晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「Queen Victria 至上の恋」 (97・英) 80点

2013-10-25 07:46:31 | (欧州・アジア他)1980~99 

 ・ 名優ジュディ・デンチの代表作

    
 ジョン・マッデン監督、ジェレミー・ブロック脚本によるヴィクトリア女王の秘めた恋物語を、ジュディ・デンチ主演で映画化。

 19世紀大英帝国全盛時代、ヴィクトリア女王(J・デンチ)は、最愛の夫・アルパート公を腸チフスで亡くし、3年経っても喪に服したまま公務に復帰しない。見かねた王室は、ジョン・ブラウン(ビリー・コリノー)をハイランドから呼び世話係とする。礼儀を知らない彼は純朴な敬意を女王に捧げるうち、2人の関係は親愛から友情、そして愛情へと変わって行く。100年経っても、英国王室はそれ程違いが見られないのも興味深い。

 J・ジュンチは、気品ある物腰・態度と高貴なるが故の気まぐれが孤独感を増して行く女王を見事に表現していて、彼女の代表作といえる。翌年製作された「恋に落ちたシェイクスピア」でのエリザベス一世など、女王役はハマり役となっている。

 近作「クイーン」でエリザベス女王を演じオスカーを獲得したヘレン・ミレンと比較しても、演技力では微妙な心の変化を演じ切ったJ・デンチの素晴らしさが分かる。

 

「危険がいっぱい」(64・仏)

2013-10-23 11:00:04 | 外国映画 1960~79

 ・ 可愛かったジェーン・フォンダ。

    
 「禁じられた遊び」「太陽がいっぱい」のルネ・クレマン監督のサスペンス。原題は「The Love Cage」なのに、邦題を「危険がいっぱい」にしたのは、アラン・ドロン主演した「太陽・・・」にあやかったのだろう。

 プレイボーイのマーク(A・ドロン)は、ギャングに追われ未亡人バーバラ(ローラ・アルブライト)の運転手に雇われる。同居している従姉妹のメリンダ(ジェーン・フォンダ)に一目惚れされるが、マークは小娘扱いする。

 多少、乱暴なところもあるが、最後のオチは意外性があって面白い。A・ドロンは殆ど演技していないのでは?と思うほど、イメージどおり力みのない自然な演技。J・フォンダが小悪魔的な魅力で可愛らしい!ただ、ルネ・クレマン作品にしては物足りなかった。

「陽のあたる場所」(51・米) 85点

2013-10-19 07:46:59 | 外国映画 1946~59
 

 ・ E・テーラーと共演したM・クリフトの代表作。

 シオドア・ドラーサーの原作「アメリカの悲劇」をジョージ・スティーヴンス監督が二度目の映画化。オスカー監督・脚色など6部門を受賞した。

 水着メーカーのオーナー、イーストマン家の伯父を訪ねたジョージ(モンゴメリー・クリフト)が、職場の同僚アリス(シェリー・ウィンタース)と社交界の令嬢アンジェラ(エリザベス・テーラー)の板挟みとなり、第一級殺人事件で逮捕される。

 本来、アメリカの格差社会を批判する社会派ドラマのはずが、当時のハリウッドはこのようなメロドラマにせざるを得なかったのだろう。

 ちょっと猫背で上目遣いの表情が、ジェームス・ディーンを連想させる。彼の代表作となった。E・テーラーの美しさは言うに及ばずS・ウィンタースの演技力にも感心させられる。

 3人のキャラクターを活かしたJ・スティヴンス得意のオーバーラップやクローズアップが随所に見られ、ドラマを盛り上げる。流石オスカー3度受賞監督である。   

「それでも生きる子供たちへ」(05・伊=仏) 85点

2013-10-18 07:43:57 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 子供は、生まれる国や境遇を選べない。

   
 イタリア女優M・G・クチノッタ、K・ティレシとS・ヴィネルッソ監督が中心となって、7人の監督が自国の子供達を描いた、オムニバス・ドラマ。イタリア大使館やユニセフの協力があって製作されたので堅苦しい映画を想像したが、子供達がどんな境遇でも逞しく生きながら希望を見出して行くサマが窺え、珠玉の作品となった。

 イギリスのスコット父娘の異色の作品が企画だったが、それぞれ大人の視点から等身大の子供達を捉える工夫が見られ、甲乙付けがたい。

 ブラジル、カカティア・ルンドは、仲良し兄妹の「廃品を換金することが遊び」となっていて、貧しさが暗さになっていないし、アメリカ、スパイク・リーはエイズ・ベイビーと蔑まされながら、健気に生きようとする少女を温かく描いている。

