京都社会保障推進協議会ブログ

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不可解な京都市の「散歩の同行」の取扱い

2009年10月08日 07時58分13秒 | 資料&情報

 今年8月24日付けで京都市は「訪問介護における『散歩の同行』の取扱いについて」なる文書を公表します。7月24日付の厚労省事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)を受けての文書ですが、明らかにローカルルールとしか言えない、不可解な内容です。


 京都市は、文書の公表に当たり次のように述べています。(以下、京都市ホームページより)

 訪問介護におけるサービスの内容等については,介護保険法第8条等に規定されているほか,「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年老計第10号通知。以下,「老計第10号」という。)において示されているところです。また,平成21年7月24日付で厚生労働省老健局振興課から事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)が発出され,訪問介護員による「散歩の同行」を含む訪問介護サービスについては,適切なケアマネジメントに基づくものであって,かつ保険者が個々の利用者の状況等に応じ必要と認める場合には,保険給付の対象となる旨が周知されました。
 これを受け,訪問介護における「散歩の同行」について,本市における取扱いを別紙のとおりまとめましたのでご参照いただきますようお願いします。なお,本取扱いは平成21年8月24日から適用することとします。


 以上の説明文書に続き、
1、訪問介護における「散歩の同行」の考え方
2、算定要件について
3、適切なケアマネジメントの実施について
4、その他の留意事項
について、詳細な留意点・開設をつけ記述をしています。


 まず、京都市の8月24日付文書を見てみます
。(ここから

 多くの疑問点がありますが、一番の問題は、不可解な独自算定基準を設けたことです。つまり、「いずれも満たす必要がある算定要件」として
(1)①他の介護サービスを受けることが困難、②他のサービスでは目標の達成が困難、③他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由があること。
(2)利用者の自立支援に資する(たとえばケアプランにおける長期目標又は短期目標に示された目標達成に必要な行為である)ものとしてケアプランに位置づけられていること。の(1)の基準なるものは、まったくの不理解から来るものです。(蛇足ですが(2)は当然の内容です)


 京都市が独自算定文書を出すきっかけになった「介護保険最新情報Vol.104」を見てみましょう。


    「介護保険最新情報Vol.104」は(
ここから

 どう読もうとも、京都市の言う「他の介護サービスを受けることが困難、他のサービスでは目標の達成が困難、他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由」が導き出されるのか、まったくわかりません。そもそも、「△△が困難」という理由が「合理的」と解釈すること自体に無理があります。厚労省事務連絡にはわざわざ、「自立支援、日常生活動作向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものであって、利用者の自立支援に資する(例えば、ケアプランにおける長期目標又は短期目標等に示された目標を達成するために必要な行為である)ものとしてケアプランに位置づけられるような場合については、老計10号別紙「1 身体介護」の「1-6 自立生活支援のための見守り的援助(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)」に該当するものと考えられることから」と記述し、ケアプランでの位置づけがされれば該当すること、そして、「行為の内容のみで一律機械的に保険給付の支給の可否を判断することなく、必要に応じて介護支援専門員等からの情報を得るなどし、個々の利用者の状況等に応じた判断」を行うために、保険者(京都市)が個々の状況判断を行うことが条件付けられているものです。

 「他の介護サービスを受けることが困難、他のサービスでは目標の達成が困難、他のサービスの回数を増やすことが困難、などの合理的理由」とする京都市の算定基準そのものが、個々の利用者の状況判断を否定する一律機械的基準であることは明らかです。


 「散歩の同行」問題は、すでに国会でも決着済みの問題です。


 昨年12月2日付の「参議院議員大河原雅子君提出介護保険制度に関する質問(質問主意書)」に対する政府答弁では、

「訪問介護員による散歩の同行については、適切なケアマネジメントに基づき、自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、現行制度においても、介護報酬の算定は可能である。」としています。


 大河原雅子議員の「
質問主意書」、「答弁書




 京都市が不理解なのか、意図的なのかはわかりませんが、この間の政府答弁及び関係文書をよく読みこみ、なによりも、介護保険制度の根幹である介護支援専門員のケアマネジメント能力を信頼することが必要ではないでしょうか。


(以上)


