スズキ ゲンさんのブログ

立命館の再生を願って

NO92 立命館の財政問題とガバナンス

2022-02-18 12:47:14 | 立命館の再生を願って

NO92 立命館の常任理事ならびに関係各位へ

日大体制に似た選出基盤のない森島朋三理事長による財政悪化、

どのように責任を取るのか、ガバナンスともかかわって

          2022年1月19日 ジャーナリスト・元立命館総長理事長室長 鈴木元

はじめに

 グローバリゼーションの進展、引き続くコロナ渦、18歳人口の大幅減など、大学を巡る状況は激変しており、その下で立命館はどのように進んでいくのかという根源的な問いがなされている。つまり立命館の長期計画であるR2030にむけて全学構成員の英知を結集し自発的努力の発揮が求められている。その重要な基礎をなすのが財政である。ところが森島朋三氏が専務理事・理事長に就任して以降、立命館の財政は悪化し、長期的な改革を進めるにあたっては心もとない状況にある。昨日・今日の事ではなく、この10年を単位とした財政状況を直視し、その要因と責任の明確化と今後の方策を検討する必要がある。

 目次 

第一部 財政力低下の10年

(1)2020年度経常収支差額がほぼゼロになった

(2)なぜ、このような事態になったのであろうか

(3)この間の財政事情の重大な変化は金融資産と運用収入の増大である。

第二部 日大体制に似た選出基盤のない森島朋三理事長と私学法改定

(1)ところで森島朋三氏はどうして理事長になっているのであろうか

(2)「急浮上」してきた私学法改定問題

第一部 財政力低下の10年

 昨年の秋(9月と11月)、立命館教職員組合と学校法人立命館財務部との間で財政問題の懇談会(勉強会)が2回開催された。その内容は組合ニュース「ゆにおん No49」(以下、「組合文書」)に掲載されている。その要約抜粋を以下に記す。

(1)2020年度経常収支差額がほぼゼロになった

①2020年度決算では「教育活動による資金収支」の黒字だけでは減価償却費を賄うことができず、利子配当金収支の黒字によって辛くも賄うことができた。これが2020年度経常収支差額がほぼゼロになった基本構造である。

②R2020期間中、巨額有形固定資産投資が有効に収入を生み出していない。言い換えれば、その採算性が着実に悪化している。また新キャンパス・新学科・新プログラム等で教員数を増やしたにもかかわらず、それに見合った児童・生徒・学生数の確保・増大ができなかった。つまり、教職員数からみても採算性が着実に悪化している。

③以上のようにR2020を通じた教学条件整備により、本業である教育活動収支差額は年々逓減してきて、2015年度以降は、経常収支差額の過半を教育活動以外の収支差額が占める、安定性を欠いた収支構造になり2020年度以降は、教育活動収差額はマイナスに転落し、かろうじて金融資産運用収益で減価償却費を賄う事態となっている。

(2)なぜ、このような事態になったのであろうか

1)「組合文書」では、上記と重複しているが、下記のように記している

原因1:R2020期間中の土地や建物に対する大型投資が有効に収入を生み出していない。

原因2:期間中、新キャンパス・新学部・新学科・新プログラム等で教員数を増やしたにもかかわらず、それに見合った児童・生徒・学生数の確保・増大が出来なかった。

 として、グラフと数字での説明をしている。しかし問題の本質をついたものとは言えない。

 経過をふりかえれば、なぜそのようなことになったかの答えは明瞭である。詳細は、拙著「立命館の再生を願って」(風涛社)を参照してください。

2)①2010年までの長期計画に茨木キャンパス(OIC)の開設は無かった。

 あったのは衣笠キャンパス狭隘解消のために京都市内の山之内浄水場跡地(現・京都先端科学研究大学キャンパス)などの購入であった。ところが森島専務(同時)、志方財務部付け管財部長(当時)によって長田豊臣理事長(当時)を巻き込み「地盤整備に期間がかかりすぎる」との口実で山之内購入交渉は打ち切られた。そして突然、サッポロビール大阪茨木工場跡地を200億円で購入することを、5学部長の反対を押し切って学外理事の数の力を借りて強引に多数決で押し切った。

②それまで計画になかった経営学部・政策科学部の茨木移転を220億円(竹中工務店)かけて行い。また文学部の心理学科と産業社会学部の心理系を統合し総合心理学部として茨木に開設した(建設費は上記220億円に含まれているが、独自の備品などを含めた設置経費がいくらであったかは明らかにされていないので不明)。また同じ時期に立命館中・高等学校の長岡京移転に当たって、それまでの財政方針(独立採算制)を逸脱し、その建築費110億円(鹿島建設)を法人負担(=大学負担)とした。しかもそれを理事会決議にかけず長田理事長の決済で行っていた(2019年3月末の理事会において森島専務は年度末の沢山の議決事項の中に理事長の決裁権限を「1億円以上 」とおよそ経理規定と言えない改悪をしていた)。

