5月30日(木)
「肝炎のはなし」についての
市民講座を開催いたしました。
日 時 平成25年5月30日(木)16:00~17:00
テーマ 「肝炎のはなし」
講 師 長島 郁雄 医師
会 場 佐野市民病院 A棟5階研修室
肝臓は、食べ物から吸収した栄養素を貯蔵する役割、その栄養素から身体に必要な成分を作る工場の役割、不必要なものを胆汁に流してしまう排泄の役割、体内に入ってきた毒物や薬物を解毒する役割などを担っています。
肝炎が起こり、これが継続すると、これらの働きが徐々に低下していきます。
肝炎とは、なんらかの原因により肝臓が炎症を起こしている(肝細胞が壊れている)状態をいい、血液検査上ではGOT(AST)値、GPT(ALT)値が高くなります。
まず急性肝炎を発症し、それが完治せずに慢性化すると慢性肝炎になります。
慢性の状態が長く続くと、肝炎から肝硬変へ、そして肝癌へ進行していきます。
肝炎には、ウイルスに感染して起こるウイルス性肝炎、アルコールの飲み過ぎで起こるアルコール性肝炎、脂肪肝から起こる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)や他にも肝炎をきたす病態は多々あります。
今回は主だった3つの病態について解説します。
ウイルス性肝炎
肝炎ウイルスはA型~E型まであり、慢性化するのはB型、C型です。
(B型については乳幼児期以降、すなわち学童期以降の感染は慢性化しません。)
以前は、感染している人の血液を用いた輸血、血液製剤などの使用や、ウイルスに感染された注射器や針による医療行為からの感染がありましたが、現在ではこれらの原因による感染はありません。
現在考えられる感染経路は、覚せい剤を打つなどの注射器の使いまわしや、入れ墨を彫る、性交渉、針刺し事故、母子感染などがあります。
B型肝炎の母子感染は、妊娠前に抗ウイルス療法をおこなったり、出産直後に子供に免疫製剤の投与とワクチンを接種することで感染を最小限に抑えることができるようになりました。
治療法については、肝炎ウイルスの増殖を抑え、肝炎ウイルスを破壊する効果があるインターフェロン治療と、ウイルスの増殖を抑えることのできる内服薬(抗ウイルス薬)を用いる治療がありますが、今のところ、B型では、インターフェロン治療か、あるいは内服薬を、C型では、インターフェロンを基本にして、内服薬を併用するのが標準的です。
アルコール性肝炎
アルコールを大量の飲み続けることにより、肝臓に負担がかかり炎症が起こります。
日本酒3合以上を毎日飲む方は注意が必要です。
血液検査上、GPT値よりGOT値が高いことが特徴です。
治療法は断酒することです。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
肥満や高脂血症、糖尿病などにより肝臓に脂肪が蓄積されて起こります。
血液検査上、GOT値よりGPT値が高いことが特徴です。
肝硬変の原因の約3割にNASHが関与しているという報告もあり、状態が長く続くことにより肝硬変から肝癌に進行する可能性があります。
糖尿病患者の死因の第1位は、肝癌であるという報告もあり、生活習慣病の増加とともに,特にこの4~5年、NASHも増加しています。
治療法は、食生活・運動療法など生活習慣の改善や糖尿病のコントロールです。特効薬はありません。
肝臓は沈黙の臓器といわれています。
全体の約70%が機能しない状態でも、残りの30%が正常であれば症状はほとんど出ないそうです。
そのため、症状が現れた時は、かなり進行している場合が多いのです。
定期的に血液検査をして、GOT値、GPT値が高い場合は、すぐに専門医を受診しましょう。
原因を調べ、早期治療を行うことが大切です。
専門医の適切な診断を受けながら、肝炎と上手に付き合っていきましょう。