スズキ ゲンさんのブログ

立命館の再生を願って

NO83 立命館常任の皆さんへ 

2020-01-15 18:18:35 | 立命館の再生を願って
NO83 常任理事会の皆さんへ
 2020年1月15日 元立命館総長理事長室室長、ジャーナリスト 鈴木元
目次
(1)理念なき森島理事長の下、多額の費用を浪費した品位なき馬鹿げた全面広告
(2)文部科学省主導の民間を使った記述式大学入試に立命館はどういう対応をしようとしたのか。

(1)理念なき森島理事長の下、多額の費用を浪費した品位なき馬鹿げた全面広告
1)1月1日(地域によつては12月31日)の「朝日新聞」に、見開き2面全面を使った立命館大学の広告が掲載された。そのメイン見出しは「立命館から、アメリカ大統領を」というものである。作成者の意図は「突き抜けたグローバル人材」を輩出することを象徴するスローガンのつもりのように見受けられる。「立命館学園憲章」が掲げている地球市民として人類的課題の解決を目指す人材育成などの教学理念の記述はなく「アメリカ大統領を」など人を食ったスローガンである。
広告が言う「20年後のグローバル社会」であればこそ「突き抜けたグローバル人材」の象徴としてアメリカ大統領がクローズアップされる根拠はない。「夢を見るのは勝手だけど」と立命館学園全体が冷たく嘲笑されることになりかねない。
 しかも問題になるのは、このとても本学の良識と品性を欠いた全面広告は立命館大学の広報課が発信元になっていることである。広報課の独断でないとすれば、それは常任理事会の了承をえているか、少なくとも理事長の裁断に基づくものであろう。「立命館学園憲章」の本旨からかけ離れた低劣な人材像の源はどこなのか、この際、明確にすべきである。
2)立命館の国際化教育は、日本で最初の本格的国際大学であり創立20周年を迎える立命館アジア太平洋大学や立命館大学の国際関係学部、そして各学部の国際化コース等で地道に着実に進められ、立命館大学では年間1000名を超える日本一の海外留学を実現してきている。
 ところが川口清史元総長は政府専用機で安倍首相とオーストラリアに同行し、潜水艦20隻売却の露払いとして、現地において学園のどこでも議論してこなかったオーストラリア国立大学との共同学位学部構想を打ち出し安倍首相立ち合いの下で署名してきた。その後も常任理事会に諮ることなく東京において記者会見し既成事実化した。森島専務(当時)は「総長が約束してきたものを行いわないことは国際的信用にかかわる問題である」として常任理事会に具体化を求めてきた。そうした中でAPUや国際関係学部との関係もあいまいなまま、教学理念も不明確な一学年わずか90名定員のグローバル教養学部なるものを打ち出してきた。2019年から発足したが初年度から定員割れで迎えた。
 学位を授与する大学・学部は教学の継続性が求めらるにもかかわらずオーストラリア国立大学との協定書では「存続を含めて7年目に検討する」とされた。これを推進し責任を問われるのは川口清史元総長、長田豊臣前理事長、森島朋三前専務理事のコンビであったが、今や森島理事長だけが残っており、その責任が問われていると指摘してきた。 
3)ところが今回の2面全面広告を見ると、立命館大学としての国際化の教学理念の記述がないだけではなく、定員割れを起こしているグローバル教学部を改めて押し出すどころか「立命館からアメリカの大統領を」などとの人を食ったスローガンで逃げたのである。この広告は大手広告会社・博報堂に企画・作成を発注し朝日新聞に2面全面広告として掲載された。注意してみると広告の右下にアメリカで同時配信している旨が記載されている。立命館のホームページを開くと、この朝日新聞広告の内容を動画にしたものが掲載されている。アメリカで同時配信されたのは、この動画配信であると思われる。アメリカで配信されても誰もまともに相手にしないだろう、日本国内で「アメリカでも配信されている」というアメリカ事大主義者の自己満足宣伝以外の何物でもないと思われるが、そのためにいくら使ったのかお明らかにする義務がある。総計すればおそらく1億円規模の費用がかかったと推察される。こんな馬鹿げたことを常任理事会は承認したのか。
差し迫った必要性がないにもかかわらず学生には平均13万円もの学費値上げをし、教職員には10年以上基本給を引きあげられることなくげておきながら立命館の品位を下げる広告のために1億円もの出費をしたことについてきちんとした責任追及がなされなければならない。
 現在学園の広報は森島理事長・石坂広報担当職員部長・広報課長のラインで動いている。1億円もの決裁権限は理事長にしかない。この件は森島理事長が広告の内容も見たうえで直接決裁したのであろう。なお長田理事長、森島専務の時、2010年度末の多くの議題の中に森島専務が「ごく実務的な規程改定です」として入れ込んだ規程改定のなかに「経理規定の改定」が入れられ、理事長の決裁権限を「1億円以上  」とする。およそ規程と言えない規程を作った。これをもとに茨木キャンパスの校舎建設費220億円を竹中工務店に発注するのを長田理事長の決裁だけでやろうとした。何人かの学部長理事が森島専務に「いつの理事会に提案するのか」と質問したのにたいして森島専務は「理事会には掛けません、長田理事長の決裁で行われます」と答えていた。そのやりとりを聞いた私は「おかしい」と思い、理事会議事録を調べなおしたところ、上記の経理規定の改定を見つけた。それで私は文部科学省に指導を要請し理事会議決にさせた。その時「このような規定と言えない規定は廃止しなければならない」と指摘したが、今日まで是正されないまま来たために今回のようなバカげた広告が森島理事長の決裁で進められた。逆に言うとグローバル教養学部の定員割れ・赤字問題、今回の1億円もの費用をかけたバカげた広告問題について森島理事長の個人責任が厳しく問われなければならない。