 これで立命館が次の長期計画のために貯めていた資金は使い果たした。当時、長田理事長は森島専務に対して「結局、私たちのやったことは川本八郎前理事長が貯めたお金を使い果たしただけやなあ、まあそのころには私はいないが」と無責任かつ本質をついた発言を行っていた。なお川本八郎元理事長はBKC開設、APU開設にあたってその建設費等で300億円を超える寄付を集めていたし、APUでの留学生奨学金資金として財界などから22億円の寄付を集めていた。しかし長田・森島理事長はまともな額の寄付は集めず、上記したように川本氏が集め蓄えた資金を使っただけであった。ただ川本氏は財界人から寄付を集める過程で財界人的発想を強く持つようになり、後期するように晩節を汚すことになった。

③この当時、長田理事長は那須に別荘を購入し(常任理事会で認める発言を行った)、「森島専務はゼネコンとゴルフに出掛けている」「志方部長は祇園に繰り出している」との噂が学内で広がっていた。またこの時期、長田理事長・森島理事長も共に不倫問題で離婚訴訟となり、離婚を前に妻に住宅を譲り、慰謝料の支払いを余儀なくされた。立命館の理事長が二代連続不倫を原因として離婚訴訟で慰謝料を払わざるを得なくなったことは立命館の恥である。

3)ところで新学部などのために教員数は増えたが学生数等は増えず、採算性が悪化したとは何であろうか。これも答えは明確である。18歳人口減の下で文部科学省は大都市部の大規模大学にたいして新学部や新学科の新設を認める際、大学としての総定員の増加は認めず振替を指導してきた。したがってこの間、総合心理学部を含めてさまざまな新学部、新学科を創設してきたが立命館大学全体の総定員は増やすことが出来なかった。しかも元々茨木への移転を考えていなかった学部・学科の教授会に移転同意を得るために「教学改善」としての教員数増員を認めてきた。つまり餌をまくことによって移転を進めた。そのため教員の間では「あの学部は移転によって教員数が増え改善された。うちの学部も」という学部・学科のエゴを広げ全学的見地で団結して改革を進めるという立命館のよい気風を失って行った。なお「組合文書」に記載されているように教員数は増やしたが職員数は増やされなかった。その上に森島理事長が茨木購入時点から語っていたこととして「OICは1万人の規模にしなければ赤字キャンパスになる」との言動と符号する、映像学部と情報理工学部を統合し茨木に持って行くためにさらに110億円を投入しようとしている。吉田美喜夫総長の下で副総長を務めていた仲谷義雄(元情報理工学部長)に映像と情報の連携話で吉田氏に対抗する総長候補話を持ち込んだことは、今では多くの学内関係者の共通認識となっている。

4)こうして森島理事長の学園運営で今や明瞭になったことは、①理念なき財政(学園)運営、②学内構成員の合意形成手続きを無視した非民主的運営、③竹中工務店などゼネコン言いなりの建設④森島理事長による教学部門も金で支配するという特徴が顕著になったことである。京都が発祥の地である立命館が大阪茨木に大規模なキャンパスを開設する社会的インパクトのある理由が示されなかったし、今もされていない。隣の同志社大学は田辺にあった文系学部を総て京都キャンパスに戻し学術文化の町京都にある大学として存在感を打ち出した。立命館はなんの教学的・財政的見通しもなくサッポロビールと竹中工務店に乗せられて茨木を購入した誤りが、次第に学園の桎梏となってきている。こうして森島理事長、志方専務によって、立命館大学は教育・研究の高度化を進める為の蓄えを使い果たし、経常収支を困難に陥れられた。両名の責任は重大である。

5)ところで大学の教学的営みのによる重要な収入源は受験料収入である。受験者数はその大学の教学的営の努力に対する社会的賛同のバロメーターでもある。かつて立命館は10万人を超える受験者が8年間続き、日本一の受験者数を集めていた。それが結果として受験料収入として重要な財源となっていた。ところが長田理事長・森島理事長時代になって社会的に醜聞が次々と報道され、受験者数は急激に減り、今では日本一どころか近畿大学や関西大学の後を行くようになってしまった。総長や理事長の談話・声明、そして広報物において立命館の「建学の精神」である「自由と清新」、教学理念である「平和と民主主義」それらを統合し今日的にまとめた「立命館憲章」は語られず、電通風の意味のないキャッチコピーがまかり通るようになった。そのため受験生や保護者、進路指導の教員から「何を教育目標とした大学で、どのような学生を育てるのかが不明確」として受験者を減らしてきた。もう一度、建学の精神、教学理念、立命館憲章に立ち返って、大学の社会的打ち出しを明確にする必要があるだろう。

