社会不適合者エスティのブログ

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三低女子の婚活事情 47ページ「終わった婚活法と始まった恋路」

2020年03月08日 | 三低女子の婚活事情
リコラとアーサーはカップリングを報告してベルガたちから祝福を受けるが、

アーサー以外の家族が失業の危機になっている事を知り解決を模索する事になる。

ルーシー「そんなのあたしの知った事じゃない。」

オーブストトルテ「たしか君は事務所が倒産して、今はフリーのモデルになってるんだってね。」

ルーシー「何でそんな事知ってるのよ。きもっ。」

オーブストトルテ「酷いなー、傷ついたよ。まあいい、ウィトゲンシュタイン家御用達の大手モデル事務所のメンバーにちょうど空きが出たところなんだけど、良かったら来ないか?」

ルーシー「どうせそれと引き替えにつき合えって言うんでしょ?」

オーブストトルテ「ただの大手モデル事務所じゃないぞ。メルジーネだ。」

ルーシー「メルジーネ。」

アーサー「知ってるのか?」

ルーシー「知ってるも何も、あたしはメルジーネのトップモデルに憧れてこの仕事を始めたの。生え抜き新人の場合はメルジーネが全国に所有するモデル養成所を首席で卒業した人しか入れない。しかも中途採用の場合でも他の事務所でアウコレに出るくらいの成績を収めないと入れないモデルの登竜門って言われてる最大手のモデル事務所よ。」

アーサー「アウコレ?」

ロミー「アウグストコレクションの略で、世界中からトップモデルが集まるイベントだ。」

ルーシー「でもあたしは特にこれといった実績も残してないから入れないと思うけど。」

オーブストトルテ「元々はウィトゲンシュタイン家がメルヘンランドの民族衣装を世界中に広めるために始めた事務所だ。ヘレンが民族衣装を必死で探していたのはこのためだ。」

エルトベアトルテ「私たちが養子に入る前の父がそこの社長で、母はそこの元モデルだ。」

オーブストトルテ「うちの母が君の事を気に入ってね。それで特待生としてうちの養成所で直々に育てたいって言い出したんだ。君さえ良ければ是非迎え入れたい。」

ルーシー「あたしが・・・・メルジーネの特待生。」

ジュリー「ルーシー、さっきアーサーの会社の専属モデルになる話してなかったっけ?」

アーサー「良いんだよ。これはルーシーが決める事だ。」

エルトベアトルテ「悪い話ではないと思うぞ。特待生は養成所の生徒でありながらモデルの仕事にも参加できるし、実績を残せば首席扱いで卒業できる待遇だ。」

オーブストトルテ「僕とつき合うとは言っても、友達から出構わないからさ。ねっ。」

ルーシー「・・・・馬鹿にしないでよ。」

オーブストトルテ「えっ?」

ルーシー「あんたはあたしがそれくらいお膳立てしないとトップモデルになれないと思ってるの?」

オーブストトルテ「いやいや、そういうわけじゃないよ。事務所が倒産したって聞いたから、モデルの仕事を提供しようと考えたんだ。」

ルーシー「そんな事しなくったってあたしは自分の力でトップモデルになってみせる。それにあたしの事が好きだって言うなら、もっとあたしの事を信頼してほしかった。何で先回りして石を取り除くようなマネをするの?そんなやり方でトップに立っても、あたしはちっとも嬉しくない。」

アーサー「ルーシーの逆鱗に触れちまったな。」

オーブストトルテ「どういう事だ?」

アーサー「ルーシーは昔から負けず嫌いでな。どうしようもない時以外で助けようとすると反発するんだ。自力で成し遂げたものでなければ目標とは言えない。それがあいつの座右の銘だ。」

ベルガ「彼女のプロフィールカードにも書いてあるだろ。ちゃんと確認しなかったのが災いしたな。」

オーブストトルテ「・・・・気に入った。」

ルーシー「えっ?」

オーブストトルテ「僕はますます君が気に入った。僕はね、目標を達成するためなら手段を選ばないんだ。どうしても断るなら、君を連れ去ってでも僕のものにしてみせる。」

ルーシー「ちょっと、離してよ。」

リコラ「止めてください。嫌がってるのが分からないんですか?」

オーブストトルテ「何だね君は?」

リコラ「リコラ・オーガスト・ロートリンゲンです。ルーシーの友人です。」

オーブストトルテ「ふーん、君もなかなか良い女子のようだ。君もモデルを目指さないか?」

リコラ「結構です。私には私の仕事があるので。」

オーブストトルテ「ロミー、これはどういう事かな?」

ロミー「申し訳ない。でも娘が決めた事だから、この縁談はなかった事にしてくれ。」

オーブストトルテ「この僕に恥をかかせた事を後で後悔する事になるよ。」

ジュリー「はいそこまで、オーブ、無理強いは良くないよ。」

エルトベアトルテ「今日のところはこれくらいにしておけ。」

オーブストトルテ「(僕は諦めないぞ。ルーシー・モンターニャ・ファヴァレット。)」

エルトとオーブはすぐに帰宅したが、リコラの脳裏には嫌な予感が浮かんだ。

ルーシーの縁談の話は一旦保留となり、安心した彼女は一息ついたのである。

ルーシー「まさかここまで来るなんて思ってなかったわ。」

ロミー「すまんな、公爵と話した時に2人共酔っぱらってたんだ。公爵がそれを覚えててこうなった。」

アーサー「オーブに対してめっちゃお粗末な扱いしてたな。」

ベルガ「僕はああいうキザでカッコつけで気取ってる奴が好きじゃないんだ。」

リコラ「ルーシーだけじゃなくてお兄ちゃんの逆鱗にも触れてたんだね。」

アーサー「たまにいるんだよなー、意図せず相手を怒らせる奴っていうのが。」

ジュリー「一旦保留になったけど、あの様子じゃまた迫ってくるよ。」

ルーシー「何度来たって答えは同じよ。」

アーサー「親父、あのエルトとオーブは何者なんだ?」

ロミー「エルトは元々ウィトゲンシュタイン第五侯爵家の長男でオーブはそこの次男。第一公爵家が本家なのは知ってるな?」

アーサー「ああ、リンツから聞いた。」

ロミー「公爵の子供であるドボシュトルタは結婚する気がないと分かって、公爵は分家の中でも特に実績のあった第五侯爵家から養子を2人迎える事になった。それであの2人が公爵家に養子入りしたわけだ。」

アーサー「エルトはもう結婚していて、子供が2人いるんだよな。」

ロミー「そうだ。エルトは元老院議員として将来の執政官候補と言われている実力者だ。オーブは音楽プロデューサーで王国グラミー賞を取った事もある。だがさっき見ての通り、対人関係に難ありでなかなか結婚できないんだ。」

ベルガ「オーブは悪い奴じゃないけど強引なところがあるから、そこを控えめにするだけでもかなり違うと思うけどね。」

ロミー「全くだ。俺は立場上そんな事は言えないんだけどな。そして三男は軍人で将来の提督候補だったが、防衛戦争で指揮の乱れから敵の砲撃を受け、その時同行していた四男のリンツをかばって戦死。その後リンツは不動産兼カフェで成功した。」

ジュリー「揃いも揃って実力者ばかりなのね。」

ロミー「幼少期から英才教育を受けてるからな。教育費も桁違いだ。」

リコラ「オーブさん後悔させてやるって言ってたけど、どうなっちゃうのかな?」

ベルガ「ロミーの情報は全部筒抜けだろうから、婚活法対策課を全力で潰しにかかるだろうな。」

ロミー「そうなったらベルが言ってた通り、婚活法対策課と同じ事業内容の会社を作るしかないか。」

ジュリー「それは良いけど、利益を上げられなかったら倒産だから今までみたいにのんびり仕事をするわけにはいかないよ。」

ロミー「何とかなるだろ。」

それからしばらく時間が過ぎたが婚活法対策課は解体する事となった。

ロミーたちは全員解雇となり新たに結婚相談所を創設する事となった。

ロミー「婚活法対策課は婚活法の廃止を理由に解体されたが、事業のバックアップをしておいたおかげで傷が浅くて済んだ。予定通りジュリーを柱にして一緒に解雇された連中を社員として雇った。」

アーサー「つまり親父が所長でお袋が結婚相談所専属の婚活コンサルタントになったわけか。」

ジュリー「そういう事。名前はあたしが決めたの結婚相談所ノヴァーリス。ノヴァーリスは古代メルヘンランド語で新開墾地という意味なの。メルヘンランドではまだまだ結婚相談所が少ないし、みんな職を失った状態だったし、まさに今のあたしたちにピッタリの名前だと思うの。」

ルーシー「良かった。あたしがわがまま言わなかったら、婚活法対策課は存続してたかもしれないのに。」

リコラ「ルーシーが気に病む事ないよ。お兄ちゃんも言ってたけど、遅かれ早かれどの道解体される破目になるって。」

ジュリー「そういえば、ベルはどこに行ったの?」

リコラ「お兄ちゃんならワンダー島までみんなと遊びに行ったよ。婚活法が終わった事を祝いたいんだって。」

ロミー「ワンダー島か。確かメルヘンランド諸島の東海岸にある島だよな。」

ジュリー「東海岸の近くにある島は防衛戦争の被害を受けなかったから人気なのよ。」

ルーシー「えー、あたしも行きたかったなー。」

アーサー「無理だろ。ルーシーは俺の会社の専属モデルとして、宣伝をする仕事があるだろ。」

ルーシー「啖呵切ったのは良いけど、あれじゃトップモデルの道は遠いわね。」

ロミー「会社の名前は何にしたんだ?」

アーサー「前の会社と一緒だよ。株式会社ミンネザング。ミンネザングは古代メルヘンランド語で愛の歌って意味だ。愛の歌は目には見えないが、どんなに時代が変わっても色褪せる事はない。そんな会社にしたいんだ。」

リコラ「素敵な社名だね。」

アーサー「ありがとう。今度は潰れないようにしないとな。リコに心配はかけたくないし。」

リコラ「アーサー、私の事なら心配しないで思う存分事業を成功させてよ。」

アーサー「そうだな。そういえば、俺がまた事業を始めた時、かつてうちと取引してた会社の人がこぞって来たんだ。みんなモードレッドに圧力をかけられて俺との取引を中止したって言って謝りに来たんだ。」

リコラ「それでアーサーはどうしたの?」

アーサー「俺はそいつらを許した。もう権力に屈しないと約束するなら取引を再開しても良いって言ったんだ。どちらかと言えばあいつらも被害者だからな。」

メルヘンランド女王「成長したのう。」

アーサー「女王陛下。」

メルヘンランド女王「以前のそなたであれば突っぱねていたであろう。困難を乗り越えた器はまた一段とその大きさを増すのだ。」

アーサー「あいつらは好きで権力に屈してたわけじゃない事に気づいてただけだよ。」

シュトゥルーデル「婚活法がなくなってから顔色が変わったな。」

アーサー「シュトゥルーデル、何でここに?」

シュトゥルーデル「女王陛下にベルの代役を頼まれたんだ。」

ヘクセンハウス「兄貴と戦場以外で仕事をするとは思わなかったぜ。」

シュトゥルーデル「リコちゃんはベルと一緒に遊びに行こうとは思わなかったのか?」

リコラ「うん、全然。アーサーと一緒にいたいから。」

ヘクセンハウス「カップリングしたもんな。」

シュトゥルーデル「そりゃ良かったな。俺の見立てではもうとっくにカップリングしてるものだと思ってたけどな。」

リコラ「色々と障害があったから、思うようにデートもできなかったの。アーサーが一度倒産するまでは女子が取り合いしてたの。」

ヘクセンハウス「倒産してからリコとデートしたって事は、他の女子は三高男子という肩書きの男子とつき合う事を目標にしていた事になるな。」

ジュリー「どうりでアーサーとつき合いたい女子が急に減ったわけね。」

リコラ「私は条件とか考えてなかったから、気にならなかったんだけどね。アーサーはアーサーだし。」

ジュリー「そうそう。相手が落ち目になっても全く態度を変えないところが決め手になって、あたしはアーサーの相手はリコが良いんじゃないかって思ったの。」

ロミー「俺もリコちゃんの誠実なところが気に入って、リコちゃんならアーサーと支え合っていけると確信したんだ。」

シュトゥルーデル「親を攻略してから恋人を落とす作戦か。外堀から埋めて本陣を叩くあたり意外と戦略家だな。」

ヘクセンハウス「兄貴、それは戦場の見過ぎだぜ。」

ジュリー「リコ、最近ショコラティエ教室を開いてるって聞いたけど本当なの?」

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