しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

火星のプリンセス エドガー・ライス・バローズ著 厚木淳訳 創元推理文庫

2013-10-03 | 海外SF
「タイタンの妖女」や「宇宙の戦士」を読んでいて、ある程度定番の古いSFを読んでおいた方が作中に微妙なオマージュ、パロディなどがあった場合理解できて楽しいかなぁと感じて本書を手に取りました。
本書‘12年ローカス社ベストで80位かつ私の作成したリスト中で一番古い1917年の発刊。
川崎のブックオフで3、4ケ月前に105円で購入。

2012年にこの作品を原作とする映画「ジョン・カーター」が公開されたのに合わせて復刊されたようです。
ということで本書も2012年3月初版の新版です。
(残念ながら映画は大コケしたようですが...)

創元推理文庫では火星シリーズ3作収録の合本版も発刊せれていますが(これもよくブックオフにある)、読んでみて合わないと無駄になりそうなので「火星のプリンセス」だけのものを購入しました。

内容(裏表紙記載)
南軍騎兵大尉ジョン・カーターはある夜、忽然としてアリゾナから火星に転移する。時まさに火星は乱世戦国、四本腕の獰猛な緑色人や、高度な科学力を持つ地球人そっくりの赤色人が戦争に明け暮れていた。その渦中に飛びこんだ快男子カーターは絶世の美女デジャー・ソリスと結ばれるべく、剣を片手に縦横無尽の大活躍を見せる・・・・・・。スペースオペラの原点ともいうべき不朽の傑作!

「乱世戦国」「快男子」「絶世の美女」。
まさに紋切型フレーズのオンパレードです。

なので、もっと陳腐な内容かと思って読み始めましたが、詰め込み過ぎな点と考証の甘さは感じましたがそれなりにSFしていて感心しました。
その分純粋な冒険小説的面白さが足りなかった気もしました。
ただ著者の処女作ということもあり未熟な点もありましたが、その分パワーを感じました。

「すごく面白かったか?」というと「???」21世紀に生きている身としては「そうでもなかった」というのが正直な感想ですが、一応苦痛なく読み通すことはでき、続編も気にはなる結末でした。

科学的考証については「いいかげん」というのがこの作品の一般的な評価のようですが、難しい説明は一切されていないので、逆に技術が進歩しても古びませんね。

科学的なところで気になったのが、2本脚、4本腕の緑色人と地球人とよく似ている赤色人(2本脚、2本腕)が生殖も可能な種として描かれていることと、地球人カーターとデジャー・ソリスが生殖可能で卵が産まれるというのがどうにもいただけなかったですが...。
まぁその辺特に説明もないので「そういうこともあるんだろう」とそんなに気にしないで読むのが正しいんでしょう。
(緑色人を4本腕にする必然性がないような気がする....)

あと動機やら倫理観がいかにも20世紀初頭のアメリカという感じというのが興味深かったです。
具体的にはカーターの行動の主たる動機が「絶世の美女 デジャー・ソリス」に対する恋心というものだったりするとこころ。
戦後の小説であれば大衆小説であってももう少し社会正義的なものが表に出て来そうな気がします。
スコット・カードならキリスト教的倫理と結びつけたりするんでしょうね。
緑色人・敵対する赤色人など、「恋」のためにばたばた殺してしまう。
いまどきはもう少し理屈をつけないといろいろ物議を醸しだしそう...。

前段のインディアンの描き方も、いかにも1910年代という感じ。

あと前段にも書きましたが、詰め込み過ぎ感があります。
かなり場面の展開が早いので、一つ一つのエピソードを丁寧に書いていけば読みやすくなるしもっと良くなるような気がしました。(大気工場の話など)

この作品を触媒にスペースオペラブームが起き、アメリカのSF黄金時代につながっていくわけですが、いろいろ仕掛けは考えられていてそれもわからないではない出来だとは思いました。
一方で単純な価値観と暴力は、アメリカンコミックにつながっていったんでしょうねぇ。

そんなこんな含めて考えると感慨深いです。

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