市民講座

市民講座の内容やお知らせ

市民講座だより2011年12月号

2011年12月28日 | 市民講座告知
 胃ろうとは胃と体表がつながっている状態を言います


 図のように腹壁と胃をつなぎます。

 近年、胃ろうは、経皮内視鏡的胃ろう造設術で造設されることが多く、その頭文字をとってPEG(ペグ)とも呼ばれています
 PEGを造る目的は、主に栄養注入の経路、胃液を体外に出すための減圧ろうがあります。

 人間は基本的に、口から食事をとり、食道を通って胃で栄養を吸収します。
 しかし、脳血管障害や認知症などにより、自発的に摂食ができない場合や、筋肉の衰えにより嚥下障害を繰り返してしまう場合などに、栄養注入の経路としてPEGを造ります
 つまり、食べられなくなった原因が消化管ではない場合、PEGを造ることで、栄養を体に入れることができます。
 消化管がうまく働かない場合は、PEGではなく点滴(末梢静脈栄養や中心静脈栄養)で栄養を取らなければなりません。

 PEGを造設した場合、造設後の2週間は抜けてしまったり、ストッパーであるバルーンが破裂しないように気をつける必要があります
 抜けると胃に穴が空いてしまうそうです。
 その後は、日常ケアや観察を行っていれば、通常通りの生活をしている分には何の問題もないそうです
 入浴も2週間後から普通に入ることができます。

 日常ケアのポイントとして、PEGの周りの皮膚を清潔に保てるよう、ぬるま湯と石鹸を使って洗浄すると良いです(※消毒は必要ありません)。
 洗浄後はタオルで水気を取り、自然乾燥が良いです(※ドライヤーは避けましょう)。
 滲出があった時は、ガーゼではなくティッシュペーパ-をこより状にしたものをカテーテルの周囲に巻き、頻繁に交換すると良いです。

 観察のポイントとしては、カテーテルの外部のストッパーがきつくないか、カテーテルがよく回転するかということです。
 ストッパーであるバンパーに余裕がないと、血流が悪くなってしまったり、胃の内部のバンパーが胃に埋没してしまうことあります
 チューブ型の場合、チューブが短くなっていないか、斜めになっていないか観察しましょう。
 チューブが短くなっている場合、胃の中でバルーンが動いていることがあります

 最後にPEGを造設するタイミングについてです
 今までは、余命予後が1か月以上あり、PEGに耐えられる全身状態、消化管が正常な場合は、医学的な観点からのみPEGの造設を行っていました。
 しかしPEGを造設することによって、家族の負担、医療経済を圧迫してしまうことも事実です。

 現在、医学的な条件に加えて、倫理的な条件、つまり「本人や家族が望むか」ということも考慮するように検討が始まっています。
 難しい問題ですが、長寿国である日本にとって、大きな課題なのだと思いました

12月の市民講座のお知らせ

2011年12月20日 | 市民講座
12月22日(木)に「胃ろうって何?」の市民講座を行います

数年前より増えてきた「胃ろう」とは何か?
どのようなものなのか?
どのように扱うのか?
などについてお話します。
胃ろうの問題点についてもお話する予定です


テーマ:「胃ろうって何?」
日時:12月22日(木)
   16:00~17:00
講師:阿曽 和哲 医師
    (当院 消化器科医)
会場:佐野市民病院A棟5階研修室
受講料:無料
申込方法:佐野市民病院 地域医療連携室に直接
またはメール(sanoshiminrenkei@sanoshimin-hp.net)
お電話(0283-62-9024)でお申し込みください。

ご参加お待ちしております

市民講座だより2011年11月号

2011年12月08日 | 市民講座
日 時 平成23年11月24日 
16:00~17:00
テーマ「甲状腺のお話~働きと病気~」
講 師 伊藤 悠基夫 医師 
会 場 佐野市民病院5階研修室

 甲状腺とは、ヨードを原料としてホルモンを作り出す臓器で、甲状腺で作られたホルモンを甲状腺ホルモンと言います
 ホルモンとは、情報を伝える物質です
 私たちの体は、たくさんの細胞から出来ていて、細胞が組織や器官を作って、それぞれの働きを行っています。
 つまり、それぞれの組織や器官の情報をやり取りする物質、それが、「ホルモン」なのです
 その中でも、甲状腺ホルモンは成長促進に欠かせないホルモンで、主にエネルギー代謝を調節します

 甲状腺ホルモンの原料となるヨードは海藻類に多く含まれている栄養素で、消化管から血液に吸収され甲状腺でホルモンに変えられます。
 甲状腺のホルモンは、そのヨードの数によって、主にサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2つがあります。

 ヨードを4つ持つ、T4(サイロキシン)ホルモンは、甲状腺ホルモン全体の93%を占め、1週間後からホルモンとしての力を発揮しだし、10日~14日後に一番力を発揮するホルモンです。
 また、このT4ホルモンは、ヨードが1つ取れ、T3(トリヨードサイロニン)というヨードが3つのホルモンに変化します。
 T3ホルモンは甲状腺ホルモンの7%を占め、T4ホルモンの4倍の力を持つ強力なホルモンです。1日でホルモンとしての力を発揮します。
 このT4ホルモンとT3ホルモンがバランス良く働くことで、私たちの正常な代謝が保たれています

 では、ホルモンの働きが過剰に分泌されたり、分泌低下の場合は体にどんな変化が現れるのでしょう

過剰に分泌された場合
・全体倦怠感
・暑がり
・発汗過多
・皮膚湿潤
・体重減少
・いらいら
・動機
・食欲亢進

分泌低下の場合
・易疲労感
・寒がり
・発汗低下
・皮膚感想
・体重増加
・感情鈍麻
・傾眠傾向
・除脈
食欲低下

などの症状が見られます。

 次に、甲状腺自体は異常になると、どのような変化を示すのでしょうか
 甲状腺は異常が起きると「大きくなる」「硬くなる」のどちらかまたはどちらもと言われています。
 甲状腺は喉にあるため、触ってその異常を確認することができるそうです。
(ただし、女性に限ります。男性は喉仏が女性よりも下に位置しているため、甲状腺が奥に入ってしまい、なかなか全体を触ることができないと言います。)

甲状腺の状態と症状によって次のような診断ができるそうです。

甲状腺が全体的に腫れた場合
・ホルモンが過剰に分泌された場合(機能亢進)
  ・・・バセドウ病
・ホルモンの分泌低下の場合(機能低下)
  ・・・橋本病 と言います。

甲状腺の一部だけが硬くなっている場合
・ホルモンが過剰に分泌された場合(機能亢進)
  ・・・プランマー病
・ホルモンの働きが正常
  ・・・腫瘍
であることが多いそうです

 腫瘍の場合、表面がツルっとしていて、可動性に富んでいる場合は、良性の腫瘍であることが多く、逆に表面がごつごつしていて、可動制限がある場合は、悪性であることが多いようです。

 甲状腺触ることができるため、触って、症状などを聞けば、時間をかけずに診断する事が可能だと言います。また、エコーなどを使うと甲状腺の状態をもっとよく知ることができます
 甲状腺ホルモンは、正常では2か月分程度のホルモンが甲状腺に存在するので、すぐに症状がでるものではありませんが、最近調子がおかしいなと思う方は、甲状腺外来を受診されることをお勧めします