(21.2.8 表題の*は記事を修正した印です。間違った書き取り・読みは別記事にしたため、削除、「標準解答」も見せて貰ったため、序でに色々追加)
難問は、9番の「しと」です。
問題文全文の文脈から考える必要がありそうですので、全文挙げます。問題に出たところは太字にし、解答は括弧内です。「過去問情報」も付記します。文章題とはいえ、過去問から結構出題されますので、過去問学習が先決でしょう。
古より士君子の身を立て道を行わんと欲する者、其の初め皆しし(孜孜16-2Yor孶孶18-1Y)亢々、辛を嘗め苦を啖らい胃腎を擢(とうてき*)し、以て学を勧めざる莫し。進みて9しとに入るに及びては、軒冕(けんべん)の栄頓に其の志気を とろ(蕩)かし9-1K、是に於いて乎、苟(いやしく)も7-2Y 13-1Y 15-1Y合い容れらるることを求めて、復自由の権有ること無く、前日の自ら志せし所は挙げて之を風烟に委し、紛紜(ふんうん)14-1Y顛倒至らざる所無く、名壊れ行汚れて狗鼠(こうそorくそ)も其の余をくらわざるに至る。凡そ此くの如き者は自ら号して学びたりと称するも、有識よりして之を見れば皆不学に坐する者なり。
*擢胃腎は、「大漢和」に拠ると、韓愈「孟郊墓誌」にあります。
は1級外ですから、問題文に振り仮名が付いています。
(出典 中江兆民「再論干渉教育」 岩波文庫「中江兆民評論集」所収 残念ながら私は持っていません。)
「日国」で同音異義語を調べました。
私は「市都」と書きましたが。「古より」からすると近代的な語感のある「市都」は誤りでしょう。仕途(官職につくみち、仕官のみち)または紫都(天子の居所のある所、みやこ、首都、帝都)かもしれません。ただ、「仕途に入る」というのがそぐわないような気がします。「仕途につく」ではないでしょうか。軒冕(軒は大夫以上の人の乗用車。冕は貴人の冠)はかなり高位のようですから、これに対応する言葉としては、紫都が相応しいような気がします。
と書きましたが、char様が原典に当たって戴き、仕途が正解です。「標準解答」では仕塗も正解です。仕途(仕塗)は、私の語彙にはありませんでした。仕える途だと分かれば解けるのでしょうが、全く思いつきませんでした。「大漢和」に拠ると、唐書にも用例があるようです。「仕途に入る」という表現は違和感がありますが、これも私の語彙力が貧弱なせいでしょう。「学問の途に入る」という表現はあるでしょうから、仕途に入るとも言うのでしょう。
「仕途」は「辞典」には載っておらず、「辞典」だけではとても太刀打ちできない問題です。
答えを知ってから、解答への道筋を考えることは、種明かしを知って手品の説明をするようなものですが一応書いておきます。「しと」から浮かぶ漢字は、使途、使徒、尿でしょう。尿はいくらなんでも違いますが、使途も使徒も文意に合いません。次は、想起した熟語の一文字を変えてみることでしょう。使○、○途、○徒で、どれが相応しいか。この内、「途に入る」という言い方をすることに気付けば、○途に気付くような気がします。軒冕は、官吏になって高官になることですから、「仕える」が出てくれば、仕途に辿り着けそうです。
それでも私にとって、難しいと思うのは、「仕途に入るに及びては」と「軒冕の栄」との間の時間の経過です。官吏になって直ぐ高官にはならないでしょうから、この間にはかなりの時間の経過があるように思います。読点一つにかなりの時間の経過を読み取ることは、昔山本健吉の文章で読んだ記憶があるのですが、今ちょっと見付かりません。ただ、もしかしたら、士君子は、学を修めて官界に入れば、直ちに高官になれた、従って時間の経過はあまりないのかもわかりません。
軒冕は、「辞典」の見出し語にはありませんが、親字【冕】の下付に載っています。軒冕の意味を他の辞書で調べて、文意を理解することが求められているように思いますが、今の私にはとてもそこまでできそうにはありません。