 セルビア・モンテネグロのエミール・クストリッツアとイタリア、ヴィネルッソは窃盗する少年にもあどけなさと前向きに生きる術を暗示させ、観る者をホッとさせてくれる。
 ルワンダのメディ・カレフに至っては、少年兵で銃を持ち憧れの小学校に時限爆弾を仕掛けるハメになりながら、スニーカーを愛する普通の少年なのだ。

 最後を飾るのは中国ジョン・ウーで、豊かでも愛に恵まれない桑桑(ソンソン)が捨てたフランス人形を、身寄りのない貧しい少女・子猫(シャオマオ)が可愛がる大人の寓話。

 大人が造った現在は、貧富の差・救いのない争い・病など、責任を負いきれない社会を生んでしまったが、この映画には子供達に未来への希望を託したい、切ない願いを持たせてくれる。

「ウォール街」(87・米) 75点

2013-10-16 08:14:41 | (米国) 1980~99 
 ・ 社会派オリヴァー・ストーンの真骨頂。

    
 
オリヴァー・ストーンがNYウォール街を舞台に、証券業界で巨万の富を夢見る若者を描いた社会派ドラマ。マーティン・シーンとのW主演のマイケル・ダグラスが実在のマイケル・ミルケンをモデルにした大富豪役でオスカー主演男優賞を受賞している。

 ゴードン・ゲッコー(M・ダグラス)に憧れる証券会社の営業マン、バド(マーティン・シーン)は父親が勤める航空会社の情報を持って認められ、イーストサイドの高級マンションに住む身分となる。しかしマネーゲームに翻弄され、インサイダー取引で逮捕されてしまう。

 金が全てと言うゲッコーと、モノを創ることが生き甲斐という父親の価値観の相違が現実味を帯びていて、社会派O・ストーンの真骨頂を発揮した代表作といえる。

 この作品の素晴らしさは、M・ダグラスの台詞で<アメリカの富は1%の人が担っている>云々・・・。現代社会が持つ矛盾=光と影を端的に表しながら、単純明快な娯楽作品に仕上がっていることだろう。

「ニューヨーク・ニューヨーク」(77・米) 75点

2013-10-15 07:43:43 | 外国映画 1960~79

・ アメリカ音楽の変遷が懐かしい。

   
 「タクシー・ドライバー」のマーチン・スコセッシが再びNYを舞台に、ロバート・デ・ニーロと組んでサックス奏者のラヴ・ロマンスを描いた人間ドラマ。

 第二次世界大戦終了の夜、ジミー(デ・ニーロ)が一目ぼれしたフランシーヌ(ライザ・ミネリ)は軍服を着ていたが、楽団の専属歌手だった。地方巡業を追ってバンドの専属となり結ばれ、子供を儲ける。出産のためNYへ戻るころ、2人の音楽の志向が離れて行く。

 戦後のアメリカ音楽の変遷とともに、愛しながら音楽を優先するあまりハッピー・エンドにならないところが、当時の映画としては新鮮だった。

 それにしても、ミュージシャンらしい起伏の激しい変遷振りは如何にもデ・ニーロの独壇場だ。終盤はライザ・ミネリの溌剌としたミュージカル・シーンが続き、ミュージカル音痴の筆者には少し食傷気味だが、彼女の歌と踊りの見事さはファンでなくても魅力的。

 ハナシのテンポがアンバランスなところは、良くも悪くもM・スコセッシらしい。
   

「HANA-BI」(98・日)

2013-10-14 12:09:46 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

 ・ 様式美のなかに、不器用な男の生きザマを描く。

   
 北野武監督の7作目作品。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得して一躍注目された。

 同僚・堀部(大杉蓮)の半身不随と後輩・田中の殉職を招いた責任で、刑事を辞職。生と死を思い悩みながらもヤクザに借金したあげく、銀行強盗までして精算し、不治の病の妻と旅に出る。

 様式美のなかに不器用な男の生きザマが、北野ブルーと言われる美しい映像を通して語られる。お笑い・ビートたけしを連想させないためにも台詞を極力排し、独特のカット割り手法で物語を繋いでゆく。思わずその世界に引き込まれる独自の間が秀逸で、黒澤明が褒めた所以はそこにあったのだろう。

