ベルガは無事に魔弾砲を阻止する事に成功して平和条約の破棄に導く。
これによりメルヘンランド王国内では婚活法が廃止される事になった。
ベルガ「そうだね。やってみるか。」
ヘクセンハウス元帥「バリスタの腕は衰えていないみたいだな。」
ベルガ「まあね。」
キルシュトルテ大佐「やっぱシグネチャードリンクっていったらベルガコーヒーだね。」
芙弓「美味しい。私これ気に入った。またバリスタに復帰しようかな。」
ベルガ「芙弓ならできるよ。」
メルヘンランド女王「ところでリゾートにはいつ行くのだ?」
ベルガ「明日にでも行こうかな。というわけだから、女王陛下は事実婚の手続きを頼むよ。」
メルヘンランド女王「分かったぞ。気をつけて行くのだぞ。」
女子たち「(女王陛下の扱い。)」
キルシュトルテ大佐「リゾート行くのは分かったけど、やっぱりヘレンだけずるいよ。」
ザッハトルテ中佐「そうだよー。僕だってベルと一緒に遊びたいー。」
紫苑「私も、ベルガさんとリゾートに行きたいです。」
ベルガ「ヘレン、どうする?」
ヘレントルテ准尉「私は2人っきりになれる時間を確保できるなら構わないわ。」
メルヘンランド女王「ならばそなたら全員で行ってくるのだ。ギルドカフェは妾とリコとヘクセンハウスとシュトゥルーデルに任せておくのだ。心配するでない。」
ベルガ「分かった。」
シュトゥルーデル元帥「何故俺まで?」
メルヘンランド女王「そなたのバーが始まる時間に営業時間が終わるのだから心配無用である。」
ヘレントルテ准尉「決まりね。さすがにこれだけパートナーがいるのだから、私だけベルを好きにするのは罪だわ。」
ベルガ「1人で遊びたかった。」
明歩「学生の時もそう言ってたよね?」
桃子「それは良いけど、リゾートの費用っていくらなの?」
ベルガ「ワンダー島全体がテーマパークになっていて、そこに帰属するリゾートホテルが2泊3日で1人1万メルヘンだよ。」
桃子「高っ、あたしそんなに持ってないわよ。ベル、奢ってくれない?」
ベルガ「無茶言うなよ。僕は自分の分しか貯金してないんだよ。1万メルヘン貯めるだけでどれだけ苦労したか。」
桃子「それじゃあなたたちも一緒に行くのは難しくない?」
キルシュトルテ大佐「大丈夫。それくらいなら余裕で払えるよ。」
バウムクーヘン准将「私もベルガさんと同じプランを予約しておきますね。」
ヘレントルテ准尉「1万メルヘンしかかからないなんて、随分安いのね。」
ベルガ「君らはもう少し金銭感覚を身につけた方が良いぞ。」
明歩「彼女たちの金銭感覚どうなってんの?」
ベルガ「3人共、親が桁違いの大金持ちなんだ。ヘレンの親父は莫大な鉱物資源を保有する最大手の鉱山王にして不動産王とホテル王、キルシュの親父は最大手銀行頭取、バウムの親父は最大手IT企業のオーナー社長で、メルヘンランド島もメルヘンランド諸島も全部ヘレンの親父が企業に貸し出ししてる土地だ。明日行くワンダー島もね。」
シュゼット「この国全部ウィトゲンシュタイン家の私有地だったんだ。」
エトワール「つまりヘレンたちにとって1万メルヘンを払うのは、私たちが1メルヘン払うのと同じ感覚って事ね。」
ベルガ「そういう事だ。」
リコラ「お兄ちゃん、全員を連れて行くとなると、とんでもない費用がかかるけど、どうするの?」
ベルガ「来れる人が自分で勝手に来るだろう。元々は僕1人で行くはずだったし、別に良いじゃん。」
桜子「うわ、ジパングだったら絶対モテないタイプですよ。」
京子「それは言わない約束よ。」
ベアトリーチェ「でもこれじゃあ、あたしたちは行けないね。もっとベルの事、もふもふしたかったのにー。」
シャコティス「私は行けるけどな。」
タルトレット「私もベルとデートしたかったなー。」
ヘレントルテ准尉「安心しなさい。自力で来れないパートナーたちの分の費用は私が出しておくわ。それなら問題ないでしょ?」
タルトレット「やったー。」
ベルガ「昔より丸くなったね。」
ヘレントルテ准尉「あら、私は元から寛大なのよ。知らなかったの?」
