院長室の窓

院長からのメッセージ

2013年9月3日 朝礼 院長談話より

2013年09月02日 | メッセージ

 院長談話 
 
 平成25年9月2日

 「いつやるの?今でしょう!」
 
 猛暑ですね。
 当地でも熱中症の患者さんが頻発していますが、ほとんど大事に至る症例がないので、毎年開いている熱中症についての市民講座や、職員の意識と知識が向上した成果かなと思っています。
 
 さて、この猛暑はあきらかに数十年前からすでに予測されていた地球規模の気候変動によるものです。
 栃木県のどまんなか田沼だけが、暑さで有名な群馬県の館林の隣町だから、こんなに暑いというわけではありません。
 地球温暖化ですから、世界中が暑いわけです。
 
 未来予測が当たりかはずれかは、実際その時になってみなければ分からないものです。
 これは私達の医療の仕事と同じパターンです。
 病気の診断は一種の未来予測(予後の判断)を含んでいます。
 予測に基づいて、治療法があればこれを行いますが、その時にならないと結果が分からないという不確定性が本質的にあります。
 
 アメリカ合衆国で起こった9・11や日本国で起こった3・11の、いわば「黙示録的事件」を目の当たりにすると、人々が大昔からやってきた「予言」や「未来予測」がいやでも意識されるようになります。
 私の知る限り、予言や予測のほとんどは「人類の滅亡」です。
 
 アーノルド・トインビーという英国の大歴史学者は「人類は遠からず滅亡するが、アフリカ奥地の、いまだ発見されていない、モラルを失っていない、少数のホモサピエンスが生き残って、人類が再び繁栄することを願う」という趣旨のことを書き遺しています。
 
 ドイツの医聖と崇められたシュバイツアー博士(私のような老医の世代はシュバイツアー博士に憧れて医師になった人が多いと思います)は、人間は未来を予見する能力、物事にあらかじめ対処する能力を失ってしまった。
 人間は地球を破壊して滅びるであろうと述べています。
 
 約40年前(1972年)報告された「成長の限界」に世界の気候変動の及ぼす影響が警告されています。
 今年、その続編というべき「今後40年のグローバル予測―2052」という書物が出版されましたが、そこでは、人間は未来を予見する能力も対処する能力も持っているが、その能力を用いるのを先延ばししてきたし、今後もそうするであろうと予測しています。

 今年は郷土の義人「田中正造の没後百年目」にあたります。
 正造は足尾銅山鉱毒事件を目の当たりにして、これでは日本国が滅びると予見し、これを防ぐために、命をかけて行動しました。
 その後100年目の日本国の姿はこの通りのものです。
 
 私達は地域医療を護り、ひいてはコミュニティを元気にするため、日々地道な仕事をしています。ごく小さな営みですが、仕事のパターンは地球の破壊や、人類の滅亡を防ごうとする行動とまったく同じです。
 個々の患者さんや、リスクを抱えた病院組織を、地球に見立て、崩壊と滅亡を免れる治療を今すぐ毎日実行しましょう。
 私達の足元はもろ地球なのですから。

 希望と志がその原動力になります。 



        以上