(3)この間の財政事情の重大な変化は金融資産と運用収入の増大である。

1)金融資産の利息収入によってかろうじて経常収支トントンになっている。教育・研究機関である大学は、何よりも教学による収入(学費・私学助成・科研費・受験料等)によつて収支を賄わなければならない。しかし先に観てきたように立命館は教学による収入によっては、収支が賄えないという厳しい財政状況となっている。その穴埋めを金融資産の利息収入によって賄うという財政構造になってきた。これが森島朋三理事長が言うところの「学費に依存しない経営モデル」なのでだろうか。

2)この間、立命館では建物・設備などの有形固定資産の比率が下がり、これが有価証券に置き換えられ2020年度で1161億円(総資産の30.4%)にも昇っている。2017年度から2019年度の3年間では毎年100億円を超える金融投資が行われてきた。2020年度の学納金は534億円である。つまり毎年学納金収入の2割にも相当する金額が金融商品に投資されてきたのである。極めて異常で危険な財政運営が行われてきたのである。1161億円の金融資産は5%下がっても58億円の損失になる。

3)以前と異なったこのような財政運営はきちんと理事会や評議員会に報告され審議されてきたのであろうか。2007年2008年にリーマンショックにより世界的不況が起こった時、当時すでに資産運用を大規模に行っていた慶応大学など関東の多くの大学が大きな損失を生んだことは記憶に新しい事である。慶応大学は、元証券会社の役員を財務担当常務として迎え「効率的投資で大きな収益をあげている」ともてはやされていたが、リーマンショックで「約400億円の損失を出した」とマスコミで推定報道され(慶応大学自身によっては公表されなかった)解任に至った

 しかし立命館の理事会・評議員会において、これらの教訓を踏まえた論議の上で金融資産化とその運用に舵を切ったという形跡は無い。どのような政策提起があり、討議した結果を明らかにする必要があるだろう。私は資産運用に反対ではない。問題は大学財政が直接金融資産運用に依存するやり方は危険であると指摘しているのである。

4)アメリカの大手大学の多くはいずれも大規模な資産運用を行っている。その場合、日本の大学のように大学が直接投資する場合もあるが、多くの場合、大学法人と別の運用組織を作り運用している。そして大学として財政戦略を立て、運用目的を明確にし、独自の運用体制を作っている。その投資結果がどうであったかの報告を行い運用責任を明確にしている。また当然であるが運用資金は社会的に資産運用への目的を明確にした寄付として集めている。立命館においてはこうした制度整備を行われていず、「運用家」なる個人や会社に任されている。また理事会の共通認識・責任の明確化も行わていない極めてずさんで危険なやり方で行われている。なお明確にさせておかなければならない事は、立命館の資産運用の原資はどこから出ているかである。常識的には学費収入しか考えられないが、ここ5年間で言えば教学収入収支が赤字になってきているのであるから、常識的に言ってそこから毎年100億円もの金融資産原資を確保できるわけがないと推察されるが、少なくとも分かる説明はされていない。理事会や評議員会等で説明が求められる。

5)学費政策。私立大学の最大の収入源は、今のところ学費である。同時に学費は普通の勤労者家庭にとっては本人並びに保護者にとって極めて大きな負担である。学費を納めて大学を卒業出来るかどうかは学生の一生のあり方を左右する問題である。そのため学費の在り方は、戦後の立命館において学生の自治組織である自治会・学友会と大学執行部の最大の論争点となってきた。2019年以降の学費をどうするかをめぐって2018年に全学協議会が開催された。そこでは大学執行部のほうから学費値上げが提起された。その理由として①文部科学省による定員厳格化による収入減②政府による「働き方改革提起への対応」の資金確保③教学改革の「協創施策」対応のためと次々出されたが、いずれも学友会、院生協議会、教職員組合に対して説得力に欠けるものであった。そうしたことあり6月25日、常任理事会にたいして経済学部・経営学部・法学部・産業社会学部・国際関係学部の五学部執行部が「理事として学生に説明するには十分な時間的余裕が無いことを踏まえ学費額を据え置くこと」との意見表明を行った。これを受けて6月27日理工学部執行部と生命科学部執行部も五学部執行部意見に賛同した。こうして7学部長のからの意見表明を受けても、6月27日の常任理事会では2019年度の学費は現行通り、2020の学費は2019年度の全学協議会を開催し協議するとされた。しかし2019年の全学協議会においても先の三つの理由が挙げられ値上げが実行された。コロナ禍による保護者の収入減、学生のアルバイト縮小を考えれば保護者・学生の負担はより厳しいもと考えられ、大学の在り方が根本的に問われることになった。

