しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

永遠の終わり アイザック・アシモフ著 深町真理子訳 ハヤカワ文庫

2018-11-17 | 海外SF
本書は’12年ローカス誌SF長編オールタイムベスト66位、1955年の作品です。

アシモフのSF長編、本書の感想を書いてコンプリートです!!!

アシモフの邦訳SF作品、あとは短編集未収録作品を残すだけですがほぼ制覇といってい
いので数年越しの課題が終わり感無量です。

本書の初読は小学校高学年か中学生頃ですが、その後も何回か読みなおしていて最後に読んだのが12~3年前、古本屋で見つけて買って読みました。(もともとの本は実家にあったため買った)

その時本書の構成の巧みさに舌を巻いた記憶があり改めてアシモフを見直し、「またSFを読もう」というきっかけのなった作品です。

若干あっさりし過ぎている感はありますが緻密な構成で完成度の高い名作だと思います。

アシモフの長編では「ファウンデーション三部作(1,2,3)」「神々自身」と本書あたりが将来まで残る普遍性のある作品だと思うのですが…ファウンデーションを除き絶版なのが惜しまれるところです。
(あとは「夜明けのロボット」もお薦めですが…これも入手できない。)
今回読んだのは実家から持ってきたもの。
昭和52年1月刊です。当時7歳ですから日付から見ると古本屋で買ったんでしょうねぇ。

本書を子供のころ最初に読んだ時はミステリー的に読み、ラストで「なるほどねー」と感心したのですが、今思えば浅い読み方だったと思っています。

時間を行った来たりして世界を変えるというところ、「男」が巻き込まれ「エージェントとして動く」ということから 小松左京の「果しなき流れの果に」との類似性を感じた記憶があります。

両者を比べるとエンターテイメント性は本書の方が上なので当時の私は単純にその辺評価して比べて「本書の方が上だ」と感じていた記憶があります。

今思えば「超越者」を前提とした「果しなき流れの果に」とあくまで「人間」の力で世界を変えていこうという本書とはテーマ性がかなり違うんですけどもね。

好みの問題かとは思いますが「宇宙観」のようなものを無理矢理表現して「大説」を描こうとして中途半端感のある「果てしなき〜」よりも、大きな流れに巻き込まれた「個人」=「1人の男」が意志の力と行動で世界を変えていく設定の本書の方が私は好きです。

最終的に変わった世界はある意味神も仏もない世界ですし、とてもアメリカ的なマッチョな世界なんですが…このラストを肯定的に書いているこの時代のアシモフの、進歩を無条件に信じる「若さ」を感じます。

後期ファウンデーションものなどでは「何が正しいのか」に迷いを感じるのでその辺も読み所かと。

また本書、アシモフとしては珍しいタイムトラベルもの(アシモフはタイムトラベルは科学的に実現しないものの際たるものということであまり好きでなかったようです)で唯一の長編となります。

時間ものでは他に短編の名作「停滞空間」があります。
アシモフ自身「時間ものは仕掛けとしてはとても魅力的」といっているように科学的実現性はともかくとして、「名作」が生まれやすいテーマとはいえるんでしょうね。
内容紹介(裏表紙記載)
時のはざまを彷徨し、未来の安寧と平和のため過去を矯正する資格をもつ「永遠人」。
厳しい訓練と教育を受けたハーランは15歳のときに、時間管理機関<永遠>の研修生となり、やがてもっとも有能な技術士の一人となった。彼の担当は482世紀。この世紀は人工生殖が隆盛を極きわめた唯一の時代で、いまや<現実矯正>が必要とされていた。だが、<普通人>の美しい女性、ノイエスとの出会いは、彼の運命を狂わせた。
<現実矯正>の結果は、愛するノイエスの消滅をも意味していたのだ。執行日は容赦なくせまるが・・・・・・!? ミステリタッチで描 く巨匠アシモフ唯一の時間テーマSF!


今回読んでの感想、前回読んだ記憶がかなり残っていたのと、最近の私が「SFズレ」していることもあり「すげぇ」とまではなりませんでした。

ですがアシモフには珍しい抑え気味の筆致でタイムマシンものの基本とパラドックスの面白さを描きつつ、ミステリの要素も兼ね備えて最後までぐいぐい引っ張っていく作品であり前述のとおり「名作」といってよい作品だと思いました。

物書きとして一番油が乗っていたであろうアシモフがこの頃からサイエンス・ライターの方に興味を移してしまったのはとても残念です...。

これまた前述ですがラストの「結論」日本的にちょっと受け入れずらいものがあかなぁ...なので本書が再刊されない理由、その辺の事情もあるかもしれません。

「永遠」=「エターナル」という組織の発想、手の込んだ仕掛けと謎解き、後に統合されるアシモフ未来史の番外編となる構成どれをとっても巧みすぎるくらい巧みです。
初読の方は舌を巻くこと必定でしょう。
未読の方は古本屋で見つけたら買いですねぇ。

何言ってもネタバレになりそうなので...内容のことは書きません。(手抜きではない...つもり)

今回読んで気づいたのはこれまで主人公のハーラン、マッチョな青年なイメージでしたが、初心でオタクな若者に感じました。

これは年取って読んだ効果ですね。

ただまぁ男はいくつになっても「バカなものかなぁ」とも自分でも思いますし、本作に出てくるエターナル評議会の長老であるトウィッセルなど見ても思います...。女性にはかないません(笑)
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