晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『夕凪の街 桜の国』 85点

2007-08-31 15:48:33 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

夕凪の街 桜の国

2007年/日本

原爆投下の悲惨さを風化させない感動作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

こうの史代のコミック原作を「半落ち」の佐々部清が監督・脚本。昭和33年と平成19年、2人の若い女性を通して原爆の悲惨さを訴え、家族の絆・人間愛をテーマにした感動の物語。
昭和33年、夕凪の街・広島に住む平野皆実(麻生久美子)は母(藤村志保)と茨城にいる弟・旭の3人家族。死んだ妹を忘れられず、心の中で生き残ったことに葛藤している。そんな悩みを会社の同僚打越(吉沢悠)に打ち明け救われるが...。
平成19年、桜の国・東京の郊外に住む石川七波(田中麗奈)は父、旭(堺正幸)の後を追ううち広島へ。叔母・皆実の存在と父母の軌跡を知り、同行した幼馴染みの東子(中越典子)の悩みも原爆の影響を被る。
原爆投下の悲惨さを風化させないための感動物語だ。特に力道山と長嶋がスターだった夕凪の街編が涙なくして観られない。(象徴だった広島市民球場も間もなく消えるとか。)麻生久美子の儚げな健気さが魅力的だ。吉沢悠の純朴さも良く出ていて、昔の青春・恋愛ドラマを再現しているような風情がある。佐々部監督は戦後生まれなのに時代再現にかなり頑張った成果が表れている。
藤村志保のさり気ない存在感はこのドラマには欠かせない助演賞もの。
映画化にあたり原作を大切にして大胆なアレンジはできなかったのかもしれないが、桜の国を前半に持って行き夕凪の街をもっと膨らませ盛り上げて欲しかった。
原作は世界各国で翻訳され読まれているらしいが、この映画も外国(特に米国)で上映され、未だに原爆の後遺症に悩む人がいることを知って欲しい。


『グレイスランド』 80点

2007-08-27 18:33:27 | (米国) 1980~99 

グレイスランド

1998年/アメリカ

心温まる佳作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

「グレイスランド」とは米国メンフィスにあるエルヴィス・プレスリーの邸宅。
エルヴィス・ファンの妻(グレチェン・モル)を失った若者(ジョナサン・シャーク)は、エルヴィスと名乗る初老の男(ハーヴェイ・カイテル)とメンフィスへ向う。旅の途中でマリリン・モンローのそっくりさんアシュレイ(ブリジッド・フォンダ)と不思議な出会いがある。
心に傷を持つ人々が癒される心温まる佳作となった。
ハーヴェイ・カイテルとブリジット・フォンダのそっくりショーはそんなに似ていないのに本人にどんどん似てくる。「エルヴィスとモンローは生きている」というファン伝説が多い証拠で、ファンならずとも生前を知る人にも面白くて哀しいステージに何故か涙ぐんでしまう。


『アウトサイダー』 80点

2007-08-22 12:21:24 | (米国) 1980~99 

アウトサイダー

1983年/アメリカ

コッポラの青春ドラマ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

’67オクラホマ州タルサでの出来事を当時17才だったS・E・ヒントンが小説にしたのを、フランシス・F・コッポラが映画化した青春ドラマ。
貧民街に住むポニー・ボーイ(C・トーマス・ハウエル)とジョニー(ラルフ・マッチオ)は兄貴分ダラス(マット・ディロン)を慕いながら行き場のない日々を過ごす。彼らは「グリース」と呼ばれ、高級住宅街の「ソッシュ」と呼ばれるグループと対立している。
NYのウェストサイド物語に良く似た設定だが、こちらの方が若者の悩みは良く描かれている。
ジョニーが明日に希望を託すラストシーンがイジラシイ。
後にハリウッドを担うトム・クルーズが端役で出ているのを始め、マット・ディロン、ダイアン・レイン、ロブ・ロウなど若かりし頃の彼らを観るだけでも思い出深い。
父親のカーマイン・コッポラの音楽でS・ワンダーの作詞・歌による「ステイゴールド」がテーマにぴったりだ。


