![]() | 三月は深き紅の淵を講談社このアイテムの詳細を見る |
著者名 恩田陸 発行年(西暦) 2001
出版者 講談社文庫 値段 600-800円
お薦め度 :☆☆☆☆
存在するのかしないのか、幻の本「三月は深き紅の淵を」をめぐる中篇4篇からなる本がこの「三月は深き紅の淵を」である。
「劇中劇」ならぬ「本中本」?
それぞれ獨立した4篇がいわゆる「起承轉結」を構成して、ひとつの物語となつてゐる。
私の好みは第3章の「虹と雲と鳥と」。
ここでは作者の得意な高校生が主人公となつてゐる。
美少女たち二人の心の動きに引込まれる。
ラストシーンの描寫がまた良い。
「公園には誰もいない。訪れる者もない。
唯一動き囘るのは光だつた。空は光に滿ちてゐた。
薄くかかつた雲の隙間から、今日の晴天を約束する光の束が、
崖下にひろがる市街地の上に、穩やかに降り注いでゐるだけだつた。」
これを讀んで、三島由紀夫の「豐饒の海」全4卷のラストシーンを思ひ浮かべた。
すべての物語は、例へそこに書かれてゐることがすべて「心ごころ」であつて現實には「なかつた」ことであつたとしても、
むしろそれゆゑに依然として「ある」のだと云ふこと。
現實の「なにもない」ことが、いつそうイマジネーション世界での「ある」ことを引立たせること。
見渡せば花ももみぢもなかりけり浦の苫屋の秋のゆふぐれ
2003年5月13日讀了
恩田陸には最近になってハマりました。
これから読む順番などありましたらアドバイスお願いします。
ではまた!
コメントありがたうございます。
「麦の海に沈む果実」はもう讀まれましたか?
もしまだなら、次に讀まれては如何でせう。
この作品は、「三月は深き紅の淵を」と關聯した作品です。
續けて讀むとよいかもしれません。
私が一番好きなのは「ネバーランド」です。
高校生の頃を思ひだしました。
氣持ちの良いヤツらが登場しますよ~