ベルガ「うん。」
ヘレントルテ准尉「即答されると悲しいわね。」
ベルガ「でもヘレンの意外な一面を見れて嬉しいよ。僕はヘレンの大盤振る舞いするところも好きだよ。」
ヘレントルテ准尉「ベル・・・・私も時々とんちんかんで何言ってるか分からないベルの事も好きよ。」
ベルガ「酷い。」
ヘレントルテ准尉「さっきのお返し。」
キルシュトルテ大佐「そういえばさ、リコはベルと一緒にこの店始めたんだよね?何で一緒に始めたの?」
リコラ「私が中等部1年の時に、お兄ちゃんが黒杉政吾と殴り合いになった後、担任から一方的に怒鳴られたのが気に入らなかったのか、体育の時間中に教室中の窓ガラスを全部たたっ切って、それで追放処分を受けた時に、私は同級生からキチガイの妹って呼ばれるようになって、私も学校に行けなくなったの。」
バウムクーヘン准将「その時私もリコと一緒だったんで分かります。私はそんな呼び方は良くないって思ったんですけど、全然止めてくれなかったんですよ。」
紫苑「リコさんと同級生だったんですか?」
バウムクーヘン准将「はい。飛び級でリコさんのクラスに配属になったんですけど、国境私立なだけあってジパング人が多かったのはよく覚えてますね。その時にジパング語も覚えたんですよ。」
京子「きょ、教室中の窓ガラスを叩き割ったって・・・・あのベルが?」
ヘクセンハウス元帥「普段のあいつは大人しいが、学生の頃までは一度抑えが効かなくなると機嫌が戻るまで暴れまくってたそうだ。」
桜子「やばっ。確かそれで学校から追放されたんですよね?」
ドボシュトルタ「ああ。ベルは学校を追放された後、元々住んでいた家を勝手に今のカフェに改造して、そこでカフェのマスターとしてデビューしたんだ。あいつは元々バリスタ志望だったから放っておいたが、あれから僅か10年で数々のバリスタの世界大会を総なめにした。今思うと、あいつを学校へ行かせたのは間違いだった。」
タルトレット「ドボシュがベルを学校に行かせてたの?」
ドボシュトルタ「いや、私は反対だった。あいつは幼少期から他人に無関心で物に対する執着が強くて研究熱心だった。ウィトゲンシュタイン家がベルとリコを引き取った時も、私はホームスクーリングの方が彼らに合うだろうと思って家を与えたんだ。だがそんなベルを父は許さなかった。父はコーヒーの研究ばかりしていた彼を家からつまみ出して、無理矢理ジパング寄りの名門学校へ入学させたがそれがまずかった。」
ヘレントルテ准尉「お父様は名門大学出身で学歴至上主義だったから、それもあるのかも。」
ドボシュトルタ「ベルの親が遺言をメールで父に送っていたんだ。他人を思いやれる大人にしてやってほしいとな。それを真に受けた父は他人に興味を持とうとしないベルを良かれと思って学校に入れたんだ。」
明歩「あたしはベルと3年間同じクラスだったから知ってるけどベルは学校でもベルしてたよ。事ある毎にいじめっ子や担任を箒でたたっ切って出席停止処分を受けてたから。」
エトワール「あたしも教室に戻った時は驚いたわよ。3年の時なんかガラス全部割れてたからさ。」
ベアトリーチェ「そりゃ暴れるのも無理ないよ。だってベルは1人で自己完結した立派な子だもの。他人が介入する余地がないのに邪魔をするからそんな事になっちゃうの。内向型の人間をもっと尊重する環境だったらそうはならなかったと思うけどなー。」
ベルガ「ベア・・・・ベアは僕の事、お見通しなんだね。」
ベアトリーチェ「当たり前じゃない。あたしも挨拶苦手だから、声の代わりに音を届ける今の仕事を始めたの。」
アナスタシア「そういえば、メルヘンランドには挨拶にあたる言葉が存在しませんよね?」
リコラ「メルヘンランドは王国民の大半が職人気質で内向的な人間ばかりなので、挨拶禁止が暗黙のルールなんです。会議とかも全然なくて、メールで用件だけ言って終わりみたいな事がしょっちゅうですから。こっちじゃ煩わしい会話をする必要がないんです。みんな挨拶や建前といったクッション的な言葉を必要としないから本音で話せるんですよ。最悪ベーシックインカムで生きていける国ですから、会話のスキルを磨く必要すらないんですよね。」
