『やあ、翁さん、あちこちで梅の花が満開になったが、昨日の朝は起きたらうっすらと雪が積もって、ハハハハ。何か面白い話はないかね、来週は“空っ茶会”で、八郎さんと勘さんから湯治の体験談が聞けるようだが。茂さんは久しぶりで東京に出かけて、人混みと喧噪に、疲れた顔の人ばかりだったそうで。今日は建具を注文先に届けないと、翁さんは買い物に？、専業主夫も大変だな』
『おや安治さん、何だいコンビニ弁当買って仕事に出かける？、途中で店屋物を食うのが億劫だから、日向ぼっこで昼飯を、ファハハハ。俺も外出をする時には、朝飯の残りでむすびを握り、車に乗せて走りながら頬張って。・・・・茂さんの話は俺も聞いたよ、孫娘が嫁いで、ごみごみしたところで暮らしていたのがショックだったようで。建具の注文が？、忙しそうで結構だよ』
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『茂さんはそう言うことか、孫たちを可愛がっていたようだから、暮らしの環境が心配なのだろうよ、茂さんも都会暮らしの経験があるからな、ガハハハ。建具も職人２人のために続けているが、いつまで仕事があるかだわ。もう日本間がある住宅は少ないから、欄間や戸障子などの和風建具で職人が腕を発揮出来ることはないし。そうなのさ、いわゆる「日本産業」が消えて行くわけで』
『学齢未満の子供が公園など外で遊ぶ時間は１日１５分だそうだな、都会ではほとんどないのでないかね、だから体力も低下をして、子供は外で遊ぶのが学習だよ、ファハハハ。茂さんは生まれてくるひ孫の心配もだろうな。・・・・さてと、俺はここで（コンビニ）コーヒーを一杯飲んで、２、３カ所で買い物をして、病院に婆さんを迎えに行かなくては。安治さんも気をつけて』
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あとがき＝＝「木の村」と標榜する町から、木工所も建具工場も消えて、山も荒れ放題だよ、ガハハハ＝＝放念の翁