長期滞米研究者ネットワーク

管理人たちの日記

偶然から

2006年04月28日 | SE の日記
私の研究対象は Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis (Mpt) という細菌です。ごく最近の論文で、上皮細胞に取り込まれたときやミルク中でしばらく培養したときにこの細菌の感染性が高くなることが報告されました。他のマイコバクテリアではアメーバに取り込まれた際に感染性の上昇することが報告されています。現在進行中のプロジェクトとは直接関係ないのですが、なかなか面白い論文だと思いながら読みました。それが確か水曜日。

金曜日には Mpt に関するセミナーがあったのでそれに参加しました。発表者はすぐ隣の建物で働いているポスドクでした。彼自身のことも、彼が Mpt に関する研究をしていたことも知りませんでした。トークが始まってみると、なんか聞いたことがあるような話になってきました。どうやら彼は上記の論文の仕事に携わっていた人のようです。てか、名前を見返してみると筆頭著者でした・・ Waht a coincidence ... セミナーの後しばらく話し込み、共同研究の可能性がでてきました。

この前は(コンペティターのラボで) Mpt に関する研究をしていた人が同じ町に働いていることがわかったばかりだし、昨年は以前から共同研究を申し込みたいと思っていた人のことをキャシーと話していた翌日にそのラボの PI が大学を訪れるし、奇遇が続いています。

金曜のセミナーの彼と、上記 PI (共同研究の話がまとまった)と自分たちのグループの成果と技術を持ち寄ると、とても面白いことが出来そうです。この前の日記で話したプロジェクト鳥瞰図が頭の中に浮かんできています。それが実現するかどうかはこの偶然の中心にいた自分次第ですねー。

がんばらねば・・


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夢は何からできているか

2006年04月23日 | SE の日記
しがない助手の日誌さんで紹介されていた成分分析をやってみましたところ・・・


「SE」 の54%は嘘で出来ています

がーん。←主成分、嘘
がーん。
がーん。


気を取り直して他のものの成分を調べてみました。


> 「時間」の90%は呪詛で出来ています
そ、そうなんだ・・・人間を罰するための呪いか。


> 「野望」の56%は元気玉で出来ています
野望を抱くにも元気がいるわな。


> 「夢」の71%は罠で出来ています
なんか、深いね。

> 「ルルゴールド」の64%は根性で出来ています
なるほど、良く効くわけだ。


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アメリカ的になる日本

2006年04月18日 | SE の日記
日本で格差拡大と米紙 日本社会の良さ喪失懸念

個人的には、アメリカ的格差が日本に広まっていくのはよくない傾向だと思っています。記事でも触れられていましたが、経済的な格差は教育の格差につながっていくでしょう。アメリカのうまく機能していない部分はどうもそこに根源があるような気がするので日本にはその方向に進んでほしくないと思います。それに資源の乏しい日本を支えるのは全国民的な教育レベルの高さが一番の要因になるでしょう。それは教育熱心なユダヤ人が経済や科学の分野で活躍し影響力をもっているのを考えればあきらかです。ゆとりの教育が見直されたのはよかったですが、ゆとり真っ只中の世代は社会に出て苦労することにはならないでしょうか。施策に試験的な段階があるのは仕方ないですが、マイナス面を受けた人たちは不満をどこにぶつけたらいいのでしょうか。

科学面でもポスドク増員によって将来に対する不安感を抱えている若手研究者が増えていますね。若手に独立した研究環境を与えようという動きはでてきていますが、科学振興にあてられる予算規模がアメリカとは違いますから若手支援の恩恵にあずかる人数はかなり限られ、ここでも格差が生じてくるでしょう。競争心をあおって若手研究者の能力を引き出すのは良いことだと思いますが、一時期に成功できなかった人たちにもそれなりの支援策が施されるような余裕があればさらに良いでしょうね。

若手が任期つきで独立ポジションを得るようになると益々アメリカ的になるわけですが、講座制の良い部分(メンタリング、研究の継続性)も残していかなければアメリカの研究システムの弊害(実益主義的な側面)も継承してしまうことになるでしょう。

日本もアメリカも基本的に好きなので、どちらもその国らしくあって欲しいと思います。(まー、ジャイアンの方は心配するまでもなさそうですが・・)




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彼女からのメール

2006年04月14日 | SE の日記
彼女からのメールの件名を羅列してみた。


 今日会えませんか?

 届きませんでしたか?

 返事を確認出来ないんです、一つだけ教えてください。

 写真が添付されていなかったようです、

 写真見てもらう事できました?女としての私を感じ取って貰えましたか

 迷惑なんですか?