京子「ナニワとは真反対の文化ね。あっちじゃ挨拶が何より大事だし、建前や前置きばかりで腹の探り合いになっちゃうのよ。」
ザッハトルテ中佐「口があるんだからとっとと用件を言えばいいのに。」
桜子「ナニワにはナニワの文化があるんですよ。ナニワがコミュニケーション能力重視の国なら、メルヘンランドはインスピレーション能力重視の国といったところでしょうか。」
ベルガ「メルヘンランドは肝心な事だけを話す文化で、ナニワは言わなくても分かる文化だからね。」
シュゼット「ベル、あーしと一緒に音合わせしてほしい。」
ベアトリーチェ「あたしとも音合わせしよ。ちょうど楽器もあるし。」
ベルガ「うん、そうだね。」
キルシュトルテ大佐「このままだと他のパートナーに先を越されちゃうよ。」
ステラ「そうですね。でもどうすれば・・・・。」
キルシュトルテ大佐「一緒にスイーツを作ったらどう?」
ステラ「その手がありましたね。キルシュはワールドパティスリーカップにまた出たんですよね?」
キルシュトルテ大佐「うん、国内予選は3連覇して本選も優勝したよ。」
ステラ「キルシュ、ワールドパティスリーカップで優勝したなら、私と頂上決戦しましょうよ。」
キルシュトルテ大佐「望むところだよ。」
カーリナ「ベル、今度私の両親に挨拶に来てくれないか?」
ベルガ「そうしたいけど、当分はここを離れられそうにない。」
カーリナ「分かった。じゃあ親父とお袋に頼んで来てもらうよ。私が本気で愛した初めての人だから驚くだろうなー。そうだ、両親が挨拶に来る前に子作りしよう。なっ、良いだろ?」
ベルガ「子作りって、何考えてんの?まだ出会ったばかりなのに。そんなの恥ずかしいよ。」
フォレノワール巡査部長「ちょっと、カーリナさん。淫らな行為は許しませんよ。」
ベルガたちは翌日にワンダー島へ行く事になり、
みんなでテーマパークを楽しんでいたのである。
ベルガ「みんなはしゃいでるなー。」
ヘレントルテ准尉「そりゃそうよ。みんなずっと慣れない婚活ばかりで疲れ切ってたはずだもの。」
ベルガ「そうだね。ん?ちょっと待ってて。」
ヘレントルテ准尉「ええ、戻ってきたら2人だけで楽しみましょ。」
ロムル「ん?もしかして君が・・・・ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンか?」
ベルガ「ああ、そうだよ。ロムル・オーガスト・ブルートゥルスだろ?」
ロムル「その通り。何故分かった?」
ベルガ「古代メルヘンランド語の訛りに加え、長時間そこにいるのに日焼けしていない。あんたは不老不死の魔法に成功した数少ないケースで、使い切れない余生を楽しんでいる。そうだろ?」
ロムル「ふーん、さすがは僕の直系子孫だな。それくらいは分かって当然か。」
キルシュトルテ大佐「うわっ、ベルにそっくり。一体誰なの?」
ベルガ「彼はロムル・オーガスト・ブルートゥルス。メルヘンランド王国初代国王だ。」
女子たち「ええーーーーー。」
ロムル「そんなに驚かなくても良いだろ。それに僕はもう国王じゃない。1万年以上も前に引退したからね。」
ベルガ「ところで、何故ここにいる?」
ロムル「僕は引退してからはずっと暇潰しの旅に出ていて、久しぶりに故郷に帰ってきてたんだ。君は?」
ベルガ「僕は・・・・婚活法を終わらせた記念にここへ来た。」
彼の名前は、ベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。
後に、戦争の時代を終わらせ、メルヘンランド王国の第一人者となった男である。
しかしそんな彼も、若い頃は悩み苦しみながら、
婚活をさせられていた、社会不適合者にして三低男子だったのである。
自分がどんな道を歩んでいくのかを、この男はまだ知らない。
彼の戦いは、まだ、始まったばかりなのだから。
