磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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定本 原民喜全集I

2008年06月02日 | 読書日記など
『定本 原民喜全集I』
   原民喜・著/山本健吉、長光太、
     佐々木基一(編)/青土社1978年

--原民喜の全集です。
全集というのは、作品だけでなく、その作家についても知らず知らず考えてしまうものですね。解説などもありますし……。


■目次・大タイトルのみ■
・焔  9
・死と夢  147
・幼年画  267
・拾遺作品集I  361
・夏の花  507
・拾遺作品集II  585
・拾遺集  677
・解説  長光太  713
・初出誌紙・単行本刊行一覧  729

「遍歴」という小品。下「」引用。

「やがて工場はストライキが起こり、或る植民地は反旗を掲げ、鉄橋はダイナマイトで壊された。醜悪なる恋愛と云うものはかくも青年を盲目にするものであるか。
 油のきれた機械を見捨てて、工場主はルンペンとなつて街へほどこしを求めて歩いた。自己の頭脳を見限つて放浪することは、何時も彼を安易なその日暮らしの上機嫌にさせた。」

コレラが流行していたという。神経質な原民喜。下「」引用。
「コレラが流行り出した。コレラはもう四五町さきまでやつて来た。胃腸の弱い彼はすつかり神経を尖らせた。」

近所の人などが勝手に入ってくるので、原民喜は「コレラ流行につき無用の者出入すべからず」と書く。
--お巡りさんとお医者さんがやってきたという……。

「ふたつの死」という小品。下「」引用。

「「あの時は愉快だつたね、隣の家にはピカ(原子爆弾)で死にかかりの人間がゐるのに、こちらではみんな楽器を持寄つて大騒ぎやつた」
 私は若い学生たちのだらけきつた雑談を部屋の片隅できかされた。みんな彼等は原子爆弾の際は中学の勤労隊にゐて市街から離れていたために無事だつたのだ。それに惨劇に直面し、その後突おとされた悲境のなかに生き喘いでゐる私とはひどく違ふ世界だつた。-略-」

キリストという詩があった。下「」引用。

「キリスト
ある晩大きな月が出た。
出たと思ふともう消えた。
たつた一寸の間でも
月見た時の心持は
消えない消えない」

原民喜は聖書を読んだことがあるのだろう……。
--遠藤周作の友人でしたね……。

「解説」で中学時代の原民喜のことが書かれてあった。下「」引用。

「原民喜の声を聞くのがはじめて、というのにおどろくと、全く信じられないかも知れないが、中学校でのこの四年のあいだ、同級生も教師もだれも原民喜の声を、まったくただの一言も、返事の声も聞いたものがいないのだという。」

慶應卒のいたわり?……。下「」引用。

「和木清三郎の前でだまって坐っている原民喜に、慶應出たくせしゃあがって早稲田の奴に「三田文学」へ紹介されてくるばかたれがどこにある、といった例の調子で和木清三郎はいたわっていた。」











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