尚、蛇足序でに、この文章の感想も述べれば、自由民権の兆民の、官吏批判面目躍如というところですが、私には、兆民の批判の仕方に危うさを感じます。そしてこの危うさは、その後もずっと続き、現代においても未だ克服されていないような気がします。
標準解答がないので、?な部分が残りますね。
>8 しし 孜孜
これは私も意味から↑だと思うのですが、「しと」は正解がわかりませんでした。
緊張して間違えてはいけないところをまた間違えたりしてしまったのですが、今まででは一番凡ミスが少なかったのでよしとします。
「ひさぐ」「つくねいも」、同じ間違いをしてました(^^)
>「ひさぐ」「つくねいも」、同じ間違いをしてました(^^)
かいしょうも同じでしたね。擣碪の読みや、躡足附耳、瑣砕細膩、積毀、籬下も難しかったですね。
どうぞこれからも他の学習の合間にでもお続け下さい。
昼休み中、近所の書肆で「中江兆民評論集」を入手しました。正解は題記の通りでした。「孜々」はよく後を見たら「亢々」となっておりますので踊り字を用いて「孜々」としなければ駄目だってことはないですよね。小生は「孜孜」と書いたのですが大丈夫ですよねぇ~?これを不正解とされたら漢検は意地悪だ。。。とぼやくしかないなぁ。一方、「仕途」は難しい。簡単すぎるが故に思い浮かばない。しかし、これが漢検の求める語彙力なのでしょうね。常日頃から何気ない簡単な言葉であっても辞書を引くことを怠らずにしっかりと意味を定着させることが肝要ですね。励行はしているのですが、、、、。
「中江兆民評論集」ですが、これはすばらしいテキストです。一つひとつの文章は短編ですが、そのまま漢検の文章題になるものばかり。さすが兆民。これを使って学習を再開するのもよさそう。「淮南子」と併用してみますかね。
漢検の勉強を始めて以来、参考になる記事を感謝します。
ところで、今回の熟字訓、当て字の問題の7番ですが、
私は「準一級合格捷径」に出ているとおり覚えて
「きす」と回答したのですが、漢検辞典や広辞苑には
「いさき」となっています。
「合格捷径」の記載が誤りだったのでしょうか?
ご教授いただければ幸いです。
ありがとうございます。私も仕事中に拝見致しましたが、コメントは書けませんでした。
>昼休み中、近所の書肆で「中江兆民評論集」を入手しました。
実は私も昼休みに大きな廛肆を二軒迴りましたが、沽っていませんでした。地方都市は駄目ですね。
>踊り字を用いて「孜々」としなければ駄目だってことはないですよね。
孜孜でOKでしょう。過去問集(私が持っているのは平成18年度版が最新ですが)のQ&Aに踊り字は符号で許容されるとありますから、正式な漢字を書いて不正解となることはないと思います。原典と同じでなければならないとのきまりもないのですから。
>一方、「仕途」は難しい。簡単すぎるが故に思い浮かばない。
これが今回の最難問でしょうね。2ちゃん689氏は、正解されたようですね。
>しかし、これが漢検の求める語彙力なのでしょうね。
うーん。しかし、これを正解できる語彙力って途轍もないことです。貴殿のmixiの日記を読んでいると同音異義語が次から次へと浮かんでみえるようですが、私はとてもとても・・。同音異義語を探す学習は今後も続けようとは思っていますが、私は、今回、1級四字熟語が穴だらけなことが判明しましたので、先ずは、四字熟語対策として、貴殿の四字熟語日記を熟読し、書くことも併行していこうかなと思っています。
>常日頃から何気ない簡単な言葉であっても辞書を引くことを怠らずにしっかりと意味を定着させることが肝要ですね。励行はしているのですが、、、、。
凄いなあ。私も時々は気になると覈べるのですが、一冊の辞典では間に合わず、結局「大漢和」や「日国」を引くことになります。でも、めっちゃ時間がかかりますよね。
>「中江兆民評論集」ですが、これはすばらしいテキストです。一つひとつの文章は短編ですが、そのまま漢検の文章題になるものばかり。さすが兆民。これを使って学習を再開するのもよさそう。「淮南子」と併用してみますかね。