 本人が描いたいくつもの「花と動物の絵」が西(ビートたけし)と同僚・堀部の心情を見事に表していて、単なるヤクザ映画を飛び越えた北野ワールドを形成していた。

 シュールななかにもトキドキくすぐりを入れたシーンに、優しさと残酷さを見せる主人公の照れが垣間見られ北野監督のセンスを感じさせる。
 

「シン・レッド・ライン」(98・米) 80点

2013-10-08 07:55:36 | (米国) 1980~99 

 ・ 観るたびに、深い哲学的な作品。

   
 テレンス・マリック監督による20年振り作品で話題となった。ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞して、アカデミー賞を逃したのが頷ける。

 太平洋戦争の激戦地、ダナルカナル島での兵士たちのドラマ。一見すると、美しい映像と生死を賭ける兵士の物語だが、理屈っぽく冗長で退屈してしまう。しかし、何度か観るうち、兵士たちが死の恐怖に直面したとき、自然観や信仰心、人間とは何か?など、極限状態で感じることを台詞や心の声で語らせている。観るたびに哲学的に深い作品で、同じ年アカデミー賞を獲った「プライベート・ライアン」のような解り易さとは異質な作品である。

 理想家で何度も離隊を重ねながら勇敢な一兵卒として日本兵に殺害されるウィット(ジム・カヴィーゼル)、妻への愛のため除隊したため最前線に送られ苦悩するベル(ベン・チャップリン)、優秀な軍曹でありながら何処か自分を客観視しているウェルシュ(ショーン・ペン)を始め、出てくる兵士はみんな自分を持っている。野心家の中隊長トール中佐(ニック・ロルディ)が最も軍人に相応しい人物だが、彼でさえ命令に逆らったスタロス大尉(エリアス・ロルディ)を名誉除隊させる人情家である。この2人を中心に映画化するのが並みの監督だが、エピソードのひとつにしかならないのがT・マリックの面目躍如なところ。

 自然界では、美しい風景のなかにもエサを獲るために命を奪う動物がいる。人間も自然の一部なのだが人間同士殺し合うのは、生きる自然の摂理とは違うのではないかということを繰り返し描いている。兵士に怯えながらひっそりと暮らす現地の人々が、幸せの象徴として対比され、米兵たちが去るのをツガイのオウムがアップで見送るのが印象的だった。

「ディープ・ブルー」(03・英、独) 75点

2013-10-07 05:38:53 | (欧州・アジア他) 2000~09

 ・ 生命の神秘と残酷さ。

   
 BBCが200カ所を撮影4年半をロケして、製作7年を費やした海洋ドキュメント。海に住む生命の神秘と美しさを描いているが、その壮絶な生きる闘いを見逃すことはできない。

 海辺に生息するアシカ、ペンギンの可愛らしさもシャチ、ホッキョクグマの獰猛さも、全て生きる本能と自然の摂理がなせるワザ。太陽の光が届かない海底1万メートルにも微生物が生息し、その映像の美しさは自然のアートで、筆舌に尽くしがたい。

 マイケル・ガンボンのナレーション、ジョージ・フェントンの音楽も映像を引きたてる最低限の役割でしかない。クラシック・ファンにはベルリン・ふぃるの演奏がメインで、映像がBGMとして映るのかもしれないが・・・。

「スネーク・アイズ」(98・米) 70点

2013-10-06 07:31:13 | (米国) 1980~99 

 ・ お馴染み、ボコボコのN・ケイジ。

   
 「ブラック・ダリア」のブライアン・デ・パルマ監督、ニコラス・ケイジ主演の刑事サスペンス。音楽は坂本龍一。

 「スネーク・アイズ」とは、サイコロゲームでの<親のひとり勝ち>とのこと。本作では誰のことか分からないところのがミソ。

アトランティックシティの汚職刑事・リック(N・ケイジ)が、ボクシングの世界タイトルマッチ会場で起きた国防長官・殺人事件に巻き込まれる。ハイテンションでボコボコになるお得意のN・ケイジが健在だ。親友のエリート中佐のゲイリー・シニーズが登場するが、早々に長官殺しの犯人だと分かり、終盤の盛り上がりに欠けるのが残念。

 それでも、デ・パルマ監督ならではの長廻しカットに迫力があり、エンディング・タイトル後のシーンまで後を引く、ひとヒネリある映画となっている。