『オーシャン・トライブ』 80点

2007-08-19 08:48:39 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

オーシャン・トライブ

1998年/アメリカ

サーファー達の厚い友情ドラマ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

実話をもとにウィル・ガイガーが製作・脚本・監督したサーファー達の友情物語。
ガンに侵されたボブを励まそうと、高校時代のサーファー仲間4人が再会し、メキシコ・バハへのサーフ・トリップをする。
余命幾ばくもないガン患者を強引に連れ出しカリフォルニアからメキシコまで旅をする話が実話なのだろうか?という疑問もあるが、厚い友情ドラマとして楽しめる。
4人にもそれぞれの悩みを持ちながら、青春時代夢中になっていたサーフィンをすることで人生を思い直す再生の旅でもあることが描かれている。
イルカは仲間の死期が近いことを知ると集まって最後まで見守るとか、こんな仲間を持つ人は幸せだ。


『レッスン!』 80点

2007-08-18 16:39:45 | (米国) 2000~09 

レッスン!

2006年/アメリカ

社交ダンスは感動映画にピッタリな素材!

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

実在の社交ダンス経営者・講師、ピエール・デュレインのTVドキュメント番組をヒントにアレンジした感動の学園物語。VTR出身のリズ・フリードランダーが長編映画初監督でアントニオ・バンデラスが主演。
NYの公立高校で落ちコボレ生徒達を救おうと、ピエール(A・バンデラス)は校長(アルフレ・ウッダード)を訪ね、課外授業に社交ダンス指導を買って出る。HIP HOPしか知らない彼らに根気良く愛情込めて指導するうち、上手く行かないだろうという校長の予想を覆し、段々その気になってくる生徒達。父親がアル中でバイトで家計を助けるロック(ロブ・ブラウン)、娼婦の母親を持ちながら弟妹たちを世話するラレッタ(ヤヤ・ダコスタ)の家庭環境を背景に写しながら次第にお互いを思いやる気持ちが増長してくる。
典型的な学園ドラマにShall We Dannce?をミックスした作りだが素直に溶け込める。社交ダンスは感動テーマにピッタリ!
A・バンデラスとカティア・ヴァーシアスのダンス・シーンは圧巻!ロック役のロブ・ブラウンも「小説家を見つけたら」のキャラクターをそのまま引き継ぐような素直な演技。
現実はこのような綺麗ごとでは済まされないが、こういう映画もあっていい。


『ランド・オブ・プレンティ』 90点

2007-08-15 11:30:40 | (米国) 2000~09 

ランド・オブ・プレンティ

2004年/アメリカ=ドイツ

豊かな国へのメッセージと平和への祈り

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★★95点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★★95点

「パリ・テキサス」「ベルリン天使の詩」のヴィム・ヴェンンダースが、9.11直後に僅か16日間の撮影で製作し、ヴェネチュア国際映画祭でユネスコ賞を受賞した。
アフリカ・イスラエルで育った20歳のラナ(ミシェル・ウィリアムズ)が、亡き母からの手紙を伯父ポール(ジョン・ディール)に渡すため母国アメリカへ10年ぶりに帰ってくる。ロスのダウンタウンの路上でアラブ人の殺人事件をキッカケに2人の旅が始まる。
ポールはアメリカの正義を信じて病まない元ヴェトナム帰還兵で、後遺症に悩まされながらも9.11がトラウマとなって、一人でテロリストを監視している。
どう観ても滑稽な言動にアメリカの持つ深い悩みを見る。ヴェンダースは手取りカメラで、得意のロード・ムービーを形成しながら「多民族の豊かな国へのメッセージ」を送る。それはアメリカを愛するドイツ人ならではの<平和への祈り>であり、<人間愛の大切さ>であって、「憎しみの連鎖からは何も得られない」というメッセージだ。
殺されたアラブ人の故郷である荒涼とした街・トロナも人種のルツボである大都会・ロスアンゼルスも同じカリフォルニア州であることもヴェンダースならではの設定。
テロリストのアジトと思って押し入った家には、寝たきりの老婆がいるだけ。TVでイラク侵攻のブッシュ大統領の演説が流れていて、ポールがTVを叩くとコメディに変るシーンがこの映画を象徴していた。
フランツ・ラスティグの撮影とトム&ナクトの音楽が心地よく、レナード・コーエンのエンディング・テーマがいつまでも心に染み入る傑作だ。
日本ではヒットしなかったが、今こそ一人でも多くの人に見て欲しい。


