが子の面倒を見る母親達の諦念の中に生きる姿に心打たれたが、今作では、ベトナム帰還兵の娘であり、手足に欠損障害を持って生まれたヘザー・A・モリス・バウザーが、ベトナムへ行き、同じ枯葉剤被害者を訪ね、話を聞く姿を追う記録映像である。
ヘザーの諦念とは違う、表現力、発信力が伝わってくる映画になっていたと思う。
『花はどこへ行った』という作品がヘザーにたどり着き、『沈黙の春を生きて』を生んだ。
坂田雅子さんは、長野県須坂市から原発反対の声を上げ続けた坂田静子さんの娘でもある。
奇しくも母と娘は同じ道を行くことになった。それぞれ別の道から入って、行く道が重なった。

大阪ダブル選の怪?快?
三十年程前、大阪府下の市に住んでいた。その時には大阪が地盤沈下しているという認識はなかったので、こんにちどれほど大阪が没落しているのかはわからないのだけれど、うーん、この結果はと考え込んでしまう。
タレント候補を何人も政界に送ってきた大阪人だが、小泉旋風の結果から何も学ばない人達が多いんだなあという気がした。
だいたい橋下は府知事に立候補する時、自民党に求められて立ったはずだ。だから彼は自・公から生まれた鬼っ子にすぎない。
「公務員たたき」が鬱屈した人々の気を晴らしての人気だと思うが、府や市の職員の側にも不祥事がいろいろあるようだからこれが効果がある。
市長選では独自の道を行くはずだった共産党が自党の候補を下ろしての平松候補応援だったが、おそらく平松陣営で最も活動したのは共産党だったのではと思う。
自民党は元々橋下と親和しているし、民主党も公明党も自分達の議席確保しか考えていない。だから橋下と本気で戦っていない。
橋下はおそらく大阪市長の任期を全うせず、国政へと考えているのではと思うが、橋下と維新の会を箱根越えさせない、と考える政界関係者もいる。そうあってほしい。
大阪の人には気の毒だけど、自分で選んだリーダーだ。高い授業料を払ってもらうしかない。

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