晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「悲しみよこんにちは」(58・米・英) 70点

2015-04-17 09:41:46 | 外国映画 1946~59

 ・ サガン、J・セバーグの実生活ともダブル、多感な17歳の心理描写を映像化。

                    

 フランソワーズ・サガンが18歳のとき書いたベストセラーを「旅情」の原作者アーサー・ロレンツが脚色、「黄金の腕」(55)のオットー・プレミンジャーが監督したヒット作。

 第二次大戦後、フランスの実業家の娘・セシールが17歳のときリヴィエラ海岸で起きた<ひと夏の想いで>を1年後回想するドラマ。

 セシールを演じたのは18歳の新人ジーン・セバーグで、髪型がセシール・カットと呼ばれ一世を風靡した。翌年「勝手にしやがれ」(59)でも同じ髪型で登場し、当時世界中の若い女性のファッション・リーダーとして社会現象となっている。

 筆者は17歳のとき、「勝手に・・・」を観て洋画に目覚めたが、本作は女性が観る映画で当時少年だったので、リアルタイムでは未見である。

 改めて観ると、この時代の富豪が如何に自由奔放な恋愛をしていたのかが羨ましくもあり、フシダラな暮らし振りがバカバカしくも思えてくる。

 60年代に入ってフランスでは夏休みを1カ月リゾート地で過ごし、ヴァカンスということを知ったのも懐かしく思い出させてくれた。

 セシールの父レイモンド(デヴィッド・ニーヴン)は41歳の実業家でセシールと同居する独身プレイボーイ。パリでは、夜な夜なパーティで気に入った女性を誘い、リヴィエラでは女友達のひとりエルザ(ミレーヌ・ドモンジョ)と一緒にヴァカンスを過ごしている。

 セシールもこんな父が大好きで、いつまでもこんな生活ができれば素敵だと願っている。もちろんこんな生活が長続きしないのでは?という一抹の不安も持ちながら・・・。

 そんな幸せなヴァカンスの最中、亡くなった母の友達で夫と離婚した独身ファッション・デザイナーのアンヌが現れる。

 アンヌを演じたのは前年「めぐり逢い」(57)で大女優の地位を確立したデポラ・カー。ソール・バスによるタイトルでも最初に名前がでたのはD・カー。新鋭のJ・セバーグには眩しいくらいの存在で、そのまま役柄にも反映されている。

 今観るとエレガントなアンヌが素敵な大人の女で、なんでレイモンドのようなフシダラな男が好きになって結婚しようとするのか不可思議だ。

 それではドラマにならないが、セシールの多感な少女から大人へ変化しようとする不安定な心理状態は分かるが、所詮我がまま娘が父親を獲られ浅はかなワル知恵を働かせたばっかりに重荷を背負うという自業自得の物語に思えてならない。

 男として観ても<娘をダシにして誘いながら忘れてしまい、つい結婚の約束をしてしまったような>レイモンドに共感できそうもない。

 私小説のようなF・サガンの晩年やJ・セバーグの実生活を連想させるようなこのドラマは、時代が色濃く反映された代表作といえる。