黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

川崎・千鳥の光景 #04

2005-03-30 08:33:50 | テクノスケープ


画像は川崎の湾岸に広がる工業埋立地の一つ、千鳥町の工場の景観です。
高く組み上げられた鉄骨に無数に絡みつく太細のパイプラインや点在するタンク群には、
もう使い古された表現かもしれませんが、生き物のような印象を受けます。
それは恐らく工場の景観が<必要な器官>のみで出来ているからだと思います。
思えば生物の体は、動物も植物もこの必要な器官だけで出来上がっています。
無数の神経がネットワーク状に張り巡らされ、大小の血管が複雑に絡み合い、
時に大きな消化器官や心臓というポンプがありと、
そのどれもが<必要なデザイン>であって、見た目のデザインではありません。
工場地帯はというと一般の人があまり立ち入らないのが前提なので
やはり<見た目のデザイン>をしません。
そこにあるのは必要な距離で設計された必要な本数のパイプラインだったり、
敷地を効率的に使うために設置されたタンクや煙突です。
見た目のデザインで器官の殆どが隠された都会を離れて工場地帯を歩くとき、
巨大な生物の中にいるような錯覚を覚えるのは、そのためかもしれませんね。

■シリーズ:川崎千鳥町■
・#01 夜の工業地帯
・#02 廃墟としての工業地帯
・#03 浅野総一郎の野望
・#05 光の生き物
・#06 千鳥線
・#07 飛行機からの臨海工業地帯
・#08 ブレードランナーと京浜工業地帯
・#09 夜光町 その由来1
・#10 夜光町 その由来2


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