しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

あなたもSF作家になれる わけではない 豊田有恒著 徳間文庫

2016-01-10 | 評論エッセイ等
本書は小学生時代(35年位前)図書館で単行本を借りて読み、なにやら気に入り何回も読んだ記憶があります。

当時日本のSF第一世代の作家の作品をよく読んでいた私には非常に面白く感じられたのだと思います。

この本の中に「飲み屋で見たトイレの鏡の自分の眼の汚さにハっとした」(細かいところ未確認)というような文章があり、これは自分が飲みすぎてトイレにいって鏡を見たときによく頭をよぎる文章になっていたりします。

そういう意味では今の自分を作っている本の一冊といっていい本です。

最近SFを読み始めたということで気になりAmazonで文庫の古本を購入。

もともとは1976年に奇想天外に連載されたものが1979年11月単行本ででたもの。
(私が昔読んだものこの版)
今回入手したのは徳間文庫版で1986年9月発行。

「文庫になった」というのはそれなりに人気があるんでしょうかねぇ。

またこの本、日本SF市場名高い(?)覆面座談会事件の資料としても有名なようです。
wikipediaで参考図書になっていた)

内容紹介(裏表紙記載)
SMとの混同にもめげずSFを志した〈苦闘の時代〉から、苦心の原稿をバッサリ切られてお礼を言ってしまった〈未曾有の時代〉、「鉄腕アトム」のシナリオに参加した〈映像の時代〉、「破壊された男」に衝撃を受けた〈翻訳の時代〉を経て、縦横無尽の〈創作の時代〉へ。日本SFの揺籃期から興隆期を自ら体験した著者が複眼多岐の視点から綴るインサイド・エッセイ。SFもまた、その個体発生は系統発生を繰り返す!?


内容としては「SF作家入門」の体を取った豊田有恒氏の半生記といったものになっています。
かなり偏った意見もあるかと思いますが、作者の「本音」かなり出ているのがいいところですね。
日本のSFやアニメ草創期の話も興味深いのですが、その中での作者の悪戦苦闘ぶりを素直に述懐しているのがとても味わい深い…。

この本にも書かれている通りアニメ原作者としてもSF作家としてもかなりな才人であるわけですが、どこか「自分は二流だ!」感を持っており全体的にその視点で書かれています。
私も豊田氏の作品昔結構読んだ人で面白かった記憶はあるのですが、SF作品は代表作である「モンゴルの残光」などすべて絶版のようですし、正直同じくSF作家第一世代とされる星新一、小松左京、光瀬龍、平井和正などと比べて2015年現在、忘れられ感は強い作家な気がします…。
(ジュブナイルの「時間砲計画」以外最近読み返していないので今視点で作品かどうかのコメントは差し控えます)

本書の中で自分でも書いていますがどこか「自分に確固とした軸」「発想の飛躍」がないというところの葛藤があったんでしょうね、その辺の葛藤と「それでもなんとかやってきたんだ」というところの入り混じった文章は同じような悩み(要は天才でない人すべて)を持つ中年として切なく、楽しく読めました。

今回調べてみたら豊田氏、現在はSF作家というよりも「嫌韓」「親原発」の人ということで有名なようで、そちらの本はいろいろ出ているようですがそちらは読んでいないのでこちらもコメントは差し控えます…。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ちまちま子)
2016-01-12 15:56:52
はじめまして。

とても面白そうな本だと思いました。
ぜひ読んでみたいと思います。
他にも素敵な本がたくさん紹介されているので、また来ます♪
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Re:Unknown (しろくま)
2016-01-13 06:58:46
ちまちま子様
はじめまして!
かなりマイナーかつ古い本ですが興味を持っていただいて良かったです♪
はまる人にははまる本だと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
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なつかしい (T岡)
2016-06-09 08:00:20
しろくま様、こんにちは!
この本名懐かしいです。奇想天外に連載されていたころに読んでました。
豊田さんは長編よりも、短編の「渡り廊下」「両面宿儺」が大好きです。多分手に入らないと思いますが。
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Re:なつかしい (shirokuma_2007)
2016-06-10 07:48:41
T岡様 こんにちは。
奇想天外でお読みでしたか・・・さすがです(^^;)
「両面宿儺 」昔読みました、新刊はないですが先日ブックオフで見かけ懐かしくて購入してそのまま なっております。
豊田氏の作品では「倭王の末裔」など日本古代ものが好きで読んでいました 「今読んで面白いのか」ちょっと怖かったりします。
「渡り廊下」は怪奇小説風の作品でしたっけ?
読んだようなどうやら記憶の彼方です(^_^)
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