黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

三池炭鉱 #06:万田坑1

2014-01-12 03:32:07 | ・三池炭鉱
シリーズでアップしている三池炭鉱。
保存されている施設の三番目は万田坑です。

このシリーズでアップしている施設は、
一昨年の夏および初冬に三池を訪れた際に見学した物件ですが、
唯一この万田坑だけは10年以上前から時々訪れていました。
ですので、記事内の現在の姿の画像は、
この10年のものを織り交ぜてアップしていきます。

三池炭鉱

数多ある三池炭鉱の施設の中で、
もっとも炭鉱の操業時の姿を今に伝えているのが、
この万田坑です。
前回、前々回とアップして来た宮浦坑、宮原坑と同様、
その多くの施設が国の重要文化財に指定されています。

三池炭鉱が県を越えて大牟田市と荒尾市にまたがっている話は、
このシリーズの沿革の前編でお伝えしましたが、
基本的に殆どの施設は大牟田市にあり、
唯一この万田坑だけが荒尾市に属します。





三池炭鉱

万田坑は、
明治35年(1902)から昭和26年(1951)まで稼働した炭鉱で、
明治期に造られた炭鉱施設の中では、
国内最大規模のものでした。

当時日本一の大会社だった三井が、
模範となる様な坑口施設をつくらんと、
総力を結集して完成させた、
いわば三池炭鉱のシンボルのような坑口施設です。





三池炭鉱

画像は万田第一竪坑の創業時の姿。
万田の第一竪坑は、
明治30年(1897)に開発が始まり、明治35年(1902)に稼働しています。
実に5年の歳月を費やした掘削と整備は、
この坑道がいかにしっかりと造られたものかを物語っています。
櫓の高さは31mとその規模も大きく、
どっしりとした外観は、そのまま三井炭坑の、
安定的発展を象徴しているかの様です。





三池炭鉱

明治38年(1905)年頃の第一竪坑の巻上機。
この時代の動力が蒸気機関だったことを考えると、
手前に写る木製の筒はシリンダーでしょうか。
スチームパンク時代の重厚な音が今にも聴こえて来そうです。





三池炭鉱

写真は明治40年(1907)頃の入坑の様子。
右側の人が手に持つ大きなざるは、
掘り出した石炭を運ぶためのもの。
沿革の前編でも触れたように、初期の炭鉱では、
先山と後山の二人でコンビを組み、
先山が採掘、後山が運搬を担当しました。





三池炭鉱

第一竪坑とほぼ同時期の明治31年(1898)に開発が始まりながら、
第一竪坑よりも更に長い10年の歳月をかけて完成したのが、
深さは264mの第二竪坑です。
手前左に写るのが第一竪坑、奥が第二竪坑。

第一と第二の竪坑が完成したことで、
第一を揚炭・入気・排水に、
第二を人員の入坑・資材の昇降・排気・排水に、
それぞれ使い分けられました。





三池炭鉱

第一竪坑用のデビーポンプ。(大正14年(1925))
勝立坑や宮原坑で導入された世界最大の揚水様デビーポンプは、
万田の第一竪坑でも使われました。
それにしても凄いルックスですね。





三池炭鉱

第一竪坑の櫓は昭和26年(1951)の閉坑後、
昭和29年(1954)に解体され、
その後北海道の三井芦別炭鉱の櫓として活躍し、
平成8年(1996)に解体されたそうです。
現在万田では、この記事の上から3番目の写真にも写る、
櫓が乗っていた巨大な基礎が残るばかりです。





三池炭鉱

しかし櫓はないものの、
271mの竪坑は現在でも残っています。
行政指導のもと、三井鉱山による水位等の計測のために、
現在でも竪坑が塞がれていません。
通常、炭鉱の竪坑は閉山と同時に閉塞されるので、
第一竪坑のようにそのまま残存しているのは、
極めて珍しい例となります。

奥に見える水流は、上がって来た湧き水。
その水量はかなり多い様で、
数十メートル上の竪坑口からも、
水流による爆音が聴こえます。





三池炭鉱

第一竪坑は、竪坑以外解体されてしまいましたが、
第二竪坑はその周辺施設とともに現存しています。
櫓は高さ18.9mなので、宮原坑の竪坑櫓より実際は低いのですが、
横幅があるために、宮原の櫓より大きく感じられます。





三池炭鉱

この2枚の画像は10年前の万田第二竪坑櫓。
この記事の一番上の現在の姿と比べると、
相当錆び付いていいたのがわかります。





三池炭鉱

櫓の真下にある第二竪坑の坑口跡。
竪坑こそ塞がれているものの、
それ以外の施設がほぼ完全な形で残る第二竪坑の坑口は、
竪坑がどのような施設だったかをリアルに知ることができる、
とても貴重な産業遺産。

左手前下に写る軌道は、
人員や資材を乗せたケージの、
地上での移動用線路。





三池炭鉱

軌道は、囲まれた薄暗いトンネルを抜け、
やがて坑外施設へと続いています。

次回は竪坑関連以外の施設を取り上げます。



【万田坑】

荒尾市原万田200番地2
0968-57-9155(万田坑ステーション)
見学時間:午前9時30分~午後5時
休館日:毎週月曜および年末年始
見学料金:大人400円、高校生300円、小・中学生200円

三池炭鉱

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1 Comments

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テレビ大阪「和風総本家」担当の佐藤と申します。 (佐藤由紀乃)
2015-02-25 20:38:00
突然のコメント失礼いたします。
私、テレビ大阪で「和風総本家」という番組を
担当しております佐藤と申します。

今回、弊社の番組の企画で、蒸気機関を使用している写真を探しております。
そこで、「三池炭鉱 #06:万田坑1」に投稿されている
4枚目のお写真を放映に使用させていただきたいと考えております。

突然のお願いで大変お手数をおかけいたしますが、
ご検討いただき、ご連絡いただけましたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
テレビ大阪 東京制作部 「和風総本家」
東京都中央区築地1-13-14 東銀座スクエア6F
AD 佐藤由紀乃(さとうゆきの)
E-mail: wafu_shokunin24@yahoo.co.jp
Tel:03-3543-7705  FAX:03-5550-7227
携帯: 080-4109-7836
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