じゃがブログ ~さいとう小児科~

じゃが院長のつれづれ日誌をメインに、趣味(合唱・囲碁・絵)や道楽(温泉・ラーメン・酒)にまつわるエッセーを掲載。

「桔梗」「小粋」に「羅宇竹屋」

2009年12月25日 | ◎じゃが日誌
このタイトルから、何をテーマにしているかすぐにピンときた方は、私と同じくらいかもっと年をとられた方に違いありません。

私の両親は、養子とその妻でしたので、幼少の頃、祖母(祖父は私の生後まもなく他界。共に血縁はなし)、父方の祖母(祖父はすでに他界)、母方の祖父母、あわせて3人の祖母と1人の祖父がいました。1人の祖父には何の不思議もないですが、3人の祖母というのは、幼心にも「なんでだろ?」という疑問がありました。遊び友だちに、そういう子がいませんでしたから。

3人いる祖母のうち、生活をともにしている血縁のない祖母(実際には、物心ついたときから同居しているわけで、私と兄にとっては最も身近な祖母ではありました)が、なんでも、元は地元の芸者だったらしく、祖父が土地の名士の分家だったこともあり、多少は羽振りというか、甲斐性というか、まあ、金回りが良かったんでしょう。この祖母を見初めて連れ合いにしたらしいと、昔聞いたことがあったような、なかったような。。。

そのような生い立ちだからというのではないでしょうが、私が小さかった頃、家にはたばこ盆のような火鉢があって、その火だねでキセルをふかしていた祖母の姿が、今でも鮮明に思い出されます。

まだ、「羅宇竹屋」なる職業がまかり通っていたようで、祖母の口からこの「らおだけや」というくすぐったい響きの商売人の名前がこぼれると、見知らぬ大人の世界、覗いてはならぬ禁断の(大げさだな~)世界を垣間見る思いがして、ちょっぴりドキドキした記憶があります。「びいどろ」という言葉などと一緒に、今でも私の記憶の引き出しにしまってあるレトロな言葉です。

「らおだけや」?・・・いったいなんだろう??

ずっと不思議に思っていました。いつとはなしに知識として記憶されるようになりましたが、相変わらず「びいどろ」と同様、「らおだけや」もノスタルジックで甘美な響きとともに、私を郷愁の世界へといざなうのです。

知識となったのは、「らおだけ」なるものが「羅宇竹」であり、「羅宇」が東南アジア「ラオス」を意味し、そこに自生する黒斑竹がキセルの持ち手、胴体の部分の材料になっていたということです。

キセル、漢字では「煙管」と書きますが、まあ、そのまんまですね。「けむりのくだ」です。刻み煙草を詰めるところが「火皿」、その下のくびれて曲がったところが「雁首」。水鳥の雁の首に似ているからでしょうね。よく、「雁首を並べやがって」という捨て台詞がありますが、キセルが当たり前に日常に溶け込んでいたからこその表現で、今だと「それなぁに?」でしょうね。

雁首と「吸い口」をつなぐ筒状の胴体、その材料が「羅宇竹」製だったわけです。竹の筒ですから、使用すれば中にヤニがへばりついてタバコの味を悪くします。そこで、その掃除を兼ねて、「羅宇竹屋」が保守管理に見回ることもあったようです。

当院には、事務室にR社のコピー機があります。とっくにリース期間が満了し、今は1ヵ月分のリース代で一年間使用できます。しかし、それとは別に、毎月の点検と称して、R社の職員が見回りに来て「保守点検代」を徴収します。タクシーの基本料金のように、ある程度の枚数までは一律で、それを超えると1枚当たり10円ずつ上乗せされます。そのかわり、何かあった場合には、無償で修理に応じてくれます。

・・・なんだか、「羅宇竹屋」と「コピー機屋」と、似たような商売のように思えませんか?
「羅宇竹屋」が保守管理費をとっていたかは存じませんが、物品を売りっぱなしにせず、その後もメンテナンスに回るという商売の巧みさ、それが今どきのコピー機屋にも活かされているように思えるのです。

話が逸れてしまいましたが、祖母のキセルの話でしたっけ。

祖母が吸っていた刻みタバコは、たしか「桔梗」という銘柄だったように記憶しています。四角い紙包みを、風呂敷を解くように拡げると独特のタバコ臭がして、普通の紙巻きタバコよりずっと細断さされ、まるでズボンのタックの隙間にたまった埃のようにも見えたタバコの葉を、鼻くそでも丸めるようにこねて、火皿に押し詰め、火鉢にかがんでキセルに火をつけます。

キセルをくわえてシュポシュポッと頬をすぼめて火のつきを確かめ、あらためて大きく吸ってフゥ~っと吐き出す。せいぜい2~3度吸い込めばもうおしまい。最後に、火鉢のかどにトンとキセルを打ちつけると、火皿の燃えかすがポロリと灰の中に落ちる。だめ押しにもう一度シュポシュポッと羅宇の抜けを確認し、「いっぷく」の一連の所作が完了します。

明治の人でしたから、あの時代は女性もふつうに喫煙(もっぱらキセル)していたようで、まことにサマになっていました。

今ではとんと見かけることがなくなりましたが、まだ細々と需要があるらしく、唯一「小粋(こいき)」という銘柄が販売されているようです。吸ってみたいとは思いませんが、なかなか小粋なネーミングだな~とちょっと感心しました。
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