晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「ユー・ガット・メール」(98・米) 70点

2014-07-25 08:02:48 | (米国) 1980~99 

 ・ ロマコメの王道を歩むN・エフロン、T・ハンクス、M・ライアンのトリオ。



エルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色の店」(40)という映画があった。街角の雑貨屋で働く男女をジェムズ・スチュアートとマーガレット・サラヴァンが演じていたラブストーリー。

 このリメイクが本作で、エンディングに「オーバー・ザ・レインボー」のカバーが流れるのはその時代のヒット曲へのオマージュか?原作が私書箱での文通に対してインターネットでのやりとり。わずか15年ほどで時代は急速に変化を遂げ、ネットでの交際から結ばれるカップルは日常茶飯事だが、日本ではパソコンですら普及していない時代なので、映画館で見たときは流行の最先端を行っている気がした。

 ロマコメの女王メグ・ライアンが「めぐり逢えたら」(93)以来トム・ハンクスと共演し、ノーラ・エフロン監督とのトリオが再現した。

 もうひとつの売りは、NYの街並み。高級住宅街アッパーウェストを舞台に当時珍しかったスタバも登場し、カップ片手に出勤するのがお洒落だった時代はこのあたりからか?ほかにも高級食材スーパーのゼイバース、グレイス・パパイヤなど枚挙に暇がない。

 なかでも2人が会う約束をした、カフェ・ラロは、クラシックな佇まいで今でも観光客の憧れのマトとなっている。

 こんなお洒落な街で小さな絵本の店を母から受け継いで守ってきたキャスリーンと、大型チェーン・ブックストア<FOXブックス>の御曹司ジョーとのチャットは、本音で言い合える仲。ヴァーチャルなるが故の気楽さがそうさせている反面、現実とのギャップを埋める役割を果たしているのだろう。

 一歩間違えると怪しい関係になりかねないネット交際。現実歯止めが効かないほど事件が頻発しているが、本作のチャットには弊害よりも手紙をスピードアップした便利な通信機器としてそのメリットのみが浮かび上がっている。といっても携帯・スマホの今とは大違いでネット社会の変遷は著しい。

 現にキャスリーンには新聞記者のフランク、ジョーには雑誌編集者のパトリシアという恋人がいるが2人とも毎日入るメールが恋人のよう。

 そろそろ年齢的にラブコメの限界が近づいてきた感はあるものの、M・ライアンのキュートさは相変わらず。パジャマ姿や歩く後ろ姿が可愛いと感じさせるのは演技ではなく彼女自身の素の姿を想わずにはいられない。

 チョッピリ貫録が出てきたT・ハンクスも早口で毒舌を放ちながら、コメディ育ちの彼の魅力と本当に人を愛することを知ったときのワクワク感が巧く噛み合っていた。もっとも今ならこんな男は女から総スカンを喰らいそう。

 この直後「ノッティング・ヒルの恋人」が映画化されジュリア・ロバーツとヒュー・グラントに受け継がれたラブ・コメ。このあと年下のヒュー・ジャックマンと組んだ「ニューヨークの恋人」(01)以降ヒット作に恵まれないまま、今日に至っているM・ライアン。

 思えば「ゴースト/ニューヨークの幻」(90)、「プリティ・ウーマン」(90)、「羊たちの沈黙」(91)の出演を断ってきた結果での本作は、彼女にとって最も安心できる故郷だった。まだ、52歳、もうひと花咲かせて欲しい。