佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

法人税率が下がるそうですが……

2010-12-15 10:05:17 | リーダーの人間行動学
法人税実効税率の5%引き下が決まったようです。

諸外国が法人税の値下げ競争をしているとされ、国際競争に勝ち抜くために、というのがひとつの根拠のようです。

こういう政策の効果はどうなのでしょうか。たしかに一時的には企業にとっていい話かもしれませんが、財源が不足しているので、将来的には消費税を上げることが予想されます。

消費税が増税されれば消費者の財布のヒモが固くなり、結局アクセルをふかしながらブレーキをかけることになるのではないでしょうか。しょせん、国民の財布はひとつなのですから。

しかし、国際競争はまったなしだといいます。

この税率下げの国家間の競争は、なにやら国家どおしの値下げ競争のように見えます。正確に言えば税率の下げ競争ですが。

この競争に勝ち抜くにはどうすればいいか?

企業の場合であれば、低コスト体質のところが勝つわけです。国でも同じようなことがいえるのではないでしょうか。

つまり、国の場合であれば、税金や保険料の負担率が少ない国が勝つということでしょう。

そうであるならば、いかにして‘低コスト体質’の国をつくるかが、重要な国家戦略となると思います。

そのような考え方から、私は国家戦略の骨子を考えて折に触れ、こちらで書いているわけです。本日も私が関心をもっている分野をピックアップしてみましょう。

まず、第一は道州制の導入です。地域に対してお金を集める権限と使う責任を持たせ、地域の自主性に任せるということです。必要な投資は地域で考えてもらい、また地域の実情にあわせた身の丈にあった支出を考えてもらうということです。この方式で行えば、現在の中央集権体制に比べて、大幅に税金の無駄遣いが減ると考えています。さらに、いまよりはるかに地域経済が活性化すると思います。

多くのエコノミストが規制緩和を徹底的に行うべきだと唱えながら、なぜか道州制についてはあまり声をあげないのが不思議でなりません。道州制の導入は、究極の規制緩和のはずではありませんか。それなにのどうして、はっきり言う人がいないのか。役所の顔色をうかがっているのでしょうか。

第二は、エネルギーの供給確保です。幸いこの問題はかなり希望がもてるところまでやってまいりました。私はこの10年間、このブログなどで太陽光発電が成長し、石油エネルギーに取って代わるべきだと言い続けてきましたが、ここ数年の間に、ようやく曙光が見えてきました。今後も、中東という地政学的に危険な地域で産出する石油に対して、できるだけ依存度を低める努力を続けなければいけません。今後技術開発がさらに進めば、太陽光発電はコスト的にも従来のシステムと同等かそれ以下になると、私は予想しております。

第三は、通信費用の低減です。これもかなりよくなっています。特にインターネットの定額制が導入されてからは効果が生じています。最近では光回線を半額にする、しないと、議論されているようですが、国家戦略的にいえば、半額くらいにするならば経済に与える影響は非常に大ですね。

政府の経済成長戦略には、観光立国や介護技術の輸出などの項目がありますが、こういうものが果たして戦略の柱として取りあげるほどものか、はなはだ疑問に思います。観光庁は、ゴールデンウィークのような連休を、地域ごとにずらしてとることで、観光事業を活性化しようと考えているようですが、およそ馬鹿げた非現実的な策に思えます。なんで、このような案が平気な顔で成長戦略に乗るのか不思議でなりません。これについてはこのブログで論じたことがありますので詳細は割愛します。

光回線の費用を半額にすれば、大量のデータを低コストで送ることができるようになるため、あっという間に新しいサービス、企業、産業が誕生するでしょう。経済成長戦略としては、これが最も効果的だと思います。

第四は、食糧確保、農業生産の自給率を高めることです。最近は種々の要因で国際食料価格が上昇しています。特に、世界的な気象異常は気になります。この傾向がますます激しくなると、穀物輸出国も輸入国に転落する可能性が十分あります。そうなれば当然のごとく食糧価格が上昇します。場合によっては、食糧は石油同様、戦略商品になる可能性すらあります。そのリスクをいまのうちに摘んでおかねばなりません。そのためには農業改革が不可欠です。

いずれにしろ、この問題はTPPのような問題よりはるかに重大なイッシューであると言えるでしょう。ちなみに、TPPはずいぶん騒がれましたが、内容を吟味すると、日米FTAと実質的にどう違うのだと思えてなりません。専門家ではないのであまり断定的なことは言えませんが、いたずらに騒ぐ前に、まず農業改革に手をつけるべきだと私は考えます。

第五は、国民医療費、医療保険料、介護保険料の増加に関する問題です。この分野については、健康教育が非常に効果があります。私は整体協会の活元運動と愉気法を普及させることで、国民医療費は半分くらいにできると信じています(多くの人は笑うでしょうが)。医療信仰に対する意識の変化が必要ですが、これはなかなかしぶといものがあって、変えるのは大変です。

第六は、コストとは離れますが、リーダーの育成です。昨日のブログで触れたように、シンガポールの外務省高官が日本について「愚かさと質の悪い指導層、ビジョンの欠如」と指摘しています。当たっているので腹も立ちませんが、いつまでもこんなことを言われ続けたら、日本の未来はないでしょう。冒頭に述べたように、優れたリーダーの戦略と指導力なしには、いくら法人税を下げても、たいした効果は生まれないと見ます。国民の財布はしょせん一つなのですから。

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