また、貴殿の日記を愉しませて貰います。
>いつも見させて頂いてます。
ありがとうございます。
>「準一級合格捷径」
これ懐かしいですね。今、この本を使っている人は殆ど皆無でしょう。私が漢検学習を始めた平成13年頃は、1級合格捷径はまだ新刊書店に売っていましたが、準1級のそれは、店頭からは既に姿を消していました。私は、1級学習時に、偶々、新古書店で見つけて買いました。最近は使っていなかったので、屋根裏本棚から取り出してきました。
>私は「準一級合格捷径」に出ているとおり覚えて「きす」と回答した
私が持っているのは、1997年3月1日発行の第6刷ですが、当て字(熟字訓)280選の魚貝のところには載っていませんでした。どこに載って入るんだろう。貴殿の本とは版違いなのかもしれませんね。
「日国」「大辞林」「大字典」「大漢和」を見ましたが、鶏魚=いさきで、きすの読みはありませんでした。「読めない漢字の読本」(小学館 1990)にもありませんでした。
もしかしたら、いさき=きす ということもあるのかなと思ってネットで「いさき」と「きす」を探してみました。
いさき
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/isaki/isaki.html
きす(シロギス)
http://www.zukan-bouz.com/suzuki/isaki/isaki.html
どうみても別の魚ですよね。
ということでわかりませんでした。ごめんなさい。
皆が苦戦した四字熟語は、重複が少なかったみたいですね。新出が多かった。個人的には現在作成している自作問題で麻痺して全く問題ありませんでした。
熟字訓の最後もどこでいつ覚えたのか正答出来ました。
鶏魚…確かに私の持ってる準一級合格捷径には「きす」として掲載されてます。1994年度版。
何れにせよ今後もコツコツ続きをして、先ずはコンスタントに180以上得点出来るように基礎?を固めたいと、そう思いながら今朝は久しぶりに携帯からのコメントです。
>新出が多かった。
>個人的には現在作成している自作問題で麻痺して全く問題ありませんでした。
麻痺って、自作問題をやり尽くして、過去問で出たかどうかもわからなくなったということ? 実際に出た過去問と、仮想の自作問題の区別が付かないなんて、荘周の夢みたいですね。
>熟字訓の最後もどこでいつ覚えたのか
屹度SIMO様のブログでしょ。
>先ずはコンスタントに180以上得点出来るように基礎?を固めたい
180点の壁というのはなかなか厚いですね。ここを超えると次は190点かなあ。
>何れにせよ今後もコツコツ続きをして
これしかないですよね。ではまた。
「鶏魚」の読み、「きす」はXでした。
結果的に漢検発行図書の誤りによって点を失うという
失笑物になりました。
気になるのは、漢検が「準一級合格捷径1994年版」の
この誤りを何処かで訂正したのだろうか?ということです。
ご報告まで。
遅れましたが合格できました。
一級合格者の末席に連なることが出来て光栄です。
おめでとうございます。
>「鶏魚」の読み、「きす」はXでした。
結果的に漢検発行図書の誤りによって点を失うという
失笑物になりました。
合格されたからいいですが、この1点で落ちたとなれば腹立たしいですよね。
>気になるのは、漢検が「準一級合格捷径1994年版」のこの誤りを何処かで訂正したのだろうか?ということです。
少なくとも、私が持っている1997年版には何も書いてありません。「辞典」や「四字熟語」でも増刷の時に訂正をしていることがあるようですが、こそっと行うだけで、訂正を公表したなんてことは聞いたことがありません。
間違いは誰でもあるものですし、訂正することもいいとは思うのですが、訂正前の本で学習を続けている人間がいることは考えて欲しいと思います。検定などという大仰な名前を付けて試験を施行しているのですから、どの刷で、どこを訂正したのかは、HPで明らかにすべきだと思います。