シーガルアイ公式ブログ 『カモメの目』

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気になる記事から (4月20日)

2006-04-20 | Weblog
がんの痛み除去 医療用麻薬に二の足 「遅れる緩和治療 医師の養成必要」

がんで亡くなる人は年間30万人に上る。70%以上が感じるとされる痛みは終末期のQOL(生活の質)を左右するが、日本では医療用麻薬による緩和治療の取り組みが遅れている。昨年12月、大阪府和泉市の開業医、梅田信一郎さんは往診先のがん患者宅でフルートを演奏した。緩和治療を受けていた患者はすでに意識がなかったが、梅田さんの心遣いが家族の胸にしみた。翌日、患者は自宅で静かに息を引き取った。痛みのコントロールは、患者や家族の「最期は家で迎えたい」という思いをかなえ、在宅ホスピスを広げるためにも重要だ。梅田さんは在宅医療に力を入れ、常時、10人ほどのがん患者を往診している。「一日中看護師や医師がいる病院と違って、家で痛みがきたらどうしたらいいのか」。在宅を選ぼうとする家族の不安は、梅田さんの往診で解消した。「痛みのコントロールは95%可能。急変といってもほとんどが想定内で、医師が自信を持って説明すれば、患者、家族の不安もなくなる」と梅田さんは話す。世界保健機関(WHO)の「がんの痛みからの解放―WHO方式がんの疼痛(とうつう)治療法」は、痛みの程度を3段階に分け、段階ごとに取り除き方を提示している。モルヒネなど医療用麻薬(オピオイド)を使う方法で、約90%のがん患者の痛みを除くことができると言われている。治療法の確立に参加した武田文和・埼玉医科大客員教授(元埼玉県立がんセンター総長)は「日本での検証では97%の人がほぼ痛みがなくなり、残り3%も軽減した」と効果を語る。しかし、現実には多くの患者が痛みで苦しんでいる。日本でも緩和ケア病棟が150を超え、在宅ホスピスも広がっているのに、梅田さんのような診療をしている医師は少数だ。厚生労働科学研究(2003年)によると、痛みが取り除かれているがん末期の患者は、がんセンターなど専門病院でも64%で、一般病院では47%、大学病院では40%に過ぎない。医療用麻薬の消費量もアメリカの7分の1と、先進国では最低レベルだ。武田さんは「日本の医療者は医療用麻薬を使わない。使う際にも時期が遅れる上、十分な量を使わないのが問題」と指摘する。「岩手にホスピス設置を願う会」代表の川守田裕司さんは2000年8月、妻をがんで亡くした。妻が痛みを訴えたため、医師に医療用麻薬を使うよう訴えたが、聞き入れられなかった。使われたのは、亡くなる当日だった。「なぜもっと早くから使ってくれなかったのか」との思いは強い。今、体験を語りながら、緩和治療を行うことのできる医師の養成や教育の充実を訴えている。日本で立ち遅れている要因の一つが、中毒や依存症になるのではといった、「モルヒネ」のマイナスイメージだ。だが、武田さんは「痛みをとる治療は初期のがんでも行われるが、そのために、中毒や依存症になることはない」と言う。星薬科大の鈴木勉教授の研究によると、一般の人にモルヒネを投与すると、ドーパミンが増え依存症になるが、がんなどの痛みがある人に対して投与した場合は、ドーパミンの上昇が抑えられて依存症にはならない。麻薬に関する法律上の規制があり、取り扱いが煩雑だからという声もあるが、武田さんは「医療用麻薬を使えるのは医師だけ。煩雑さを理由に使わないのは怠慢」と強調している。(yomiuri on-line)