つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

私って時代遅れですか?

2008-02-24 14:39:44 | ファンタジー(現世界)
さて、まさかファミ通文庫を再び読むとは思ってなかった第949回は、

タイトル:学校の階段
著者:櫂末高彰
出版社:ファミ通文庫(初版:'06)

であります。

個人記事ではお久しぶりでございます。
最近方々で――
「ガガガ文庫だって読み漁ってやるぜ! でもスーパーダッシュ文庫だけは勘弁な!」
と叫びまくってるSENです。

今回、何を血迷ったのか、ラノベ三大地雷原と呼ばれる内の一つ、ファミ通文庫に手を出してしまったので、久々に筆を取りました。
薦めて下さった方曰く、「単に学校の階段を走り抜けるだけの部活のお話」(そのまんまやんけ)ということなのですが――さて、結果は?



特にこれといった目標も持たず高校に入り、何とはなしにバスケ部に入ろうとしていた矢先、神庭幸宏は奇妙な光景を目にした。
猫目の小柄な少女が、スカートを大きく翻して宙を舞っていたのだ――しかも階段の上を。
彼女は、「ごめーん」と軽く言うと、ポカンとした神庭を残して、あっという間に行ってしまった。

彼女の名は九重ゆうこ。
多くの生徒から忌み嫌われる非公認部『階段部』の部長である。
とにかく走りたい! というシンプルな欲求に従って、彼女達は校内を走り回り、仲間内でタイムを競っていた。

だが、神庭はそのことを知らない。
なぜ彼らが校内を走るのかも、自分の中に眠っている欲求も。
そして無論、これから始まる非公認な日常のことも――。



まず結論から言いましょう、超弩級地雷です。
と言うか、コメディ読んでこれだけ腹が立ったのは初めてかも知れません。
多分、派手に喧嘩売ることになると思うので、ファンの方は以下の文は読まないことをオススメします。

文章は、基本的に神庭視点の三人称。
流れ的には、何にも知らない主人公が階段部という奇妙な集団と接触し、次第に染まっていくというスダンダードな形式を取っています。
途中、神庭と家族の絡みもあったりするのですが、ほとんど添え物なので割愛。(つーか、「四人姉妹出して、ホームドラマもどきやってみました」ってだけなので、書く気が起こりません)

キモとなる、階段部というアイディアについてですが、かなり上手く処理していると感じました。
いかにして校内を速く駆け抜けるか、という命題に対して、部の面々が様々なアプローチを試みており、それが各人の個性ともリンクしています。
見てるだけだと簡単そうだが、その背後には驚く程多くの研究と鍛錬がある、というスポーツ物の基本を踏襲し、主人公が少しずつ階段走りの技術を学んでいって、ラストの一対一の対決でそれらを生かすという展開もお見事。

で・も・ね――(ここから毒ラッシュ)

最初から最後まで、他人にぶつからないよう注意して走ってるからオッケーで通すのってどうよ?

スポーツ青春物の皮を被った本作には、それが持つべき重要な要素がさらっと抜け落ちています。
一言で言っちゃうと、この主人公まったく成長してません。
普通に考えれば、これといったビジョンを全然持っていなかったのが、熱心に部活に打ち込むようになったことが成長、なのでしょうが、「情熱を燃やし、ひたむきに階段や廊下を走る」って……前半であれだけ強調されてた騒音公害だとか、危険行為だとかって話はまるっきりスルーですか? もっともこれは主人公に限ったことではなく、部員全員に言えることですが。

そう……この作品、階段を走るという行為のシミュレートは非常に面白く書いているのですが、それに伴って発生するトラブル関連のまとめがおざなり過ぎるんです。
階段部の行為を咎める人々は多数登場しますし、その主張も至極真っ当な感じに書かれています。でも、それに対する部員の反論があまりにも稚拙、と言うか幼稚で、かなり萎えました。
一応、そこらへんをまとめるキャラとして副部長がいるのですが、屁理屈こねるだけのインテリ崩れで他と大して変わりなし。要するに、揃いも揃ってただのクソ餓鬼です。
(ちなみに、部長の思考回路は幼児並み……つーか、こういう脳の腐ったヒロイン増えましたねぇ、やれやれ)

作者としては――悪いことだと解っていても、この気持ちは止められない! ってな感じの、いわゆる青春小説の王道に持っていきたいのでしょうが、生憎、爽やかさの欠片も感じませんでした。

一番引っかかったのは、俺達は自分達の迷惑行為を自覚してるんだ! とか、それでも走りたくてたまらないんだ! とか、部活が終わったらちゃんと清掃を行う! とか、色々言い訳を用意してる割には、何だかんだ言って、他人を障害物に見立てて走ることをゲームにしている点です。
人のすぐ側を駆け抜けてはいけない、ぶつかってもいけない、もし違反したら必ずお詫びする……ハァ? そういう事態が発生しても、走ることをやめる訳じゃないんでしょう? そんな形だけの謝罪に何の意味があるんですか? しかも、そういう事態が発生した時のため、部活の初めには必ず謝罪練習って、他人を馬鹿にするのも大概にしましょう。
それでも階段走りたいなら、休日に学校貸し切ってやって下さい。自分達が負うべきリスクを他人にも押しつける時点で、こいつらは下衆以外の何者でもありません。

仮に陸上部の人とかにぶつかって、選手生命断ったらどうするんでしょう?
それでも、走りたくてたまらないから走るとかぬかすんでしょうか? 言えたらもう人外ですが。
その程度の想定もできないんですかね、このゴミ集団は。

総評――反吐以下。
階段部という部活、及び、そこに所属する面々が生理的に受け入れられません。
敢えてちょっとだけフォローを入れるとすれば、「まぁ、ラノベに登場する学校はファンタジー空間だから、こういう連中でも生息出来るだろう」と割り切れる方なら、スポ根コメディの亜種として楽しめるかも知れません。
それでも、私は決してオススメしたりはしませんが。

(しかし、この作品七冊目まで出てる人気作で、映画化までされてるんだよなぁ……さっぱり解らん)



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