『クロッシング・ガード』 75点

2007-08-14 09:42:47 | (米国) 1980~99 

クロッシング・ガード

1995年/アメリカ

いつもにも増して濃い演技のJ・ニコルソン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

ショーン・ペン監督・脚本でジャック・ニコルソンの主演というと<孤独な男の物語>が浮かぶがイメージどおりの作品。娘を交通事故で失い、加害者を殺すことを生き甲斐にする男を描いている。
いつもにも増してJ・ニコルソンの濃い演技が目立つ。加害者のデイヴィット・モースが気の弱そうなタレ目の大男で、J・ニコルソンとは両極のキャラクターで共演している。
プロローグでJ・ニコルソンと元妻アンジェリカ・ヒューストンが娘を失ったあとの暮らし振りがオーバーラップするところは、凝った映像で期待して見たが、如何せんストーリーに無理があった。
6年越しに出所した男の家に行きながら拳銃に弾が入っていないこと、D・モースの恋人役ロビン・ライトの唐突さ、そして追跡劇に続くラスト・シーン。
S・ペンの想い入れたっぷりな作品で、自分にとって好きなジャンルだけにもったいない気がした。


『名もなきアフリカの地で』 85点

2007-08-09 12:01:29 | (欧州・アジア他) 2000~09

名もなきアフリカの地で

2001年/ドイツ

アフリカの雄大な風景のもと、静かな感動作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

’95発表されたシュテファニー・ツヴァイクの自伝小説を「点子ちゃんとアントン」のカロリーヌ・リンクが脚色・監督した第二次世界大戦中ケニアに逃避したユダヤ人家族の物語。03オスカー外国語最優秀映画賞を受賞した。
ホテル経営の祖父・弁護士の父(メラーブ・ニニッゼ)と優しい母(ユリアーネ・ケーラー)とドイツで暮らしていたレギーナ(レア・クルカ)は、ナチスの台頭とともにケニアの農場へ両親と一緒に渡ってくる。風土・民族の違いに戸惑いを覚え無力感に苛まれる両親とはウラハラに、レギーナはいち早く現地に馴染み、料理人オウア(シデーテ・オンユーロ)からは「小さなメンサブ(奥さん)」と呼ばれ可愛がられる。
大戦勃発で男はナイロビの収容所、女・子供はホテルに軟禁となるが、父が英軍入りしてオル・ジョロ・オロクの農場へ。その間夫婦の生活価値観の違いはドンドン大きくなり、「祖国とは?家族とは?生きることとは?」をアフリカの雄大な風景とともに問いかけてくる。
この映画は「人は違いにこそ価値がある」と訴えることで、決して大仰ではなく静かに感動を与えてくれる。
出演者では2人のレギーナ(レア・クルカ、カロリーネ・エケルツ)が純粋な可愛らしさを出していて、ややもすると暗くなりがちな物語を支えてくれる。イエッテル役のユリアーネ・ケーラーは何不自由なく暮らしていた上流婦人がアフリカの大地に翻弄されながら逞しく生きて行く女を好演。西部劇でのキャサリーン・ヘップパーンを思わせる。ドイツ人ドクター(マティアス・ハーヒッヒ)に揺れる女心を見せたり、生きるために英国軍人に体を許す強かさを描くなど、完璧なヒロインとしては描かれていないところもいい。
ただ夫婦の絆の証として、ベッド・シーンが何度も出てくるのが?で、もっと工夫が欲しかった。
脇役陣で秀逸なのは、料理人オウアのシデーテ・オンユーロの自然な演技。キャスティングの際、行方不明のところを探し当てたのも納得させられる。


『ミッドナイト・ラン』 80点

2007-08-08 18:02:46 | (米国) 1980~99 

ミッドナイト・ラン

1988年/アメリカ

アクション ロード・ムービーの傑作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ロバート・デ・ニーロお気に入りのアクション ロード・ムービー。マーティン・ブレスト製作・監督で、後に「ビバリー・ヒルズ・コップ」シリーズ監督らしいコミカルな中にペーソスを感じさせ楽しめる。
元シカゴ警察官で賞金稼ぎのジャック(ロバート・デ・ニーロ)は足を洗うため、マフィアの金を横領して慈善団体に寄付をしたマデューカス(チャールズ・グローデン)を捕まえにNYへ行く。
2人を巡り同業者・FBI・マフィア・元妻と娘が絡み、ロスまで飛行機・列車・車と乗り換え旅が続く。登場人物が多いのに、話はシンプルに構成されていて無駄が無い。
程よいアクションと2人の友情が心に沁みるデ・ニーロファンにはお馴染みの傑作だが、ファンでなくても見て損はない。