第二部 日大体制に似た選出基盤のない森島朋三理事長と私学法の改正

1)ところで森島朋三氏はどうして理事長になっているのであろうか

 森島朋三氏は、どこに選出の基盤(母体)があるのであろうか。彼は職員出身であるから評議員選挙に当たって職員区で評議員に選ばれ、評議員会において職員評議員の代表として理事に選らばれ、そして理事会において理事長に選ばれるのが通常の選出され方である。しかし職員に不人気な彼が職員評議員職員区で評議員に選ばれる可能性は無いし、実際選出されていない。むしろ逆で彼の対抗馬となりうる人物の評議員当選を邪魔し大きな問題になったことがある。

 彼は総長推薦枠で長田豊臣総長、続いて川口清史長の推薦で理事に就任した。そして学外理事の推薦で理事長候補となり学外の理事の数の力で理事長に就任した。それ以降、川本理事長推薦で理事に就任していた人を暫時全員解任し自分が推薦する理事に入れ替えた。専務理事の時に川口清史総長とタッグを組み、長田理事長に川本氏を相談役から解任し何の権限もない顧問にした。続いて川口前総長、長田前理事長も顧問にして「独裁体制」を確立した。ここには川本八郎元理事長が森島氏を慰労金等支払い等で自分の忠実な部下と思って使ってきたので「森島であれば院政を引ける」と思った判断ミスがあった。しかし一旦権力を握った森島氏は川本、長田、川口を排除し独裁体制を引くことになった。こうしたことができる現在の私学法とそれに基づく立命館の寄付行為に問題があることは明であり、私はその抜本的改革を提起してきた(「立命館の再生を願って」(風涛社)を参照してください)。

2)「急浮上」してきた私学法改定問題

 立命館のみならず近年多くの私立大学、最近では日本大学で脱税や収賄などの様々な社会的犯罪行為が行われ社会から厳しい批判を受けてきた。犯罪を行なったのは個人であるが、それが行えた私学運営の問題点が社会的に明るみになってきていた。そうしたこともあり文部科学省の下に「学校法人ガバナンス改革会議」が設置され昨年末(12月3日)に報告書が提出された。そこでは執行機関としての理事会を縛るために評議員会を諮問機関ではなく最高決議機関として位置づけるとともに、評議員会を構成する評議員全員を学外者とする案が報告された。理事の選出機関を明確にすることや議事にたいして実質的な審議ができるようにするなどの改革は当然のことである。しかし評議員全員を学外者にするなどの実態に即さないやり方は間違いである。これは実質的に財界による私立大学乗っ取りの改悪である。

 2004年に国立大学が独立行政法人化された。それまで国立大学は国の一機関であったが、独立行政法人化されたことによって各大学毎に理事会が作られたが、その半数を学外者とされた。その結果、大学の基本的なあり方・運営において財界人の意向が強く反映されるようになった。また理事会の下に学長選考委員会がつくられ、それまでの教員・職員による学長選挙が形骸化され、学内の意向が無視さる事態が多くの大学で生じた。今回の「学校法人ガバナンス改革会議」の報告は、それに輪をかけた改悪である。

 森島朋三理事長などは。これが法制化されれば理事長どころか理事にも評議員にも成れない事を恐れ、政界などへの働きかけで回っているようである。しかしこれは彼の地位をいかにして守るかの問題ではなく、私立大学のあり方を決する問題であり全学構成員に依拠して社会的支持を受けて撤廃を求める取り組みを進めるべき問題である。しかし未だに総長・理事長声明を含めて立命館としての意見を社会的に見える形で表明されていない。教職員組合は日本および京滋私大教連などとともに先頭に立って事態打開の取り組みを進めるべきであろう。同時に大切なことは森島朋三理事長を先頭とする学園指導部のこの間の異常な学園運営に鋭くメスを入れ、真に教学をさえる財政運営を行えるように、学園体制の改革・改善を含む取り組みを社会的に目に見える形で行わなければ社会の支持を得られないだろう。

鈴木元。

経歴、立命館大学一部経済学部卒業、立命館総長理事長室室長、初芝学園副理事長、中国(上海)同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、国際協力銀行中国内陸部人材育成事業アドバイザリー、私立大学連盟アドミニストレーター研修アドバイザー等を歴任。

現在、国際環境整備機構理事長、京都高齢者大学校幹事会副代表、ベトナム枯葉剤被害者支援日本委員会事務局長、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版顧問など。

主な著書『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)、『像とともに未来を守れ 天皇・立命館・学生運動』(かもがわ出版)、『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)、『異文化理解・協力の旅』(文理閣)、『京都市における同和行政批判』(部落問題研究所)『コロナ後の世界』(かもがわ出版)など多数。