ガープの世界
1982年/アメリカ
幸せな生活とは、ささやかなことの積み重ね
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
ジョン・アーヴィン原作、ジョージ・ロイ・ヒル監督のヒューマンな物語。
大好きなジョージ・ロイ・ヒル監督は「明日に向かって撃て!」「スティング」で有名だが、この映画は趣きがまるっきり違う。
ガープ(ロビン・ウィリアムズ)は数奇な運命のもと私生児として生まれ、若くして凶弾に倒れるまでの一生を描いている。母親のグレン・クローズとともに一風変わった親子の一生が、ドラマチックな人生なのに決して大げさな表現はしていない。この監督の手腕を改めて感じる。
性転換の女性ロバータを演じるジョン・リスゴーの怪演も見どころのひとつ。
決して平穏ではない「ガープの世界」なのにロビン・ウィリアムズを得て、幸せな生活を送ったと言わせたのは、朝、家族みんなで食卓を囲み、夜、子供の寝顔を見るという、ささやかなことの積み重ねがあったからか?
燃えつきるまで
1984年/アメリカ
刑務所長夫人と死刑囚の恋
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 70点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 75点
音楽 75点
ダイアン・キートンの刑務所長夫人がメル・ギブソンの死刑囚を脱獄させ、逃避行した物語で実話を基にしたことに驚いた。敬虔なクリスチャンで良き妻・良き母親のソフェル(D・キートン)がエド(M・ギブソン)に段々惹かれていくところは共感できる。ところが脱走するのを手助けするだけでなく共に逃避行するところから付いて行けなくなる。
大ロマンなのだが、見ていてハラハラ、ドキドキはしない。好きな男性のためならどんなことでもする女性の物語としか映らないのは偏見か?
あなたに降る夢
1994年/アメリカ
人の心はお金で買えない?
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 80点
純朴な警官・チャーリーにニコラス・ケイジが扮し、NYロケをふんだんに取り入れた心温まる作品となった。たった10数年前製作の映画なのに、クラッシックな映像と音楽にこだわっていて、この時代の臨場感たっぷり。
ニコラス・ケイジが得意な役柄でメルヘンチックな雰囲気の映画となった。また、チャーリーを巡る2人の女イヴォンヌ(ブリジット・フォンダ)とミュリエル(ロージー・ペレズ)が対照的な役柄を演じていて、観ている者をじれったくさせる。
この映画に実在のモデルがいたとは、アメリカも良き時代だった。お金は遣い方次第で人の心を良くも悪くもさせると改めて思い知らされる。
グロリア(1998)
1998年/アメリカ
S・ストーンで蘇ったグロリア
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 75点
’80ジーナ・ローランズ主演のリメイク。S・ストーンが情に脆い女を好演。設定もグロリアが恋人の罪を被って3年服役したシーンから始まるなどS・ストーン向きにアレンジされている。
秘密の情報も今風?にノートからフロッピーに変わっている。子供嫌いなグロリアが偶然助けた7歳の少年・ニッキーを段々手放せなくなり、母性本能が目覚めて行くさまがナカナカいい。
カーチェイスなどアクションシーンも適度にあってS・ストーンの新境地を見出した娯楽映画。
羅生門
1950年/日本
光と影の映像を世界に示した名画
shinakamさん
男性
総合 90点
ストーリー 90点
キャスト 90点
演出 90点
ビジュアル 90点
音楽 85点
芥川龍之介の短編「藪の中」を原作に世界の黒澤明が監督。同じ芥川の「羅生門」の設定やコンセプトを取り入れている。脚本も素晴らしいが映像が画期的。モノクロなるが故、木漏れ日や土砂降りの雨が止み陽射しが出るシーンなど光と影を見事に映像化している。出演者も無駄が一切なく僅か8人しか出演しないのに、これだけリアルなサスペンス・ストーリーになったのは監督の手腕としか言いようがない。三船敏郎・京まち子・森雅之の台詞が人間のエゴを見事に映し出し、志村喬が人間の弱さと良心を見せてこのドラマは上手くバランスが取れている。
気になるのは三船と上田吉二郎の大げさな笑いの連発。台詞が分かりにくいのも併せ、外国人が見ると大して問題ないのかもしれないが...。
私が愛したギャングスター
1999年/イギリス=アイルランド
カラヴァッジオの名画を盗んだ男
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 70点
