不安な童話新潮社このアイテムの詳細を見る |
著者名 恩田陸 発行年(西暦) 2002
出版者 新潮文庫 値段 500-600円
お薦め度 :☆☆☆☆
生まれ變りの話なのか、それとも?
最終的には、妙に合理的なところがあつて、そこのところが氣に入らないが、面白い作品であることは間違ない。
ところで、物語の終盤で主人公が子供のころに讀んだ話を思ひ出すところがある。
ここで、私は驚いてしまつた。
この話を私も讀んだことがあるのだ。それも漫畫で。
「ある高名な指揮者が指揮したオーケストラの演奏を吹込んだレコードを聽いた子供たちが、異常な反應を示すことが判る。
突然興奮し、泣き叫び、失神したり亂暴になつたりするのだ。
驚いた親たちが、子供たちはレコードの特定の一曲のみに反應してゐることに氣付いて、その曲を指揮した指揮者を訪ねる。
指揮者が明かしたのは不思議な話だつた。
その曲は、死者の國の湖に浮んでゐる白鳥をテーマにした曲なのだが、彼はどうしても死者の國のイメージが浮かばない。
指揮ができなくなるまでに苦惱した彼は、思ひ餘つて毒藥を飮む。
彼はひととき、生と死の境をさまよふ。
その時、彼は闇の中に、草がぼうぼうに生えた丘を見るのだ。
茫漠とした、薄暗い空間の中にそびえる巨大な丘。
(中略)
息を吹き返した彼は、その丘のイメージを思ひ浮べながらその曲を指揮する。
それが例のレコードだつたのだ。
そこは、誰もが生れる前に通過する丘だつた。
子供たちは、自分が生れる前の記憶を刺戟されてゐたのである。」
私が讀んだ漫畫は、確か「ゼロ次元の丘」と云ふタイトルだつたと思ふ。
おそらく「少年サンデー」に掲載されていたのだらう。
私の記憶では、
ベトナム戰爭でソンミ村と云ふ村で虐殺があり、その時に殺された村人たちの生まれ變りが、その子供たちだつた。
指揮者はカラヤン風の風貌で、曲はシベリウスの「トウオネラの白鳥」だつたと思ふ。
作者はたぶん手塚治蟲さん。
もしかしたら石森章太郎さんだつたかも。
なにぶん、私も小學生だつた頃に(もう30年以上前のこと!)讀んでゐるので、細かい記憶はあいまいなのだが、
いまでもその丘の描寫などははつきりと覺えてゐる。
なんとも印象深い漫畫だつた。
私の家の近くに、手塚治蟲紀念館があるので、いつか搜してみやうと思ふ。
2003年5月10日讀了
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます