社会不適合者エスティのブログ

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三低男子の婚活事情 50ページ「婚活の終焉と新たな戦いの始まり」

2019年02月17日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは無事に魔弾砲を阻止する事に成功して平和条約の破棄に導く。

これによりメルヘンランド王国内では婚活法が廃止される事になった。

ベルガ「そうだね。やってみるか。」

ヘクセンハウス元帥「バリスタの腕は衰えていないみたいだな。」

ベルガ「まあね。」

キルシュトルテ大佐「やっぱシグネチャードリンクっていったらベルガコーヒーだね。」

芙弓「美味しい。私これ気に入った。またバリスタに復帰しようかな。」

ベルガ「芙弓ならできるよ。」

メルヘンランド女王「ところでリゾートにはいつ行くのだ?」

ベルガ「明日にでも行こうかな。というわけだから、女王陛下は事実婚の手続きを頼むよ。」

メルヘンランド女王「分かったぞ。気をつけて行くのだぞ。」

女子たち「(女王陛下の扱い。)」

キルシュトルテ大佐「リゾート行くのは分かったけど、やっぱりヘレンだけずるいよ。」

ザッハトルテ中佐「そうだよー。僕だってベルと一緒に遊びたいー。」

紫苑「私も、ベルガさんとリゾートに行きたいです。」

ベルガ「ヘレン、どうする?」

ヘレントルテ准尉「私は2人っきりになれる時間を確保できるなら構わないわ。」

メルヘンランド女王「ならばそなたら全員で行ってくるのだ。ギルドカフェは妾とリコとヘクセンハウスとシュトゥルーデルに任せておくのだ。心配するでない。」

ベルガ「分かった。」

シュトゥルーデル元帥「何故俺まで?」

メルヘンランド女王「そなたのバーが始まる時間に営業時間が終わるのだから心配無用である。」

ヘレントルテ准尉「決まりね。さすがにこれだけパートナーがいるのだから、私だけベルを好きにするのは罪だわ。」

ベルガ「1人で遊びたかった。」

明歩「学生の時もそう言ってたよね?」

桃子「それは良いけど、リゾートの費用っていくらなの?」

ベルガ「ワンダー島全体がテーマパークになっていて、そこに帰属するリゾートホテルが2泊3日で1人1万メルヘンだよ。」

桃子「高っ、あたしそんなに持ってないわよ。ベル、奢ってくれない?」

ベルガ「無茶言うなよ。僕は自分の分しか貯金してないんだよ。1万メルヘン貯めるだけでどれだけ苦労したか。」

桃子「それじゃあなたたちも一緒に行くのは難しくない?」

キルシュトルテ大佐「大丈夫。それくらいなら余裕で払えるよ。」

バウムクーヘン准将「私もベルガさんと同じプランを予約しておきますね。」

ヘレントルテ准尉「1万メルヘンしかかからないなんて、随分安いのね。」

ベルガ「君らはもう少し金銭感覚を身につけた方が良いぞ。」

明歩「彼女たちの金銭感覚どうなってんの?」

ベルガ「3人共、親が桁違いの大金持ちなんだ。ヘレンの親父は莫大な鉱物資源を保有する最大手の鉱山王にして不動産王とホテル王、キルシュの親父は最大手銀行頭取、バウムの親父は最大手IT企業のオーナー社長で、メルヘンランド島もメルヘンランド諸島も全部ヘレンの親父が企業に貸し出ししてる土地だ。明日行くワンダー島もね。」

シュゼット「この国全部ウィトゲンシュタイン家の私有地だったんだ。」

エトワール「つまりヘレンたちにとって1万メルヘンを払うのは、私たちが1メルヘン払うのと同じ感覚って事ね。」

ベルガ「そういう事だ。」

リコラ「お兄ちゃん、全員を連れて行くとなると、とんでもない費用がかかるけど、どうするの?」

ベルガ「来れる人が自分で勝手に来るだろう。元々は僕1人で行くはずだったし、別に良いじゃん。」

桜子「うわ、ジパングだったら絶対モテないタイプですよ。」

京子「それは言わない約束よ。」

ベアトリーチェ「でもこれじゃあ、あたしたちは行けないね。もっとベルの事、もふもふしたかったのにー。」

シャコティス「私は行けるけどな。」

タルトレット「私もベルとデートしたかったなー。」

ヘレントルテ准尉「安心しなさい。自力で来れないパートナーたちの分の費用は私が出しておくわ。それなら問題ないでしょ?」

タルトレット「やったー。」

ベルガ「昔より丸くなったね。」

ヘレントルテ准尉「あら、私は元から寛大なのよ。知らなかったの?」

ベルガ「うん。」

ヘレントルテ准尉「即答されると悲しいわね。」

ベルガ「でもヘレンの意外な一面を見れて嬉しいよ。僕はヘレンの大盤振る舞いするところも好きだよ。」

ヘレントルテ准尉「ベル・・・・私も時々とんちんかんで何言ってるか分からないベルの事も好きよ。」

ベルガ「酷い。」

ヘレントルテ准尉「さっきのお返し。」

キルシュトルテ大佐「そういえばさ、リコはベルと一緒にこの店始めたんだよね?何で一緒に始めたの?」

リコラ「私が中等部1年の時に、お兄ちゃんが黒杉政吾と殴り合いになった後、担任から一方的に怒鳴られたのが気に入らなかったのか、体育の時間中に教室中の窓ガラスを全部たたっ切って、それで追放処分を受けた時に、私は同級生からキチガイの妹って呼ばれるようになって、私も学校に行けなくなったの。」

バウムクーヘン准将「その時私もリコと一緒だったんで分かります。私はそんな呼び方は良くないって思ったんですけど、全然止めてくれなかったんですよ。」

紫苑「リコさんと同級生だったんですか?」

バウムクーヘン准将「はい。飛び級でリコさんのクラスに配属になったんですけど、国境私立なだけあってジパング人が多かったのはよく覚えてますね。その時にジパング語も覚えたんですよ。」

京子「きょ、教室中の窓ガラスを叩き割ったって・・・・あのベルが?」

ヘクセンハウス元帥「普段のあいつは大人しいが、学生の頃までは一度抑えが効かなくなると機嫌が戻るまで暴れまくってたそうだ。」

桜子「やばっ。確かそれで学校から追放されたんですよね?」

ドボシュトルタ「ああ。ベルは学校を追放された後、元々住んでいた家を勝手に今のカフェに改造して、そこでカフェのマスターとしてデビューしたんだ。あいつは元々バリスタ志望だったから放っておいたが、あれから僅か10年で数々のバリスタの世界大会を総なめにした。今思うと、あいつを学校へ行かせたのは間違いだった。」

タルトレット「ドボシュがベルを学校に行かせてたの?」

ドボシュトルタ「いや、私は反対だった。あいつは幼少期から他人に無関心で物に対する執着が強くて研究熱心だった。ウィトゲンシュタイン家がベルとリコを引き取った時も、私はホームスクーリングの方が彼らに合うだろうと思って家を与えたんだ。だがそんなベルを父は許さなかった。父はコーヒーの研究ばかりしていた彼を家からつまみ出して、無理矢理ジパング寄りの名門学校へ入学させたがそれがまずかった。」

ヘレントルテ准尉「お父様は名門大学出身で学歴至上主義だったから、それもあるのかも。」

ドボシュトルタ「ベルの親が遺言をメールで父に送っていたんだ。他人を思いやれる大人にしてやってほしいとな。それを真に受けた父は他人に興味を持とうとしないベルを良かれと思って学校に入れたんだ。」

明歩「あたしはベルと3年間同じクラスだったから知ってるけどベルは学校でもベルしてたよ。事ある毎にいじめっ子や担任を箒でたたっ切って出席停止処分を受けてたから。」

エトワール「あたしも教室に戻った時は驚いたわよ。3年の時なんかガラス全部割れてたからさ。」

ベアトリーチェ「そりゃ暴れるのも無理ないよ。だってベルは1人で自己完結した立派な子だもの。他人が介入する余地がないのに邪魔をするからそんな事になっちゃうの。内向型の人間をもっと尊重する環境だったらそうはならなかったと思うけどなー。」

ベルガ「ベア・・・・ベアは僕の事、お見通しなんだね。」

ベアトリーチェ「当たり前じゃない。あたしも挨拶苦手だから、声の代わりに音を届ける今の仕事を始めたの。」

アナスタシア「そういえば、メルヘンランドには挨拶にあたる言葉が存在しませんよね?」

リコラ「メルヘンランドは王国民の大半が職人気質で内向的な人間ばかりなので、挨拶禁止が暗黙のルールなんです。会議とかも全然なくて、メールで用件だけ言って終わりみたいな事がしょっちゅうですから。こっちじゃ煩わしい会話をする必要がないんです。みんな挨拶や建前といったクッション的な言葉を必要としないから本音で話せるんですよ。最悪ベーシックインカムで生きていける国ですから、会話のスキルを磨く必要すらないんですよね。」

京子「ナニワとは真反対の文化ね。あっちじゃ挨拶が何より大事だし、建前や前置きばかりで腹の探り合いになっちゃうのよ。」

ザッハトルテ中佐「口があるんだからとっとと用件を言えばいいのに。」

桜子「ナニワにはナニワの文化があるんですよ。ナニワがコミュニケーション能力重視の国なら、メルヘンランドはインスピレーション能力重視の国といったところでしょうか。」

ベルガ「メルヘンランドは肝心な事だけを話す文化で、ナニワは言わなくても分かる文化だからね。」

シュゼット「ベル、あーしと一緒に音合わせしてほしい。」

ベアトリーチェ「あたしとも音合わせしよ。ちょうど楽器もあるし。」

ベルガ「うん、そうだね。」

キルシュトルテ大佐「このままだと他のパートナーに先を越されちゃうよ。」

ステラ「そうですね。でもどうすれば・・・・。」

キルシュトルテ大佐「一緒にスイーツを作ったらどう?」

ステラ「その手がありましたね。キルシュはワールドパティスリーカップにまた出たんですよね?」

キルシュトルテ大佐「うん、国内予選は3連覇して本選も優勝したよ。」

ステラ「キルシュ、ワールドパティスリーカップで優勝したなら、私と頂上決戦しましょうよ。」

キルシュトルテ大佐「望むところだよ。」

カーリナ「ベル、今度私の両親に挨拶に来てくれないか?」

ベルガ「そうしたいけど、当分はここを離れられそうにない。」

カーリナ「分かった。じゃあ親父とお袋に頼んで来てもらうよ。私が本気で愛した初めての人だから驚くだろうなー。そうだ、両親が挨拶に来る前に子作りしよう。なっ、良いだろ?」

ベルガ「子作りって、何考えてんの?まだ出会ったばかりなのに。そんなの恥ずかしいよ。」

フォレノワール巡査部長「ちょっと、カーリナさん。淫らな行為は許しませんよ。」

ベルガたちは翌日にワンダー島へ行く事になり、

みんなでテーマパークを楽しんでいたのである。

ベルガ「みんなはしゃいでるなー。」

ヘレントルテ准尉「そりゃそうよ。みんなずっと慣れない婚活ばかりで疲れ切ってたはずだもの。」

ベルガ「そうだね。ん?ちょっと待ってて。」

ヘレントルテ准尉「ええ、戻ってきたら2人だけで楽しみましょ。」

ロムル「ん?もしかして君が・・・・ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンか?」

ベルガ「ああ、そうだよ。ロムル・オーガスト・ブルートゥルスだろ?」

ロムル「その通り。何故分かった?」

ベルガ「古代メルヘンランド語の訛りに加え、長時間そこにいるのに日焼けしていない。あんたは不老不死の魔法に成功した数少ないケースで、使い切れない余生を楽しんでいる。そうだろ?」

ロムル「ふーん、さすがは僕の直系子孫だな。それくらいは分かって当然か。」

キルシュトルテ大佐「うわっ、ベルにそっくり。一体誰なの?」

ベルガ「彼はロムル・オーガスト・ブルートゥルス。メルヘンランド王国初代国王だ。」

女子たち「ええーーーーー。」

ロムル「そんなに驚かなくても良いだろ。それに僕はもう国王じゃない。1万年以上も前に引退したからね。」

ベルガ「ところで、何故ここにいる?」

ロムル「僕は引退してからはずっと暇潰しの旅に出ていて、久しぶりに故郷に帰ってきてたんだ。君は?」

ベルガ「僕は・・・・婚活法を終わらせた記念にここへ来た。」

彼の名前は、ベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。

後に、戦争の時代を終わらせ、メルヘンランド王国の第一人者となった男である。

しかしそんな彼も、若い頃は悩み苦しみながら、

婚活をさせられていた、社会不適合者にして三低男子だったのである。

自分がどんな道を歩んでいくのかを、この男はまだ知らない。

彼の戦いは、まだ、始まったばかりなのだから。

50ページ目終わり

三低男子の婚活事情 49ページ「味方を救うにはまず敵から」

2019年02月10日 | 三低男子の婚活事情
ベルガはシュトゥルーデルと共に魔弾砲を阻止する事に成功し、

ボルゴたちは駆けつけた警察に逮捕される事になったのである。

フォレノワール巡査部長「あなたたち3人を、器物損壊の現行犯で逮捕します。」

ボルゴ「ふっ、希望は潰えたか。」

グラント「おのれ、お前たちはジパングを滅ぼさなかった事を後悔する事になるぞ。」

アルバート「そ、そうだ。後悔するぞ。」

ベルガ「心配するな。あんたらの仇は必ず取る。黒杉内閣は僕が倒す。だからそれまで待っていてくれ。」

ボルゴ「そうするよ。今1番力を持っているのは君だからね。」

フォレノワール巡査部長「さあ、行きますよ。」

ドボシュトルタ「ベル、何故この事を私にもヘレンにも黙っていたんだ?」

ベルガ「執政官同士が論争になったら魔弾砲を撃つ日を早められる可能性があった。だから発射時刻ギリギリまで伝えないようにしていたんだ。敵を欺くにはまず味方からって言うだろ?」

ドボシュトルタ「やれやれ、そういうところは昔から変わってないな。」

シュトゥルーデル元帥「それよりも、これでまたジパングから攻撃を受ける口実を作ってしまったな。俺はいつでも出撃できるぜ。」

ドボシュトルタ「また他の将官たちに怒られるぞ。」

シュトゥルーデル元帥「そうだな。昔はよくボルゴの奴から、将官なのに出撃する奴があるかと怒られたもんだ。」

ベルガ「ボルゴは防衛戦争で多くの仲間を失っていたから、これ以上犠牲者を出したくなかったんだ。それに最も戦果を挙げている君が戦死でもしたらジパングの士気が上がってしまう。だから君を将官にして最前線から下げさせようとしたんだ。」

ドボシュトルタ「そしたら今度は誰がやったかも分からない戦果が次々と上がってきて、君だと分かった時は笑いが止まらなかったよ。」

ベルガ「うちで飲んでくか?」

ドボシュトルタ「ああ、そうするよ。積もる話もあるからな。」

シュトゥルーデル元帥「俺も久しぶりにコーヒーでも飲みに行くか。」

ベルガたちはギルドカフェへ戻って魔弾砲不発を祝っていた。

ヘレンは納得がいかなかったのかベルガを問いただしていた。

ベルガ「やっと帰ってこれた。えっ、何でみんないるの?」

リコラ「そりゃ、お兄ちゃんが心配だからだよ。魔弾砲を阻止したんだよね。ビッグニュースになってたよ。」

ヘクセンハウス元帥「まあ、ベルならやってくれると思ったけどな。」

メルヘンランド女王「ベルよ、此度の仕事。大義である。」

キルシュトルテ大佐「ダーリンなら、無事に帰ってくるって信じてたよ。」

バウムクーヘン准将「ベルガさん、あんまり無茶しないでくださいね。ただでさえ胎教に良くないんですから。」

プファンクーヘン元帥「全く、何をやっていたかと思えば、やっぱりお前が1枚噛んでたか。」

ザッハトルテ中佐「妊娠してなかったら、僕も参加してたのに。」

ベルガ「君らは妊娠してても全くぶれないね。その様子から察するにアウグストは無事だったようだね。」

ヘクセンハウス元帥「ああ、ベルが言った通りにアウグストに対空配備を施したら、そこに帝国自衛隊の爆撃機部隊が攻めてきたから全部撃ち落としてやったぜ。」

ドボシュトルタ「まさかダイヤモンドハーバーの混乱に乗じて軍備が甘くなったアウグストを直接狙ってくるとは。ベルがジパングの動きを読んでヘクセンハウスを向かわせていなかったら、アウグストは今頃大打撃を受けていただろう。」

ヘレントルテ准尉「ベル、ジパングの首都攻撃とボルゴたちの計画を阻止した事は褒めてあげるわ。でも私たちに全く魔弾砲の事を教えてくれなかったのは解せないわ。説明してもらえるかしら。」

ドボシュトルタ「ヘレン、そう言うな。ベルは魔弾砲を阻止するために細心の注意を払っていたんだ。」

シュトゥルーデル元帥「俺に魔弾砲の情報を教えたのは、俺がグラントとつき合いがあったからだ。昔は直属の上司だったからな。」

ヘレントルテ准尉「そう。なら良いわ。ベル、私と会ってない間に随分とたくさんフィアンセを作ったみたいね。他のフィアンセとはデートしていると聞いているのに、私とはしてくれないのかしら?」

ベルガ「そう言われても、ここんとこずっと魔導書を集めたり、魔弾砲を阻止したりでそれどころじゃなかったんだよ。」

ヘレントルテ准尉「でも私とは全然デートしてくれなかったのだから、責任は取りなさい。」

ベルガ「あっはい。」

ヘクセンハウス元帥「ヘレン、ベルとデートしたいなら自分から言わなきゃ駄目だぞ。こいつは受け身だからな。」

キルシュトルテ大佐「そうだよ。自分からぶつかっていかないと何も得られないよ。」

ヘレントルテ准尉「・・・・分かったわ。ベル、今度私とデートしてくれるかしら?」

ベルガ「うん、良いよ。ヘレンにはずっと世話になってるから、今度休みの日に1日中デートにつき合ってあげるよ。」

バウムクーヘン准将「1日中?私とは2時間しかデートしてくれなかったのに。」

キルシュトルテ大佐「そうだよー。ヘレンだけ贔屓するなんてずるいよ。私だってベルとデートしたいのにー。」

ベルガ「君らはデートよりもまず無事に出産する事を考えるべきだ。産み終わったらデートするからさ。」

ヘレントルテ准尉「ふふっ、それなら良いわ。それともう1つ報告があるの。」

ベルガ「どうしたの?」

ヘレントルテ准尉「メルヘンランドは今日限りで平和条約から脱退する事になったわ。」

ベルガ「じゃあ婚活法も?」

ドボシュトルタ「ああ、もう今日からは婚活はしなくて良いぞ。」

ベルガ「わーい。やったー。」

リコラ「そんなに嬉しいんだ。」

ベルガ「そりゃそうだよ。これでもう面倒な人間関係とはおさらばだ。婚活法さえなけりゃ、誰があんな面倒なイベントになんか行くかってんだ。クエストが増えたおかげでだいぶ儲かったし、当分はリゾートにでも行こうかな。」

ヘクセンハウス元帥「社会不適合者だな。」

リコラ「社会不適合者だね。」

メルヘンランド女王「社会不適合者である。」

ベルガ「ちくしょう。」

ヘレントルテ准尉「ねえ、肝心な事忘れてない?」

ベルガ「えっ?肝心な事・・・・あっ。」

リコラ「お兄ちゃん、婚活法が終わったらフィアンセたちと事実婚するって約束してたよね?」

ベルガ「しまったぁー。」

ヘクセンハウス元帥「しまったぁーじゃねえ。妊娠させてる相手もいるんだから責任は取れよな。」

ベルガ「それは良いんだけど、この家は狭いから一緒に住むのは無理だよ。」

ヘレントルテ准尉「それならすぐ近くの場所に屋敷を作らせるわ。来年にはできると思うから一緒に住みましょ。」

ベルガ「僕の平和な日常がぁー。」

ドボシュトルタ「ベル、妹の事よろしく頼むぞ。」

京子「ベル、久しぶり。元気してた?」

桜子「ベルガさん、私当分お店を休みますねー。」

ベルガ「もしかして2人共妊娠したの?」

京子「ええ、できてたわよ。」

桜子「だから産休貰おうと思って言いに来たんですよー。」

ベルガ「それならメールで良いのに。」

ヘクセンハウス元帥「そういえばお前、ジパング人ともできてたな。」

京子「あたし、しばらくはこっちに住むから。婚活法が終わったら事実婚するって約束したわよね?気が向いたらいつでもあたしの別荘に来ても良いからね。」

桜子「私は今度実家の両親を呼んできますから是非話してくださいね。」

ベルガが婚活女子たちを助け魔弾砲を阻止した事はあっという間に世界中に広まり、

数日後には店が繁盛するようになってベルガはフィアンセたちを集めて事実婚した。

ベルガ「僕が事実婚を約束した人、こんなにいたんだね。」

紫苑「ベルガさんと一緒になれるなんて・・・・光栄です。」

タルトレット「お姉ちゃんと同じ人を好きになるなんて思ってもみなかったな。」

キルシュトルテ大佐「私も最初はベルには全然興味なかったけど、変人で面白くて飽きさせないところに惹かれていったんだよね。」

バウムクーヘン准将「ですね。でもこれだけ人数が多いと、家の中とかめっちゃ狭くなりそう。」

ヘレントルテ准尉「特大の家を作らせるから大丈夫よ。既に建築関係者たちに手配してるわ。」

明歩「紫苑、そろそろ言っといた方が良いよ。」

紫苑「はい。そうですね。」

ベルガ「まさかとは思うけど、2人共妊娠したの?」

明歩「はあ・・・・ベルって本当に空気読めないよね。そうだよ。責任取ってよね。」

紫苑「私はこういうところが好きなんですけどね。私たちの赤ちゃん、生まれたら大切に育てますね。」

ヘレントルテ准尉「本当にベルったら、いつの間にこんな女たらしになったのかしら?」

ベルガ「全部相手からの要求なんだけどね。」

ヘレントルテ准尉「じゃあ、私からの要求にも応えてくれるかしら?」

ベルガ「うん。この食事会が終わってから、婚活法が終わった記念にメルヘンランド諸島のリゾート地に行くけど一緒にどう?」

ヘレントルテ准尉「ええ、一緒に行きましょ。」

ベルガ「リゾートに行くとは言っても、これからの事も考えないとね。」

カーリナ「ベル、私もリゾートに連れて行ってくれ。私だってベルとデートしたいんだからな。」

ポッフェルチェ「そうよ。私もベルとデートしたい。私はもう後がないから。」

シャコティス「ポッフェは確か無性愛者じゃなかったか?」

ポッフェルチェ「ええ、確かにあたしは男子にも女子にも興味はないけど、ベルだけは別だよ。男子だからじゃなくて、ベルだから好きになったの。たとえ女子だったとしても好きになってたよ。」

紫苑「それ分かります。私も全性愛者ですから、性別に囚われない恋愛って素敵だと思うんです。」

芙弓「ベルのパートナーって変わり者ばかりね。」

ベルガ「芙弓もその1人だという事を忘れてるよ。」

芙弓「ふふっ、そうね。」

フォレノワール巡査部長「ベルガさん、パートナーになったからといって皆さんとあんまり淫らな行為をしたら駄目ですからね。」

ベアトリーチェ「ノワールって硬派なんだね。こんなにエッチな体してるのに。」

フォレノワール巡査部長「ひゃあん。ちょっと、駄目っ。」

桃子「何やってんだか。」

エトワール「アナ、そういえばあんたスパイよね?まさかベルから情報を得るためにつき合ってるわけじゃないわよね?」

アナスタシア「正確には元スパイです。今はパティシエに転職しましたからご安心を。」

アンナトルテ「ふーん、なんか元スパイってカッコ良いね。」

ザッハトルテ中佐「あっ、ワルキューレのシュゼだ。ステラもいるじゃん。どうしてここに?」

ベアトリーチェ「シュゼ、一体どうしたの?」

シュゼット「あーしもベアみたいに自分の気持ちに正直になろうって思って、ようやく決心がついたんだ。最初にベルのピアノ動画を見た時から、ずっとベルが好きだ。あーしともパートナーになってほしい。」

ステラ「私もキルシュさんが連れてきてくれた時からずっと好きです。ずっとキルシュのためにと思って一歩引いていましたけど、ベルガさんの活躍を聞く度に、段々自分を抑えきれなくなったんです。私はやっぱりベルガさんが好きなんだって。だから、どうか私ともつき合ってください。お願いします。」

ベルガ「うん、良いよ。何だか嬉しいな。」

ザッハトルテ中佐「この光景に慣れてしまっている僕らって一体。」

プファンクーヘン元帥「ベルの事だから心配は要らないだろう。」

桃子「ジパングだったら余裕でスキャンダルだよ。」

エトワール「こっちは恋愛の自由が幅広く認められてるからね。そこが自慢だよ。」

京子「これだけベルのパートナーが多いと、当分は一緒に寝られないわね。」

桜子「そうですね。私は毎日ベルガさんと一緒に寝たいですけど。」

エトワール「駄目に決まってるでしょ。ベルはみんなの共有財産なんだから、誰か1人だけ独占は禁止だよ。」

桜子「はーい。」

ヘレントルテ准尉「ねえ、ちょうどエスプレッソマシンもあるから、バリスタの腕を見せてくれない?他のみんなにも宣伝になるでしょ?」

ベルガ「そうだね。やってみるか。」

49ページ目終わり

三低男子の婚活事情 48ページ「怨讐のエクスプロージョン」

2019年01月27日 | 三低男子の婚活事情
ベルガはシュトゥルーデルと魔弾砲の計画を阻止するため、

手分けして魔弾砲の解除スイッチを探す事になったのである。

作業員B「待て。」

シュトゥルーデル元帥「はい?(やべっ、もしかしてばれちまったのか?)」

作業員B「5階へのエレベーターはこっちだぞ。」

シュトゥルーデル元帥「あっ、そうでしたか。以後気をつけます。(こいつが馬鹿で助かったぜ。5階の会議室はここか。設計図があると良いが、資料がたくさんあるな。)」

作業員C「なあ、知ってるか?」

作業員D「何だよ?」

作業員C「ここで作られてる新兵器って、大都市を丸ごと吹き飛ばせるそうだぜ。」

作業員D「マジかよ?そんなもん作ってどうするつもりだよ?」

作業員C「そんなの決まってんだろ。ジパングを脅す材料に使うんだよ。」

作業員D「でもジパングを脅してどうするつもりなんだろうなー。」

作業員C「それは俺にも分からんけど、ボルゴは確か防衛戦争で大勢の仲間を失ったって聞いたよ。」

作業員D「なら使うかもしれないなー。」

シュトゥルーデル元帥「(ボルゴにそんな過去があったのか。知らなかったぜ。これが設計図か。ん?これは・・・・どういう事だ。いや、そんなはずはないと思うが、ベルに連絡しておくか。)」

ベルガ「どうしたの?」

シュトゥルーデル元帥「魔弾砲の設計図は見つけたが、肝心のスイッチが見つからない。」

ベルガ「設計者の名前は分かるか?」

シュトゥルーデル元帥「アルバート・ツヴァイシュタイン。」

ベルガ「アルバートだと。」

シュトゥルーデル元帥「知ってるのか?」

ベルガ「ああ、僕の元同級生でクラスメイトだった。アルバートは陰気な理科系の男で、暗いからという理由で黒杉政吾にいじめを受けていた被害者の1人だ。」

シュトゥルーデル元帥「もう1つ情報を手に入れた。ボルゴはかつての防衛戦争で多くの仲間を失ったそうだ。しかもその後は婚活法で妹を失い、グラントも叔父を婚活法で失ったそうだ。」

ベルガ「なるほど、謎は全て解けた。ボルゴは防衛戦争で多くの仲間を失い、ジパングを恨むようになった。そして密かにジパングに恨みを抱えている者を集めてジパングを滅ぼす計画を立てていたんだ。そして婚活法によって妹を失った事で怒りが頂点に達して新兵器でジパングを一網打尽にする計画を思いついた。そこで優秀な科学者を募集したらアルバートが食いついた。それからは軍事費を増大してそれらを新兵器開発に費やした。恐らく黒杉内閣に対して無理な要求を押しつけて断ったのを確認したところで魔弾砲を撃つつもりだ。」

シュトゥルーデル元帥「ボルゴは平和条約の破棄を要求するって言ってたぞ。」

ベルガ「それ自体が黒杉内閣にとっては無理な要求だ。他の国が賛成している以上は断らないだろうな。」

シュトゥルーデル元帥「それよりも魔弾砲はどうするんだ?」

ベルガ「解除のスイッチがないって事は発射スイッチしかないという事だ。つまりアルバートが持っているであろう発射スイッチを取り上げれば魔弾砲は無用の長物になるってわけだ。」

シュトゥルーデル元帥「それならアルバートの所へ急ごう。今日中に発射するみたいだからな。」

ベルガ「そのデータをドボシュに送ってくれ。」

シュトゥルーデル元帥「分かった。スマートフォンで撮った画像をそっちへ送る。俺はアルバートの研究室に行く。今度こそあいつらを説得してやらないとな。」

ベルガ「僕は魔弾砲を見張っているよ。」

シュトゥルーデルはアルバートがいる研究室へと向かい、

研究室の扉を開いたがボルゴやグラントたちもいた。

シュトゥルーデル元帥「そこまでだ。悪い事は言わん。今すぐ発射スイッチをこっちへ渡せ。」

アルバート「君は一体誰だ?」

シュトゥルーデル元帥「俺はシュトゥルーデル・ハンス・ハルトマン。お前らの計画は全部お見通しだ。」

アルバート「ふざけるな、我々の計画を邪魔する気か?」

ボルゴ「また君か。倉庫でおねんねしていれば見逃してやったというのに。」

グラント「改心の機会を与えたというのにこのざまとは、これは明らかに国家反逆罪だ。君はもう、ぐあっ。てめえ、こんな事をしてただで済むと思うなよ。」

シュトゥルーデル元帥「同じ手は食わないぞ。安心しろ。遠距離スタンガンだけを狙い撃ちしたからな。さあ、今すぐ発射スイッチを渡せ。」

アルバート「私は・・・・私の事を散々いじめまくったジパングの連中に仕返しがしたいんだ。」

シュトゥルーデル元帥「いつ発射する予定だ?」

アルバート「魔弾砲は午後3時に発射予定だ。もう10分前だがな。それと発射スイッチならもう押している。魔弾砲の発射は既に約束されているのだよ。残念だったね。」

シュトゥルーデル元帥「じゃあ魔弾砲を攻撃するまでだ。」

アルバート「待てっ、ここで爆発を起こせば我々もメルヘンランド島もただでは済まないぞ。」

シュトゥルーデル元帥「じゃあ今すぐ解除しろ。」

アルバート「それは無理だ。解除方法はあえて作っていない。座標をネオトーキョーシティの国会議事堂に合わせた時点でもう手遅れだ。」

シュトゥルーデル元帥「くそったれが。」

アルバート「ようやく諦めたようだな。ジパングはずっと我々の邪魔をしてきた。それに報いる時が今来たのだよ。ここにいる連中はジパング人からいじめを受けたり、防衛戦争で仲間を亡くした者たちばかりだ。」

ベルガ「その連中を集めて新兵器開発チームを組み、この計画がばれないようにジパング寄りの政策をしてきたんだろ?」

ボルゴ「その通りだ。まさかここまで気づかれるとは思ってなかったよ。ジパング警察の連中にアウグスト警察署にジパング警察を倒す部隊を用意しているという嘘の情報を流してジパング警察を誘導し、アウグスト警察署を襲撃させて非常事態宣言を誘発する計画だったが、最初に元老院に連絡を寄こしたのが君だと聞いた時は驚いたよ。」

ベルガ「その時に妨害電波を流すように仕向けたのもあんただな?」

ボルゴ「ああ、あれね。襲撃してからすぐに連絡をされれば被害が最小限で済んでしまうからね。」

ベルガ「あれでアウグスト警察署内から大勢の犠牲者が出た。お前らのくだらない計画のためにな。」

ボルゴ「これはいわゆるコラテラルダメージというものにすぎない。勝利のための致し方ない犠牲だ。それに身内を殺される痛みは君も知っているだろう?かつて見殺しにされた君の両親の事を忘れたわけじゃないよね?」

ベルガ「忘れてないさ。確かに親父もお袋も一時期ジパングに占領された島で、店を取り上げられて生活保護も受けさせてもらえずに餓死した。だから黒杉内閣だけは生きている内に潰してやろうと思ってる。だがこのやり方は違う。お前らがしようとしている事はただの大量虐殺だ。あいつらは戦争で倒した上で裁判で裁くべきだ。」

ボルゴ「それができないからこういう手段を取らざるを得なくなったんだよ。」

ベルガ「僕らの敵は黒杉内閣であってジパングじゃない。戦いにさえ勝てばジパングを滅ぼす必要はない。」

アルバート「時間だ。間もなく魔弾砲を発射する。さらばだ、ジパングよ。」

シュトゥルーデル元帥「くそっ、何とかならないのか?」

ベルガ「もう遅いよ。」

アルバート「よしっ、発射成功だ。あとはネオトーキョーシティの国会議事堂に届くのを願うだけだ。」

グラント「我々の勝利だ。今日はジパング滅亡の日にして戦勝記念日になるだろう。」

シュトゥルーデル元帥「ネオトーキョーシティは他の国のマーケットも集中している場所だぞ。そんな場所で半径10キロ以内の爆発を起こせば、ジパング人どころか大勢の外国人が死ぬ事になるんだぞ。そうなったらジパング以外の国も敵に回す事になって、全世界から宣戦布告を受ける事になるんだぞ。」

グラント「知った事か。あんな国は消去するに限る。」

シュトゥルーデル元帥「この野郎。」

ボルゴ「ベルガ、君は仲間たちと共に国家反逆罪で捕まるだろう。どうやら私と君の政権争いにも決着はついたようだ。」

ベルガ「そうだな・・・・あんたの負けでな。」

ボルゴ「えっ?・・・・どういう事かな?」

ベルガ「嘘だと思うなら、ネオトーキョーシティの中継を見てみろよ。」

ボルゴ「中継だと?なにっ、馬鹿なっ、国会議事堂が軽い損傷で済んでいるだと。一体何故?」

グラント「アルバート、これは一体どういう事だ?」

アルバート「そんなはずはない。魔弾砲は細心の注意を払って作ったはずだ。魔力を爆弾の中央に凝縮させて圧縮した事で、絶大な爆発力を発揮できるはず。」

グラント「ベルガてめえ、一体何をした?」

ベルガ「僕は何もしてないよ。ただ、エトワールに連絡をしただけだよ。」

ボルゴ「エトワールに連絡をしただって?それだけじゃ何も・・・・まさか。」

ベルガ「どうやら気づいたようだね。」

ボルゴ「そうか、そういう事か。君はエトワールに午後3時に魔弾砲が発射される事を伝えたんだな?」

ベルガ「その通り。僕はシュトゥルーデルの服に盗聴器を仕掛けて、ずっと君らの会話を聞いていた。そしてシュトゥルーデルにアルバートから魔弾砲の発射時刻をさりげなく聞き出すように言ったんだ。そして午後3時である事が分かった時に、エトワールに発射時刻を伝えて、魔弾砲の発射と同時に無力化の魔法を発動するように言ったんだ。」

ボルゴ「エトワールには何度も無力化の魔法を発動するように言っておいたはずだが、準備に時間がかかるやら結界の魔法を壊されたやらで全く発動しようとしないから、先に魔弾砲を撃つ事になったんだけど、まさか魔弾砲と同時刻に無力化の魔法を発動させるとは考えたね。」

ベルガ「無力化の魔法を発動するには儀式の時間が必要だ。魔弾砲の発射されてから発動しようとしても間に合わない。だから発射時刻を一言言ってもらえるだけで良かったんだよ。アルバートは昔から有利になると気が緩んで詰めが甘くなる癖がある。君はいつもそれで僕にチェスで負けていたけど、その癖は今も同じだったようだ。」

グラント「アルバート、余計な事を喋りやがって。」

アルバート「ひっ。」

ボルゴ「よせ、今更そいつにお仕置きをしてもどうにもならない。そういえば、エトワールは君の元許嫁だったね。」

ベルガ「今はフィアンセだけどね。実を言うと無力化の魔法はいつでも発動できる状態だったんだ。準備に時間がかかるというのも結界の魔法が壊されたというのも彼女の嘘だ。僕が彼女に嘘を言って時間稼ぎをするように言っておいたんだ。この時のためにね。」

ボルゴ「先に発動していれば、ダイヤモンドハーバーへの被害は最小限で済んだはずじゃないかい?」

ベルガ「あれは奇襲に気づけなかった僕のミスだ。だがそこにいるグラントは、シュトゥルーデルからの情報で奇襲攻撃を予測できたはずだ。にもかかわらず、グラントは戦争経験のない者に守備を任せた。シュトゥルーデルからグラントへの情報が届いたのはダイヤモンドハーバーへの奇襲攻撃よりもずっと前の日だ。証拠も揃ってるから言い逃れはできないぞ。」

シュトゥルーデル元帥「俺は確かに伝えたぜ。いくらあんたが年寄りでも、忘れたじゃ済まされねえぞ。」

グラント「ダイヤモンドハーバーを攻撃させてから魔弾砲を撃てば、他の国は真っ当な報復と受け取ると思ったんだ。どうしても魔弾砲を撃つ口実が欲しかったんだ。」

ベルガ「あんたらは仲間を殺される痛みを知りながら、仲間を売るようなマネをして大勢の犠牲者を出した。この罪は重いぞ。」

ドボシュトルタ「ボルゴ、グラント。話は全部聞かせてもらったぞ。元老院は全会一致で独裁官の解任命令を出した。お前たちにはもう何の権限もないぞ。」

ボルゴ「まさか生中継されていたのか?」

ベルガ「そんなわけないだろ。ここは諜報防止のために撮影ができなくなっている。だからドボシュに連絡を入れた後、通話機能をそのままにして会話を垂れ流しにしていたんだ。」

ドボシュトルタ「まさかこんな恐ろしい計画を立てていたとは。詳しい話は警察署で聞こう。」

フォレノワール巡査部長「あなたたち3人を、器物損壊の現行犯で逮捕します。」

48ページ目終わり

三低男子の婚活事情 47ページ「魔弾砲計画阻止大作戦」

2019年01月20日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちはメルヘンランドとジパングの対立を聞くと、

エルバ砦への移動を計画して魔弾砲を阻止する作戦に出た。

ヘクセンハウス元帥「グラントから直々に贈呈されたらしい。」

ベルガ「グラントらしいね。僕はシュトゥルーデルとエルバ砦に行ってくるから、ヘクセンハウスは僕の言った通りに動いてくれ。今度はダイヤモンドハーバーのようにはいかないさ。」

ヘクセンハウス元帥「気をつけて行けよ。ていうかまた兄貴が事件に巻き込まれそうな予感がするぜ。」

ベルガ「そうなる前に何とかするよ。」

ベルガはシュトゥルーデルと共にエルバ砦まで車で行く事になった。

移動中にベルガはシュトゥルーデルにある問題を問いただしていた。

ベルガ「いくつか聞くけど良いかな?」

シュトゥルーデル元帥「何だ?」

ベルガ「何でジパングがダイヤモンドハーバーを奇襲するって知ってたの?」

シュトゥルーデル元帥「ばれてたか。隠しても無駄だろうから言うが、俺は密かにジパングの諜報活動をしていた。何故分かった?」

ベルガ「クラップから聞いたんだ。誰よりも先にダイヤモンドハーバーへ来ていたと思ったら、もう1機別の戦闘爆撃機がいたってね。出撃命令が出る前に出撃したクラップよりも早く現場に来られる可能性があったのは、戦闘爆撃機を唯一私物化していた君しかいない。」

シュトゥルーデル元帥「お前には敵わないな。じゃあ暇潰しに教えてやるよ。」

ベルガ「大方グラントにジパングの情報を集めるようにでも言われていたんだろ?」

シュトゥルーデル元帥「察しが良いな。諜報はプファンの方が得意だが、あいつは今妊娠中だから俺が任務を請け負う事になった。諜報は体力勝負の仕事だから妊婦には任せられない。俺はジパングのネオトーキョーシティまで行って黒杉内閣の情報を集めていたんだが、ある日帝国自衛隊がネオトーキョーハーバーに戦力を集中的に集めている事が分かった。」

ベルガ「実際に見てみたら空母がたくさんあったと?」

シュトゥルーデル元帥「そうだ。奴らはメルヘンランドが魔法兵器の密輸がある事を知れば、すぐにでも無力化の魔法を発動する事を知っていた。そこで無力化の魔法が発動される前に叩き潰そうと企んていたんだ。ジパングの議員の中から国家社会主義帝国労働者党を良く思わない者を買収して情報を探らせた。」

ベルガ「今は一緒にいないの?」

シュトゥルーデル元帥「あいつは俺と一緒に諜報していた事がばれて処刑された。国家反逆罪でな。だからこの戦争が終わったら、手厚く埋葬してやろうと思ってる。」

ベルガ「仲間思いだね。」

シュトゥルーデル元帥「まあな。あいつがいなきゃ、ダイヤモンドハーバーはあの被害じゃ済まなかっただろう。」

ベルガ「1つ気になる点があるんだ。」

シュトゥルーデル元帥「どうかしたのか?」

ベルガ「ダイヤモンドハーバーの守備を何故戦争未経験者に任せたのかが疑問だ。」

シュトゥルーデル元帥「ダイヤモンドハーバーは今まで攻め込まれた事がない場所だ。だから未経験者に任せていたんだろう。」

ベルガ「グラントに諜報で得た情報は伝えたのか?」

シュトゥルーデル元帥「ああ。5日ほど前だ。」

ベルガ「5日前って、まだダイヤモンドハーバーが攻撃を受ける前じゃん。」

シュトゥルーデル元帥「ああ。グラントはダイヤモンドハーバーが攻撃を受ける事を十分予測できたはずだ。だがあいつは地道な仕事で昇進していったような戦争未経験者にダイヤモンドハーバーの守備を任せた。これは明らかにグラントの采配ミスだ。」

ベルガ「奇襲をしてくるなんて知らなかったとしらを切ればそれまでだ。」

シュトゥルーデル元帥「確実な証拠を掴むのは難しそうだな。」

ベルガ「証拠よりも気になるのは動機だ。仮にグラントが宣戦布告の機会をうかがっていたとしたら?」

シュトゥルーデル元帥「つまりわざとジパングの攻撃を誘発したって事か?」

ベルガ「もしそうなら情報を知りながら戦争未経験者に守備を任せた事にも、魔弾砲を開発していた事にも説明がつく。グラントはネオトーキョーシティに対して魔弾砲の実験をするつもりだったんだ。そしてその計画を企んでいたのがボルゴだ。」

シュトゥルーデル元帥「事実上の独裁官はボルゴってわけか。」

ベルガ「皮肉なもんだな。王国を守るための非常事態宣言であいつの権力を強化してしまった。」

シュトゥルーデル元帥「ドボシュが選んだ独裁官ならまだマシだったかもな。」

ベルガ「ドボシュがそれをできなかったのは、ボルゴの方が実績で勝っていたからだ。」

シュトゥルーデル元帥「あいつがジパングを滅ぼす計画を立てている事は分かったが、ジパング寄りの政策ばかりをやっていたのは何故だ?」

ベルガ「それは魔弾砲を作る時間を稼ぐためだろう。財務官もやっているヘレンが言っていたんだ。ボルゴが執政官をやるようになってからは軍事費が年々増大していて軍事費の大半を魔法兵器の開発費用にあてていたとな。詳細を聞いたが軍事機密だと言われて教えてもらえなかったそうだ。しかも魔法兵器の最高責任者で魔法官のエトワールですら計画を知らなかった。」

シュトゥルーデル元帥「という事はボルゴは以前からジパングを滅ぼす計画を立てていて、疑われないようにジパング寄りの政策を行い、魔弾砲が発明された後は非常事態宣言を待つだけだったわけだ。そして非常事態宣言後にジパングの情報を知りながらわざと隙を見せてダイヤモンドハーバーを攻撃させ、報復攻撃という名目で宣戦布告したわけか。」

ベルガ「ああ、あいつの方が1枚も2枚も上手だった。僕はまんまとボルゴの手の上で踊らされていたんだ。」

シュトゥルーデル元帥「俺が奴を問いただす。ベルはその隙に魔弾砲のスイッチを切れ。」

ベルガ「それは良いけど、先に魔弾砲を撃たれた時のためにエトワールに連絡を入れておくよ。」

それからベルガたちはエルバ砦まで向かい、ベルガは裏口から侵入した。

シュトゥルーデルは表口から、ボルゴに正面から立ち向かっていった。

ボルゴ「よし、もう発射準備ができたな。あとは黒杉政次に連絡を入れて平和条約の破棄を要求するだけだ。」

グラント「奴が要求に応じれば婚活法も廃止される。要求に応じなければ魔弾砲で奴らは消し炭だ。これでやっと婚活法とおさらばできる。」

シュトゥルーデル元帥「そんな事だろうと思ったぜ。」

グラント「シュトゥルーデル、何故ここに?」

シュトゥルーデル元帥「それはこっちの台詞だ。独裁官ともあろうお方がこんな所で油売ってる場合じゃねえよなー。」

ボルゴ「君は確か将官でありながら、何度止められても出撃を繰り返していた大馬鹿者じゃないか。」

シュトゥルーデル元帥「大馬鹿者で結構。俺は実戦の方が好きなんでね。それよりも随分と大層なもんを作っているそうだな。あれがあればジパングを消し炭にできるんだろ?」

グラント「そうだ。私は婚活法で独身主義だった叔父を殺された。ボルゴも妹を婚活法で亡くしている。婚活法がメルヘンランドで強制導入されてからすぐにな。」

ボルゴ「私たちはずっと待っていたんだ。ジパングに復讐する機会をね。妹はアラフォーで婚活をさせられていたが、性欲の概念自体がなかったためにカップリングは1度もしなかった。私は偽装婚を勧めたが、妹は自分の生き方に反すると言ってそのまま40歳を迎えた。そしてジパング警察が家に来た時、強制収容所への連行を恐れて自殺した。これだけでも魔弾砲を投下する十分な理由となる。」

シュトゥルーデル元帥「まるで被害者の会だな。そっちの言い分は分かった。だがそのやり方は俺も承服しかねる。」

グラント「お前の承服など必要ない。これは独裁官権限で認められたものだ。今日は王国民たちに防衛戦争の勝利を報告する日だ。今から黒杉政次に平和条約の破棄を認めさせようと思ったところだ。」

シュトゥルーデル元帥「黒杉政次はその要求には応じないぞ。」

グラント「どういう事だ?」

シュトゥルーデル元帥「黒杉政次は普段はジパングとは別の場所にいて、そこからジパングをリモートコントロールしているそうだ。高みの見物をしている相手にそんな要求をしたところで、全く信じないか他人事のように突っぱねられるだけだ。今倒すべきなのはジパングじゃない。黒杉政次ただ1人だ。」

グラント「昔とは変わったな。」

シュトゥルーデル元帥「昔の俺なら外国の1つや2つどうなろうと知ったこっちゃないと思って賛成していただろうな。だが俺は婚活法を通して色んな奴に出会ってきた。俺は相手に関係なく困った相手を迷わず助けようとし、王国民からも外国人からも指示されている奴を目にした。そいつは自国を良くするよりも、世界を良くした方が結果的に自国のためになるという事を教えてくれた。」

ボルゴ「ベルガの事か。あいつも確かジパングの婚活法には真っ向から反発していたぞ。」

シュトゥルーデル元帥「だがジパングを滅ぼす事までは望んじゃいない。」

ボルゴ「それで?君は私たちに何を望むつもりかな?」

シュトゥルーデル元帥「今すぐ魔弾砲を破棄しろ。」

グラント「お前、自分が何を言っているのか分かってるのか?お前こそ今すぐ帰れ。さもないと国家反逆罪に問うぞ。」

シュトゥルーデル元帥「じゃあこっちからも1つ提案を出そう。王国民の投票で魔弾砲の投下を決めるってのはどうだ?王国民の意思は国の意思だ。王国民たちが反対すればそれこそお前らの方が国家反逆罪って事になるぞ。」

グラント「その必要はない。独裁官の意思こそ王国民の意思だ。こいつを倉庫にぶち込んでおけ。」

シュトゥルーデル元帥「てめえ、があああっ。くそっ、離せっ。グラント・・・・見損なったぞ。」

グラント「お前は倉庫でジパングの最期をしっかり見ておけ。連れていけ。」

作業員A「はい。」

ボルゴ「遠距離スタンガンとは考えたね。」

グラント「シュトゥルーデルは空爆の天才ではあるが銃撃の天才ではない。もし相手がヘクセンハウスだったら、撃つ前にこっちの銃が飛んでいただろう。」

ボルゴ「ヘクセンハウスは陸軍の任務に就いているはずだ。こっちに構っている暇はないだろう。」

グラント「さっき言っていたベルガというのは誰なんだ?」

ボルゴ「あいつは私の計画を何度も邪魔したドボシュトルタ側の人間だ。私はヘレントルテを黒杉政次の御曹司と結婚させて、それでジパングの情報を掴もうとしたんだが阻止されたんだ。おかげでこっちの諜報計画は全部パーになったよ。」

その頃ベルガは透明の魔法を使って裏口から侵入し、

シュトゥルーデルが閉じ込められている倉庫に入った。

ベルガ「おい、起きろ。おねんねしてる場合じゃないぞ。」

シュトゥルーデル元帥「ん?ベルか?ここは倉庫か?」

ベルガ「そうだ。今君を引きずってきた作業員を気絶させておいた。この作業服に着替えて魔弾砲の設計図を探してくれ。そこに解除のスイッチがあるはずだ。見つけたらすぐ僕に報告してくれ。」

シュトゥルーデル元帥「なるほどな。俺が設計図にある解除スイッチを探し出して、ベルがそのスイッチを押すわけか。設計図を探すまでの間、ベルはどうするんだ?」

ベルガ「僕はボルゴたちを見張る事にするよ。いつ発射しても不思議じゃないからね。」

シュトゥルーデル元帥「分かった。こいつが目を覚ますまでに設計図を見つけないとな。」

ベルガ「じゃあ、作戦開始だ。また後でね。」

シュトゥルーデル元帥「ああ、武運を祈る。さてここからどうするか。」

作業員B「おい、何をやっている?」

シュトゥルーデル元帥「あ、すいません。俺、ここの新人なんですけど、迷っちゃいましてねー。」

作業員B「何だ新人か。配属先はどこだ?」

シュトゥルーデル元帥「今日から新兵器開発の方をやれと言われました。それで今、上の方から新兵器の設計図を持ってくるように言われたのですが、新兵器の設計図ってどこにあるんですか?」

作業員B「新兵器の設計図か。それなら5階の会議室にあるはずだが。」

シュトゥルーデル元帥「ありがとうございます。では。」

作業員B「待て。」

47ページ目終わり

三低男子の婚活事情 46ページ「リメンバーダイヤモンドハーバー」

2019年01月13日 | 三低男子の婚活事情
ベルガたちは由実とヤンナの結婚式に出席して食事をするが、

芙弓に呼び出されて愛の告白を受けるも式場が大爆発を起こした。

ヘクセンハウス元帥「そういえばそうだったな。」

芙弓「ええっ、仮にも女王陛下でしょ?助けなくて良いの?」

メルヘンランド女王「やれやれだのう。いくら不老不死だからとはいえ、そのように扱われると妾は悲しいぞ。」

芙弓「あの、大丈夫なんですか?さっきまで崩れた式場の下敷きになってましたよね?」

メルヘンランド女王「痛くも痒くもないぞ。それよりもそなたの家族を救ってやれなかった。申し訳ない。」

芙弓「頭を上げてください。そんな、滅相もございません。」

ベルガ「こんな時に言うのもなんだが、芙弓は命の恩人だ。君が僕らを式場の外へ連れ出してくれなかったら僕らも死んでいた。感謝するよ。」

芙弓「当然でしょ。死ぬ間際のお姉ちゃんと約束したの。私、必ずベルの事を幸せにする。お姉ちゃんの分も生き抜いてみせる。」

ヘクセンハウス元帥「あの爆発は一体何だったんだ?」

ベルガ「空襲だ。さっきジパングの航空機がここを通った。恐らくは爆撃機だ。くそっ、ずっと前から嫌な予感がしてたのに、僕はみんなを助けられなかった。ちくしょう。」

芙弓「お姉ちゃん、やっと幸せを掴んだのに。こんなのって・・・・ないよ。ずっと私にも同性愛を隠しながら世を忍んで必死に生きてきて、今やっとそれが報われるはずだったのに・・・・どうしてこんな事に。」

アナスタシア「ベル、芙弓、無事だったのですね。」

ベルガ「ああ。ドボシュにメールを送った。ジパングの奇襲攻撃だとな。あれを見ろ。」

ヘクセンハウス元帥「嘘だろ。王国海軍が・・・・壊滅しただと。」

ベルガ「ここは王国海軍の主力が集まっているダイヤモンドハーバーだ。」

ヘクセンハウス元帥「そういえば、エトワールが無力化の魔法を発動するまではジパングからの攻撃を防いでほしいって言ってたな。」

ベルガ「やられた。奴らは無力化の魔法が発動間近なのを知っていたんだ。」

アナスタシア「では発信機も危ないのでは?」

ベルガ「あれはエトワールが守ってくれているはずだから大丈夫だ。」

芙弓「何でジパングが式場を攻撃したの?」

ベルガ「この式場は元々軍事基地だったものをリフォームして作られたんだ。上空からは軍事基地と見分けがつかない上に、人が集まっていたから軍の集会に見えたんだろうな。」

芙弓「じゃあ、帝国自衛隊は結婚式を軍の集会と勘違いして爆撃したって事?」

ベルガ「その可能性が高い。帝国自衛隊が今まで民間の施設をほとんど爆撃していない事を考えればなおさらだ。」

芙弓「だとしても許せない。何の罪もないお姉ちゃんたちを殺した事に変わりはないんだから。」

ベルガたちはギルドカフェに戻るとこの出来事を公開し、

緊急で開かれた元老院会議にラインで出席していた。

ベルガ「元老院はこの事態を受けてジパングに宣戦布告したそうだ。」

ヘクセンハウス元帥「だろうな。」

リコラ「奇襲攻撃の原因は何だったの?」

メルヘンランド女王「妾も知りたいぞ。」

ベルガ「無力化の魔法を発動する計画がばれたんだ。そこで黒杉政次はメルヘンランドが対外侵略を企んでいるという名目でダイヤモンドハーバーを攻撃したらしい。海軍の被害状況が気になるな。」

ヘクセンハウス元帥「王国海軍の報告によると正規空母8隻大破、2隻沈没。軽空母6隻大破、4隻沈没。戦艦6隻大破、1隻中破、3隻小破、5隻沈没。駆逐艦15隻大破、3隻中破、17隻沈没。巡洋艦7隻大破、1隻小破、5隻沈没。」

ベルガ「早速リロードの魔法を使ってきたか。だが奴らはこれで弾薬を消耗したはずだから、しばらくは攻めてこないだろう。」

ヘクセンハウス元帥「何故分かる?」

ベルガ「王国海軍の被害が大きすぎる。あの航空機の数でこれだけの被害を与えるにはリロードの魔法が不可欠だ。」

ヘクセンハウス元帥「それよりも深刻なのは空母を使えない事だ。あの奇襲攻撃で王国海軍の全ての空母が大破以上の被害を受けた。修復には時間がかかるそうだ。」

ベルガ「つまり僕らはしばらくの間、空母なしで帝国自衛隊と戦わないといけないわけか。」

ヘクセンハウス元帥「だが良い報告もある。帝国自衛隊の爆撃機113機、護衛の戦闘機16機を1人で撃墜した奴がいるらしい。」

クラップフェン少将「そいつは俺の事かな?」

ヘクセンハウス元帥「クラップ、お前出撃してたのか?」

クラップフェン少将「ああ。海軍の連中が助けを求めてきたから何事かと思って出撃してみれば、ほとんどの船が丸焦げときたもんだ。ありゃ大惨事だったなー。」

ベルガ「僕はベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。ベルと呼んでくれ。君は?」

クラップフェン少将「俺はクラップフェン・ブービ・ハルトマン。気軽にクラップと呼んでくれ。ヘクセンハウスやシュトゥルーデルは俺の遠い親戚にあたる。」

ヘクセンハウス元帥「私や兄貴とは真反対の地方出身だから、親戚の集まりの時くらいしか会えないんだ。ちなみにこいつは防衛戦争でも活躍したエースパイロットだ。」

ベルガ「それは頼もしいね。」

クラップフェン少将「何だよ。元気ねえじゃねえか。何かあったのか?」

ベルガ「実は結婚式場を爆撃されて、僕のフィアンセの姉が殺されたんだ。」

クラップフェン少将「そりゃ災難だったなー。」

ヘクセンハウス元帥「ていうか何でお前はここに来たんだ?」

ベルガ「君は出撃許可が出る前に勝手に出撃して、発砲許可が出る前に敵の航空機を撃墜しまくったから、それで建築士事務所から出勤停止と減給処分を受けている。だからここまで来てパソコンで建物の設計をしているんだ。普段は在宅勤務だから大した痛手じゃないんだろ?」

クラップフェン少将「さすがだな。そこまで見抜くとは恐れ入った。噂には聞いていたがとんでもない相棒を持ったな。」

ヘクセンハウス元帥「いつもはベルに振り回されてばっかりだけどな。」

クラップフェン少将「そう言う割にはいつもベルのそばにいて楽しそうにしてるじゃねえか。昔のお前は今よりもつまらなさそうにしてたし、本当は事件に巻き込まれる度に喜んでんじゃねえのか?」

ヘクセンハウス元帥「きついジョークだな。ベルとは防衛戦争以来ずっと腐れ縁ってだけだ。」

ベルガ「まあ、クラップのおかげで敵にも打撃を与える事ができた。出撃が遅れていたらジパングはほとんど無傷の状態でまた攻めてきていただろうし、護衛の戦闘機が少なかったあたり、急に戦闘爆撃機が迎撃しに来るとは思ってもいなかったんだろうな。」

クラップフェン少将「マニュアル通りの出撃だと間に合わねえからな。ていうかお前いつまで泣いてんだよ。もう済んだ事だろ?」

エステルハージトルタ中将「ううっ、うっ、私がちゃんと指揮していれば、あんな事には。」

ヘクセンハウス元帥「ずっと気になってたんだが、彼女は誰なんだ?」

クラップフェン少将「こいつはエステルハージトルタ・ハプスブルク。昨日までダイヤモンドハーバーの守備を任されていた海軍の提督だ。まあ、戦争を経験していない奴に守備を任せた軍にも非はあるからそう落ち込むなって。誰も予測できなかった事態だし、何なら俺が擁護してやるから安心しろって。」

エステルハージトルタ中将「それでも当事者である私の責任は免れないですよ。妊娠中のプファンが私に海軍を託してくれたのに。」

ベルガ「実はプファンの子供は僕との間にできた子供なんだ。言っちゃ悪いけどプファンがダイヤモンドハーバーの守備を続けていれば、ここまで深刻な被害にはならなかったと思うから僕の責任でもある。だから君が落ち込む必要はない。」

エステルハージトルタ中将「それはそれで傷つくんですけど。あと私、体は女子ですけど心は男子なんです。」

ヘクセンハウス元帥「お、おう。悪いのはいきなり奇襲してきた帝国自衛隊だ。黒杉政次にはたっぷり礼をしてやらないとな。」

ベルガ「これでボルゴがどう動くかだな。」

リコラ「お兄ちゃん、婚活イベントはどうするの?」

ベルガ「しばらくは中止だ。今はそれどころじゃない。ジパングを倒して婚活法を止めさせれば問題ない。それに今はジパングへの宣戦布告に伴ってジパング警察を全員追い出したから、婚活イベントをしなくても捕まる事はないよ。」

メルヘンランド女王「これでジパングとは対立する事になってしまったのう。」

ベルガはエトワールと無力化の魔法の発動を急ぐ事となり、

作戦を立ててジパングに対抗する事になったのである。

ベルガ「という作戦だ。うまくいけば魔弾砲とジパングの魔法兵器だけ無力化する事ができる。できるか?」

エトワール「正直、ここまで無茶な作戦を立案するとは思わなかったわ。もうこれ以外に手はないの?」

ベルガ「色々考えたがこれが限界だ。これが無理なら魔弾砲は許容する事になるぞ。」

エトワール「ネオトーキョーシティは外国の企業も多く集まっている重要なマーケットよ。ここが魔弾砲で消し飛べば、メルヘンランドはジパング以外の国も敵に回す事になるわ。だからこの作戦は絶対に成功させないと。」

ベルガ「魔弾砲の発射位置は分かったの?」

エトワール「ええ。魔弾砲はメルヘンランドの内陸部にある、このエルバ砦という場所よ。ここはメルヘンランドがまだ領土の小さい都市国家だった時代に国境線にしていた場所よ。今はもう使われなくなってるはずだけど、まさかここを秘密基地にするとはね。森の奥地で誰も気づかない場所だから、魔弾砲の開発にはちょうど良い場所ね。」

ベルガ「さすがは歴史学トップだね。」

エトワール「まあね。このエルバ砦から僅かな魔力反応を感知したから、衛星を使って場所を拡大してみれば思った通り、大きなロケットがあったのよ。恐らくこれが魔弾砲ね。止める術はあるの?」

ベルガ「ない事もない。魔弾砲の発射時間さえ分かればこっちのもんだ。」

ヘクセンハウス元帥「ボルゴはジパングへの報復攻撃を主張して、グラントがそれを承認したそうだ。」

メルヘンランド女王「王国軍の遠征が決まったのは何千年ぶりだろうか。」

エトワール「もう70年も遠征してないから、かなり久しぶりという事になるわね。確か最後に遠征したのが、ライス合衆国への制裁処置として工作員を派遣した時ね。」

ベルガ「ライスが魔法兵器を密輸して無力化の魔法で事を収めた後、報復処置として工作員がライスの軍需工場を破壊し尽くしたやつか。」

シュトゥルーデル元帥「それをやったのは俺の祖先だ。俺は空軍の出撃が決まり次第、ジパングに出撃してくるぜ。」

エトワール「あんた元帥でしょ?」

シュトゥルーデル元帥「グラントみたいな事言うなよ。俺にはこっちの方が性に合ってるんだ。」

ベルガ「そうだ。出撃するならその前に僕をエルバ砦まで連れて行ってくれ。グラントに会って直々に出撃許可を貰えば、いちいち怒られなくて済むだろ?」

シュトゥルーデル元帥「しょうがねえなー。じゃあ俺は車を準備してくるぜ。」

ヘクセンハウス元帥「私は軍の仕事があるから一緒には行けないぜ。」

ベルガ「ヘクセンハウス、アウグストに対空兵と対空戦車を配備するんだ。もしグラントに断られたらアウグストの空爆を防いだらお前の株が上がるぞと伝えてやれ。」

ヘクセンハウス元帥「分かったぜ。」

リコラ「防衛コンビ復活だね。」

エトワール「防衛コンビって何?」

リコラ「ヘクセンハウスが二等兵から元帥まで出世したのは、お兄ちゃんの指示通りに戦っていたからなんですよ。」

メルヘンランド女王「二等兵の時は自分で動いて敵を倒しておったのだが、将官になってからは自分が支持する立場となった。しかし自分で動くのは得意でも、誰かに指示を出すのは苦手であった。そんなヘクセンハウスにベルが指示を出しておったのだ。」

ベルガ「やっぱり兄弟だな。」

ヘクセンハウス元帥「兄貴は大将に指揮を任せて自分で出撃するからな。」

ベルガ「ていうかシュトゥルーデルは戦闘爆撃機を私物化しちゃってるけど大丈夫なの?」

ヘクセンハウス元帥「グラントから直々に贈呈されたらしい。」

46ページ目終わり

三低男子の婚活事情 45ページ「悪魔が舞い降りた結婚式」

2019年01月06日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは結界の魔法が閉じ込めてある発信機の設置が終わり、

ギルドカフェに戻るが芙弓から由実の結婚式の招待状を貰った。

芙弓「そこまで見抜かれてたんだね。」

ベルガ「由実さんは今年中に40歳を迎えるからね。早く結婚しないと婚活法違反になっちゃうんだよ。」

桜子「同性婚も婚活法で認められてるんですか?」

ベルガ「一応メルヘンランドでは正式な結婚ではあるから婚活法違反にはならないけど、問題は60歳の時点で子供がいない事だ。養子がいればクリアだけどその方法はもう他の夫婦がやってるから、養子の貰い先がいない問題はなくなった。だから養子が見つからなかったらやばいかも。」

芙弓「そう。姉のタイムリミットが20年延びるだけで何の解決にもなってないの。だからベルの力で婚活法をなくしてほしいの。みんなベルに期待してるんだからね。」

ベルガ「僕に期待されても困るよ。」

リコラ「お兄ちゃんらしくないね。」

メルヘンランド女王「その結婚式、妾も出席して良いか?」

芙弓「はい。女王陛下に出席していただければ姉も喜ぶと思います。」

桜子「それにしても、同性婚がこんなにも身近になるなんて思いもしませんでしたよ。」

ベルガ「メルヘンランド人の5割が性的少数者で、世界一高い比率だから全く珍しい光景じゃないよ。」

桜子「まるで眼鏡ですね。ジパングは眼鏡の人は5割もいませんけど、当たり前のように受け入れられていますから。」

芙弓「ジパングも早くそうなってほしいけど、未だに政治家がLGBTの人は存在価値がないとか平気で言っちゃうような国だから、ジパングでは同性婚が認められてないの。」

ヘクセンハウス元帥「それを言っていたのは国家社会主義帝国労働者党の連中だったな。」

ベルガ「ヘクセンハウス、帰ってたのか?」

ヘクセンハウス元帥「ああ、今回はブラック・アイボリーが買えたぜ。」

ベルガ「ご苦労だったね。よしっ、これで今月は生活費に困らずに済みそうだ。」

芙弓「1番高いの買ってきたんだね。」

ベルガ「うん。これは卸売りの段階から希少価値が高くて人気も高いから、黙ってても飛ぶように売れる代物だ。さすがは元バリスタだね。目利きの腕は衰えていないようだ。」

芙弓「昔はジパングでカフェに勤めてたんだけど、黒杉財閥が始めた黒杉珈琲に常連客を全員持っていかれて倒産しちゃったの。敵情視察をしたのだけど、安さだけが取り柄で味はいまいちだった。」

ベルガ「それは常連客が味音痴や休憩で来店していた会社員ばかりだったからだ。うちは外国人観光客が中心で味にうるさい人ばかりだったから当てつけのように黒杉珈琲があった時も売り上げが落ちなかった。今は独裁官に就任したグラントのおかげで黒杉珈琲の全ての店舗が退却命令によっていなくなったから、あいつらは打撃を受けているだろうな。」

芙弓「そのおかげで私は店を開けないんだけどね。」

ヘクセンハウス元帥「そういえば何でジパングの企業にだけ退却命令が出たんだ?」

ベルガ「ジパングの税収を減らすためだ。企業を王国中から撤退させて財産を全て没収すればメルヘンランドの税収にもなる。敵を弱体化させつつ軍事費を増やす上で最も効率的な手段だと思ったんだろうな。」

ヘクセンハウス元帥「黒杉政次もカンカンに怒ってたぞ。これはジパングに対する宣戦布告だとな。」

ベルガ「また攻めてくる前に何とかしないとね。」

芙弓「ほんとにぶれないね。」

ベルガ「ここでぶれたら今までの苦労が台無しだよ。」

そして結婚式当日となりベルガたちは由実の結婚式に、

参加する事になり多くの人々が式場に集まったのである。

ベルガ「ジパング人の方が多いね。メルヘンランド人の家族の方はあんまりいないようだ。」

由実「ベルガさん、来てくれたんですね。おかげ様でやっと理想の相手に出会えたんです。それで私が結婚する事になったのが、こちらのヤンナさんです。」

ヤンナ「ヤンナ・ズーテメルクです。私も婚活法でずっと苦労させられてたんですけど、そんな時に由実さんと出会って結婚する事になったんです。私ももう後がない年なので、相手が見つかって良かったですよ。」

由実「実はヤンナを紹介してくれたのがベルガさんなの。」

ヤンナ「そうだったんですね。ギルドカフェのクエストに依頼して良かったです。」

由実「クエストで依頼したの?」

ヤンナ「はい。ギルドカフェが同性婚をしたい人を募集していたので、それで応募したら由実さんを紹介してもらえたんです。」

ベルガ「由実とお見合いする事になった時に、同性婚をしたい人を募集して由実さんにお見合い写真として持って行ったら、ヤンナを選んでいたから紹介したんだ。」

芙弓「お姉ちゃんが同性愛者なのを見越した上で募集をかけてたんだ。まさかお姉ちゃんの依頼でやってたなんて知らなかったな。」

ヘクセンハウス元帥「ベルは依頼を受けたらすぐに行動して結果を出すクエスト優等生だ。時々クライアントと淫らな行為をするのが玉に瑕だが、そこにさえ目を瞑れば頼りがいのある相談相手だぜ。」

ベルガ「時々じゃないよ。たまにだよ。それに僕から誘った事ないから不可抗力だよ。」

由実「ふふっ、頼もしい依頼相手に恵まれましたね。」

ヤンナ「全部ベルガさんのおかげだったんですね。」

ベルガ「仕事だからね。」

由実「私たちの結婚の事を親に伝えたら凄く驚いてたんです。でもヤンナの親は全く驚いていなかったんです。」

ヤンナ「私はだいぶ昔からカミングアウトしていましたし、当たり前のように受け入れてくれたのは凄く幸せでした。」

由実「私の周りの女子は男を好きになるのが当たり前で、クラスの女子を好きになった時もなかなか言い出せなくて、親からも好きな男はできたかと聞いてくる始末でした。」

ベルガ「メルヘンランドだと相手が性的少数者でないと分かるまでは恋バナをしないのがマナーなんだけどね。人間はみんな恋愛をするものだという前提を押しつけられるだけで苦痛な人もいるからね。」

ヘクセンハウス元帥「まさか婚活法で同性婚が増えるとは奴らも思わなかっただろうな。」

ベルガ「そうだね。」

メルヘンランド女王「ベルよ、どうしたのだ?」

ベルガ「嫌な予感がする。何もなければ良いんだけど。」

メルヘンランド女王「結婚式を早く終わらせた方が良いのか?」

ベルガ「いや、僕の思い過ごしかもしれないからそのままでいい。」

メルヘンランド女王「妾の親衛隊は警備に回そう。」

そして由実とヤンナの結婚式が盛大に行われ、

2人は数十人ほどの招待客に祝福を受けた。

司会者「冬美由実さん、あなたはヤンナ・ズーテメルクさんとの末長い愛を誓いますか?」

由実「誓います。」

司会者「ヤンナ・ズーテメルクさん、あなたは冬美由実さんとの末長い愛を誓いますか?」

ヤンナ「誓います。」

司会者「では本日をもって2人を夫婦と認めます。2人は誓いのキスをお願いします。」

由実「んっ、ちゅっ。」

ヤンナ「んんっ、ちゅっ。」

司会者「それでは皆さん、2人を祝福して大いに盛り上がってください。今から食事の時間とします。」

由実「えっ、もう終わりなんですか?」

ヤンナ「メルヘンランドの結婚式はかなり簡易的なものなんです。大半の人はナシ婚か事実婚を選ぶ国ですから。」

由実「そうなんですか。苗字を変える手続きはどうしますか?」

ベルガ「君はジパング人だから知らないかもしれないが、苗字を変えたくないなら変えなくても良いよ。」

由実「えっ、そうなんですか?」

アナスタシア「ジパング以外の国では選択的夫婦別性が認められていますから、変えたいなら変えても良いですし、変えたくないなら変えなくても良いんですよ。」

由実「子供の名前はどうなるんですか?」

ベルガ「基本的に生んだ人と同じ苗字になるけど、手続きをすればパートナーの苗字に変更する事もできるよ。養子の場合は話し合って決める事になるよ。」

ヘクセンハウス元帥「確かジパングだと夫婦同姓が当たり前だもんな。しかもどっちが苗字を変えるかは法律上は自由とされているが、全体の96%にあたる女子が苗字の変更を余儀なくされている事から、ジパングの女は結婚をすると事実上苗字を選べない立場だ。」

ベルガ「外国人と結婚する場合は苗字を変えなくていいのに、ジパング人同士が結婚する場合はどちらかの苗字の変更が強制とかアホらしいな。さすがは人権後進国だ。」

由実「そ、そうですね。」

ヤンナ「まあまあ、ジパングにだって良いところはあるんですよ。今時安全な水が飲めて食事が美味しくて治安が良くてインフラが整ってて健康寿命が長い国って珍しいですよ。」

メルヘンランド女王「妾は1000年ほど前にジパング旅行をした事があるが、なかなか良かったぞ。」

ベルガ「旅行先としては理想的なんだけどね。」

ヤンナ「メルヘンランドには国民皆保険とかないですから、私は婚活法が始まる前まではジパングに住みたいって思ってましたね。」

ベルガ「一応教育費も医療費も全部無料だし、税金も消費税が100%である以外は特に税金がないからね。」

由実「消費税100%と聞いた時は重税国家だと思いましたよ。」

ベルガ「消費税は最も誤魔化すのが難しい税だから無駄なく回収できるし、生活は国が保障してくれるから不満を言う人はほとんどいないよ。ジパングみたいに税金の種類が多いくせに有効活用できていないよりは百兆倍マシだと思うよ。」

ヘクセンハウス元帥「生き方の自由度においてはメルヘンランドの右に出る国家はまずないと思うぜ。だから安心して結婚生活を送ってくれ。結婚の手続きが終わった後は移民申請をすればベーシックインカムが毎月貰えるようになるぜ。」

由実「はい、分かりました。引っ越しにはしばらく時間がかかるかもしれませんから、その後で申請しますね。」

芙弓「ベル、ちょっと良い?」

ベルガ「ん?どうしたの?」

芙弓「ここじゃ恥ずかしいから式場の外に来てほしいの。」

ヘクセンハウス元帥「私も行くぜ。」

ヤンナ「ベルガさん、芙弓さんとアナさんと行っちゃいましたね。」

由実「芙弓はいつもベルガさんの事ばかり話すんですよ。命の恩人だからでしょうか。私も芙弓の気持ちは理解できますが、そこまで肩入れするものでしょうか。」

ヤンナ「由実は相変わらず鈍感ですね。」

由実「えっ、どういう事ですか?」

ベルガ「式場の外に連れてきたという事は、相談か末期の病気かな?」

芙弓「ベル、私、あなたが好きなの。」

ベルガ「えっ。」

アナスタシア「私もです。」

芙弓「お姉ちゃんだけじゃなく、私の事も助けてくれた時からずっとベルガさんの事が頭から離れなかったの。最初は命の恩人だから大事に思っているものだと感じていたのだけど、今気づいたの。やっぱり好きなんだなって。もう30を迎えるアラサー女子だけど、もし私で良ければ婚活法が終わったら私ともつき合ってください。正直、ベルガさん以外とはつき合える気がしないの。お願い。」

アナスタシア「私もベルガさんの事が頭から離れません。私ともお願いします。」

ベルガ「僕で良ければ、喜んで。」

その時式場が大爆発を起こしてあっという間に崩れ去った。

ベルガたちは急いで式場に戻ろうとしたが怪我人ばかりだった。

ベルガ「何の音だ?・・・・嘘だろ?由実さん、ヤンナさん。」

ヘクセンハウス元帥「なんてこった。」

芙弓「お姉ちゃん、お姉ちゃあああああん。ねえ、起きてっ。しっかりしてっ。お姉ちゃん。」

由実「芙弓、ベルガさんの事、幸せに・・・・する・・・・のよ。」

芙弓「お姉ちゃん?・・・・お姉ちゃん?・・・・そんな・・・・あああああぁぁぁぁぁ。」

ベルガ「由実さん・・・・ヤンナさんの方はどうだ?」

アナスタシア「駄目です。もう死んでます。」

ベルガ「崩れるぞ。早く出ろ。」

芙弓「ううっ、お姉ちゃん。」

ヘクセンハウス元帥「そういえば女王陛下も中にいたよな?」

芙弓「あっ。」

ベルガ「何言ってんの。女王陛下なら式場の下敷きになってるけど、その内出てくるよ。」

ヘクセンハウス元帥「そういえばそうだったな。」

45ページ目終わり

三低男子の婚活事情 44ページ「極秘開発中最終兵器魔弾砲」

2018年12月30日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは独裁官であるグラントの家に忍び込んだが、

そこにはボルゴ派の人間が勢揃いしていたのである。

ベルガ「(極秘で開発させている兵器だと。)」

ボルゴ「まだ開発段階ではあるが、これを使えばジパングを一瞬で壊滅させる事ができる。その名も魔弾砲。」

グラント「ほう、そんな大砲を開発していたとは。どういう仕組みなんだ?」

ボルゴ「爆弾の中央に閉じ込めた魔力を極限まで凝縮した事により、圧縮された魔力が爆発によって一気に拡散され、半径10キロ以内の敵を全て消し炭にする事ができる我が王国の最終兵器だ。これをネオトーキョーシティに投下する計画を立てているところだ。」

議員A「それは大したものですな。」

議員B「ジパングには何度も悩まされてきましたからな。これで黒杉財閥の圧政ともおさらばだ。」

グラント「なるほど、魔弾砲が完成したらすぐに撃てという事だな?」

ボルゴ「ジパングに平和条約の破棄をするよう最終通告した上で相手が断ってくるようなら、その時は頼むぞ。」

グラント「分かった。この手でジパングを終わらせよう。婚活法などうんざりだからな。」

ベルガ「(まずい事になったな。このままじゃジパングを滅ぼされてしまう。)」

ベルガはギルドカフェへと戻り、事情を仲間たちに伝えた。

計画を知った仲間たちは、驚きを隠せなかったのである。

ベルガ「実は・・・・というわけなんだ。」

ヘクセンハウス元帥「マジかよ。そんな事をすればネオトーキョーシティに住む都民たちもただでは済まないぞ。」

リコラ「そんな計画があったなんて。」

メルヘンランド女王「おお、何と恐ろしい事よ。」

ベルガ「婚活法を作ったジパングにも非はあるが、こればかりは賛成できない。奴らはこの兵器を極秘に発動させるつもりだ。ジパングにいるフィアンセたちが犠牲になる前に阻止しないと。」

ヘクセンハウス元帥「だったらそいつらに伝えてジパングに来てもらったらどうだ。」

ベルガ「そんな事をすればボルゴに情報漏れがばれる。」

ヘクセンハウス元帥「じゃあどうするんだよ。」

ベルガ「この事は奴らの計画を阻止するまで内密にしてくれ。特にドボシュやヘレンには絶対にばれてはいけない。もしばれればドボシュとボルゴの対立が決定的になる。そうなれば非常事態宣言が台無しだ。」

ヘクセンハウス元帥「分かったぜ。だったら私たちだけでやるしかないな。」

ベルガ「ネオトーキョーシティに魔弾砲が投下されれば、ジパングは壊滅的な打撃を受ける。だがそれは同時に何の罪もない人たちが犠牲になる事を意味する。開発を中止させるのは無理そうだし、無力化の魔法を発動させて、交渉で解決するしか方法はない。」

ヘクセンハウス元帥「そのためにはエトワールに尽力してもらうしかないな。」

ベルガ「エトワールが無力化の魔法を発動させるのが先か、ボルゴがジパングに魔弾砲を投下するのが先か。今、ジパングの運命は僕らの手の中にある。」

ヘクセンハウス元帥「エトワールに会いに行ったらどうだ?」

ベルガ「えっ、僕が会いに行っても困らせるだけじゃないの?」

リコラ「お兄ちゃん、本当は今でもエトワールさんの事好きなんじゃないの?」

ベルガ「そ、そんな事。」

リコラ「何年お兄ちゃんの妹をやってると思ってるの?婚約破棄した理由聞いたよ。こればかりはお兄ちゃんの手で決着をつけるしかないよ。エトワールさん、凄く悲しんでたよ。」

ベルガ「・・・・そうだよ。僕は今でもエトワールが好きだ。もっとも、今更こんな事を言う資格なんてないけどね。」

エトワール「そんな事ないわよ。」

ベルガ「エトワール。」

エトワール「ずっとここに隠れて聞かせてもらっていたの。あたし、ずっとベルの事を誤解してた。ベルはずっと昔から変わってなかった。あたしを守るために悪役を買って出るなんてずるいよ。」

ベルガ「君が無事だっただけで何よりだよ。」

エトワール「あたし、今でもベルが好き。婚活イベントの時も相手をベルと比べちゃって、それで何か違うなと思って別れるのを繰り返してた。ヘレンに指摘されて、やっぱりベルの事を諦められない自分に気づいたの。婚活法が終わったら、あたしとやり直してほしいの。」

ベルガ「うん、分かった。」

エトワール「ベル、無力化の魔法はあたしに任せといて。あたしもあんたの計画に協力するから。ジパングの事は好きじゃないけど、ベルのフィアンセたちがいるなら仕方ないわね。」

ベルガ「エトワール、感謝してるよ。んっ、ちゅっ。」

エトワール「うぅん、ちゅっ、ちゅっ。」

ヘクセンハウス元帥「だからここそういう店じゃねえから。」

桜子「こんにちはー。あっ、エトワールさんだけずるいですよ。」

エトワール「ずるいって、まるで自分の物みたいに言わないでくれる。彼はあたしたちフィアンセの共有財産なんだから。」

桜子「ずっと言うのを我慢してましたけど、私もベルガさんの事が好きなんです。ベルガさん私ともつき合ってください。私の心を奪っておいて断るなんて許しませんから。」

ベルガ「僕で良いの?」

桜子「はい。ちょっと面倒なところはありますけど、ベルガさんなら安心できるんです。」

エトワール「好きな人が目の前でキスされたからって嫉妬する事ないじゃない。」

桜子「嫉妬なんてしてませんよー。」

明歩「こんにちは。あれっ、エトワールじゃん。その様子を見ると和解したみたいだね。」

エトワール「うん、やっぱりあたしの直感は正しかったのよ。」

ヘクセンハウス元帥「ベル、後でちょっと良いか。」

ベルガ「うん、別に良いけど。」

ベルガたちは営業を無事に終えて明歩と桜子が帰り、

営業後のギルドカフェにはシュトゥルーデルが来た。

シュトゥルーデル元帥「お前の方から呼び出すとは珍しいな。何かあったのか?」

ヘクセンハウス元帥「ああ、そうだぜ。」

ベルガ「実はね・・・・というわけなんだ。」

シュトゥルーデル元帥「ボルゴの奴がそんな恐ろしい事を考えていたとはな。」

ベルガ「分かっているとは思うが、この事は問題が解決するまでは他言無用だぞ。」

シュトゥルーデル元帥「分かってるぜ。特にドボシュにばれたりしたらややこしそうだしな。」

ベルガ「僕が聞いた話だと、魔弾砲は王国軍司令部で極秘に開発されているそうだ。シュトゥルーデルは開発状況を見ながらできるだけ時間を稼いでほしい。」

シュトゥルーデル元帥「それは良いが、ボルゴがジパングを滅ぼす事を計画していたとは思わなかったぜ。ついさっきまではジパング寄りの政策ばかりをしていたくせに、どういう風の吹き回しなのやら。」

ベルガ「奴はジパングに平和条約の放棄を要求して、それを断れば魔弾砲を撃つそうだ。つまり魔弾砲を阻止する方法は3つだ。黒杉財閥にこの事を伝えて平和条約の破棄に応じてもらうか、魔法官の意向で開発を中止にしてもらうか、出来上がった魔弾砲を何らかの手段で無力化するしか方法はないだろうな。」

エトワール「その3つのうち2つには疑問が残るわね。黒杉財閥に計画をばらせばボルゴたちに目をつけられて国家反逆罪に問われる可能性があるわ。それにあたしが魔法科に命令を出しても、独裁官の命令には護民官ですら逆らえない。それはあんたも分かってるでしょ?」

ベルガ「そうだけど、人命尊重を唱えれば何とかなるんじゃないの?」

シュトゥルーデル元帥「ボルゴにその理屈が通るとは思えないな。奴は保守的ではあるが、やる時は徹底してやるところがある。グラントも防衛戦争では陸軍を指揮していただけあって軍人色が強い。」

リコラ「となると残りは3つ目の方法だね。魔弾砲を無力化するのってできるんですか?」

エトワール「魔弾砲の打ち上げ場所が無力化の魔法の圏内に入っていればできるかも。」

ベルガ「そういえば、まだ無力化の魔法は発動してないんだよね?」

エトワール「ええ、そう容易く発動できる魔法じゃないからね。」

メルヘンランド女王「しかし、ジパングを滅ぼす事などあってはならぬ事だ。エトワールよ、最悪の事態は免れるよう最善を尽くしてはくれぬか?」

エトワール「あたしに任せておいて、女王陛下。」

ベルガ「結界の魔法を閉じ込めた魔力発信機の設置を手伝おうか?」

エトワール「お願いするわ。ここは島国だから海沿いに設置していく事になるけど、長旅になるわよ。」

ベルガ「望むところだ。」

ベルガたちはメルヘンランドの国境沿いに、

魔力発信機を設置していったのである。

ベルガ「エトワール、こっちは終わったぞ。」

エトワール「えっ、ベルって魔法使えたの?」

ベルガ「うん、見よう見まねでやってたら使えるようになってたんだ。ただ、魔法を使うと使っただけ体力を消耗するから、あんまり使えないのが欠点だけどね。(本当はロムルの子孫だって事を知って気づいたんだけどね。)」

エトワール「ベルにも魔法使いの才能があるなんて知らなかったなー。ねえ、確かベルって生活に困ってたんでしょ?魔法科に入らない?福利厚生も保証するよ。」

ベルガ「断る。公務員や会社員みたいな仕事はやらないって決めてるんだ。」

エトワール「まあ、ベルらしいと言えばベルらしいか。先生といつも喧嘩してたもんね。言われてみれば人に使われるのは得意じゃなさそう。」

ベルガ「立場が上だから正しいとは限らない。労働において無能な上司を持つほど無理ゲーなものはないからな。学校も同じだ。怒鳴り散らす事しか能がない担任と当たったら殴り倒すか不登校になるしかない。」

エトワール「ベルは殴られた後に先生を殴り倒して不登校になってたけどね。」

ベルガ「あれは不登校じゃなくて出席停止処分なんだけど。」

エトワール「どっちも似たようなもんでしょ?ほんと変なところに拘るよね。」

ベルガ「エトワールだって拘らない事に拘ってるじゃん。」

エトワール「何そのとんち?」

ベルガ「誰でも何らかの拘りを持って生きてるって事さ。これで全部か?」

エトワール「東の方はね。西の方は他の魔法使いに任せてるわ。」

ベルガ「エトワール、確か魔弾砲の打ち上げ場所に無力化の魔法を発動すれば魔弾砲を無力化できるんだよね?」

エトワール「ええ、そうよ。魔弾砲も魔法兵器だから無力化の魔法で無力化できるはずよ。問題は場所だけど、恐らくメルヘンランドの領土の範囲内だから、今の状態で無力化の魔法を発動しても、領土内だと結界の魔法の範囲内だから無力化はできないわ。」

ベルガ「魔弾砲の打ち上げ場所のみ、結界の魔法が効かない魔法を使えば、メルヘンランドの魔法兵器を守りながら魔弾砲だけ無力化できるんじゃないかな?」

エトワール「それだと、魔法官であるあたしの責任が問われちゃうじゃない。他の方法を考えなさい。」

ベルガ「そう言われても、他に方法なんて。」

エトワール「魔弾砲を安全に無力化する方法を考えなさい。それがあたしからあなたへの課題よ。まだ時間はあるからゆっくり考えなさい。」

ベルガ「そんなー。」

ベルガはギルドカフェへと戻り仲間たちと営業していた。

すると芙弓が由実の結婚式の招待状を持って来たのである。

芙弓「ベル、久しぶり。明歩もいたんだ。」

明歩「芙弓さん、久しぶり。料理好き限定編以来だね。」

ベルガ「姉の結婚が相当嬉しいようだね。招待券でもくれるのかな?」

芙弓「相変わらずだね。ベルの言う通り、今日は姉の件で来たんだよ。」

桜子「あの、私は明歩さんの同僚で咲良桜子といいます。よろしくでーす。芙弓さんは明歩さんと知り合いだったんですねー。」

芙弓「ええ、料理好き限定編で知り合って、それからは度々連絡を取ってるの。これ、姉の結婚式の招待状。今度の日曜日に結婚式をするから是非来てね。」

ベルガ「無事にメルヘンランド人の女子とカップリングしたみたいだね。楽しみにしてるよ。」

桜子「えっ、女性同士の結婚なんですか?」

ベルガ「そうだ。由実さんはカップリング後に同性愛をカミングアウトして、今年中に同性婚をする予定だ。」

芙弓「そこまで見抜かれてたんだね。」

44ページ目終わり

三低男子の婚活事情 43ページ「非常事態宣言と魔法官の過去」

2018年12月23日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは魔法を駆使してどうにか強制収容所を脱出し、

青葉たちと共にギルドカフェへと帰還する事に成功した。

ベルガ「なかったら届けるなんて言わないもんね。」

ヘレントルテ准尉「ベルはもう分かってたのね。」

青葉「あの、女王陛下はもう行っちゃいましたけど、1人で行かせて大丈夫なんですか?」

ベルガ「別に心配ないよ。何ならこの光学迷彩型追跡カメラで様子を見るか?」

青葉「はい。あっ、女王陛下をジパング警察が囲みましたよ。」

ベルガ「やはり後を追っていたか。どうやらこっちの情報は奴らには筒抜けのようだ。」

青葉「そんな呑気な事を言ってる場合ですか?今すぐ助けに行かないと。」

リコラ「あなたが行っても、あなたが被害者になるだけですよ。」

ヘクセンハウス元帥「ほら、見てみろよ。」

青葉「女王陛下が無傷のまま元老院議事堂に辿り着いてる。えっ、明らかに銃弾受けてましたよね?」

ベルガ「女王陛下は不老不死だから一切のダメージを受けないんだ。護衛がいても無駄に犠牲者が増えるだけだから誰も護衛をやりたがらないし、不老不死なら護衛する意味もないからね。」

青葉「確かに。」

ヘレントルテ准尉「それにしても、元老院議員を一方的に捕まえるのは明らかに問題だわ。既にお兄様にはメールを送っておいたわ。」

ベルガ「助かるよ。これでボルゴも非常事態宣言をせざるを得なくなるんじゃないかな?」

リコラ「完全に怪我の功名だけどね。」

ベルガ「奴らは僕を倒す絶好のチャンスを逃した。しかも僕を捕まえようとした事で一層ピンチになった。この機会を逃す手はない。しばらくしたら議事堂で会議が開かれるだろう。」

それから数日が過ぎると、元老院議事堂で再び議論が行われ、

非常事態宣言と無力化の魔法の発動が、明言される事となった。

ドボシュトルタ「ボルゴ、元老院議員が不当に捕まり、強制収容所の悲劇によってメルヘンランド人からも犠牲者が出たんだぞ。もう良いんじゃないか?ジパングとの同盟は諦めた方が良い。」

ボルゴ「仕方ないね。ジパングとは手を切らざるを得ないか。」

ベルガ「それよりも早く無力化の魔法を発動するべきだ。今こうしている間にもジパングが無力化の魔法を阻止しようと企んでいるはずだ。王国軍以外に魔法兵器を渡したままにしておくのは危険すぎる。」

エトワール「全く、言ってくれるじゃない。無力化の魔法には準備が必要なのよ。あっ、ベル。」

ベルガ「エトワール、まさか君が魔法官だったとはね。」

エトワール「無力化の魔法をそのまま使うとこっちの魔法兵器まで無力化されちゃうの。だから王国内を無効範囲として確定させてから使う必要があるのよ。だから今、結界の魔法という他の魔法の効果を受けなくなる魔法が閉じ込めてある発信機を設置して領土を囲んでいるところなの。だから準備が終わるまでの間、あんたたちにはジパングの侵攻を防いでほしいの。」

ベルガ「そうなると執政官2人でいちいち決めるのは非効率だな。」

ボルゴ「非常事態の宣言に賛成しよう。それが君の望みなんだろう?」

ベルガ「ああ、そうだ。」

ドボシュトルタ「決まりだな。私は最初から賛成している。執政官2人が認めた事により、本日より非常事態を宣言する。独裁官の指名は伝統に従いこちらで決めるものとする。」

ベルガたちはギルドカフェに戻ると大喜びして宴を始めた。

エトワールとは積もる話をたくさん話していたのである。

エトワール「あたしはエトワール・シャブリエ。普段は魔法官をやってるの。あんたたちが明歩ちゃんと桜子ちゃんね。よろしく。」

明歩「よろしくお願いします。」

桜子「よろしくでーす。」

ベルガ「相変わらずだね。婚活は全くうまくいっていないようだ。今日も目覚まし時計のし忘れで会議に遅刻。原因は仮交際の相手に振られた事によるやけ飲みだ。二日酔いで起きられなかったんだろ?」

エトワール「げっ、何で分かったの?」

ベルガ「観察しただけだ。」

マッカランの臭いが微かに残っている。 →彼女の大好物で二日酔いした。

朝起きられない体質で会議に遅刻した。 →目覚まし時計をし忘れた。

珍しく夜にアルコールを飲んだ。    →仮交際の相手に振られた。

服装が乱れ気持ちに余裕がない。    →慌てて起き出発を急いだから。

エトワール「そうよ。昨日やっと交際にまで発展した相手に振られて、1人寂しくやけ酒飲んでたのよ。悪い?」

ベルガ「そこが振られた原因じゃないの?」

リコラ「お兄ちゃん、その言い方は失礼だよ。」

エトワール「いいのいいの。こういうのにはもう慣れたから。それにしても非常事態を決める重要な会議で再会するとは思わなかったわ。昔と全然変わってないわね。」

桜子「あの、エトワールさんはベルガさんと知り合いなんですか?」

エトワール「う、うん。そうだよ。」

ヘレントルテ准尉「エトワールはベルの元許婚よ。」

エトワール「ちょっとヘレン、何で言うのよ?」

ヘレントルテ准尉「別に良いじゃない。そこまで悪い思い出じゃないんだし。」

エトワール「あたしにとっては最悪の思い出よ。突然あたしとの結婚を放り出してバリスタになるとか言って家に引きこもっちゃったし。」

ベルガ「そんな事もあったね。」

リコラ「それで町の人はみんなエトワールさんに同情して、お兄ちゃんは社会不適合者と呼ばれるようになったんです。」

エトワール「ずっと気になってたんだけど何であたしを振ったの?今なら教えてくれても良いでしょ?」

ベルガ「聞かない方が良いと思うよ。」

メルヘンランド女王「ベルにはベルの事情があったのだ。それが分からぬそなたではあるまい。」

エトワール「女王陛下までそんな事言わないでよー。」

メルヘンランド女王「失恋は青春の味だ。決して無駄にはならぬぞ。」

エトワール「それはそうだけど、あたしは本当の事が知りたいの。過去の自分に決着をつけたい。だから真実を話して。あたしが嫌で結婚を投げ出したんだったら、あんなまどろっこしい事はしなかったはずよ。」

ベルガ「君に非はないよ。全部僕の責任だから。」

エトワール「そんな言葉聞きたくない。お願いだから教えてよ。」

明歩「ベル、ちゃんと答えてあげたら?それとも言えない事情でもあるの?」

ベルガ「うん。正直、言いたくない。」

エトワール「ちょっと、待ちなさいよ。」

ヘレントルテ准尉「その辺にしておきなさい。いくらあなたでも彼の傷を抉るのは許さないわよ。」

エトワール「あんたは良いわよね。のうのうと彼を思い通りにできて。」

ヘレントルテ准尉「あなたが今でも彼の事を愛してるのはよく分かったわ。じゃあ彼の代わりに私が教えてあげるわ。」

エトワール「知ってたのね。」

ヘレントルテ准尉「あなたがベルと許婚になったのはあなたとベルがまだ10歳の時。ベルの家とあなたの家は仲が良かった事もあって、子供同士を許婚にしていた。あなたがベルと凄く仲が良かったのは覚えてるわ。でも彼は中等部を追い出されて、初恋の人を自殺に追いやられてしまったのよ。あなたはベルが追放処分を受けた直後に婚約破棄され、ショックで不登校になったでしょ?」

エトワール「その事なら知ってるけど、それとこれとは関係ないでしょ?」

ヘレントルテ准尉「大ありよ。もし彼が婚約破棄しなかったら、あなた、黒杉政吾にいじめ殺されていたのよ。」

エトワール「どういう事?」

ヘクセンハウス元帥「あいつは君を守るために婚約破棄したんじゃないかな?」

ヘレントルテ准尉「私はベルとは別のクラスだった事もあって黒杉政吾からの迫害は受けなかったけど、あなたはベルと黒杉政吾と同じクラスだったでしょ?婚約破棄されたとなれば他のクラスメイトからは同情され、あなたはショックで不登校になりいじめどころではなくなる。彼としてはあなたにまで被害を拡大させたくなかったのよ。」

エトワール「えっ・・・・そんな。」

ヘレントルテ准尉「あなたはベルとは真逆で学校が大好きだった。そんなあなたに直接学校に行くなと言っても無駄だと知っていたから、あんなまどろっこしい手を使ったんだと思うわ。ベルはあなたの事を振ったわけじゃないの。黒杉政吾がベルと親しくしていた仲間をいじめ殺す事を見抜いていたから、不登校にさせるためにわざと婚約破棄したのよ。」

エトワール「・・・・あたし、とんでもない勘違いをしていたのね。じゃあ何でベルはあたしと距離を置いて、理由も言わなかったの?」

ヘクセンハウス元帥「自分と一緒にいたら更なる悲劇に君を巻き込む事になると思ったからだろう。ずっとベルと一緒に事件に巻き込まれてきた私には分かるぜ。」

エトワール「ちょっと2階に行ってくる。」

リコラ「今は止めといた方が良いと思います。兄は昔から偏屈で人の気持ちに鈍感でどうしようもないくらい拘りが強くて・・・・でも本当は凄く優しくて仲間思いだから、婚約破棄したエトワールさんに対して引け目があるんですよ。」

エトワール「そうなの?あたしには分からないけど、リコちゃんが言うならそうなのかもね。」

翌日になると執政官によって独裁官が決められ、

国内にあるジパングの企業全てに撤退命令が出た。

ベルガ「独裁官は元老院議員の中でも最高司令官の経験者であるグラント・リンカーンに決まったそうだ。」

ヘクセンハウス元帥「私も知ってるぜ。防衛戦争の時の陸軍元帥で今は監察官をやっているそうだが、まさかあいつが選ばれるとはな。」

ベルガ「だが厄介な事にグラントはボルゴ派の人間で、誰よりもボルゴに忠実だ。つまり今のメルヘンランドはボルゴ派の思い通りってわけだ。ジパングとの同盟は諦めたようだが、執政官の経験者でない者が独裁官になるのは危険だ。」

ヘクセンハウス元帥「独裁官の期限は6ヵ月だ。たとえ暴政を働いたとしても、6ヵ月の我慢で済むと思うぜ。」

ベルガ「ジパングへの対抗策があるなら一度話を聞いた方が良いな。」

リコラ「確かグラントさんは戦い上手な人だから、ジパングに戦争を仕掛けたりするんじゃないかな。」

ベルガ「余程の大義名分がない限りは、他国に対する宣戦布告は禁止されている。」

メルヘンランド女王「妾はこの前ボルゴに会ったのだが、非常事態になった時の事は考えていると言っておったぞ。」

ベルガ「ボルゴが非常事態になる事を読んでいたのだとしたら・・・・嫌な予感がする。ちょっと出かけてくる。」

メルヘンランド女王「どこに行くのだ?」

ベルガ「グラントの家だよ。あいつらが何を企んでいるのかをこの目で確かめてくる。僕は運転免許は持ってないけど、車はオートパイロットにしておくから問題ない。」

ベルガはグラントの家まで車で行ったが、

途中からは透明の魔法を使って姿を隠した。

ベルガ「(ここがグラントの家か。随分と豪華だな。ん?あれはボルゴたちか。何故あいつらがここに?)」

グラント「まさかベルガ君が非常事態に導いてくれるとは思わなかったよ。だが何でお前はずっと非常事態に反対だったんだ?チャンスは何度もあったはずだぞ。」

ボルゴ「いきなり非常事態宣言をすれば、作戦が失敗に終わった時に私の責任が問われてしまうからね。ドボシュに非常事態の主導権を握らせて私は後から賛成する方向に行けば、失敗した時に責任を問われるのはドボシュだ。」

ベルガ「(ボルゴの奴、ドボシュを陥れるつもりだったのか。)」

議員A「ウィトゲンシュタイン家が元老院の主導権を握っている内は我々にはどうにもできませんが、ドボシュを引き摺り下ろせば元老院は我々の思うがままですぞ。」

ボルゴ「昔のドボシュは聡明で大人しい男だったが、いつの頃からか私に意見してくるようになってね。あのまま放置しておけばいずれは私と対立する事になるだろう。」

議員B「それで、ジパングはどうするんです?」

ボルゴ「とっておきの秘策がある。実は新兵器開発部門に極秘で開発させている兵器があるんだ。」

議員A「それはどんなものですかな?」

議員B「私らにも聞かせてくださいよ。」

ベルガ「(極秘で開発させている兵器だと。)」

43ページ目終わり

三低男子の婚活事情 42ページ「収容と脱出の血塗られた悲劇」

2018年12月09日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは青葉が捕まった事を知り彼女を助けるために捕まるが、

それは黒杉財閥率いるジパング特殊部隊の罠だったのである。

青葉「ええっ、そんな事できるんですか?」

ベルガ「ああ、ついでにここにいる連中も一緒に放つぞ。それで奴らが混乱している隙に逃亡するぞ。」

青葉「何か色々まずい気がするんですけど、手錠を繋がれた状態でスマートフォンも取り上げられてる状態でどうやって脱出するんですか?」

ベルガ「やり方は簡単だ。まず手錠の鍵を外す。ほらね。」

青葉「どうやって手錠を外したんですか?」

ベルガ「トリックを使えばこれくらい楽勝だよ。(本当は解錠の魔法なんだけどね。公の場で魔法を使う事は禁止されてるけど、緊急時は使っても良い事になってるはずだから心配ない。今は覚えたての簡単な魔法しか使えないけどね。僕がロムルの子孫だって事を知ってから、もしやと思って試験的に魔法を使ってみたけど、本当にできるとは思ってなかったよ。)」

青葉「トリックですか?」

ベルガ「鍵穴の奥にある解錠の仕掛けを意識するんだ。(本当は解錠を強く念じるだけなんだけどね。)」

青葉「ありがとうございます。それでどうするんですか?」

ベルガ「その前に確認しておきたい事がある。僕がさっき買った本は模写しているか?」

青葉「いえ、解析が容易なものだけジパング語で模写しているくらいですから、やっていません。」

ベルガ「それを聞いて安心した。もし買った本が無力化の魔法が書かれた魔導書でしかもジパング語で模写されていたら、君はメルヘンランド史に残る戦犯になるところだったぞ。」

青葉「分からなくて良かったです。古文書収集家としては複雑ですけど。」

ベルガ「無力化の魔法を相手に使われればこっちが終わるからね。青葉、これを見てくれ。」

青葉「あっ、ボイスレコーダーじゃないですか。」

ベルガ「そうだ。さっきご丁寧に全部話してくれたあいつらの音声が全て残ってる。こんな事もあろうかと服のリボンに仕込んでおいた。さっきいた加賀彰造と赤城大吾は共にジパング警察の同僚でずっと同じ部署だ。行動も一緒だが過程も結果も同じでないと気が済まないところがある。」

青葉「それがどうかしたんですか?」

ベルガ「さっきは赤城大吾が僕を捕まえた事で、加賀彰造が自分より先に出世する事に危機感を持っていた。あれはジパング人特有の同調性だ。全員同じを好み、自分たちと違う事をした人や、自分たちと違う結果を残した人に対して嫉妬が生まれる。文化依存症候群と言っても良い。これを利用して加賀彰造を釣るんだ。一芝居つき合ってくれ。」

青葉「はい。私は何をすれば良いんですか?」

ベルガ「僕が君を襲うから大声で助けを呼びながら全力で抵抗してくれ。」

青葉「別の案にしてください。というかさっきのトリックで牢屋の扉も開けてくださいよ。」

ベルガ「このトリックは南京錠や手錠みたいな、鍵を使って開ける物じゃないと効果がないんだ。この牢屋は指紋認証で開くコンピューター式の扉だからトリックが効かないんだ。」

青葉「分かりました。」

ベルガ「じゃあいくよ。」

青葉「きゃあああああぁぁぁぁぁ。止めてください。誰かっ、誰か助けてください。あああああぁぁぁぁぁ。」

彰造「さっきからうるさいぞ。何の騒ぎだ?」

ベルガ「どうせここで死ぬんだから、最後に1回やらせてくれたって良いだろ?」

青葉「嫌ですっ。止めてください。お願いですからっ、止めてください。」

彰造「ったくどうしようもない奴だな。(そうだ、いっその事ここでベルガを殺してしまおう。そうすれば俺の手柄になるし、女子を襲っていたからという理由で殺したなら問題ない。)おい、大人しくしろ。があっ。」

ベルガ「ふう、やっと扉を開けてくれたか。」

彰造「スリーブガンか。てめえ、図ったな?」

ベルガ「君は特殊部隊に入るほどの有能さはあるが、争いごとを嫌う性格で女子に対しては優しい性格だ。」

青葉「優しそうには見えませんでしたけどね。」

ベルガ「赤城大吾は君を雑に扱っていたが、君は彼女を突き飛ばしたり引っ張ったりはしなかった。そして僕が彼女を襲うふりをしたら扉を開けてくれた。女子には優しい証拠だ。」

彰造「皮肉なもんだ。そいつを餌にお前を捕まえたと思ったら、今度はお前からそいつを餌に脱出されるとは。」

ベルガ「急所は外しておいた。命までは取らん。ここに繋いでおいてやるから安心しろ。それと黒杉政次は今の君みたいに失敗した者には一切容赦しないぞ。僕を捕まえて処分する任務に失敗した時点でお前たちが処刑されるのは時間の問題だ。もし他の仲間に助けてもらえたら亡命しろ。」

彰造「またお前を捕まえに行くかもしれないぞ。」

ベルガ「それはない。この前僕の討伐に失敗して退却した警察官は全員黒杉政次に殺されたからな。」

彰造「くそっ、覚えてろよ。」

ベルガ「君の無事を祈ってるよ。じゃあね。」

彰造「おい、待て。待ちやがれー。」

青葉「脱出できたのは良いですけど、演技の割には必要以上に触ってませんでした?」

ベルガ「気のせいだよ。」

青葉「あのままにしておいて大丈夫なんですか?」

ベルガ「問題ない。彼は生きるために仕事しているだけで、本来は善良な市民だ。黒杉政次に利用されているだけだという事に気づいたなら無意味な仕返しはしないだろう。」

青葉「だと良いんですけどね。ジパングには、情けは人の為ならずって言葉がありますから。」

ベルガ「そんなカッコ良いもんじゃないよ。あいつが僕の立場なら殺していただろう。だがな、メルヘンランドがジパングと違うように、僕もあいつらとは違う。それだけの事だ。」

青葉「フリー合コンの時も思ってましたけど、ベルガさんって偏屈ですよね?」

ベルガ「偏屈じゃ良いものは作れないよ。発想の柔軟さなしにバリスタができると思うか?」

青葉「そういうところが偏屈って言ってるんですよ。」

ベルガ「青葉はこの部屋にいろ。僕は指令室に行く。」

青葉「逃げないんですか?」

ベルガ「ああ。このまま逃げても捕まるだけだし、ここだと指紋認証でしか扉を開けられない。今強制収容所で捕まっている人はみんな婚活法違反で捕まっているだけで何の罪もない人がほとんどだ。だから指令室に行って全ての扉を開放する。青葉はその時の混乱に乗じて逃げろ。」

青葉「・・・・分かりました。」

ベルガ「(よし、そろそろ試すか。誰も僕に気づいていない。透明の魔法は成功のようだ。)」

ベルガは透明の魔法により誰にも気づかれないまま、

まんまと強制収容所の指令室までやってきたのである。

大吾「彰造の奴遅いな。ベルガがいる牢屋を確認してくれ。」

ジパング警察官C「ああ、分かった。」

ジパング警察官D「ん?これはどういう事だ?収容所の牢屋が全部開いてるぞ。」

大吾「牢屋がもぬけの殻だ。ベルガの野郎、脱出しやがったぞ。」

ジパング警察官C「違反者が全員逃げるぞ。早く取り押さえにいくぞ。」

ジパング警察官D「分かった。なんてこった。しかし、いったい誰がこんな事を。」

大吾「そんなの知るか。早く行け。全く仕事の遅いとーしろばっかりよく集めたもんだ。いくら警察官が足りないからって、ろくな訓練もなしに貧困者に警察官をやらせるとは。があっ。」

ベルガ「よっ、また会ったな。」

大吾「お前、いつの間に。」

ベルガ「この部屋には緊急用に全ての牢屋の扉を開けるスイッチがある事は知っていた。この時をずっと待ってたんだよ。」

大吾「こんな事をしてただで済むと思うなよ。」

ベルガ「それはこっちの台詞だ。僕はこの事を元老院に伝える。元老院議員を正当な理由もなく逮捕したと分かれば、元老院もジパングには見切りをつけるだろう。君らは僕らが魔導書を探しているのを知っていた。それで僕をこっそり監視して魔導書を横取りするつもりだったんだろ?」

大吾「いつから気づいていた?」

ベルガ「お前らが古本屋に来た時からだよ。お前らが血眼になって僕を捕まえる理由と言えばそれくらいしかないからね。お前をここに繋いでおく。もし仲間に助けてもらえたら亡命しろ。黒杉政次と仲の良いお前なら奴がどんな奴か知ってるよな?」

大吾「黒杉さん直々の任務に失敗した者は全員秘密裏に処分される。」

ベルガ「分かってるじゃん。あの愚痴を聞く限りだと、君も黒杉財閥のやり方には疑問を持っているようだ。」

大吾「警察官たちが戻ってきた時がお前の最後だ。」

ベルガ「僕が何の考えもなしにここにいるわけないだろ。僕のスマートフォンは返してもらうよ。じゃあね。」

大吾「てめえー、待ちやがれー。」

ベルガ「(このまま透明化の魔法でやり過ごそう。やれやれ、外はどうなってるかな?・・・・嘘・・・・だろ?)」

ベルガが外と見るとそこには血塗れで倒れた脱走者たちが、

たくさん倒れており周囲の人々はパニックになって逃げてしまった。

ベルガ「そんな・・・・僕のせいだ。僕が牢屋の扉を開けてしまったからこんな事に。」

青葉「ベルガさん、無事でしたか。」

ベルガ「青葉、ここは危険だ。一緒に来い。」

青葉「はい。」

ジパング警察官E「見つけたぞー。ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンだ。」

ベルガ「しまった。見つかったか。逃げるぞ。」

ジパング警察官F「構わん。撃てっ、撃ち殺せ。がはっ。」

ジパング警察官E「おい、大丈夫か?・・・・死んでる。一体誰が?ぐおっ。」

ベルガ「あの馬鹿野郎。でも助かったよ。」

青葉「ベルガさん、口が悪いですよ。」

ベルガ「こっちの話だ。ここならメールが送れるな。早く元老院にこの事を伝えないと。」

青葉「この後どうするんですか?」

ベルガ「メルヘンランドに戻る。青葉もほとぼりが冷めるまでうちにいた方が良い。」

青葉「分かりました。」

ベルガたちはメルヘンランドへと戻り仲間たちや元老院に、

今回の強制収容所の悲劇や事の真相を全て話したのである。

ベルガ「というわけだから、しばらくは青葉を保護してやってくれ。」

ヘレントルテ准尉「分かったわ。それにしてもなかなか良い女じゃない。」

青葉「えっ、そ、そうですか?」

ベルガ「そんな事より、ヘクセンハウス。何故真っ先に帰らなかったんだ?」

ヘクセンハウス元帥「お前1人だと心配だったんだよ。それであの後お前を探していたら、ジパングの警察官に追われの身になってたじゃねえか。それでもそう言うのかよ?」

ベルガ「今回は事なきを得たから良かったけど、もし本を奪われていたら大変な事になってたかもしれないんだぞ。だからその可能性をなくすために帰れと言ったんだ。」

ヘクセンハウス元帥「仮にこれらの本が目当ての魔導書じゃなかったら、お前は無駄死にするところだったんだぞ。お前は自分にどれほどの価値があるかを分かっちゃいない。」

ベルガ「分かったよ。もう言わない。それと、さっきは助かったよ。サンクス。」

ヘクセンハウス元帥「お、おう。でもよく私だって分かったな。」

ベルガ「僕が帰れと言った時、納得いかない表情だったし、あそこまで精度の高い狙撃は君にしかできないからね。」

ヘクセンハウス元帥「私が現場に辿り着いた時、既に大勢の脱走者がジパング警察官に撃たれていた。まさかあいつらがあんな事をするとは思わなかったぜ。」

ベルガ「失敗をやらかそうものなら容赦なく黒杉政次に殺されちゃうからね。でも1番悪いのは僕なんだ。僕が青葉を逃がすために全ての扉を開けるスイッチを押したためにこんな事になった。」

リコラ「お兄ちゃんが落ち込む必要はないよ。その人たちはどの道ガス室に送られるはずの人たちだったんだから、言い方は悪いけど運命だったんだと思う。」

メルヘンランド女王「ベルよ、翻訳ができたぞ。妾は魔法官に届けてくるぞ。」

ベルガ「行ってらっしゃい。」

ヘクセンハウス元帥「女王陛下、本には無力化の魔法が書いてあったのですか?」

メルヘンランド女王「いかにも。そなたらが持ってきたのは間違いなく無力化の魔法が書かれた魔導書である。」

ベルガ「なかったら届けるなんて言わないもんね。」

42ページ目終わり

三低男子の婚活事情 41ページ「古代メルヘンランド王国の秘密」

2018年12月02日 | 三低男子の婚活事情
ベルガは結婚できない婚活女子のカップリングに成功し、

落ち着いた様子の朱音と婚活話をしていたのである。

ベルガ「初歩的な事だよ。」

朱音「ねえねえ、この店で1番高いコーヒーっていくらなの?」

ベルガ「それならこのブラック・アイボリーだ。一杯1万円だよ。」

朱音「1万円っ。ぼったくりじゃないの?」

ベルガ「何言ってんの。世界一のバリスタが世界一高級なコーヒーを提供している店ってここしかないんだよ。それにただでさえ希少価値の高いコーヒーなんだからしょうがないよ。」

朱音「ふーん、でも注文するのは止めとくわ。じゃあ、あたしはもう帰るね。」

リコラ「お兄ちゃん、珍しくカップリングに成功させられたね。」

ベルガ「そうだな。いつもだったら事件に巻き込まれてるはずだけど、今までの婚活指導がようやく実を結んだな。」

ヘクセンハウス元帥「お前、婚活指導なんてした事あんのか?」

ベルガ「婚活法が始まってから度々婚活イベントでカップリングしたいっていう依頼が来るようになったんだよ。その時の君はバトラーやってた時だから気づかないのも無理はない。それにお見合いとか結婚を迫ってくる悪い奴から依頼者を守るのも立派な婚活指導だよ。」

リコラ「物は言いようだね。」

ベルガ「ちくしょう。」

メルヘンランド女王「ベルよ、魔法官から無力化の魔法が書かれた魔導書を探すようクエストが来ておる。期限は問わないそうだが、魔導書の探索はどうするのだ?」

ベルガ「あっ、すっかり忘れてた。」

ヘクセンハウス元帥「お前なー。」

メルヘンランド女王「心当たりはないのか?例えば図書館とか本屋とか。」

ベルガ「心当たりって言われても・・・・ん?本屋だったら心当たりあるかも。」

ヘクセンハウス元帥「どこだ?」

ベルガ「確か青葉は古本屋をやっていると言っていた。古本屋の住所なら彼女とメアド交換した時にもらってるからここに行ってみよう。」

ヘクセンハウス元帥「店はどうすんだよ?」

ベルガ「今日は明歩も桜子も出勤日だから心配は要らないよ。」

リコラ「完全にクエストの方が本業になっちゃってるね。」

ベルガ「これも仕事の内だ。手遅れになる前に帝国自衛隊の魔法兵器を無力化させないと、ジパングにここを攻め込まれたら元も子もない。少しでも奴らの戦力を弱体化させないとね。」

ヘクセンハウス元帥「キルシュによると、ジパングには大した魔法使いはいないそうだ。元から組み込まれていたリロードの魔法を別の兵器にリンクさせる事ができるだけで、無力化の魔法を使えば一気に解決できるそうだ。」

ベルガ「不幸中の幸いだな。」

メルヘンランド女王「今魔法官が部下に命じてアナザーアースに散らばっている魔導書を探させておる。だが今のところ、無力化の魔法が書かれた魔導書は見つかっておらぬのだ。」

ベルガ「魔法官としては、ずっと無力化の魔法を使えないままだと、元老院に対して面目丸潰れだからね。」

ヘクセンハウス元帥「じゃあ行ってくるぜ。」

ベルガたちはネオトーキョーシティにある古本屋へと行き、

彼女の古文書を巡って青葉と交渉する事になったのである。

青葉「あっ、ベルガさん。お久しぶりです。」

ベルガ「青葉、久しぶり。早速で悪いんだけど、お願いがあるんだ。」

青葉「お願いですか?」

ベルガ「実はわけあって魔導書が必要なんだ。ここに置いてないか?」

青葉「魔導書ですか?うーん、探せばあるかもしれませんけど、古代文字で書かれている書物は全然読めないので、言語分けをせずにまとめて倉庫にしまってるんですよ。」

ベルガ「じゃあそこを探させてほしい。」

青葉「それは構いませんけど、たくさんありすぎて整理してないんですよ。」

ベルガ「じゃあそれらの本を全部貸してくれ。」

青葉「ええっ、駄目ですよ。私は古文書の収集家でもあるので、できれば模写したものにしていただきたいんですが。」

ベルガ「僕は今、無力化の魔法が書かれた魔導書を探しているんだ。一刻も早く見つけないと、メルヘンランドは滅ぼされてしまうだろう。魔導書じゃないと分かったものについては後で返すからさ。」

青葉「分かりました。確か無力化の魔法って、大昔の魔法官が魔法兵器の流出を防ぐために開発した魔法だったと聞いています。今それが必要になったという事は、また魔法兵器が流出したんですか?」

ベルガ「そうだ。魔法兵器を悪用すれば世界を滅ぼす事だってできる。メルヘンランド王国の初代国王であるロムルは魔法兵器の恐ろしさを誰よりも理解していた。ロムルは魔法兵器を領土拡張に使う事に反対し、国防の場合のみに使うべきと主張した事で退位させられ、王国を追い出されて行方をくらました。それからのメルヘンランドは数百年もかけて魔法兵器による世界征服を実現したが、聡明でない国王が続くようになってからは世界各地で反乱が発生し、魔法兵器同士の戦争が相次いだ。」

青葉「それならメルヘンランド史で読んだ事ありますよ。かつて征服した地域が全部独立して、本国でも国王が混乱の責任を問われた事で革命が起きて、革命中に無力化の魔法が使われて、本国以外の魔法兵器は全て無力化されて共和制に変わったんですよ。」

ベルガ「そうだ。その時の最後の国王が、今も王国のシンボルとして生きてる女王陛下だ。女王陛下は逃亡する際、ロムルが作った魔導書を発見して魔法の実験を試みた。そして気がついたら不老不死になっていた。」

ヘクセンハウス元帥「女王陛下は自分の一族がしてきた過去を清算するために、不老不死になる事を選んだと噂で聞いたぜ。」

ベルガ「今でも魔法で不老不死になった人はちらほらいるが、確かなのはいずれも王制時代の王族だという事だ。」

青葉「無力化の魔法が書かれた魔導書は何故保存しなかったんでしょうか?」

ヘクセンハウス元帥「恥ずかしい話なんだが、歴代魔法官の中に古代メルヘンランド語を読めなかったために、他の書籍と一緒に売り払ってしまった奴がいるんだ。」

青葉「それはとんだ失態でしたね。」

ベルガ「ヘクセンハウス、スマートフォンで古代メルヘンランド文字を検索してくれ。その中から古代メルヘンランド文字と一致する本だけを集めて一か所に積み上げてくれ。」

ヘクセンハウス元帥「分かったぜ。だが文字はともかく古代メルヘンランド語なんて古すぎて翻訳サイトでも解析はできないぞ。」

ベルガ「1人だけいるだろ?古代メルヘンランド語が分かる人が。」

ヘクセンハウス元帥「そうかっ、女王陛下の元へ持っていけば分かるわけか。」

ベルガ「そういう事だ。魔法官は魔導書の探索で忙しいだろうし、こっちはこっちで動くだけだ。」

ベルガたちは本に書かれてある文字と古代メルヘンランド文字を、

照らし合わせる作業をしていくが数えるほどしか見つからなかった。

ヘクセンハウス元帥「古代メルヘンランド語と一致する本がなかなか見つからないな。これだけさがしても5冊しかなかったぜ。」

ベルガ「そうか。青葉、この5冊をくれないか?」

青葉「うーん、どれも文字が全然わからないんで持っていって良いですよ。全部で5000円です。」

ヘクセンハウス元帥「高いな。」

ベルガ「僕の財布には大ダメージだが、魔法官が認めれば国の経費にしてもらえる可能性はある。本物の魔導書だったら後で報酬に経費を入れてもらう交渉でもするか。」

ジパング警察官A「警察だっ、ここにベルガ・オーガスト・ロートリンゲンがいると通報があった。今すぐ引き渡してもらうぞ。」

ヘクセンハウス元帥「隠れろ。こっちだ。」

ベルガ「う、うん。(まさかジパング警察が嗅ぎつけてくるとは。)」

ジパング警察官B「ここに奴がいるはずだ。どこにいる?」

青葉「そう言われましても、私には何の事だか。」

ジパング警察官A「とぼけるな。ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンがここに入っていったという証言もあるんだ。」

ジパング警察官B「ここを捜査させてもらう。」

青葉「あの、それは構いませんけど、古い本ばかりなので丁寧に取り扱ってくださいね。」

ヘクセンハウス元帥「行ったか。ベル、買った本はどこだ?」

ベルガ「それならここにある。」

ジパング警察官A「こんなに本があるんじゃ見つけにくいな。どこに隠した?」

青葉「そんな人知りませんよ。」

ジパング警察官B「もういい、お前を公務執行妨害で逮捕する。さっさと来い。」

青葉「ちょっと、止めてください。誰かっ、助けてください。」

ベルガ「まずい事になったな。」

ヘクセンハウス元帥「ああ。だがこれでうまく逃げられそうだぜ。」

ベルガ「ヘクセンハウスは裏口から逃げろ。これらの本を女王陛下に届けてくれ。僕は青葉を助ける。」

ヘクセンハウス元帥「お前自分がどういう立場か分かってんのか?」

ベルガ「青葉は僕らを引き渡そうと思えばできたはずだ。だが彼女は自分の身柄を犠牲にしてまで僕らの安全を優先してくれた。僕はこの温情に応える義務がある。」

ヘクセンハウス元帥「お前も底抜けの善人だな。分かった。でも無茶はするなよ。」

ベルガ「任せとけって。」

ベルガは1人で青葉を助けに行ったが、

青葉は近くの強制収容所へ送られていた。

青葉「離してください。私何もしてないのに、いくら何でも酷すぎですよ。」

ジパング警察官A「黙れ。じゃあ、ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンがどこにいるかを吐け。お前の店に入っていった者が2人いたのは確かなんだからな。」

青葉「あの人たちはただのお客さんですよ。」

ジパング警察官A「あくまでもしらを切るか。3日以内に吐け。もし3日を過ぎればガス室行きだ。」

ジパング警察官B「彰造、ベルガを捕まえたぞ。」

ベルガ「よっ、待たせたな。」

青葉「ベルガさん、どうして逃げなかったんですか?」

ベルガ「僕が捕まらないと青葉が危険だと思ったからだよ。だからこいつの誘いに乗せられてやった。」

彰造「へえ、お手柄だな。どうやら先に出世するのは大吾のようだ。」

大吾「まあな。じゃあそいつと一緒に強制収容所で最期を迎えるんだな。」

ベルガ「僕が捕まれば青葉は助けると言ったはずだぞ。」

大吾「俺たちがそんな約束守るわけないだろ。こいつは最初からお前を釣るための餌だったんだよ。」

ベルガ「やはり黒杉財閥の手下だったか。」

彰造「そうだ。どうせお前らは死ぬんだから教えておいてやるよ。俺たちはお前を捕まえるためだけに結成された特殊部隊だ。お前の特徴はもちろんの事、困ってる人を放っておけないほどのお人よしだって事も計算済みなんだよ。総理大臣命令なら仕方ないよなー。ほら、さっさと入れ。」

ベルガ「痛っ、僕はメルヘンランドの元老院議員だぞ。こんな事をしてただで済むと思うなよ。」

彰造「だったら元老院にばれないよう、秘密裏に処分するまでだ。南口青葉、お前も我々の情報を知りすぎた。だからお前もこいつと一緒に強制収容所で処分させてもらうぞ。実家から通報が来ても行方不明扱いにしておけば誰も真相には辿り着けない。」

青葉「そんなっ、不可抗力じゃないですか。それにそんなの横暴すぎますよ。」

ベルガ「それがこいつらのやり方だ。僕の情報はお人好しな王国民から聞いたんだろ?」

大吾「ああ、そうだ。それと、ここは電波の届かない場所だから光学迷彩型追跡カメラも使えないぞ。追いかけるのはともかく、映像で写すにはネットに繋ぐための電波が必要だからな。それにカメラを操作するスマートフォンも取り上げてあるから問題ない。」

ベルガ「なるほど、生放送対策も万全ってわけか。」

彰造「その通り。ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンを捕まえれば、特殊部隊解散と同時に捕まえた警察官の特進が約束されてるんだ。」

大吾「俺は早速政次さんに朗報を伝えるとするかー。じゃあな。」

彰造「今までジパングを苦しめ続けたようだが、ここまでみたいだな。」

青葉「ちょっと、待ってくださいよー。行っちゃった。」

ベルガ「青葉、僕らを庇ってくれた事には感謝してるよ。だから恩返しとして、君をここから助け出す。」

青葉「ええっ、そんな事できるんですか?」

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