黒沢永紀オフィシャルブログ(旧・廃墟徒然草)

産業遺産と建築、廃墟、時空旅行、都市のほころびや不思議な景観、ノスタルジックな街角など、歴史的“感考”地を読み解く

長崎さるく #46 軍艦島見学リポート2

2009-08-31 11:08:53 | 長崎さるく
今年の4月に一般公開された端島炭鉱跡、
通称軍艦島の見学ツアーリポート2。
今回は島内の様子です。



入島口をくぐって島内の見学コースを歩き始めると、
いきなり正面にどーんと、
軍艦島の岩山で最も高い所が見えてきます。
明治時代の擁壁で固められた岩肌、
頂上の貯水タンクやその横の送水管、
岩礁下部のボタ捨てコンベアの入口跡など、
100年にわたる濃縮な時間の堆積を感じさせます。



第一見学所。
支柱だけ残ったベルトコンベア跡やドルシックナーなど、
鉱業所の南半分が見渡せ、
その先には端島小中学校の校舎が見えます。
第一見学所はすかなり広いスペースが設けられていますが、
緊急時にヘリが着陸できるためだそうです。



見学コースには一切階段がなく、完全なバリアフリーです。
画像の見学コースの右側に写るのは、
基礎だけ残っているメイン選炭場の跡。
これだけ見てもなんのこっちゃかわかりませんが、
こうして残っていてくれるのは嬉しいですね。



第一見学所から第二見学所へ移動する通路から。
画像右手前に写るのは、地底から掘り出された石炭を、
最初に貯めておく坑口原炭ポケット。
そこから下へ落とされ、
画像中央下部のコンクリで固められた、
通路のような所を通って選炭場へ運ばれていた、
操業時の様子を偲ぶことが出来ます。



第二見学所は、
鉱業所で最も施設が沢山残っている場所が見渡せます。
右端に写るのは入坑桟橋への階段跡。
事故を起こさないようにと緊張して昇り、
無事に帰って来れたと安堵して降りる、
炭鉱マンにとっては思い出深い階段だと思います。
いつまでも残ってほしいと思います。

左に写る煉瓦の塀は、
明治時代に作られた捲座と呼ばれる主要施設の跡。
その後捲座としての役割を終えてからは、
閉山まで資材倉庫として使われた建物ですが、
これまた100年の時を越えて建っているのを目の前に見ると、
感慨深いものがあります。



第二見学所のすぐ脇を通る人道トンネルの天井。
蛇行しながら住宅棟の方へ伸びてゆくのがよくわかります。
またその先には巨大な堤防が幾つも崩壊しているのが見えます。
この島を襲う台風の猛威がどれほど激しいかが、
実感として知る事の出来る場所でもあります。



第二見学所から第三見学所へいく途中の海底水道の取込口。
昭和32年 (1957) の国内初の海底水道工事によって、
対岸から延びてきた6.5kmの送水管が、
島内へ取り込まれていた部分です。
明治時代に船着場ととして使われていた、
もともと穴があいていたところを再利用したそうですが、
湧水のなかった軍艦島にとって、
命の水がこんな無造作な場所から取り込まれていたと思うと、
妙に不思議な気持ちになります。



やがてコースは最終見学場所へ向かって進み、
仕上工場(左)や第二竪坑の捲座(右)などが見えてきます。
仕上工場は主にメンテナンスの仕事をする作業場ですが、
昭和11年築ながら、RC製だったおかげで今でもしっかり残っています。
1階が作業場、2階には食堂や娯楽場、風呂まであったそうです。



コースのすぐ横に見える南部プール跡。
かつて海水を汲み上げて使われていた塩水プールには、
今もコース表示がしっかりと残っています。





いよいよ最終見学場所の第三見学所です。
ここからは30号棟の勇姿が見えます。
建築からまもなく100年になろうとする、
現存する国内最古の鉄筋アパートです。
年々崩壊が進んで、おそらくこのままだともうすぐ、
崩れてしまうんではないかと言われているので、
ご覧になりたい方は早めに行かれる事をお勧めします。

賛否両論だった見学コースの建設でしたが、
こうして実際に見てみると、当時の施設を殆ど壊す事なく、
また、見所も満載の見学コースになったと思います。
昨年の見学コースの工事の際に、
軍艦島を世界遺産にする会の坂本理事長から、
見学コース予定地付近に残る、
炭鉱施設のリストアップを依頼されました。
今回の見学コース建設でこれだけ施設が残った事が、
果たしてそれが生かされた結果かはわかりませんが、
現存する施設をわざわざ壊すより、
なにもないところにコースを造る方が、
コスト的にも安上がりだった、
ということかもしれませんね。



見学上陸のチケット。
ただ、前回の記事でも触れた様に上陸可能日が年に100日程度だったり、
島内にトイレや自販機がないことや、
ハイヒールや傘等見学に不適切と判断されると上陸出来ないなど、
見学する人にとってはハードルが高い見学場所かもしれませんね。

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なお、軍艦島一般公開の上陸リポートは、
ワンダーJAPAN Vol.12にも掲載されているので、
興味のある方はぜひご覧になってください。



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また軍艦島に関してより詳しくお知りになりたい方は、
オープロジェクト運営のサイト軍艦島オデッセイをご覧下さい。



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