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これによりメルヘンランド王国内では婚活法が廃止される事になった。
ベルガ「そうだね。やってみるか。」
ヘクセンハウス元帥「バリスタの腕は衰えていないみたいだな。」
ベルガ「まあね。」
キルシュトルテ大佐「やっぱシグネチャードリンクっていったらベルガコーヒーだね。」
芙弓「美味しい。私これ気に入った。またバリスタに復帰しようかな。」
ベルガ「芙弓ならできるよ。」
メルヘンランド女王「ところでリゾートにはいつ行くのだ?」
ベルガ「明日にでも行こうかな。というわけだから、女王陛下は事実婚の手続きを頼むよ。」
メルヘンランド女王「分かったぞ。気をつけて行くのだぞ。」
女子たち「(女王陛下の扱い。)」
キルシュトルテ大佐「リゾート行くのは分かったけど、やっぱりヘレンだけずるいよ。」
ザッハトルテ中佐「そうだよー。僕だってベルと一緒に遊びたいー。」
紫苑「私も、ベルガさんとリゾートに行きたいです。」
ベルガ「ヘレン、どうする?」
ヘレントルテ准尉「私は2人っきりになれる時間を確保できるなら構わないわ。」
メルヘンランド女王「ならばそなたら全員で行ってくるのだ。ギルドカフェは妾とリコとヘクセンハウスとシュトゥルーデルに任せておくのだ。心配するでない。」
ベルガ「分かった。」
シュトゥルーデル元帥「何故俺まで?」
メルヘンランド女王「そなたのバーが始まる時間に営業時間が終わるのだから心配無用である。」
ヘレントルテ准尉「決まりね。さすがにこれだけパートナーがいるのだから、私だけベルを好きにするのは罪だわ。」
ベルガ「1人で遊びたかった。」
明歩「学生の時もそう言ってたよね?」
桃子「それは良いけど、リゾートの費用っていくらなの?」
ベルガ「ワンダー島全体がテーマパークになっていて、そこに帰属するリゾートホテルが2泊3日で1人1万メルヘンだよ。」
桃子「高っ、あたしそんなに持ってないわよ。ベル、奢ってくれない?」
ベルガ「無茶言うなよ。僕は自分の分しか貯金してないんだよ。1万メルヘン貯めるだけでどれだけ苦労したか。」
桃子「それじゃあなたたちも一緒に行くのは難しくない?」
キルシュトルテ大佐「大丈夫。それくらいなら余裕で払えるよ。」
バウムクーヘン准将「私もベルガさんと同じプランを予約しておきますね。」
ヘレントルテ准尉「1万メルヘンしかかからないなんて、随分安いのね。」
ベルガ「君らはもう少し金銭感覚を身につけた方が良いぞ。」
明歩「彼女たちの金銭感覚どうなってんの?」
ベルガ「3人共、親が桁違いの大金持ちなんだ。ヘレンの親父は莫大な鉱物資源を保有する最大手の鉱山王にして不動産王とホテル王、キルシュの親父は最大手銀行頭取、バウムの親父は最大手IT企業のオーナー社長で、メルヘンランド島もメルヘンランド諸島も全部ヘレンの親父が企業に貸し出ししてる土地だ。明日行くワンダー島もね。」
シュゼット「この国全部ウィトゲンシュタイン家の私有地だったんだ。」
エトワール「つまりヘレンたちにとって1万メルヘンを払うのは、私たちが1メルヘン払うのと同じ感覚って事ね。」
ベルガ「そういう事だ。」
リコラ「お兄ちゃん、全員を連れて行くとなると、とんでもない費用がかかるけど、どうするの?」
ベルガ「来れる人が自分で勝手に来るだろう。元々は僕1人で行くはずだったし、別に良いじゃん。」
桜子「うわ、ジパングだったら絶対モテないタイプですよ。」
京子「それは言わない約束よ。」
ベアトリーチェ「でもこれじゃあ、あたしたちは行けないね。もっとベルの事、もふもふしたかったのにー。」
シャコティス「私は行けるけどな。」
タルトレット「私もベルとデートしたかったなー。」
ヘレントルテ准尉「安心しなさい。自力で来れないパートナーたちの分の費用は私が出しておくわ。それなら問題ないでしょ?」
タルトレット「やったー。」
ベルガ「昔より丸くなったね。」
