今年8月24日付けで京都市は「訪問介護における『散歩の同行』の取扱いについて」なる文書を公表します。7月24日付の厚労省事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)を受けての文書ですが、明らかにローカルルールとしか言えない、不可解な内容です。
京都市は、文書の公表に当たり次のように述べています。(以下、京都市ホームページより)
訪問介護におけるサービスの内容等については,介護保険法第8条等に規定されているほか,「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年老計第10号通知。以下,「老計第10号」という。)において示されているところです。また,平成21年7月24日付で厚生労働省老健局振興課から事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)が発出され,訪問介護員による「散歩の同行」を含む訪問介護サービスについては,適切なケアマネジメントに基づくものであって,かつ保険者が個々の利用者の状況等に応じ必要と認める場合には,保険給付の対象となる旨が周知されました。
これを受け,訪問介護における「散歩の同行」について,本市における取扱いを別紙のとおりまとめましたのでご参照いただきますようお願いします。なお,本取扱いは平成21年8月24日から適用することとします。
以上の説明文書に続き、
1、訪問介護における「散歩の同行」の考え方
2、算定要件について
3、適切なケアマネジメントの実施について
4、その他の留意事項
について、詳細な留意点・開設をつけ記述をしています。
まず、京都市の8月24日付文書を見てみます。(ここから)
多くの疑問点がありますが、一番の問題は、不可解な独自算定基準を設けたことです。つまり、「いずれも満たす必要がある算定要件」として
(1)①他の介護サービスを受けることが困難、②他のサービスでは目標の達成が困難、③他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由があること。
(2)利用者の自立支援に資する(たとえばケアプランにおける長期目標又は短期目標に示された目標達成に必要な行為である)ものとしてケアプランに位置づけられていること。の(1)の基準なるものは、まったくの不理解から来るものです。(蛇足ですが(2)は当然の内容です)
京都市が独自算定文書を出すきっかけになった「介護保険最新情報Vol.104」を見てみましょう。
「介護保険最新情報Vol.104」は(ここから)
どう読もうとも、京都市の言う「他の介護サービスを受けることが困難、他のサービスでは目標の達成が困難、他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由」が導き出されるのか、まったくわかりません。そもそも、「△△が困難」という理由が「合理的」と解釈すること自体に無理があります。厚労省事務連絡にはわざわざ、「自立支援、日常生活動作向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものであって、利用者の自立支援に資する(例えば、ケアプランにおける長期目標又は短期目標等に示された目標を達成するために必要な行為である)ものとしてケアプランに位置づけられるような場合については、老計10号別紙「1 身体介護」の「1-6 自立生活支援のための見守り的援助(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)」に該当するものと考えられることから」と記述し、ケアプランでの位置づけがされれば該当すること、そして、「行為の内容のみで一律機械的に保険給付の支給の可否を判断することなく、必要に応じて介護支援専門員等からの情報を得るなどし、個々の利用者の状況等に応じた判断」を行うために、保険者(京都市)が個々の状況判断を行うことが条件付けられているものです。
「他の介護サービスを受けることが困難、他のサービスでは目標の達成が困難、他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由」とする京都市の算定基準そのものが、個々の利用者の状況判断を否定する一律機械的基準であることは明らかです。
「散歩の同行」問題は、すでに国会でも決着済みの問題です。
昨年12月2日付の「参議院議員大河原雅子君提出介護保険制度に関する質問(質問主意書)」に対する政府答弁では、
「訪問介護員による散歩の同行については、適切なケアマネジメントに基づき、自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、現行制度においても、介護報酬の算定は可能である。」としています。
大河原雅子議員の「質問主意書」、「答弁書」
京都市が不理解なのか、意図的なのかはわかりませんが、この間の政府答弁及び関係文書をよく読みこみ、なによりも、介護保険制度の根幹である介護支援専門員のケアマネジメント能力を信頼することが必要ではないでしょうか。
(以上)