市民講座

市民講座の内容やお知らせ

5月の市民講座のお知らせ

2013年05月02日 | 市民講座告知

 5月30日(木)
 
 市民講座をおこないます 

  テーマ 

 『 肝炎のはなし 』
    

 一言で肝炎(肝臓が炎症を来たしている、あるいは肝細胞が壊れている)と言っても、その原因は様々でその治療・対策は多岐に亘っています。
 その全般についてわかり易く解説したいと思います。 


  日 時 5月30日(木)16:00~17:00
  
  会 場 佐野市民病院 A棟5階研修室

  講 師 長島 郁雄 (ながしま いくお)医師  
      (佐野市民病院 副院長、元帝京大学外科教授(肝胆膵部門)、
       元東京大学肝胆膵外科講師)

  受講料 無料   

  定 員 40名 (先着で定員になりしだい〆切りになります)

  申込期間 5月29日(水)

  申込方法 地域医療連携室にメールまたは電話でお申し込みください。

  電話番号 0283-62-9024(直通)
  MAIL sanoshiminrenkei@sanoshimin-hp.net



 みなさまのご参加をお待ちしております 

市民講座だより 2013年4月

2013年05月02日 | 市民講座
 4月19日(金)   
 市民講座 特別講演会
 「iPS細胞由来の網膜移植で視力障がい患者を救えるか」
 を佐野市文化会館小ホールにて開催いたしました
      


  日 時 平成25年4月19日(金)15:00~17:00
  テーマ 「iPS細胞由来の網膜移植で視力障がい患者を救えるか」 
  講 師 今井 康久 医師 ・ 杉田 直 医師
  会 場 佐野市文化会館 小ホール  


 特別講演会となった今回の市民講座は、佐野市文化会館小ホールにおいて約220名の方に参加していただきました。

 第一部は、当院眼科統括医、今井康久医師の「佐野市民病院の眼科の役割と使命」についての講演で、今井先生には司会進行もしていただきました。
 第二部では、当院眼科の元非常勤医師で、理化学研究所 網膜再生医療開発プロジェクト副リーダー、杉田直医師を神戸よりお招きし、「iPS細胞由来の網膜移植で視力障がい患者を救えるか」をテーマに講演をしていただきました。 

 iPS細胞は今世紀最大の発見であり、難病患者の希望として期待されています。
 その最前線で活躍されている杉田医師を招いての市民講座は、とても貴重なものとなりました。

  <第一部> 「佐野市民病院の眼科の役割と使命」 

 眼科は他科に比べて特殊な科です。
検査・診察から画像診断、そして内科治療、場合によっては外科治療をして、さらにリハビリまで行います。
大変幅広い分野での知識が必要になってきますが、すべての分野において自信を持って対応できる眼科医はなかなかいません。
そこで当院では、それぞれの分野の専門医でチームをつくり、連携することで弱点を補い、長所を生かす医療を始めました。
これによって、一人の患者さまを複数の医師で治療することができるようになりました。

   現在の眼科チームを紹介します  
 
 ・増田 寛次郎 医師・・・眼科領域すべてにおけるスペシャリスト  
 
 ・内田 信隆  医師・・・屈折、矯正、コンタクト  
 
 ・笠井 龍一郎 医師・・・外眼(手術)、斜視、弱視(小児)  
 
 ・坂井 栄一  医師・・・糖尿病網膜症、硝子体疾患  
  
 ・高 望美   医師・・・緑内障、後発白内障(レーザー治療)  
 
 ・今井 康久  医師・・・白内障手術(全身疾患、難症例)  
 
 ・他 2名の医師  ・・・ぶどう膜炎、網膜硝子体手術  
              
                眼底精密検査、黄斑部疾患、術後管理  

 そして、これまで5年間の診療実績からですが、男性に比べて女性の方が積極的に手術を受けています。
年齢は男女平均75歳を超えており高齢で、その分重症化している方も多いです。
当初は田沼地区の方が7割程でしたが、次第に佐野市全体に広がり、近年では足利市や小山市、県外からも来院されています。

 なぜ佐野市民病院の手術が増えているのでしょうか、他の病院との違いは何なのでしょうか。
当院で手術される方は有病率が高く、7割が糖尿病や高血圧症等の病気を持っています。
そのため他のクリニックでは手術や治療ができないと言われ、当院に来られるわけです。
これは眼科チームだけではなく、病院全体としても他の科とのチーム医療ができているからでもあります。

 最後に、今後の問題点と市民のみなさまへのお願いです。
市民のみなさまの医療に対する理解と知識の向上が、佐野市全体の医療と医師のレベルを上げることになります。
また視力が低下していても車の運転をしている方もいますので、そういう方に注意をすることも眼科の使命と考えています。
幸い、佐野市の交通事故件数は減少していますので、眼科治療が交通事故減少の要因の一つになっているのではと考えています。 
視力低下は、認知症の要因にもなりますし、交通事故にも繋がりますので、目の病気で死ぬことはないなどと考えないで、治療をしていただきたいと思います。
 

  <第二部>「iPS細胞由来の網膜移植で視力障がい患者を救えるか」
 
 質疑応答形式で進めていきたいと思います。

   疑問① 目の病気で見えなくなるのは何故ですか?
 
