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市民講座だより 2014年10月

2014年11月07日 | 市民講座
10月13日(木)

「眼からウロコの糖尿病」についての

市民講座を開催しました。 


  日 時  平成26年10月16日 16:00~17:00

  テーマ  「眼からウロコの糖尿病」について

  講 師   今井 康久 医師

  会 場  佐野市民病院 A棟5階研修室


     


 視覚障害疾患の第1位が糖尿病網膜症です。 
 糖尿病の患者さんは、日本に約600万人で、そのうちの30~50%の人が糖尿病網膜症を発症しているといわれています。
 HbA1cの値が高い人ほど網膜症発症のリスクが高くなります。
 糖尿病になったことに何年も気がつかなかった、糖尿病といわれても治療を受けず放置してしまった、糖尿病の管理・治療を途中でやめてしまった、などの理由で、網膜症を悪化させ、網膜症患者さんの2~5%の方が失明しています。 
 
 糖尿病を放置し、血液中が高血糖の状態が続くと全身に様々な障害を起こします。 
 糖尿病網膜症の初期は、毛細血管に小さな瘤ができます。
 眼底写真では小さな赤い斑点が見えますが、自覚症状はないので、健康診断などで眼底検査を受ける以外発見は難しいです。
 眼は、視神経乳頭(光の受容器はなく、神経線維のみ)・網膜周辺部(光を感じる部分)・黄斑部(色を感じる、網膜の層が最も薄い部分)の大きく3つに分けられます。黄斑部以外の部分が出血しても、視野や見え方にはほとんど変化がありません。 

 出血した血液の脂質などが再吸収されずに網膜に貯留する硬性白斑や、出血や閉塞のため血液が足りなくなり循環不全を起こすと、本来はない部分に新たに血管ができてしまう新生血管、出血部位に残った血液成分が膜を作る増殖膜など、症状が進行してくると視力低下が起こってきます。
 増殖膜が網膜を引っ張り、網膜剥離を起こしたり、新生血管が原因で緑内障を発症したりすると視神経に影響し、やがて失明につながることもあります。
            

 糖尿病網膜症は、その進行状態により単純糖尿病網膜症・増殖前糖尿病網膜症・増殖糖尿病網膜症の3ステージに分けられますが、悪化するまで症状がほとんど出ないため、定期的に眼科を受診、検査を受けることが重要です。 
 眼を正面から写す眼底写真の他、光干渉断層計(OCT)により内部の断層を見ることで、糖尿病性黄斑症なども詳しく検査できるようになりました。
        
 増殖前糖尿病網膜症では、光凝固術(レーザー)で出血を止めたり、出血しそうなところを焼いて出血しないように予防します。
 さらに進行した増殖糖尿病網膜症では、硝子体手術で出血した血液を取り除き、出血の原因となる場所を焼き、剥がれた網膜を元に戻し、剥離の原因となる場所をレーザー治療し、再出血・網膜剥離の再発を予防します。 
光凝固術(レーザー)も硝子体手術も、状態を悪化させないため・くいとめるための治療なので早期治療が有効です。
 症状がないからと油断せず、定期的に眼科を受診・検査を受けましょう。
             
 白内障は、加齢による老人性白内障がほとんどですが、糖尿病患者さんでは、早い年齢で手術が必要になる場合があります。
 また、糖尿病が進行すると、眼に異物が入っても感知しにくく、また、涙液分泌が減少するため角膜炎などをおこす可能性もあります。 

 網膜症を発症していない糖尿病の方は、急激な血糖コントロール(下降)が有効ですが、網膜症を発症している方は、急激な血糖コントロールはかえって網膜症を増悪させる場合がありますので、6ヶ月でHbA1cの値を3%下げる血糖コントロールが有効です。
 糖尿病が原因で起こる眼の疾患の治療には、眼科医師と内科医師との連携が必要です。
 診療情報・治療計画の共有・役割分担の明確化など綿密に連携し治療を進めていくことが重要です。 
 
 栃木県内の平均寿命ランキングで、高齢化が進んでいる他の市町村よりも佐野市は男女ともに下位です。
 生活習慣病の予防と必要な治療や検査に意欲をもって取り組み、QRLの維持・向上に努めましょう。 

   









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