しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ハックルベリイ・フィンの冒険 マーク・トウェイン著 村岡花子訳 新潮文庫

2014-06-16 | 海外小説
赤毛のアン」は村岡花子訳ではないものを読みましたが…。
「花子とアン」づいていることもあり、村岡花子訳の別の本を読んでみようかということで手に取りました。

マーク・トウェインは「赤毛のアン」の出版時モンゴメリに「かの不滅のアリス以来最も可愛らしく、最も感動的で最もゆかいな子」との手紙を送っていたりして(以後赤毛のアンのコピーとして使われていたようです)まんざら縁がないわけではないですね。

本作では「赤毛のアン」とは違い村岡訳の評判は今一つのようですが私はこれはこれでいいんじゃなかなぁと感じました。
(批判的な意見はハックの一人称が「僕」で「おら」じゃない等のようです。)

本書、中学生頃に「トムソーヤの冒険」を読んで面白かったので直後に「続編」という理解で読もうとしたことがあるのですが….。
当時の私では歯が立たずずっと未読のままでいました。

大学時代に岩波から出ているトウェイン晩年の作品である「ふしぎな少年」「人間とはなにか」を読んでトウェインづいた時期もあったのですがその時には逆に「子供向けだろう」とバカにしていて本書を手に取らなかったような記憶があります。

その頃の本は実家にありますが、今回読んだのは去年ブックオフで105円で買ったもの。

装丁などは持っているものと全く同じで懐かしい…。

昨年本書を買ったのは、松岡正剛の千夜千冊で紹介されていてフッと読みたくなったため。
(ちなみにここで紹介されていたのも村岡訳)

Wikipedaで調べてみたら本書について、ヘミングウェイが「あらゆる現代アメリカ文学はマーク・トウェインの「ハックルベリー・フィン」と呼ばれる一冊に由来する…」と評価しているようで、児童小説としてというよりも「アメリカ文学」の「名作」と評価されているようですね。
1885年発刊ですが、舞台設定は南北戦争前の1835年-40年のミシシッピ川周辺を舞台にしています。(「トムソーヤの冒険」は1876年発刊)
当時の人種差別やらを痛烈に批判している作品として知られているようです。

内容(裏表紙記載)
トムとの冒険で大金持ちになった浮浪児ハックは、未亡人の家に引きとられて教育を受けることになった。固苦しい束縛の毎日―――飲んだくれの父親が金をせびりに現れるに及んで、逃亡奴隷の黒人ジムとハックの脱出行が始まった。 筏でミシシッピー川を下る二人を待ち受けるのは大暴風雨、死体を載せた難破船、詐欺師たち・・・・・・。現代アメリカ文学の源泉とまで言われる作品。

トムソーヤの冒険が「愉快」な作品であったのに対して、本作はかなりざらつく感じを読者に与える作品です。
「児童文学」として子供に読ませることは…親としてはちょっと「どうかなぁ」と思う内容です。
中学時代の私が歯が立たなかったのがよく理解できました。

ということで、とりあえずの感想「トウェインの人間やら社会に対する視点がとても面白い。」

トウェインは晩年「ふしぎな少年」「人間とはなにか」で「ペシミズム」とも言われるようなシニカルな作品を書いています。
上記二作があまりに直接的にその辺書いているのに対し、本作は裏に透けて見える程度で書かれてて趣深かったです。

ハックと逃亡奴隷ジムという世の中のいわゆる常識から離れた極めてシンプルな思考をする人物が旅をしながら世の中を眺めていくわけですが….。

世の中の普通の人たちがいかにおかしなことをしているかがよく見えるようになっています。
途中、詐欺やら盗みやらをして歩いている悪人2人と一緒になるのですが、その二人も世の中の「おかしな」ところに付け込んでいる。
基本「善良」なハックとジム二人と「悪」である二人の対比が興味深い。

でも「善良」であるハックも当時のキリスト教で罪となっていた「奴隷の逃亡を助ける行為」をすることと、ジムとの友情の間で苦悩したりして世の中いかにおかしなことが大真面目にまかり通るかを痛烈に風刺しています。
この本が出版された1885年時点では黒人奴隷制は公には否定されたようですが、人の世では50年位で神の前での“罪”でさえ大きく変わる…。

そんな、なんだかわからない世の中で流されて生きれば楽なんでしょうが、ハックは自分なりのシンプルな見方で世の中をみてしまうのでなかなか馴染めない。
結果いかだでミシシッピー川を流れていく。(笑)

善とか悪とか常識とか...幸せとか不幸、いろんなものを「当たり前」としてとらえない作中世界に頭がグラグラしてきます。

ネットで感想などみていたら最後にトムソーヤが出てきてバタバタする所に「違和感がある」という人もいるようですが、トムソーヤの「現場を知らないで無茶な指示をする上司」的キャラクターが現代的でもあり楽しめました。
子供であろうが無茶な人は無茶だし、トムソーヤのように一見体制に反旗を翻しているようでも徹頭徹尾体制側の存在はあったりする。
またそれが決して「悪い」というわけではない。

舞台設定された時代のアメリカ南部の風俗なども興味深い作品ではあるのですが、人間が抱える問題は時代を超えて変わらないんだなーと考えさせる作品でもありました。

名作です。

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