ビジュアル 70点
音楽 75点
「アメリカン・ビューティ」のケヴィン・スペイシーが直後に主演した。ダブリンにいた実在の人物マーティン・カーヒルをモデルにアレンジした痛快な物語。
とぼけた強盗マイケルをK・スペイシーが気持ち良さそうに演じている。若い強盗にコリン・ファレルが扮しているのも見逃せない。
仲間娘の聖体拝領に立ち会う保釈金が必要なため、銀行強盗で金を用意するという奇想天外なシーンから始まる。姉妹の家を行き来して子供を愛する変な強盗のリーダーで、仲間割れの原因がカラヴァッジオの名画「キリストの逮捕」を盗むこと。マーティン・カーヒルは違う絵を盗んだらしいが、この絵でなければこの映画は成立しなかった。
花よりもなほ
2006年/日本
ナチュラルではなくリアルへ挑戦の是枝監督
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
75点
キャスト
80点
演出
85点
ビジュアル
85点
音楽
80点
「誰も知らない」の是枝裕和監督の時代劇新作。ご本人は時代劇初挑戦の理由を「ナチュラルではないけれどリアルであるという作品世界の構築にいちど取り組んで見たい」と言っていたがその面目躍如の感あり。特に裏長屋のセット衣装など最近の時代劇にはない拘りを感じた。
仇討ちの虚しさをテーマにしているが、寧ろ長屋の住人が爛熟の江戸末期に如何に逞しく生きていたかを群像劇で描いている。
出演陣も是枝マジックの世界でイキイキを演技していて楽しませてくれる。主役の岡田准一がこれ程上手だとは思わなかったり、宮沢りえが素に近い可愛らしかったり、古田新一が憎めなかったり夫々のキャラクターがクッキリ浮き彫りにされていた。
赤穂浪士が所詮闇討ちだと嘆いたり、落語ネタ「長やの仇討ち」を取り込んだり工夫のあとが随所に見えたが、長屋を観光名所として饅頭商売したり、四十七人目の浪士・寺坂吉右衛門が討入りをためらったにも拘らず、後付けで大石から生き証人になれと内命を受けたと言うなど、ちょっと皮肉が効き過ぎた部分もあったのでは?
サハラに舞う羽根
2002年/アメリカ=イギリス
映画館の大画面・ノーカット版で見たい
shinakamさん
男性
総合 70点
ストーリー 70点
キャスト 75点
演出 70点
ビジュアル 80点
音楽 70点
「ブロークバック・マウンテン」「カサノバ」のヒース・レジャー主演の英国古典文学の映画化。
TVの吹き替えで見たら、映画館で見た映画とは別物になっていた。全てがそうではないが、映像のダイナミックさを再現するのは難しい、短縮版なので話が繋がらないなどTV上映では欠点ばかりが目立ってしまった。
ハリー(H・レジャー)がスーダン派兵を知らされ除隊することで婚約者エスネ(ケイト・ハドソン)から臆病者の印である4枚目の羽根を送られる。親友ジャック(ウェス・ベントレー)とも別れ自分を見失う。そして自分探しのため羽根を胸にスーダンへ旅立つ。
ジャックの言葉である「帝国が滅びても手を取りあった仲間を忘れない」という男の友情がテーマ。自国の利益のためだけの戦争は共感できないというテーマをもっと強調して欲しかった。スーダンの傭兵アブー(ジャイモン・ハンスウ)の言動が象徴的だが、中途半端になってしまった。
愛をつづる詩
2004年/アメリカ=イギリス
国の文化と信仰を超えた愛
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 75点
音楽 75点
「タンゴ・レッスン」のサリー・ポッター監督のラブ・ロマンス作品。北アイルランド生まれのアメリカ人の彼女(ジョアン・アレン)にレバノン人でアメリカでコックをしている彼(サイモン・アブカリアン)が一目惚れしてドラマが始まる。
夫の不倫や親愛の叔母の死など伏線はあるものの、2人の恋愛が文化や信仰の違いをどのように受け止め、乗り換えられるかがメインテーマ。観念的な気がしないでもないが、一級のラブロマンスに出来上がっていた。
フォーガットン
2004年/アメリカ
親子の絆を確かめたのは誰?
shinakamさん
男性
総合 65点
ストーリー 60点
キャスト 75点
演出 65点
ビジュアル 65点
音楽 75点
9歳の息子を失ったテリー(ジュリアン・ムーア)を巡るミステリー。予告編を見てとても興味を惹かれたが、終盤で興ざめだった。夫から息子は流産で生まれていなかったと言われ、息子と過ごした10年余を否定される。そんなはずは無いと証人探しをするうち衝撃の事実が判明する。
中盤までどうなるのか興味深々で見ていたが、NY市警のホープ刑事が不思議な力で空へ飛んで行く頃からクビを傾げざるを得ない展開となる。
「親子の絆を確かめたい」のは誰だったかを知った途端肩、透かしを食らった。