すでに、この広告を見た多数の学生から大学にたいして「なんと恥ずかしい広告を出した無駄遣いの責任を問う」「広告費の全額を明らかにすることを求める」などの声が寄せられている。このような立命館の品位を下げた無駄遣いが理事長個人決裁で行われることは大学の在り方として問題であり、今回の広告掲載についての森島理事長の責任を追及するとともに、一刻も早くこのような経理規定を改める責任ある対応が常任理事会に求められている。
(2)文部科学省主導の民間を使った記述式大学入試に立命館はどういう対応をしようとしたのか。
1)民間に任せ、十分な準備もなく進めようとして、破綻した文部科学省の入試改革
 文部科学省は英語(4技能試験)にいて民間の試験会社を活用すること、そして国語・数学についてもマークシート方式を止め記述式とし、採点担当者にアルバイト等を使う方向で動き出した。しかし多くの大学から試験の公平性・採点管理の厳格さに批判が出された。そして高校側から、さらに当事者である受験生・高校生からも批判が相次ぎ文部科学省は実施を延期・断念せざる得なくなった。なお批判したり反対し大学や団体、個人の誰ひとりとして英語における四技能試験や、国語や数学における記述式試験に反対していない。民間の試験会社の採点基準が違うことや採点者に高校生のアルバイトまでが使われることから試験の公平性、採点管理の厳格さなどからこのまま実施することにたいして批判・反対したのである。
 問題は立命館の常任理事会が、この文部科学省の入試改革をどういう検討・対応をしてきたかである。立命館においては1960年代に教学優先の観点から学部長理事を中心とする常任理事会体制が確立して以降、常任理事会は週一回の開催で行われてきた。ところが2017年に森島朋三氏が理事長に就任以降、常任理事会は隔週となり、かつ審議事項も極端に減らされてきて、常任理事会の機能が大幅に縮小されてきた。教授会における常任理事会報告も極めて限定され、教授会に出席している専任教員においても、学園がどのように動いているかが分かりにくくなっている。そして今回の「入試改革」である。
 入試がどのような内容で、どのような形式で行われるかは大学教育の在り方とかかわる極めて重要な問題である。学園の運営において教職共同を確立してきた立命館大学においては入試執行においても教員だけではなく職員もほぼ全員が参加してきた。
 今回の文部科学省の入試改革案を立命館は、どのように受けとめ、生かすのかは、学園の入試・教学にとって決定的に重要な問題であった。「英語試験において民間試験の活用も検討していたらしい」との話もあるが常任理事会報告を見る限り、どのように検討してきたがが分からない。もしも入試委員会や教学委員会で討議・検討していたとするなら、それがなぜ常任理事会そして教授会に反映されてこなかったのか。それ自体が問題である。したがって今回の中止にたいしても、立命館としてどのように対応するかも全教職員にとっては明確でない。これは教学優先・教職共同で大学を運営してきた立命館大学の在り方としては致命的な問題である。森島理事長が進めた学部長理事を基礎とした常任理事会の機能低下がもたらしている教学軽視が典型的に表れた事案である。
 文部科学省が実施しようとしていた英・国・数の入試改革を利用しようとしていたら、それが中止となれば大混乱であった。「利用しない、すべて独自入試だけで行う」としていたらセンター試験利用にかわる入試を独自に準備しなけれはならなかった。教職員全体が、それを準備していたとの共通認識はなかった。立命館大学の全教職員が参加していた入試業務を全構成員の討議・認識の一致もなく実施するのは無理がある。文部科学省の案が中止と決まった現時点で、この間の取り扱い経緯の全貌を全教職員に明らかにし、来年以降の入試にどのように望むのかを戦略的に立て直す必要がある。これを常任理事会の議論だけで実施できるとは考えているわけはないだろう。速やかに経過・総括・今後の方向について全学に明らかにする必要がある。そして同時に常任理事会を週一回にし審議議案も大幅減らしたことについてきちんとした総括が必要であろう。今回の広告問題にみられるように常任理事会に諮らないで、森島理事長とその周辺の特定のごく少数者で決定・執行している物が大幅増えているのであろう。教授会ならびに教職員組合などは目を光らせて調査・追求する必要があるだろう。

鈴木元。立命館総長理事長室室長、初芝学園副理事長、中国(上海)の同済大学アジア太平洋研究センター顧問教授、私立大学連盟アドミニストレーター研修アドバイザリー、国際協力銀行中国人材育成アドバイザリーなどを歴任。
現在、日本ペンクラブ会員、日本ジャーナリスト会議会員、かもがわ出版取締役、京都高齢者大学校幹事会副代表。国際環境整備機構理事長。
主な著作。『立命館の再生を願って』『続・立命館の再生を願って』(いずれも風涛社)。『もう一つの大学紛争』(かもがわ出版)。『異文化協力・交流の旅』(文理閣)。『京都の同和行政を批判する』(問題研究所)他多数。