 どうして連絡くれないんですか?どうして?私もう限界…

 連絡欲しいのに…お願いです。今日会いたいです。どうしても会って欲しいです。

 もう私気力がありません…ほんの少しだけお願いします。私を助けてください。



以上、安藤まどかさんからの(スパム)メールでした。
だいぶ追い詰めてしまったようですが、返事をしたほうがよいのでしょうか(笑)。


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オーストラリアへ行く話しその24 えむあいえすとは

2006年04月08日 | ばみら日記
さて、今回こそ、性分化のミニレビューにけりをつけて、ワラビー牧場へ戻っていきたい。分量的には某日本語雑誌のミニレビュー以上のものを書いている気もしないでもない。ミニレビューと言うよりは業界裏話に終始しているという気も本気でしないでもない。で、そのえむあいえすである。ひとくちで言えば、変身増殖因子(TGF)ベータの仲間である。これが精巣のセルトリ細胞から分泌され、そばにあるミュラー管を消していくのである。消える仕組みは生物種によってすこし違うようであり、ワニなどではアポトーシスの誘導、ほ乳類では、管の上皮細胞の間充織への再分化の促進などといわれている。でも、なんでワニなんかを調べる気になったのだろうか。ミュラー管もウォルフ管も上皮が輪になっているから?

えむあいえすの遺伝子はボストンのベンチャーがクローニングし、その受容体は同じグループとオランダのグループがデッドヒートを展開し、同じ年に発表をしている。この競争ゆえ、候補のクローンは暗号名で呼ばれていた。当時の関係者のあいだでは、今でもデージーといえば、えむあいえす受容体遺伝子の事をさす。えむあいえすのトランスジェニックマウスは90年代初頭に作られ、予想通り、子宮のないメスが生まれてきた。ノックアウトマウスも作られ、今度は子宮を持ったオスが生まれてきた。この論文をアーノルドジョストへ捧げる、とくだんの論文のアクノレッジには書いてある。受容体のノックアウトマウスも作られ、えむあいえすのノックアウトと全く同じ表現になり、変身増殖因子ベータの仲間としては非常に珍しく、リガンドと受容体の特異性が非常に高いことが示された。これらのノックアウトマウスは精巣は正常なので、ホルモン的にもオスであるが、アンドロジェン経路を遮断してやると精巣の発生が押さえられるので、精巣を持たず、子宮を持ったXY個体が誕生する。こうして作ったマウスに女性ホルモンを投与し、子宮に受精卵を移植してやれば、妊娠オスマウスができるはずであるが、未だにそういうマウスができたという話しは聞かない。かわりにそういう映画がずいぶんまえに公開された。妊娠した主演男優はあーのるどのしゅわちゃんであった。

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オーストラリアへ行く話しその23 めすのおとしご 

2006年04月04日 | ばみら日記
たつのおとしごはメスがオスに卵を産みつけ、卵が孵化するまでオスが面倒をみる。しかるに、たつのおとしごの場合はオスが「出産」するシーンを見る事になる。たつのおとしごならぬ、めすのおとしごである。オスが子宮のような器官をもっているためである。ほ乳動物では、単孔類には子宮はないが(だから卵を生むのであるが)、有袋類と真獣類はXX個体すなわちメスに子宮がある(とわざわざもったいぶっていうほどのことでもない)。オスらしさを代表する器官といえば、金色の卵、略して精巣だが、メスを代表する器官となると、対応する卵巣よりも子宮がなぜか挙げられる。経験的にも遺伝子発現パターンとしても、精巣はオスにとって第二の脳と言われているようだが、そうなると子宮はメスにとって第二の脳ということになるだろうか。まあ、あまりこういうことを言うとしかるべき筋から反発が来るんだろうな。

さてその大変象徴的な子宮であるが、これは前にのべた通りミュラー管から発生してくる。そして、オスにもミュラー管そのものは胎児期に存在するのである。ではなぜオスはたつのおとしごのように子宮を持って生まれてくることがないのであろうか。その謎に挑んだのが20世紀初頭の発生生殖学者あーのるどしゅわるつ、、じゃなくてあるふれっどじょすとであった。彼はオスとメスの胎児から精巣や卵巣を除去したり、交換移植をしたりして、XY個体でも精巣を除くと子宮が発生してくること、精巣を移植されたXX個体は(卵巣があってもなくても)子宮がなくなってしまうことを見つけ、これは精巣が子宮を消してしまうホルモンを出すためと考えた。ウーマンリブ華やかりし時代であれば袋だたきにされそうな学説であった。

この「ホルモン」は抗ミュラー管ホルモン(AMH)、あるいはミュラー管阻害因子(MIS)と名付けられている。ヨーロッパ、オセアニアではAMHと呼ぶグループがほとんどであるが、ばみらは個人的な理由も含めてMISとよぶことにしている。ばみらの書いた論文では「MISまたはAMH」と順番にこだわることにしている。えむあいえすと読むのが正しいが、みすと読む人が東北地方に少なくとも一人いる事を確認している。それではこのえむあいえすの正体とは?なかなかワラビー牧場に戻れない。

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