聖マリアンナ医科大学病院臨床研修Blog

聖マリアンナ医科大学病院に勤める研修医たちの日々の情報をリアルにお届けいたします。

指導医日記 ~記事抜粋 指導医ガイドラインより:医療安全編~

2009-08-04 19:26:25 | 指導医日記
医療安全が言われて久しいですが、皆さんは何をもって医療安全と呼ぶか明確になってますか?
患者さんに優しい医療の提供といいながら、自分がヒヤリとしたりハッとしたことを
ちゃんと報告できていますか?
そこで今日は国立医療保険科学院から出ている
新医師臨床研修における指導医guidelineからちょいとご紹介します

なぜ安全管理を教えるのか、まず背景から
1)緊急の課題
相次ぐ医療事故で国民の医療への不信が高まる中、医療安全は信頼回復のための緊急課題である。
確かにそうですね~そう思います。
2)国際的動向
世界保健機関(WHO)をはじめとし、医療安全は日本のみならず国際的な課題として取り組まれている。
確かに日本だけってことではないし世界的な課題です。
3)新たな安全管理概念
1990年代の後半から、これまでの危険管理(risk management)に代わって、患者安全(patient safety)の考え方が、事故を未然に防ぐ新たな安全管理の方策として発達してきている。
ここがポイントかも
4)医療人の安全
医療人も事故や危険にさらされており、労働安全衛生上も安全管理の考え方が重要である。
いや~最近つくずくそう思います。


2.研修医に対する安全管理教育の根拠
実は研修医ばかりではありません。でも初心者だけに事故も起きやすいのは事実。そこでその根拠を見てみると・・・・
1)初心者教育
平成14、15年度のヒヤリ・ハット事例の分析によると、経験1年未満の医療人によるヒヤリ・ハット事例の発生率が高いことが示されており、重点的な対応が必要である。
2)安全管理の早期体験
“鉄は熱いうちに打て”の格言通り、卒前の臨床実習の延長線上で安全管理を教えることは、容易でかつ長期的に有効である。
3)チーム教育
安全文化の醸成には縦割りの職種を超えた職種間の教育が必須とされている。医師になりたての研修医の時期に、他の医療人とともに協力して医療安全に取り組むことを教育することが、生涯にわたってチームの一員として、安全文化の醸成に貢献するためにより効果的である。
4)他職員への影響
研修医への指導を通して、他の医師や他職種の安全管理への参加を促す。
そうそうこれも大事。実は指導医にも促さないと。それよりも指導助手の中間層の先生たちをもっと意識して教育を促すべきかな?って思います。

さ~てそこでどのように安全管理を教えるかってことが重要です。
教育はその内容が科学的根拠(evidence)に基づいているのみならず、その技法も教育効果の高いことが科学的根拠に基づいている必要がある。
いわゆるEBMですよ。英語の論文ってことじゃないですから。よく論文読まないとEBMでないって怒られたりしましたが、そういう先生に限ってEBMではなかったりします。

そこでまずは理論武装です

1)コンピテンシーに基づいて教育する(Competency-based Training)
① 国際的に標準化しつつあるコンピテンシーに基づいた医療安全教育を提案する。
コンピテンシーとは、優れた成果や高業績(今回の場合、医療事故防止)に直接結びつく個人の行動特性(能力)であり、学習することができ、行動として顕在化するため測定できる個人の能力である。医療安全に関連した職種を超えた医療人としてのコンピテンシーを段階を経て獲得してもらい、それを評価して確認することが必要である。
このコンピテンシーについてはこのブログでもご紹介してますから探して見てください。アクセスできるようにあとで貼り付けますね。
② 医療安全のためのコンピテンシーは、その他の基本姿勢の項目とも関連が深い。結果として、現在の臨床研修・到達目標-行動目標、中でも次の4項目:(1)患者医師関係、(2)チーム医療、(3)問題対応能力、そして(4)安全管理ついて併せて教育する必要がある。

2)他の職種とともに教育する(Interprofessional Education)
医療安全は医療に関わる全職員が一緒になって取り組むべき課題である。他職種との協力なしには医療における安全文化の醸成は不可能であり、他職種とのコミュニケーションやチーム医療を学ぶために、他職種と共に医療安全研修を行う必要があり、専門職種間教育と呼ばれている。

3)症例を通して学習する(Problem-based Learning , PBL)
従来の多くの医療安全研修のように講演を聴くだけでは、実践すべきコンピテンシーを身につけることは困難である。元来、医学教育は実践から学ぶことが肝要で、また成人教育には知識の講義はあまり有効でなく、経験に基づく学習(experience based learning)が必要とされてきた。そこで、具体的な症例などを使った参加型の教育が有用であると思われる。

4)最も有効な学習方法は教えることである(Training of Trainer)
指導者にとってのみならず、研修医自身も互いに教え合うことによって学び、また後輩のための身近で重要な教育者となる。したがって、教育のための教育の視点が必要である。

なんて感じで解説されてました。
指導医WSを終えたバッチをつけた先生たちはこれを実現するための手法を学んでいます。
臨床の現場でこれをどう活かそうか?なんて考えるわけです。もちろん、評価も含めてね。

教育的手法が必要だと常々言うのはこのことです。
なんの根拠もないのに、今までこうだったからこれからも大丈夫って豪語される臨床の先生たちのその自信は?
自信は予想されない出来事で揺らぎます(自信=地震?)
ぜひそうならないように次世代の良医を目指して切磋琢磨していきたいものです。

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