ヘレントルテ准尉「あら、私は元から寛大なのよ。知らなかったの?」
ベルガ「うん。」
ヘレントルテ准尉「即答されると悲しいわね。」
ベルガ「でもヘレンの意外な一面を見れて嬉しいよ。僕はヘレンの大盤振る舞いするところも好きだよ。」
ヘレントルテ准尉「ベル・・・・私も時々とんちんかんで何言ってるか分からないベルの事も好きよ。」
ベルガ「酷い。」
ヘレントルテ准尉「さっきのお返し。」
キルシュトルテ大佐「そういえばさ、リコはベルと一緒にこの店始めたんだよね?何で一緒に始めたの?」
リコラ「私が中等部1年の時に、お兄ちゃんが黒杉政吾と殴り合いになった後、担任から一方的に怒鳴られたのが気に入らなかったのか、体育の時間中に教室中の窓ガラスを全部たたっ切って、それで追放処分を受けた時に、私は同級生からキチガイの妹って呼ばれるようになって、私も学校に行けなくなったの。」
バウムクーヘン准将「その時私もリコと一緒だったんで分かります。私はそんな呼び方は良くないって思ったんですけど、全然止めてくれなかったんですよ。」
紫苑「リコさんと同級生だったんですか?」
バウムクーヘン准将「はい。飛び級でリコさんのクラスに配属になったんですけど、国境私立なだけあってジパング人が多かったのはよく覚えてますね。その時にジパング語も覚えたんですよ。」
京子「きょ、教室中の窓ガラスを叩き割ったって・・・・あのベルが?」
ヘクセンハウス元帥「普段のあいつは大人しいが、学生の頃までは一度抑えが効かなくなると機嫌が戻るまで暴れまくってたそうだ。」
桜子「やばっ。確かそれで学校から追放されたんですよね?」
ドボシュトルタ「ああ。ベルは学校を追放された後、元々住んでいた家を勝手に今のカフェに改造して、そこでカフェのマスターとしてデビューしたんだ。あいつは元々バリスタ志望だったから放っておいたが、あれから僅か10年で数々のバリスタの世界大会を総なめにした。今思うと、あいつを学校へ行かせたのは間違いだった。」
タルトレット「ドボシュがベルを学校に行かせてたの?」
ドボシュトルタ「いや、私は反対だった。あいつは幼少期から他人に無関心で物に対する執着が強くて研究熱心だった。ウィトゲンシュタイン家がベルとリコを引き取った時も、私はホームスクーリングの方が彼らに合うだろうと思って家を与えたんだ。だがそんなベルを父は許さなかった。父はコーヒーの研究ばかりしていた彼を家からつまみ出して、無理矢理ジパング寄りの名門学校へ入学させたがそれがまずかった。」
ヘレントルテ准尉「お父様は名門大学出身で学歴至上主義だったから、それもあるのかも。」
ドボシュトルタ「ベルの親が遺言をメールで父に送っていたんだ。他人を思いやれる大人にしてやってほしいとな。それを真に受けた父は他人に興味を持とうとしないベルを良かれと思って学校に入れたんだ。」
明歩「あたしはベルと3年間同じクラスだったから知ってるけどベルは学校でもベルしてたよ。事ある毎にいじめっ子や担任を箒でたたっ切って出席停止処分を受けてたから。」
エトワール「あたしも教室に戻った時は驚いたわよ。3年の時なんかガラス全部割れてたからさ。」
ベアトリーチェ「そりゃ暴れるのも無理ないよ。だってベルは1人で自己完結した立派な子だもの。他人が介入する余地がないのに邪魔をするからそんな事になっちゃうの。内向型の人間をもっと尊重する環境だったらそうはならなかったと思うけどなー。」
ベルガ「ベア・・・・ベアは僕の事、お見通しなんだね。」
ベアトリーチェ「当たり前じゃない。あたしも挨拶苦手だから、声の代わりに音を届ける今の仕事を始めたの。」
アナスタシア「そういえば、メルヘンランドには挨拶にあたる言葉が存在しませんよね?」
リコラ「メルヘンランドは王国民の大半が職人気質で内向的な人間ばかりなので、挨拶禁止が暗黙のルールなんです。会議とかも全然なくて、メールで用件だけ言って終わりみたいな事がしょっちゅうですから。こっちじゃ煩わしい会話をする必要がないんです。みんな挨拶や建前といったクッション的な言葉を必要としないから本音で話せるんですよ。最悪ベーシックインカムで生きていける国ですから、会話のスキルを磨く必要すらないんですよね。」
