ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

報道番組のミスリード

2009-02-01 19:32:50 | その他
1月30日の朝日新聞朝刊2面「ニュースがわからん」という解説コラムで、「『わたり』って何なの」という疑問に対する解説が書かれている。

以下、その記事の焼き直しだが、記事の解説によれば、官僚が公益法人や民間企業に再就職するのが天下りで、そこを辞めて、さらに別の企業・団体に就職しなおすのが「わたり」である。再就職先を数年で退職しては、多額の退職金をもらうことを繰り返している。おまけに就職先は、国が補助金などで優遇している財団法人や社団法人などの公益法人が多く、税金の無駄遣いとの批判も強い。

この「わたり」をなくすために2007年に国家公務員法が改正され、官僚が天下り先を探すのに、各省が個別にあっせんすることをやめて「官民人材交流センター」に一元化することにしたのだという。

ただし、3年間は移行機関で、昨年末に発足した同センターが仕事に慣れるまでは有識者らで構成する再就職等監視委員会が承認すれば、各省ごとに天下りやわたりを斡旋できるようにした。

さらに、再就職等監視委員会の人事が民主党などの反対にあって国会ではまだ認められていない。そこで、政府は監視委員会が発足できない場合は、首相自らが直接斡旋を承認できるようにする政令を昨年末に出した。

・・・と、このように書いてある記事を読めば、「国会で決めた法律を政令で勝手にひっくり返した」、という単純な言い方は当たらないことがわかる。(そのように読める。)

だが、その前の晩のテレビ朝日「報道ステーション」での報道内容は、法律で決めた内容を役所が勝手に政令で覆した、これは憲法違反であり、とんでもないことだ、というものであった。こんなことがまかりとおるようでは、日本は法治国家ではない。
画面でそのようにコメントしていたのはある大学教授のエコノミストであった。
そして、その意見の正しさを前提として、キャスターの古館伊知郎も同様の批判を繰り返していた。

番組を見ている一視聴者としては、何でそんな無茶なことがまかりとおるのか、と呆れかえる他はなかった。理屈も何もあったものではない、と。
だが、上述のように、新聞を読めば、政令の必要性も意味合いも、それなりに理屈はついている。あるいは、それなりの事情や経緯があってのことだと言い方ができる(そのことと、そのような現状になっていることが望ましいことかどうかの判断はまた別だ)。少なくとも上記新聞記事の方が事実関係をよりていねいにとらえている、という言い方はできる。

不正確な事実認識に基づく見当違いの批判は、批判そのものの説得力を削ぐことになる。テレビだから取材がぞんざいでよいということには当然ならないのだから、事前取材をもっと十分にやっておいてもらわなければ困る。

報道番組が視聴者をミスリードしてしまうことの恐ろしさについて、われわれはもっと自覚的でなければならないと思う。

この件は、「報道ステーション」が後で事実認識の誤りを謝罪したのだろうか。(あるいは、「間違いだ」、という指摘は外からあったのだろうか。)


(補足)この件についてわかりやすく解説してあるブログを見つけた。自治体の公務員の方のブログのようだ。

→ 自治体法制執務雑感 「いわゆる『渡り政令』について」 (2009/01/23)


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