しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

門 夏目漱石著 新潮文庫

2013-12-05 | 日本小説
エッセイ風の本二冊の後は「SFに戻ろうかなぁ」とも思ったのですが、「それから」を読んだら「門」まで読まないと落ち着かず。
大森のブックオフで105円で購入。

読み始めました。

内容(裏表紙記載)
親友の安井を裏切り、その妻であった御米と結ばれた宗助は、その負い目ゆえ、かつて父の遺産相続を叔父の意に任せ、そして今、叔父の死により、弟小六の学費を打ち切られても積極的解決に乗り出すこともなく、社会の罪人として、諦めの中に暮らしている。 そんな彼が思いがけず耳にした安井の消息に心を乱し、救いを求めて禅寺の門を潜るが・・・・・・。 「三四郎」「それから」に続く三部作の終編。

とりあえずの感想「山場がない...。」

内容紹介ではドラマチックに「親友を裏切り」と書かれていますが、その辺は作品の中盤ちょい後あたりでさらっと書いてあるだけ....。
お米と宗助の結ばれた辺りの描写は、
「事は冬に下から春が頭を擡げる時分に始まって、散り尽くした桜の花が若葉に色を易へる頃に終った。」
と書いてあるだけです。

さすが「月がとっても青いなぁ」伝説のある漱石先生、鮮やかというかなんというか。

「それから」の続編的位置づけということで、なんとなく内容紹介にあるような事象があったと想像できるのですが、思いっ切り書いて読者に先入観を持たすのは「どうかなぁ?」とは思いました。

そんなこんな「山場」になりそうな場面で「盛り上げよう」という感じは全編ありません。

最大の山場になりそうな「安井」出現の箇所でも主人公宗助は禅寺へ逃げてしまう。
禅寺でも見事にこれといったことは起こらない....。

解説で「突然禅寺に入ってしまうのがこの作品の難点ともされている」とありました。
(漱石の体調悪化のためという説もあるらしい)

私は禅寺に入る展開が不自然とは思いませんが、盛り上がらないは盛り上がらないですねぇ。
まぁ嫌なことが出てきたら逃げてしまうのは人間としては自然な感情ではある気もします。

そんな感じで全編、宗助は「無理しない」感じで生きています。
弟 小六の学費のことでも逃げ回っているし。

ということで全体的トーンは「それから」より切迫感はなく、ある意味明るく、面白い(つまらなくなかった)と思いながら読みました。
「それから」の代助は他者に寄りかかるなんとも不安定な生活をしていましたが、宗助は自分で稼いで自分の世界でて生きている。
まぁ読んでいて安心感はありますね。

いろいろ過去にあったことや、御米の病気、過去の流産話などが展開されながらも、宗助・御米夫妻は仲良く暮らしています。

宗助は仕事が忙しくて疲れていても、寝る前に1時間はたわいないことで会話している。
明暗」では主人公津田が、家に帰って「洋書を読む」といってすぐ別室に行ってしまい、実際にはその本を読まないでいろいろ自分の世界に入っていた....。

えらい違いです。

実際の夫婦関係というのはこの中間くらいかなぁ、というのが実感ですが、そんなことを思う私は悪い夫かもしれない....。

暮らし向きも「弟の学費を払う程豊かではない」とはなっていますが大晦日に掛け売りの支払は全て済ませ、下女を一人置く余裕はある。

子供がいないのが「悩み」ですが、子供がいたらいたで学費に悩んだりするわけですね。
(現代的話題だ...)

宗助も出費のかさみそうな娯楽(洋書を読むとか)は「今の自分には縁がない」とあきらめている。
今の生活を改善しようという気は一切しないため「無理」もしないので、とりあえずは裏切られたり挫折することもない。

「役所の人員整理に合うかもしれない」ということが暗示されますが、まぁ元々「それから」の代助ほどの高みにいるわけでもないのでなんとかなりそうな...。

ある意味宗助は「悟って」いるわけですが、禅寺では「もっとぎろりとしたものを持ってこなければ」と怒られている。

禅寺的悟りとは違うわけですが、まぁ「これはこれで幸せなんじゃないかなぁ」と思わされます。
「幸せってなんだろう?」ということも考えさせられる作品ですね。

ポジティブな人が読むと「何だこの野郎逃げ回りやがって」とも思うような気もしますが…。
(ネットでそんなことを言っている人もいた)

私の現在の気分は若干ネガティブなので、まぁこれはこれで共感が持てるような気もします。

ラストは一応当面の問題が片付いてそれなりに明るいはずなのですが…。

最後のセリフ
”御米は障子の硝子に映る麗かな日影をすかして見て、
「本当にありがたいわね。ようやくの事春になって」と云って、晴れ晴れしい眉を張った。宗助は縁に出て長く延びた爪を剪りながら、
「うん、しかしまたじき冬になるよ」と答えて、下を向いたまま鋏(はさみ)を動かしていた。」”

宗助は思いっきりネガティブです。
こうなにか根本的に改善もせず、悪化もしないで生活が続いていくんだろうなぁというような感じは受けます。

「戦わない生き方」ともいえる、生活は「それから」の反対側を描いている気がします。

他、
私は作品を読んでいるときは人の意見を見ないでいて、感想を書くときにはにネットで人の意見を見てみるようにしています。
今回も見てみましたが、さすが「漱石」いろいろな人がいろいろなことを言っていますね。

本作については「漱石は「門」以外読む価値なし」という人もいますし、漱石自身が一番好きな作品は「門」だといっていう説もあるようです。

私にはそれほどとは感じられませんでしたが....。
まぁいろんな読み方があるんですね。

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