京子「ナニワとは真反対の文化ね。あっちじゃ挨拶が何より大事だし、建前や前置きばかりで腹の探り合いになっちゃうのよ。」
ザッハトルテ中佐「口があるんだからとっとと用件を言えばいいのに。」
桜子「ナニワにはナニワの文化があるんですよ。ナニワがコミュニケーション能力重視の国なら、メルヘンランドはインスピレーション能力重視の国といったところでしょうか。」
ベルガ「メルヘンランドは肝心な事だけを話す文化で、ナニワは言わなくても分かる文化だからね。」
シュゼット「ベル、あーしと一緒に音合わせしてほしい。」
ベアトリーチェ「あたしとも音合わせしよ。ちょうど楽器もあるし。」
ベルガ「うん、そうだね。」
キルシュトルテ大佐「このままだと他のパートナーに先を越されちゃうよ。」
ステラ「そうですね。でもどうすれば・・・・。」
キルシュトルテ大佐「一緒にスイーツを作ったらどう?」
ステラ「その手がありましたね。キルシュはワールドパティスリーカップにまた出たんですよね?」
キルシュトルテ大佐「うん、国内予選は3連覇して本選も優勝したよ。」
ステラ「キルシュ、ワールドパティスリーカップで優勝したなら、私と頂上決戦しましょうよ。」
キルシュトルテ大佐「望むところだよ。」
カーリナ「ベル、今度私の両親に挨拶に来てくれないか?」
ベルガ「そうしたいけど、当分はここを離れられそうにない。」
カーリナ「分かった。じゃあ親父とお袋に頼んで来てもらうよ。私が本気で愛した初めての人だから驚くだろうなー。そうだ、両親が挨拶に来る前に子作りしよう。なっ、良いだろ?」
ベルガ「子作りって、何考えてんの?まだ出会ったばかりなのに。そんなの恥ずかしいよ。」
フォレノワール巡査部長「ちょっと、カーリナさん。淫らな行為は許しませんよ。」
ベルガたちは翌日にワンダー島へ行く事になり、
みんなでテーマパークを楽しんでいたのである。
ベルガ「みんなはしゃいでるなー。」
ヘレントルテ准尉「そりゃそうよ。みんなずっと慣れない婚活ばかりで疲れ切ってたはずだもの。」
ベルガ「そうだね。ん?ちょっと待ってて。」
ヘレントルテ准尉「ええ、戻ってきたら2人だけで楽しみましょ。」
ロムル「ん?もしかして君が・・・・ベルガ・オーガスト・ロートリンゲンか?」
ベルガ「ああ、そうだよ。ロムル・オーガスト・ブルートゥルスだろ?」
ロムル「その通り。何故分かった?」
ベルガ「古代メルヘンランド語の訛りに加え、長時間そこにいるのに日焼けしていない。あんたは不老不死の魔法に成功した数少ないケースで、使い切れない余生を楽しんでいる。そうだろ?」
ロムル「ふーん、さすがは僕の直系子孫だな。それくらいは分かって当然か。」
キルシュトルテ大佐「うわっ、ベルにそっくり。一体誰なの?」
ベルガ「彼はロムル・オーガスト・ブルートゥルス。メルヘンランド王国初代国王だ。」
女子たち「ええーーーーー。」
ロムル「そんなに驚かなくても良いだろ。それに僕はもう国王じゃない。1万年以上も前に引退したからね。」
ベルガ「ところで、何故ここにいる?」
ロムル「僕は引退してからはずっと暇潰しの旅に出ていて、久しぶりに故郷に帰ってきてたんだ。君は?」
ベルガ「僕は・・・・婚活法を終わらせた記念にここへ来た。」
彼の名前は、ベルガ・オーガスト・ロートリンゲン。
後に、戦争の時代を終わらせ、メルヘンランド王国の第一人者となった男である。
しかしそんな彼も、若い頃は悩み苦しみながら、
婚活をさせられていた、社会不適合者にして三低男子だったのである。
自分がどんな道を歩んでいくのかを、この男はまだ知らない。
彼の戦いは、まだ、始まったばかりなのだから。
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