資格証明書の交付についての厚労省事務連絡

2009年10月06日 12時15分34秒 | 資料&情報

 9月25日付厚労省事務連絡「新型インフルエンザの流行に関するQ&Aについて」で、事実上、資格証明書交付理由を「無効」にした内容が記載されています。
 ただちに市町村での徹底が求められています。

 「Q&A」は、2問の簡潔な文書ですが、流行期を迎えた新型インフルエンザ対策にとどまらず、重要な内容を含んでいます。


 問1では、5月18日付「新型インフルエンザに係る発熱外来の受診時における被保険者資格証明書の取り扱いについて」の文書について、現時点における一般医療機関での診察には適用しないとしています。


 しかし、問2では、「感染したと疑がわれるが経済的理由から医療機関で10割の医療費が払えないと申出があった場合、…特別の事情に当たると判断してよいか」との答として、

①資格証明書交付世帯員が医療を受ける必要があり、かつ、医療費の一時払い(10割)が困難な場合は、特別の事情に準ずるものとして短期証を交付する。
②上記①は、新型インフルエンザ感染の疑いにかかわらず対応するもの。
③そもそもこのような場合は、資格証明書の交付対象でなかった可能性がある。
④資格証明書の交付時点でなぜ把握できなかったか、事務処理体制のチェックが必要。
⑤資格証明書交付の全世帯にたいし、新型インフルエンザの大流行の前に、再度、特別の事情の把握を徹底すること。

としています。


 資格証明書の発行により、受診の手控えがおこり死亡にいたるケースがあとをたちません。(
全日本民医連調査


 厚労省は、後期高齢者医療に関しては、4月の通知文書で「特に、入院又は継続的な通院等により診療等を受けている、又は受ける予定のある被保険者については、その収入、生活状況、診療等の内容を勘案し、仮に資格証明書を交付した場合、医療費の全額を一時的に負担することが困難となり、必要な医療を受ける機会が損なわれるおそれがあると認められる場合には、上記の②に類する事由により特別の事情があると認めることが適当であること。」とし、高齢者への資格証明書交付を大幅に制限する内容を示しています。


 すでに、今年1月には小池晃参議院議員が質問主意書で同様の答弁を引き出しています。(
小池質問主意書等について



 これらは、「資格証明書交付をやめろ」との全国の運動の中で勝ち取ってきた前進です。


 今回の「連絡文書」は、保険料滞納による資格証明書交付世帯(経済的理由で保険料が払えずやむを得ず滞納している世帯=当然、医療機関で10割の医療費が困難な状況にある世帯)が、治療を受ける場合は、短期保険証を交付するとしただけでなく、もともと、「資格証明書交付にあたらない特別の事情」に該当しているのではないかと、至急に事務処理体制のチェックを求めていることです。


 保険者である市町村は、この「事務連絡」に基づき、経済的理由にもかかわらず資格証明書交付が行われていることを認識し、資格証明書交付をまず停止し、全世帯に保険証を交付すること。資格証明書を交付されている方が、そのことをもって「受診しない」ことが無い様に、とりわけ誰もが感染の可能性がある新型インフルエンザの流行期を前に、早急に保険証交付が求められます。


 厚労省はこれまでも、資格証明書について「国民健康保険においては収納率の向上はその保険運営上極めて重要であり、悪質な滞納者については、従前どおり、滞納処分も含めた収納対策の厳正な実施に努めること。」といってきました。十分な資産等があるにもかかわらず保険料を滞納している悪質者に資格証明書を発行しても収納率の向上に結びつかないことは明らかです。


 実際には、低所得者世帯をはじめ経済的困難から「高すぎる保険料は払いたくても払えない」のが実態です。ところが、市町村では、経済的理由による滞納を「特別の事情」として認めない、または短期保険証交付に当たっては「滞納額の半額を支払うこと」「○○○円でも支払え」との条件をつけているところが多くあります。これでは、医療をうける機会を奪ってしまうことになります。

 今年4月から中学生までには世帯への資格証明書とべつに短期保険証を交付することが義務付けられましたが、今回の再度の「事務連絡」により、すべての市町村が資格証明書交付を行わないことを求めていくことが大切です。



 事務連絡「新型インフルエンザの流行に関するQ&Aについて」




 (以上)