 人の目には、カメラに例えるとフィルムにあたる、とても大事な膜「網膜」があります。
この網膜は10層構造になっており、一番外側にある網膜色素上皮(以後RPE)という組織は、物を見るためにとても大切な組織です。
中心部にあたる黄斑とその周辺部とに分かれ、黄斑は主に視力、周辺部は視野を司ります。
視機能障害は、黄斑変性(視力低下)と網膜色素変性(視野狭窄)の2つに分けることができます。
黄斑変性は中心が見えなくなるので視力が低下します。網膜色素変性は筒で見るような視野になりますが、視力は残ります。
黄斑変性の治療の一つにRPEの移植があります。網膜色素変性には視細胞(網膜)の移植が考えられます。
しかしRPEや視細胞は再生しないため、移植が困難でした。
そこで、iPS細胞で補おうという試みになったわけです。

   疑問② iPS細胞って何ですか? 
 
 iPS細胞とは多能性幹細胞の一つです。
多能性幹細胞とは、どのような組織や細胞にもなることができる細胞で、受精卵から作られたES細胞という多能性幹細胞は以前からあったのですが、受精卵を使わずに人工的に作ることに成功したものがiPS細胞です。
他人の細胞から作るES細胞にに比べ、iPS細胞は自分の細胞で作ることができますので、倫理的問題や拒絶反応がありません。


   疑問③ iPS細胞から網膜の細胞は作れますか? 
 
 返答としては、ほぼ作れるようになっています。
視細胞移植は科学的技術が未完成ですが、RPE細胞移植に関しては1年以内に臨床応用の予定です。

  
   疑問④ 網膜細胞の移植はできますか? 
 
 移植は行われています。
RPE移植に関しての話になりますが、ヒト胎児RPE移植では拒絶反応がありました。
自家RPE細胞移植に関しても、摂取の際に合併症を起こしており約5割の成功率になっています。
日本では危険性もあるため、あまり行われていないのが現状です。
理化学研究所が目指しているのは、患者iPS細胞由来のRPE移植になります。


   疑問⑤ 網膜細胞の移植後はどうなりますか? 
 
 網膜細胞の一つ、RPEを移植するだけで網膜全体が厚くなります。
つまり、RPEという一層の網膜だけで、網膜全体が助けられる可能性があります。


   疑問⑥ 網膜細胞の移植後、拒絶は起きますか? 
 
 拒絶反応とは、自分のもの以外を認識して攻撃する生体反応の一つです。
移植後1~3ヶ月で起こります。
もし非自己と認識されたら、炎症(拒絶反応)を起こします。
将来的にはiPS細胞関連移植は他家移植が標準治療になります。
理由は培養に時間がかかり、急性の患者さんは待てないこと、その都度作成すると莫大なコストがかかるからです。
その為には、今後拒絶反応が問題になります。対策としてiPSバンクを樹立するという計画があります。


   疑問⑦ iPS細胞はガンになりやすいって本当ですか? 
 
 マウスを使った実験結果になりますが、最終的な製造・品質管理工程とほぼ同一のRPE細胞では腫瘍の発生はありませんでした。


   疑問⑧ それでももしガンになったらどうしますか?
  
 目の腫瘍はもともと非常に少ないです。
またiPS細胞由来のRPEは抗腫瘍作用のあるタンパクを作ります。
それでもガンになった場合は、レーザー治療等が考えられます。
眼科領域移植ではiPS関連移植のガン化を容易に発見、またすぐに治療対応ができます。


   疑問⑨ 実際いつから移植が始まりますか? 

 臨床試験・臨床治験を経て、iPS細胞由来のRPE移植は、早ければ来年度中に始まります。


   疑問⑩ 移植したら見える様になりますか? 
 
 RPE移植の予測視機能効果としては、網膜の回復能力にもよるが、「0.1以下なら0.1まで」、「0.2以上なら0.7以上」も期待できます。


   疑問⑪ 将来、網膜全部の移植はできるようになりますか? 
 
 視細胞の移植に関しては、残念ながら科学的技術が未完成です。
しかしながら、マウス実験ですがES細胞から10層構造の全網膜の作成に成功し、網膜シート移植を成功させています。
視細胞移植治療で期待できる効果は、「失明に近い状態から0.3~0.05程度」が期待できます。
5年以内(目標)にヒト臨床試験が開始されるかもしれません。


   
   質問) iPS細胞由来の網膜細胞移植で視力障がい患者を救えますか? 
 
 iPS技術の出現で10年前には考えもしなかった網膜の移植が実現可能のところまできました。
視力をもとに戻す技術(視力1.0以上)は未完成だが、視力を少しでもあげる事(例0.01→0.1)ができると予測しています。                   


        以上