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仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「三月は深き紅の淵を」 恩田陸

2004-04-04 06:53:27 | 讀書録(ミステリ)
三月は深き紅の淵を

講談社

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著者名 恩田陸   発行年(西暦) 2001  
出版者 講談社文庫   値段 600-800円  
お薦め度 :☆☆☆☆


存在するのかしないのか、幻の本「三月は深き紅の淵を」をめぐる中篇4篇からなる本がこの「三月は深き紅の淵を」である。
「劇中劇」ならぬ「本中本」?
それぞれ獨立した4篇がいわゆる「起承轉結」を構成して、ひとつの物語となつてゐる。

私の好みは第3章の「虹と雲と鳥と」。
ここでは作者の得意な高校生が主人公となつてゐる。
美少女たち二人の心の動きに引込まれる。
ラストシーンの描寫がまた良い。

「公園には誰もいない。訪れる者もない。
唯一動き囘るのは光だつた。空は光に滿ちてゐた。
薄くかかつた雲の隙間から、今日の晴天を約束する光の束が、
崖下にひろがる市街地の上に、穩やかに降り注いでゐるだけだつた。」

これを讀んで、三島由紀夫の「豐饒の海」全4卷のラストシーンを思ひ浮かべた。
すべての物語は、例へそこに書かれてゐることがすべて「心ごころ」であつて現實には「なかつた」ことであつたとしても、
むしろそれゆゑに依然として「ある」のだと云ふこと。
現實の「なにもない」ことが、いつそうイマジネーション世界での「ある」ことを引立たせること。

見渡せば花ももみぢもなかりけり浦の苫屋の秋のゆふぐれ


2003年5月13日讀了

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ども! (hoy.)
2006-03-13 23:45:16
TBありがとさんです。

恩田陸には最近になってハマりました。

これから読む順番などありましたらアドバイスお願いします。

ではまた!
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麦の海に沈む果実 (仙丈)
2006-03-14 00:27:11
hoy.さん



コメントありがたうございます。

「麦の海に沈む果実」はもう讀まれましたか?

もしまだなら、次に讀まれては如何でせう。

この作品は、「三月は深き紅の淵を」と關聯した作品です。

續けて讀むとよいかもしれません。



私が一番好きなのは「ネバーランド」です。

高校生の頃を思ひだしました。

氣持ちの良いヤツらが登場しますよ~

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